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みるべきところとこころ

遅くなってすみません


 中に招き入れられた僕は、改めてその部屋の中を見る。

 そこは部屋と言うよりかは、何かの研究室のような様相を呈していた。


「何か珍しいものでもあった?」

 部屋を見ていると、彼女は苦笑いしながらそう聞いてきた。

 そのことに僕は、何か悪いことを咎められたかのような気分になって少しばつが悪くなった僕は愛想笑いを返した。


 彼女はそれを気にした様子はなく、淡々と話しを始めた。


「どうして、戻ってきたのかな?」

「もっと、あなたとお話をしたいと思ったからです」

 それは僕の本心だった。

 去り際に見せた彼女の寂しそうな顔が気になったから、もう一度、ちゃんと話したいと思ったから僕はここに戻ってきたのだ。


「そ、そう? まあいいわ。そういうことなら、少しくらいなら付き合ってあげる。そこら辺の好きなところに座るといいよ」

 彼女は、視線をきょろきょろとさまよわせてから、一度深呼吸してから落ち着いたのか椅子に座った。

 僕も促されるまま、隣の椅子に座る。

 きっとこの島には彼女一人しか住んでいないというのに、椅子がいくつかあるのは客人を想定しているのか、それともペティのような獣も椅子に座るのか、僕にはわからなかった。


「それで? 聖女様はお話に来たって言ってたけど、何か聞きたいことでもあった?」

 彼女はこちらを向いて、そう聞いてくる。


 色々話すべきことはあっただろうけど、まず一番初めに聞いておくべきことがあるよね。


「なら、まずはあなたの名前から聞かせてください」

 僕はまっすぐに彼女を見据えてそう言った。


 蒼髪の彼女は、くすりと笑い答える。

「自己紹介が遅れたね。私はエメラルダ・シエナ。好きに呼んで」

「そうですか。では、エメラルダさんと呼ばせてもらいますね。そして僕のことはレティとお呼びください」


「そうね。いつまでも聖女様、だと堅苦しくって嫌になっちゃうからね」


 それから少しの間、僕はエメラルダと話をした。

 彼女は島の外の話が聞きたいみたいで、僕はこれまでみんなと一緒に旅してみてきた世界のことを放した。

 エメラルダは楽しそうに聞いてくれるから、僕も話のし甲斐があった。


 そして、ある程度僕の持っているネタを放し終わったあたりで、エメラルダはとあるものを持ってきて、僕に意見を求めてきた。

「時にレティ、これ、どう思うかな?」

「えと、これは……ネコですか?」


 エメラルダが持ってきたのは、籠の中に入った黒猫だった。

 それ以上でもそれ以下でもないのだがと思ってみていたところ、籠の中のネコが僕に気が付いてこちらに目をやった。


「くるっぽー」

「ハト?」


 泣き声が完全にハトだった。

 あ、これペティと同じタイプの動物だと僕はそのひと鳴きで察した。


「ねぇ、レティ……いや、聖女様。あなたはこの子を、ネコとみるかしら? それとも、ハトとみるかしら?」

「それはどういう……ことですか?」


「率直な感想でいいの。聞かせてもらえるかしあ?」


 エメラルダにそう言われた僕は、再び籠の中の“それ”を見る。

 見た目は完全にネコである。しかしながら、そういうことを聞いているのではないのだろう。

 鳴き声はハトというところに、彼女が求める答えでもあるのだろうか?


 そういえば、僕のことを聖女様と改めて呼びなおしていた。

 そこらへんに、何かヒントがある気がする。


………見た目はネコ、鳴き声はハト……いや、この場合は中身がハトなのか?


 ということは、この質問の意図は対象の定義を外見で判断するか、中身で判断するかということになるのだろうか?

