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聖女(♂)誕生の日


山本君こと山の主のことは、結局僕たちの間で主さんと呼ぶこととなった。


 主さんは山の主という縛りの関係上、基本的に山から出られないという問題があり、僕たちについてきて一緒に遊ぶということが現状できないという状態で、とっても悲しそうにしていた。

 だが、彼もそれに対する対策がないわけではなかった。


 プレイヤーズダンジョンというシステムがある。

 詳しい詳細は省くが、プレイヤーは攻略したダンジョンを一つ、自分のものとして管理できるようになるシステムだ。

 主さんは山のダンジョンをこのシステムで自分のダンジョンとして、山の主であることを主張することで山を下りても縛りを違反していないという状況を作ろうとしているのだ。


 だが、そのダンジョンは主さん一人では攻略ができずに困っていたところに、僕たちが現れて今に至るという状況だ。

「というわけで、そのダンジョンの攻略を手伝ってくれない?」


 主さんは両手を合わせてそうお願いしてくる。

 動作は可愛らしいものだけど、その図体のせいで威圧感がすごい。


「僕はいいけど……みんなもいいよね?」

「私も別に、レティを狙ったのは許せないけど」

「私も…お姉ちゃんを狙ったのは許せないけど」

「……俺も別に、…レティを狙ったのは許さないが」


「みんなどんだけこいつのことが好きなんだよ!!」


 主さんの突っ込みも入ったところで、僕たちは主さんのことを手伝うことにした。

 主さん曰く、一人では勝てなかったけど5人もいれば楽勝なのだそうだ。


「あ、僕がいると一部を除いて敵を倒せなくなるけど、大丈夫?」

「えー、まぁ、ボスは魔導兵器っぽいゴーレムだったし大丈夫じゃない? 殺すのはダメでも壊すのはいいよな?」


 一応、大丈夫だと思うということを伝えると、主さんは嬉しそうに首を何度も縦に振り、それならばすぐに行こうということになって僕たちはそのダンジョンをみんなで攻略することにした。

 

 そうしてやってきた山の頂上、主さんがいたこの山はダンジョンではないが、この山の中に転移する魔法陣がそこにはあり、そこからダンジョンに入れるみたいだった。

 僕たちは順番にその魔法陣にのって、ダンジョン内部に転移する。


 ダンジョン内部は遺跡のような場所であり、そこには僕たちが倒せる魔導ゴーレム他、蝙蝠だったり、リザードマンだったりもいて多少厄介だった。

 僕たちはソアラとレナの状態異常攻撃に頼りながら、倒せない敵をやり過ごし、倒せるゴーレムはルナルナが一撃の下に粉砕してぐいぐいと奥に進んでいった。


 そうしてたどり着いた最奥、そこには予告されていた通りゴーレムの魔物。

 しかしそれは道中にいたものより大きく、背丈が5mはありそうだった。


 そして太い胸部に細い腰、長い手足、丸い頭という見た目で、あれで僕たちを認識しているのだろうという一つ目が頭についている。

 魔導兵器ゴーレムは、僕たちを認識するとすぐに腕を横方向に薙ぎ払うように振り、そこから爆弾を投下してきた。

 それが、戦闘開始の合図だった。


 今回はルナルナと主さんがメインアタッカーで、ソアラが守衛、僕とレナが補助という役割を以ってこのゴーレムと戦った。

 基本的には、ソアラが敵の攻撃を捌いて、その隙にルナルナと主さんが強力な一撃をゴーレムに与える、補助役の僕たちは回復やバフなどをみんなにかけて回った。


 そのゴーレムは確かに強かったけど、元々主さん一人で善戦できる程度の強さでしかなく、そこからさらに4人加わった現在はさほど苦戦することなく倒しきることができた。


「よし、これでこの山は名実ともに俺のもんだな」

 魔導兵器ゴーレムを倒すと、奥にコントロールルームのようなものが開放されて、それを利用して主さんが山の権利を手に入れた。

 加えて、他の人に簡単に奪われないようにダンジョン内を少し改造してから出発するつもりなのだそうだ。


 だから少し時間がかかるから待ってほしいのだと、その間、僕はひっそりと材料を取り出してレア様像を作ることにした。

 材料はテミス様に作った時と同じ、謎粘土だった。

 この旅の間、作り続けてきたこの作業ももう終わりになる。主さんがダンジョン内を、ソアラに相談しながら改造する間に、テミス様に追加発注されていた2つのレア様像を完成させることに成功した。


