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無人島調査


 ざざーんという波の音が耳につく。

 嵐に見舞われた僕たちは、気がついたら船を失って見知らぬ島に打ち上げられていた。


 意識が覚醒した僕が、周りを確認すると、そこには僕と同じように打ち上げられて倒れている仲間たちの姿。

 数を数えてみてもちゃんと全員いる。

 僕はひとまずそのことに安どして、体を起こしてみる。


 みんなも続々と起き上がってくる。

【島の動物たちに、食料を食べられてしまいました】


 そして、起き上がると同意にそんなシステムメッセージを聞いた。

 僕はとっさにメニューからアイテムボックスを開いて、その中身を確認した。

 すると、メッセージ通りおおよそ食べ物と言えるものはすべてなくなっていた。


 ただし、聖水はそのままだったため僕は食料に困るといったことはなさそうだった。


「みんな大丈夫?」

 起き上がってきた仲間たちに僕は声をかける。

 みんなも現状の確認は済んだみたいで、反応はそれぞれ違っていた。


 ルナルナなんかは能天気に海を見ていたが、主さんは対照的に食糧がなくなったのが響いているのか暗めの顔をしていた。


「くそぅ、無人島っていうからしこたま食い物持ってきたっていうのに……」

「まぁまぁ、無人島イベントで何も不自由がないのはおかしいからね。そういうものだよ」


 僕たちがそんな感じに現状の確認をしていると、ざっばーんとひときわ大きな波の音が聞こえてきて、その方向から人間が浜辺に打ち上げられるのが見えた。

 打ち上げられたのは3人で、気を失ってるみたいだったから僕はとっさに駆け寄った。


「大丈夫ですか?」

 華やかな装備を着込んだ彼らを揺すって気象を促していると、やがて目を覚ましてその中の1人が僕と目が合った。


「うっ……ここは…そうか。みんな、起きろ~」

 目を覚ましてすぐに状況を理解したらしいその人は、仲間たちに起床を促していた。


 どうやら大丈夫そうだと判断した僕は、みんなのもとに戻る。


「あの人たちって…」

「まぁ、俺たちと同じイベントの参加者だろうな。イベントではクランに入ったりしていないとランダムに流されるって聞いていたから、あそこの奴らが仲間同士なら同じクランか何かなんだろう。そこまで気にすることはない」


 駆け足で戻った僕が、あの人たちはなんなんだろうと聞いてみるとそんな答えが主さんから帰ってきた。

 それで納得した僕は、そろそろこの島について何か調べたいという気持ちと、これからどうするのかという疑問が浮かんだ。

 

とりあえずは僕たちのリーダー役ともいえる主さんに話を聞いてみると

「とりあえずは食糧確保だ。動物たちが俺の食糧を持って行ったからな。逆に食糧にしてやろう」

 主さんはそう意気込んでいた。

 だが、そんな彼に見えるように僕は小さく手を上げる。


「あの、僕がいるからお肉は食べられないと思った方がいいよ」

「あっ……」


「……」

「……よしっ、二つの班に分かれて行動だ!! まずは俺と一緒に食糧を確保するもの!! そしてレティと一緒に島の調査をするものだ!! どっちと一緒に行きたいか、みな各々の判断で決めてくれ!!」


「はいはい!! 私お姉ちゃんと一緒がいい!!」

「私も私も、レティと一緒に行くわ」

「お前ら……ソアラは?!」


「……俺は、山の主と一緒に食糧を探すとしよう」

「ソアラ……心の友よ!!」


 主さんは僕と別行動することによって一時的に縛りを解除して心置きなく食糧調達に臨むべく班分けを開始した。

 直後、レナとルナルナが僕と一緒に行くことになって、ソアラは主さんと一緒に行くこととなった。


 素早く班決めをした僕たちは、早速島の探索を開始することにした。

 この島はぱっと見で分かる限り、かなりの広さがあるので一蹴歩くだけでも一苦労になりそうだった。


「じゃあ、何か進歩があったら知らせてくれ」

「うん、そっちもね」


 僕は主さんにそう言って、三人で島の探索をすることにした。



◇―――――――――――――――――――――〇


 食糧調達のために森の中に入った山の主こと俺は、何か獲物がいないかと目を光らせながら歩いていた。

 その折、隣を歩く鎧姿の男――――俺の友人であるソアラが目についた。

 