 だとするのならば、僕の答えは―――――


「僕はこの子はきっとハトなんだと思います。だから君はくるっぽーと鳴くんだよね?」


 僕は籠の中にいる黒い猫の姿をしたハトにそう話しかけ、手を差し出した。

 ハトは嬉しそうに、頭を僕の指にこすりつけてくる。


「そう、あなたはそう言ってくれるのね。よかったわねトッポ」

「くるるっぽー!」


 エメラルダは少しだけ嬉しそうに、籠の中のハト—--トッポを撫でる。

 よかった。どうやら僕の答えは間違えていなかったみたいだ。


 僕は外見で人を判断するということができないから、大切なのは中身だと感じたからそう答えたのだが、それが正解だったようだ。


 僕がほっとしている間に、彼女はトッポの籠を少し離れた場所に置きなおして、再び椅子に座った。


「聖女様が、外見より中身を重視するって聞けて安心したよ。一応聞くけど、その言葉に間違いはないよね?」

「え? はい。もちろん僕にはその答えしかありませんよ?」


「ふふっ、信じるわ……さて、そんな聖女様に一つ、いいものを見せてあげましょう。ついてきてくれるかしら?」


 エメラルダはすぐに立ち上がって、こっちにおいでと手招きをした。

 ふと、そちらに目をやるとそちらには扉があった。

 僕が入ってきたのとは、別の扉。


 この研究室の奥に行くための扉だろう。

 そして、いいものを見せてくれるという話だったから、彼女の研究でも見せてもらえるのだろう。


 僕はエメラルダについてその扉をくぐった。


 そしてその先には―――――――



「みんな、お客さんよ。あいさつしなさい」

「これは……」


そこにいたのは、所謂合成獣と言われるようなものだった。

 通常ではありえない姿かたちをした化け物たちが、研究室の奥の部屋には何体もいて、拘束すらされずに当たり前のようにそこいらに鎮座していた。


 しかし、それらはレナの即興キメラと比べるとまだ見られる見た目をしていた。


「うぃ~、ちわー」

「客?」

「みんな、一緒に喋るんじゃないよ! お客さんが怖がっちゃうだろ?」


 そのキメラたちが、エメラルダの声で僕に気づいてそれぞれが陽気な挨拶をしてくれる。

 野太いおじさんの声、高めのお兄さんの声、おばちゃんの声。

 それらが一度に僕にたたきつけられて、一瞬気後れしてしまう。


 その反応をどう思ったのか、エメラルダは顔をしかめた。


「やっぱり、中身より見た目の方が大切かな?」

 その声はどこか悲しそうで、僕は速く誤解を解かないといけないという気持ちになる。


「ごめんなさい。みんな一緒に喋るからびっくりしちゃっただけなんです。彼らの見た目に関して言えば――――僕の妹があれよりひどいのをいつも作っているので何とも……」


 ちらりと今僕に声をかけてきた3人を見る。

 どこかおじさんみのある声のキメラの見た目は、ベースが豚で、ゴリラの腕、カンガルーの足、蛇の頭がついたしっぽで構成されていた。

 ぱっと見、整合性の取れていない体で、世間的には“気持ち悪い”と称されてしまいそうな見た目をしているが、よく見てみればずっしりと構える大きな体、たくましい腕に、ひととびでどこまでも飛べそうな強靭な脚、チャームポイントの尻尾とみるべきところはありそうだ。


「おじさん。よく見ると格好いい体していますね?」

「お? そっか? やっぱり若い女には俺の格好良さがわかるってもんよ」

「お世辞に決まってるじゃない。あんたの身体はどっからどう見ても豚そのものだよ!」


「馬鹿野郎! 豚なのは胴体だけだ!」

「あっはっはっは」


 僕の言葉に、少しだけ気をよくしたおじさんにおばさんが辛辣な言葉を浴びせ、顔を赤くして怒ったのを見てお兄さんが笑う。

 その間に、僕は笑っているお兄さんを見てみた。


 こちらは先ほどの獣型とは違い、ベースがカエルだった。

 しかしその腕は細長く、三叉の銛のように爪がついており、下半身は魚類のそれであり、彼は上半身を起こして会話をしていた。

 ちなみに、今はあおむけになってびちびち跳ねながら笑っている。

 やっぱり、世間的にはあれも“キモイ”の部類なんだろうけど、よく見たら普通に魔物にいそうな見た目だしそこまで違和感もないだろう。


 僕の視線は流れるようにおばさんの声の方へ――――


 そちらは鳥類ベースの頭が狼、腰から下には蛇の体がついている。

 赤い翼をはためかせて、蛇の体を引きずりながら動くその姿は、普通にアリなのではと思わせられた。


「お姉さんは格好いいですね」

 僕は呆れた顔でおじさんを見ていたおばさんにそう言った。

 一応女性っぽいので、おばさんとは言わないように気を付けて


「あらぁ? 嬉しいこと言ってくれるお嬢さんじゃない。ねえねえどこ? 具体的にどこがいいの?」

「お世辞に決まっているだろう? おばさんが舞い上がってんじゃねえよ」

 今度はおじさんがさっきの意趣返しとばかりに食って掛かる。

 その瞬間、おばさんの蛇の部分が素早く動いておじさんの体を締めあげ、狼の頭が豚の頭にかみついた。


「いて、痛えよ!! 理不尽だ!」

「まったく、あんたってやつは。乙女心のわからない子ね!! だからモテないのよ!」


「はっ、俺様はもう結婚しちまっているからなぁ。モテる必要はないな」

「まったく、こんなバカな男と結婚する物好きな女なんてどこにいるのかしら」


「それは――――」

「………」


 おじさんとおばさんが見つめ合う。

 アレ? 何かいい雰囲気じゃない?

 僕はそろりそろりと移動し、カエル? のお兄さんのもとへ。


 彼らは合成獣の身体ゆえにそれなりの大きさがあったので、こうして近づいてみるとかなりの威圧感があった。


「カエルさん。もしかしてあのふたりって……」

「あっはっは……ん? ああうん。夫婦だよ」


「やっぱり……」

 なんかめちゃくちゃお互いを信頼し合っているような感じがしたし、結婚云々の下りが出てきたときにいい雰囲気を醸し出した挙句そのまま恥ずかしがるようにおばさんが拘束を緩めてその体を絡ませ始めたのでもしかしてと思ったが、そのまさかだったようだ。


 僕がラブラブのムードを漂わせているキメラ2人に目をやると、カエル?のお兄さんが衝撃の情報を開示してくる。


「それで、あの二人から生まれたのが俺で―――――、あそこにいるエメラルダは俺の妹だ」

 


左手の中指をけがしたんですが、これが使えないだけでタイピングが不自由なこと不自由なこと……

まぁ、遅れたのにはほとんど関係ないんですけどね。


【information】

イベントの進行度が60%に到達しました。




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お姉ちゃんの頑張りが書籍化しました。
― 新着の感想 ―
[一言] これは……間違いなくナニカサレタヨウですねぇ……
[一言] 衝撃的な展開ですね~❗ レティだからこその回答ですね❗ この人達の正体はなんでしょうね?
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