 それから少しして、ダンジョンの改造が完了したらしいので僕たちはダンジョンの外に出ることにした。

 そして街に降りる。


 ここで問題が発生した。

 主さんははた目から見たら魔物なので、街に入れなかったのだ。

 これはソアラが街で全身鎧を買ってきてあげるということで何とか解決するということになったが、その間自由な時間ができてしまったため、僕はこの街にも一応存在している教会に顔を出すことにした。


 当然、そこにいる修道士の人は僕の知らない人だから、最低限の挨拶だけして用件を済ませようと思った。

 僕が教会に来た理由は言わずもがな、奉納のためだった。


 前回、テミス様にレア様像を奉納した時に作ってほしいと言われたのだ。

 僕は修道女であって芸術家ではないのだけれど、レア様像を奉納したらなんやかんや何かが返ってきているので、それを受けたのだ。


 そして今日、それが完成して奉納だ。

 僕は約定の女神の台座に二つの像を設置して、両手を合わせて祈りを捧げる。


「テミス様、どうぞお受け取りください」

『はい、受け取りました。前回同様、よい出来ですね。これで彼女たちも喜ぶでしょう。では、今回のお礼です。受け取ってください』


 テミス様はこの前マリアさんの体を借りたときとは違い、自分の口でしゃべっているらしく、あの時とは違う声が聞こえる。

 だけど、雰囲気はおんなじだった。


 テミス様は受け取れと言ったものの、何かが僕のところに落ちてくると言ったことはなかった。

 しかしながら、少し後になって僕のもとにシステムメッセージが届く。


『『神授魔法:コン』『神授魔法:アストレイア』スキルの解放条件を満たしました』

 なぜテミス様が他の女神様の神授魔法を授けることができるの?という疑問を抱きはしたが、とりあえず僕はその二つのスキルを取得しておくことにした。

 神授魔法シリーズはSPの消費こそ多いが、その効果は絶大で応用も効くから取れるなら取っておいた方がよいと思って、僕はレア様の神授魔法を得てから全てのSPを神授魔法スキルの取得に費やしていた。


 今、僕のレベルが遺跡攻略で上昇して51になっており、ギリギリSPが足りて二つとも神授魔法を得ることができた。


『神授魔法:コン』を取得しました。

『聖域展開』を習得しました。

『均一の理』を習得しました。

『全状態異常耐性Ⅱ』を習得しました。



『神授魔法:アストレイア』を取得しました。

『聖域展開』を習得しました。

『正義執行』を習得しました。

『物魔防御力上昇Ⅱ』を習得しました。


 神授魔法Ⅰでは基本的に『聖域展開』が手に入る。

 これは前々から覚えていたものとは別物の魔法であるため、神授魔法を手に入れた数だけ聖域を作ることができる。

 同時発動も可能といえば可能だが、僕のMPでは重ねられて3つまでが限界だろう。


「よしっ、これで僕も少しは役に立てるようになったかな?」


 奉納の結果に満足して、僕がその場を立ち去ろうとしたとき、新たなシステムメッセージが僕の頭の中に響いた。

『半数の女神に認められました。あなたを聖女として認定します』

『『ワールドアナウンス:おめでとうございます。この世界に聖女が生まれました!!』』



 ………今、なんて?

『レティちゃん、今ちょっといいかしら?』


 あ、レア様の声だ。

 僕は一度にいろんなことが起こり、何が何やらわからなくなって混乱し始めていた。


次回で3章は終わりですね。

今更ですが、3章のテーマは旅の準備です。

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お姉ちゃんの頑張りが書籍化しました。
― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすい。一気に読み終えてしまった!続きが気になります。 [気になる点] 主さんって表記が語呂が悪くて読みにくいと感じた。 [一言] 主人公のジョブは修道女なのか司祭なのか、聖女なのか。…
[一言] 祝え!聖女(♂️)誕生の瞬間である!
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