「お前も、レティと一緒に行きたかったんじゃねえのか?」

 悪態じみた自分の言葉に、我ながら少しイラっとしながらも言ってしまったからには引っ込めることができないので気にしないように努めた。


「……どうして?」

「どうしてってそりゃあ、あっちの方が綺麗どころが多いだろ? ソアラがあっちに行けばハーレムだぞ?」


「……レティは男だぞ?」

「女みたいなものだろう?」


 レティと山の主、母屋 光と山本 辰巳、どっちが魅力的な人間であるかなんて俺が一番わかっていた。

 あいつは自分の視力を失ってでも、女を守りそれを引きずらないすごい男で、対する俺は何もない普通の男だ。


 あいつの心が海ならば、俺の心は井戸くらいしかないだろうと、いつも思い知らされる。

 だが、あいつがいいやつだから、俺もいっしょにいたいと思えるし、こんな感情を抱くのも自分を嫌いになる要因になりそうだった。


 ソアラは俺が何を考えているのかを察したのか、小さく口を開いた。


「……友達だろう? 俺とお前は」

「え? あ、ああ」


「……なら、俺がこっちに来ても問題ないはずだ」

「そ、うだな」


 ソアラはそれだけ言うと、道から少し外れてかがみこんだ。 

 そしてすぐに立ち上がると、俺に何やら植物を見せてくる。


「……これは、おそらく食える。ほら、俺たちは与えられた仕事を全うしよう」

 彼が見せてきたのは現実世界にもある山菜で、それが食べられるのは俺も知っていた。

 ソアラが見せてきたそれを見て、俺は小さくため息をついて


「そうだな」

 と答えた。

 そして再び俺は周囲へ目をやり始めた。

 それから少しして―――――



「……知っているか? お前は十分魅力的な人間だ。学校ではお前を好いているやつも少なからずいるぞ?」


 と、ソアラからそんなことを言われた。

 もしかして、俺が気落ちしているように見えたのだろうか?

 どうにかして俺を励まそうとしているソアラを見て、それが少し滑稽に見えた俺は小さく笑う。


「くくっ、ありがとうなソアラ」

「……あぁ」


 でも、一番滑稽なのは友人の言葉一つで簡単に上機嫌になってしまう俺なのかもしれないなと思いながら、俺は食糧調達に臨んだ。

 ただ、その後ソアラが俺と比べて大量の食糧を手に入れているのを見て、俺は再び微妙な気持ちになった。


〇―――――――――――――――――――――◇


 島の探索を命じられていた僕は、ルナルナとレナと一緒に島の外周を一周してみようということになった。

 その結果、島は完全に海に囲まれていて脱出するにしても船は必須だということがわかった。

 僕たちの場合、レナがそれはいつでも用意できるから問題はないという結論に至った。

 

 島はかなり大きく、周りを歩いているだけでかなりの時間を要してしまった。


 そこで、主さんからシステムメッセージを応用したメールが届いて、あちらは順調なことがわかった。

 さすが主さん、仕事が早い。

 となると、僕も何か成果を持ち帰らなきゃいけないね。


「そろそろ森の方に入ろうか」

 この島は外周を海に囲われていて、それに沿うように浜辺があり、島の中央は森に覆われているという感じになっていた。

一部、断崖があったりなどはあったが、大体そんな感じだった。


 島の周りには今のところ何も見つけられなかったから、森の中を探そうということになった。


「あ、レティ姉、私は一度空から何か気づくことがないか見てみるよ」


 レナは森に入るとき、そう言って一度僕たちと別れた。


 僕とルナルナは何か気になるものはないかと目を光らせながらとりあえずはまっすぐ、島の中心部を目指すように歩いた。



「うーん、特に何もないね」

「だね」


「見た感じ、魔物とかもいるみたいだけど、そこまで強くないし……一回手分けして探してみる?」

「その方がいいのかな?」


 森の中を探索していた僕たち、島の中心部に来たが特に何も発見できなかったので、手分けして何かを探すことになった。


 それから、僕は歩き回っていろんなところを見てみたけど、それらしきものは何も見つけられなかった。

 そして、僕は何か持って帰った方がいいかなと思い、しゃがみ込んで野草でも持って帰ろうかとしたとき―――――


ガサガサッーーー


 突然後ろの草むらから、魔物が飛び出してきた。

 巨大なイノシシのような魔物だった。


 いきなりの出来事だったので、対応できなかった僕は不意打ちを許してしまい大きく吹き飛ばされてしまった。


「うわあああああ!?」

 軽い僕の身体は、宙を舞い地面にたたきつけられた。


 堅い地面の感覚が僕を襲う。


 僕は倒れたまま、素早く回復を行い、顔を起こすとそこにはもう巨大イノシシの姿はなかった。


「……交通事故ってこんな感じなのかな?」


 恐怖より驚きが強く、怒りと言うより茫然といった感じだ。

 僕はため息を吐きながら、地面に手をついて起き上がろうとしたとき、触った地面に何やら違和感を覚えた。


「はて?」


 僕は首をかしげて、違和感の正体を探る。

 とりあえず、土をどかしてみた。


 しかし、特に何もない?

 もう少し深く、土を掘ってみた。


 途中で、何か硬いものが指先に触れた。


「おや? これは…」


 土の下には、石材で作られた何かがあった。


「もしかして、この下には何かある?」


 それが何なのかはわからないが、取り合えずこれは成果+1だろうと考えたあたりで僕は、それなりに時間が経過していることに気が付いた。


「一度戻ってみんなに報告しよう」

 僕は最初に打ち上げられた浜辺に戻ろうとした。


 そして近くにあった草むらを超えてその先に行こうとした

 しかしその時—————



 ズボッ


 と、地面に脚が埋まり――――


 そのまま僕は地面に引きずり込まれるように下に落ちた。




【tips】

一つの無人島に最大100人まで入ることができる。

無人島はサーバーで区切られており、他の島と交流することはできない。


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