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いざ、無人島へ


 街の外でユキとルナルナと僕で一頻り遊んだ後、いい時間になったので僕らはログアウトすることにした。

 そして翌日、僕たちは街の入り口に集合していた。


「今日は足りないものを外に調達に行くって話だったが、まず何が足りないかを聞かせてもらおうか。まずはレティ」

 全員がそろったところで、主さんがこの場を仕切り今日の予定を決めようとする。


「僕は街中だけで全部そろったから必要ないよ」


「ルナルナ」

「右に同じく」


「ソアラ」

「強い毒性を持つ物」


「レゾナンス」

「品質のいい宝石」


 レナとソアラの足りないものに加え、主さん自身の鉱石が欲しいという意見もあって僕たちは鉱山に行ってみることになった。

 運が良ければみんなが望むものがすべて手に入るからだ。


 ただ、鉱山の敵は一部アンデッドだが、そうでないものも多数いるためそれなりに気を付けて行動しなければいけなかった。

 また、採掘は昔のゲームのように採取ポイントがあるというわけではなく、完全に自分の力で掘り当てないといけないので一苦労だ。


 実際は、採掘スキルを取っているとどこに鉱石があるのかとかがわかったりするらしいんだけど、あいにく戦いに特化している僕たちがそんなスキルを使えるはずもなかった。

 完全に勘で掘り進めるしかなかった。


 何も必要ない僕とルナルナもみんなのために必死に鉱山入り口付近にあった村で購入したつるはしを使って壁を掘ってみる。


 しかし、ほとんど何も出ないんだなこれが。

 それに少しムッと来た僕は、ちょっとだけ芸術的な掘り方をして気を紛らわすことにした。


「よしっ、完璧」

「なに遊んでんねん」


 僕が採掘―――もとい彫刻の出来を確かめるように一歩後ろに下がって確認していると、ぺしっ、と僕の後頭部をはたくものがいた。

 後ろをちらりと見れば、そこには主さんが半笑いで立っていた。


 街中以外では窮屈だという理由で鎧を脱ぎ捨てている彼は、僕の彫刻がお気に召さなかったみたいだ。

「明らかに掘っている積より残っている積の方が多いじゃねえか」

「だって…どうせ出ないし」


「いいかレティ? 物事っていうのは事象を観測しない限り確定しないものなんだ――――ぞ!!」


 主さんが勢いよく、僕の作った壁から生えている一本の鋭い角を持つ兎の上半身像を攻撃した。

 主さんの力で叩かれてはひとたまりもない。

 角兎像はバラバラになってしまった。


 主さんはそのバラバラになった角兎の残骸を確認する。


「ほら見ろ。宝石が混じっているじゃねえか!」

「あ、ほんとだ。さっきまで全然でなかったのにどうしてだろうね?」


「物欲センサーじゃないか?」

 主さんは残骸の中から赤い宝石を取り出して、アイテムボックスの中に放り込んだ。


 こんな感じに僕たちは時にふざけ、時に真剣に採掘にいそしんだ。

 アンデッドやゴーレム以外の敵が出たときは

「ほら、お帰り」

 と言って途中見つけた縦穴に放り込んだ。

 落下ダメージで殺してしまわないかと思ったけど、下を照らして確認した限りは大丈夫だった。

 そうして昼頃まで採掘を続け、得た鉱石と宝石は必要なものを分配した後は山分けにしようって話になった。

 正直、僕には使い道がなかったが、貰えるなら貰っておくくらいの気持ちでアイテムボックスに放り込んだ。


 僕たちは、昼に一度食事のためにログアウトした。

 例のごとく、僕の食事はあかりさんが作ってくれる。


うん、おいしい。


 材料はうちにあるものを使っているため、昼食のメニュー自体は響やお母さんと変らなかったりする。

 あかりさんは僕が昼食を食べ終わるとすぐに家に帰ってしまった。

「いちいち行き来するくらいなら、あかりちゃんもうちに住んじゃえばいいのにね。光もそう思うでしょ?」

「ふぇ? あ、うん。そうなったら、ちょっと嬉しい、な」


「あら、なにその乙女みたいな反応。かわいかったからちょっと肩もんでくれる?」


 僕はお母さんの肩を5分ほど揉んでからログインした。

 からかわれた仕返しにと少し力を強めてみたが、逆にそれが気持ちよくさせてしまう結果だったのが少し悲しかった。

 ちょっと筋トレでもしようかなと思った。


 さて、そうやって少し遅れてログインすると、どこか雰囲気がおかしかった。

 剣呑と言うか、何というか。

 どこか息苦しい感じだ。


 ログイン直後、息苦しさを感じながらもみんなを見つけようときょろきょろした。

 すると、すぐ近くで主さんとソアラが向かい合って、構えていた。


 もしかして、喧嘩!?

