死霊魔術師タオの呪いー双子の書ー
前半が前回拾った本の兄側、後半が妹側です
俺以外のみんな死んだ。
そう思っていた。
妹だけは、あの地獄の中で起き上がってくれた。
死屍累々の馬車の中、
俺たちは2人、ことが終わるのを待ち続けていた。
その日、俺たち家族は、今は廃墟とだけ呼ばれている、ムーランマリンの近くを通ることになっていた。
しかし、急いで危険なルートを取ったのが、悪夢を呼び寄せてしまった。
俺たちは、護衛がいるから安心だと思っていた。
俺たちは、無力だった。
しかし、アンデッドたちは強かった。
俺たちはアンデッドになすすべなく蹂躙された。
そして、俺たちだけになった。
そう思っていた。
聖都に戻った時、俺は異変に気が付いた。
聖都には、神聖なる力が満ちているとは聞いたことがあった。
その時、俺は悟った。
あぁ、もう
俺たちはアンデッドになってしまったのだ。
だけど、俺には妹がいる。ここで折れるわけにはいかなかった。
妹も苦しいだろうに、俺が少し元気づけてやると気丈にふるまうようになった。その頑張りを、俺は無駄にするわけにはいかなかった。
俺はまず、聖都に満ちている神聖な力を、屋敷の中だけでも無効化できるようにした。
俺はその後、文献を漁ってみた。
俺が調べてわかったのは、廃墟に特殊なアンデッドが出るということだった。
そのタオという特殊なアンデッドは、死者の魂をとらえ現世にとどまらせるという力があるということも同時に調べられた。
これから脱する方法は一つ、
タオの力を奪い、とらわれている俺たちの魂を奪い取り、肉体に入れ込むことができれば俺たちは生き返ることができるだろう。
タオは執念であの土地にしがみ続けている。
普通にやっても、勝ち目はないし俺たちの目的を達成することもできない。
悩んでいた俺たちのもとに、旅人という存在が知らされた。死んでも蘇る、世間知らずな存在。俺はその旅人にタオを討伐してもらい、その力を奪うことにした。
タオの力が杖にため込まれていると知れたのは僥倖だった。専用の器具を作る必要があると思ったが、その必要がなくなり、あとは適当に旅人をだまして杖を集めるだけでよかった。
妹は、杖によって得た力で父上を蘇らせた。
蘇らせた人物は、俺たちのように意志を持って行動するわけではなく、指示に従うことしかしなかった。
それを知って俺は思った。
やっぱり、俺には妹しかいない。
俺たちは旅人たちをだまし続け、杖を集めてきてもらった。
杖は、ものすごい速度で集まった。
俺の妹は天才で、杖より得られた闇の力の使い道を俺に示してくれた。
俺の妹が示してくれた可能性は、俺にとって最上のもので、すぐにでも実行したかったがまだ力が十分じゃないらしかった。
もうすぐだ。もうすぐ、俺たちは、————ひとつに。
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私以外のみな、死んでしまいました。
でも、それは勘違いでした。
兄様だけは、あの惨劇の中でも立ち上がってくれました。
私たちは這いずって、お互いのことを抱きしめ合っていました。
私たちは、領地から聖都に戻る途中でした。
私たちは、早く聖都に戻る用事があったのです。
護衛の方はちゃんといました。
廃墟の近くを通るとき、私たちの乗る馬車をアンデッドの群れが襲いました。
護衛の方は頑張ってくれました。
私たちの馬車は横転させられ
私たちは何もできずにその脅威にさらされました。
そして、最終的に私たちだけが生き残りました。
そう思っていました。
聖都に帰ると、体が突然痛み始めました。
聖都の浄化作用のことは知っていましたが、まさかそれが私たちに作用していると気づいたのは、聖都の屋敷に戻って二日がたったころでした。
それを知った時、私は確信しました。
私たちは人間ではないのですね、と。
私たちは、悲嘆に明け暮れていました。
兄様は、悲しみにふさいでいる私を励ましてくれました。
兄様は、私たちに何が起こったのかを調べ始めました。
私は何もできずに、兄様がすることを見ていることしかできなくって歯がゆい気持ちになっていきました。
たまに、調査のたびに家の外に出ていく兄様を見て、私は胸が締め付けられるような思いをしました。
兄様が調べた情報によれば、かつてムーランマリンにはタオという魔術師がいて、それが強い恨みを持ち死んだことによりアンデッドと化したらしいのです。
そして、タオは魂をとらえることで私たちを動く死体へと変えました。
タオにとらわれれている魂を解放することができれば、私たちは解放されることができるでしょう。
しかし、それは一筋縄ではいきません。
そもそも、私たちはあの死霊魔術師に手も足も出ずに殺されて帰ってきたところでした。
しかし、悩んでいた私たちに幸運が降って湧きました。旅人です。
タオはその力を杖にため込んでいました。私たちはそれを集めることで、少しずつではありますがタオの力を奪うことに成功しました。
兄様は、杖によって得た力で使用人を蘇らせました。
しかし、奪った力での死霊術は完璧ではありませんでした。
私がタオから奪った力で蘇らせた父上は、ただの肉のお人形さんでした。
それを知って、私は確信しました。
やっぱり、私には兄様しかいませんわ。
幸いにも、蘇らせた人たちは指示を出せば喋るくらいのことはできましたので、旅人たちをだますのは容易でした。
杖を集めてもらい、力をためると素晴らしいことができると気づいたのはその時です。
闇の力を使い、儀式を行えば二つの生き物を一つへとくっつけることができると兄様に伝えると、兄様はとっても喜んでくれてすぐにでもやろうと言ってくれました。
私たちは、儀式を完璧なものにするために、杖を集め続けました。
もうすぐです。もうすぐ、私たちは――――ひとつに。
ぶっちゃけ今日のは間に合わないと思って書いてた。





