表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/51

地下の異変




 僕たちは島の中央付近にあった穴から、島の地下へと入る。

 そこは、僕が落ちた穴とは別の穴だった。


「ん、ここ明かりすらねえのか。暗くてたまったものじゃねえな」

 真っ暗闇の通路と言うのは、僕が想っているほど他のみんなにとってはつらいもののようで、島の地下に入ったとたんにみんなの動きがぎこちないものになる。


 ソアラだけは、見えているのかいつも通りだったが、レナでさえも不安そうにしていた。

「なら、僕が照らそうか?」

 僕には光の玉を出すライトの魔法があるから、暗い通路を照らすことができる。

 ただしこれ、暗いところで使うと何故かめちゃくちゃ魔物が寄ってくるから、あまり使いたくはないのだ。


 ただ、目が見えないのはみんなつらそうなので、視界を確保することを優先することになった。


 僕がライトの魔法を使うと、今まで真っ暗で何も見えなかった島の地下がしっかりとみることができた。

 今、僕たちがいるのが少しだけ広めの何もない空間で、前方にのみ道が広がっている。


 すぐ先は曲がり角になっていて、そこから先の様子をうかがうことはできなかった。


「よし、じゃあ俺が先頭を行くからみんなはその後についてこい!」

 視界が確保できると、主さんが意気揚々と歩き出した。

 彼はがしゃがしゃと音を立てながら、少し速足で進む。


 僕たちは置いていかれないようについていった。


 角を曲がると、そこにはただまっすぐな道があるだけで、特に何もなかった。


 この島の地下には何かがいる。

 そのことを知っている僕は、そのことに少しホッとしながら、主さんについていく。


 それから僕たちは、主さんの先導のもと少しの間歩き続けた。

 その間、何も出てこずそろそろ何かが見つかってくれないと雰囲気が悪くなりそうだな、なんてことを想っていたその時、突然、悲鳴のようなものが島の地下に響き渡った。


「今のは?」

「……近いぞ」


 一番前を歩いていた主さんが、身構え、声の発生源をいち早く特定したソアラがあっちだと指をさす。

 誰かが危機的状況に陥っているのかもしれない。

 そう考えた僕たちは、駆け足で声のした方向に向かうことにした。


 声の発生源はソアラが言った通り、とても近い場所であり、僕たちが移動を始めてから3分程度で到着することができた。

 そこで、僕たちが見たのは―――――


「おいおい、これは……」

「いや…」

「……」

 まず、一番前にいた主さんと、その後ろにいたルナルナが声を上げる。ソアラは沈黙を守っていたが、小さく唾をのむ気配がして、その現状に驚いているのが読み取れた。


 僕とレナは、その直後、みんなの体の間からそれを視認することになる。


「ひっ……」

「?」


 それは、首のない人間の死体であった。


 それも、1つではなく、4つ。

 強そうな鎧を装備している死体、杖を持ちローブを着ている死体、軽装の死体、巨大な剣を握りしめている死体。

 どれもその場に倒れて動く気配はなく、そしてそのどれもが首から上だけが存在していなかった。


 あまりの光景に、気分が悪くなり始める。

 幸いなことは、レナは描写設定に制限がかかっているためか、これを見ないで済んだことだろう。

 僕が眉をひそめていると、唐突にソアラがその死体のもとに寄り、何かを確認し始めた。


「何かあったの? ソアラ」

 少し死体を改めた後、首を一度縦に振ったソアラに僕が聞いた。

 すると彼はもう一度首を縦に振り


「……これは獣の類にやられたのだろう」

 と言った。


「獣?」

「……ああ、首の切断面が食いちぎられたような形をしていた。少なくとも、人間には簡単にはつけられない類の傷跡だ」


「そういう武器を使ったという線はねえのか?」

「……ない、とは言い切れないが、可能性は低いだろう」

 

 こんな状況でも冷静なソアラは、死体の状態から死因をおおよそではあるが推測して見せた。

 彼が言うには、何か鋭い牙を持ったものがこの惨状を作り出したということだった。


 だが、それならば腑に落ちないことがある。

「でも、獣がやったっていうのなら、どうしてこの人たちの身体はここに残っているの? 普通全部食べてしまわれない?」

「……それは、わからない。首から上だけがなくなっているところから見るに、そこしか食わない獣なのか、いや、頭は殺すために食いちぎったとみれば、元々殺すためだけに襲い掛かったのかもしれない。理由はわからないが…」


「いや、レティの言うとおりだ。どうして体が残っているんだ?」

「……だからそれは今……!? そうか」


 主さんの言葉に、ソアラが何かに気づいたようなそぶりを見せる。

 それが何なのかを共有するために、僕は問いかける。

「どういうこと?」

「レティ、プレイヤーはな。死んだらリスポーンするんだ。そして、その際に死体は消える。ずっと残りっぱなしだと、世界が死体の山になるからな」


「え? でもこの死体はここに残って…」

「だからおかしいんだよ。イベント限定の、死体を残すような魔物がいるってことか? だったらなんで? くっ、無人島っていうから楽し気なやつを想像してたのに結構やってくれるじゃねえか」