 レナとルナルナはそれを見ているだけだ。


「ちょっちょちょっと! 2人とも何してるの!?」

 僕がとっさに声を上げると、先ほどまでの張りつめた空気とは一転、今度はいつもの緩い空気に変わる。

 そして、緊張の糸が切れてしまった主さんが溜息を吐きながらこちらを見る。


「いや、ちょっと鍛えようと思ってソアラと模擬戦しようとしてただけだ。別にこいつが憎かったわけじゃねえよ」

「あ、ごめん。早とちりしちゃって…」


 僕の誤解が解け、再び彼らは向き合い構えを取った。

 先ほど、僕がぶち壊してしまった緊張も戻ってくる。


 主さんはいつになく真剣な表情で、ソアラはどこか余裕を持ってその場に立っていた。

 そして、少しの静寂の後、主さんから動いた。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおあがっ!?」


 雄叫びを上げてソアラに肉薄しようとする主さん、だが、その足はいとも簡単に止まってしまう。

 途中、うめき声を上げたと思うと前のめりに倒れてしまったのだ。

 そして、主さんは起き上がることなくそのままゆっくりと近づいたソアラの剣が首元に突き付けられた。


「勝負あり。勝者、ソアラレート」

 そこでルナルナのコールが入り、模擬戦は終了した。

 僕は倒れている主さんに駆け寄り、素早く回復魔法をかけた。

 しかし、主さんが動き始める様子はない。


 もしや、と思って状態異常回復を掛けると、彼はゆっくりと起き上がった。


「ちくしょう、負けるだろうとは思ったけど、こんなの。俺の想像した負けじゃねえ……」

 よほど悔しかったのだろう。

 主さんはこぶしを握り締めてそう言った。


「というか、何をされたの? 突然倒れたように見えたんだけど」

「毒だ」


「それはそうだろうね。異常にかかってたから」

「あいつ、さっき手に入れた毒性を持つ鉱石を剣で打ち出して俺の口に放り込みやがった……」


「え? そんなことできるの?」

「出来たんだからやられたんだ。レティ、気をつけろ。あいつの前で口を開けると隙になるかもしれねえぞ」


「えー?」

 主さんの言葉を、にわかには信じられなかった僕はちらりとソアラの方を向いた。

 彼は突然視線をもらい、どうしていいのかわからずに首をかしげている。


 そこで、僕は口をあーっと開けてみた。


 少しの間ソアラは首をかしげていたが、状況からどうしてほしいのかがわかったのだろう。何かを手前に放り投げ、素早く剣を振りぬいた。


 僕はそこで自分に異常回復の魔法を掛けながら、待つ。

 すると、本当に口の中に硬いものが入ってきた。


 しかし、それは毒性の鉱物ではなく


「あ、甘い」

 飴ちゃんだった。

 イチゴミルク味。

 おいしい。


「主さんの言っていたことは本当だったみたいだね」

「だろ?」


 起き上がった主さんはため息をつき、ソアラの方を見ていた。


 それから僕たちは街に戻り、イベントの準備を再開した。

 僕とルナルナは準備をすでに終えていたので、自由行動だ。


 僕たちは2人で街をブラブラして、途中喫茶店に入ってお茶をしたりしながらその日を過ごしてログアウトした。


 例によって例のごとく、あかりさんが僕の家に来て僕の分の夕食を作ってくれる。

 やっぱりおいしい。


 夕食を食べているとき、お母さんが昼に言っていたことを切り出した。

「ねぇあかりちゃん。もううちの子になっちゃわない?」

 お母さんのその言葉を聞いたあかりさんは、きゃーっと言ってどこかへ走り去ってしまった。

 お母さん、今のは誘い方が悪かったと思うよ。

 まぁ、誘い方がよかったとてあかりさんが僕の家に住むようになってくれるとは思わないんだけど……


 そんなこんなでこの日も終わり、明日になる。



 今日は待ちに待った、と言うほどは待っていないが僕たちのとって初めてのイベント参加の日だった。

 集合時間に遅れないように、早めにログインしてみんなを待った。

 みんなも集合時間ぴったりか、それより少し前にはもうログインしていた。


「さあ、みんな揃ったな。早速イベントの舞台。無人島とやらに出発するぞ!!」


 主さんが音頭を取り、僕たちは無人島とやらに向けて出発をした。

 今回のイベントの参加方法は、メニュー画面からイベント設定をONにした状態で、どこからでもいいから海に出航して陸地から300メートル離れるということらしく、僕たちは最寄りの海辺に行きそこから出航することにした。


 僕たちは船を持っていない。

 だから僕たちが乗る船は少し特殊なものだった。


「レナ、頼んだよ」

「任せてお姉ちゃん。今日のために考えてきたから」


 僕たちの船、それはレナの召喚によるキメラだった。

 様々な魔物の使えそうな部位で、船を作りそれに乗って出航しようということだ。

 これを思いつくか、普通の船が手に入らなかったら僕たちは泳いでイベントに参加することになるところだった。


 さて、そんなこんなで出航した僕たちは、沖から300メートル地点にたどり着き。


「来たぞ!!」


 嵐に見舞われた。

 そして船は制御を奪われ、いずれ転覆し。


 気づけば僕たちは無人島に打ち上げられていた。



活動報告でもお知らせしましたが、更新頻度が少し落ちます。

それでも頑張りますので、何卒聖女プレイをよろしくお願いします。


【tips】

状態異常付与の成功確率は毒物を使用している場合は毒物の強さと接種させた量で決まる。

武器に毒を塗って斬りつけるより、毒を飲ませた方が成功確率は圧倒的に高い


感想より

Q、胸板? あ、

A,みんな忘れかけているかもしれませんが、レティは男ですからね?


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お姉ちゃんの頑張りが書籍化しました。
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