 主さんは忌々し気に呟いた。

 それにしても、死体が残る、という現象に僕の中で何かが引っかかっていた。

 “死体が残る”と言う現象ではなく、”死体が残る”という意味についてだ。


 おそらくだけど、このイベントのキーパーソンは僕が出会ったあの女性―――エメラルダとその家族にあると思われる。

 だからそこに何か関係しているのだろうけど、うまく言葉が出てこない。


 何かもやもやする気持ちに、終止符を打てないかとちらりと仲間たちを確認していると、青ざめた顔で立ち尽くしているルナルナが目に入った。


 彼女は、こういったものが苦手なのか小さく震えている。

 僕は、ルナルナの手を取ってこっちに引き寄せた。


「あっ……レティ?」

「とりあえず、見ない方がいいよ」

 僕はルナルナを抱き寄せ、頭を自分の胸に押し付けて彼女の視界を塞いだ。

 彼女は少し安心してくれたのか、僕に小さくしがみついてから、一度溜まった息を吐きだしていた。

「あ、ずるい。私も!!」

 そこで状況がよくわかっていなかったレナが後ろから飛びついてくる。


 それをしっかり受け止めた僕は、再び主さんたちの方に視線をやった。


 すると、どこかにやにやした目でこちらを見ている主さんたち。

「聖女様はモテモテですなー」

「……だな」


 少しだけ、空気が軽くなったような気がした。

「あはは……嬉しい限りだよ」

 友人たちからかいに僕はそう軽口をかえした。


 このままだとルナルナがかわいそうなので、僕たちは仕方なしにこの場を後にすることにした。

 その際

「汝らに、慈母神の導きがあらんことを―――」

 僕は首なし死体に軽く祈りを捧げておいた。



 こうして死体のあった場所を離れた僕たちは、軽く考察をしながら通路を進んだ。

「聞こえた悲鳴は一つだけだったってことは、不意打ちで3人やられたってことか?」

「……不意を打たれたということは前方から来たわけではなさそうだ」

「後ろから…ってことは今も僕たちの後ろに――――はいないね?」

「……おそらく、上からだろう。天井には気を付けた方がよさそうだ」

「天井って…警戒が難しそうだな」

「……それは俺がやっておこう」」


 こんな感じに、何に襲われたのかはわからないがどのような存在に襲われたのかは予想が立てられるので、話しながら進む。

 そして、死体があった場所から離れて10分ほど歩いただろうか?

 

 ズ……ズ……ズズ……ヌチャ…ズル…ズ

 僕の耳が、何か引きずるような音をとらえた。




【イベント限定?】無人島イベントスレ第21の街【変な魔物】


1 名も無き管理人


今回の無人島イベントについて語るスレです。

節度、マナーをもって語り合いましょう。

おめでとうございます。

>>980さんは選ばれし勇者です。

次スレを立てる権利を得ました。



133 名も無き旅人

なんか、死んだあとリスポーンできないんだけど、これバグ?


134 名も無き旅人

>>133わからんが、多分仕様だと思われる。

島の地下の魔物に倒された場合のみ、イベントエリアでのリスポーンができないっぽい

今回のイベントの設定にかかわってきているのかもな

まぁ、ただのバグの線も切り捨てられないけど


135 名も無き旅人

え? ってことは今回のイベントは地下で一回死んだら終了?


136 名も無き旅人

っぽいな

一応、もう一回船を壊せば別の島で再スタート出来るっぽいけど


137 名も無き旅人

ふぁー!?

クソじゃん

こんなのクリア不可避じゃん

初殺しで死んだ人もいるんですよ?



138 名も無き旅人

まぁ、島は全部同じ形らしいし、別の島でも同じ島でも変わらんでしょ


139 名も無き旅人

船がそんなに何個も手に入ると思うなよ!!


140 名も無き旅人

え? 船ってそんなに入手こんなんでした?


141 名も無き旅人

>>140 個人用で入るならともかく、10人乗れる規模とかになってくると欠航する感じ


142 名も無き旅人

>>141欠航は草

船の調達に失敗してんじゃねえか


143 名も無き旅人

へぇ、そうなんですね


144 名も無き旅人

で? 結局今回のイベントってどういう趣旨なのこれ?


145 名も無き旅人

多分だけど、イベント限定の魔物を倒してポイントを稼いで、あとで何かと交換って感じかな?

島の地下は全部イベント限定っぽいし、探せばボスとかいそう



146 名も無き旅人

そんなお前らに朗報だ!

俺たちの島ではボスっぽいやつを見つけた!


147 名も無き旅人

>>146 まぢか!? どんな奴? どんな技を使ってくる?


148 名も無き旅人

なんか青い髪の女の人、俺たちが挑んだ時は攻撃が無効化されるわ触られただけでタンクが死にかけるわ、何なら死ぬわで大変だった


149 名も無き旅人

それで? 倒したら何か貰えるの?


150 名も無き旅人

さあ? シラネ


151 名も無き度びt

全滅したのか……


152 名も無き旅人

え? それって本当に勝てるボスです?


153 名も無き旅人

さあ? このゲーム絶対勝てないだろってボスは結構いるからなぁ……




【tips】

15歳未満のプレイヤーはグロ設定がoffになる


感想より

錬金術について、石から金を作れるほどの能力があれば人体も...

人体の構造がわからなかったんですかね?


人体は複雑ですからね。

と言うのもありますが、正直に申し上げますと本作品ではここでしか錬金術を取り扱わない為、割とふわっとした設定でやってます。

昔読んだ漫画で、石を金に変えてたけど、素材を人体に変えるときは上手くいってなかったような記憶があるから、こっちでもそれでいいかくらいのノリで書いていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

doll_banner.jpg
お姉ちゃんの頑張りが書籍化しました。
― 新着の感想 ―
[一言] 人体錬成といえば、、、。 鋼NO錬金術師ですね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