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ずっとずっと想ってた


 神様たちから、創作の依頼をもらってから少しの時間がたった。進捗状況はヴィクトーリア神像が完成しているが、レア神像はまだと言った感じだ。


 せっかくだからこの二つは同時に送ろうと思っているから、片方が完成してもまだ僕のアイテムボックスの中に眠ったままだ。


 そうして神像をアイテムボックスの中に入れて気づいたのだが、僕の作ったそれはゲームシステムにアイテムとして認められているらしく、ふとした時に確認してみたら僕作のヴィクトーリア像は『ポータブル女神像:ヴィクトーリア』という名前がついているのが確認できた。


 これが『美少女フィギュア:ヴィクトーリア』とかになっていなくて本当に良かったと思う。

 さて、それだけ廃墟で時間を過ごしながら、たまにマリアさんに顔を見せに行き木をけずるという生活を続けていると、唐突にその時がやってきた。

 その日、僕はいつものように廃墟でレベル上げをしながら、レア様の像を作る作業にいそしんでいた。


 最近はお客―――死霊魔術師を倒すために僕の手伝いが欲しい人が増えてきている。


 流石に他の人とパーティを組んでいるときに、よそ見をしながら戦うわけにはいかず僕としては手伝うのはいいけど、頻度を抑えてほしいなと思い始めていたころ、いつものように僕と一時的にパーティを組もうと一人の女性がやってきた。


 その女性は後ろから近づいてきて、耳がいい僕は割と早く気が付いた。


「もしもしそこの修道女さん。ちょっとクエストのために死霊魔術師を倒す手伝いをしてほしいんだけど、いいかな?」


 ある程度近づいた女性は、警戒させないためなのか距離がある状態で話しかけてきた。その声を聴いて、僕は一瞬ドキッとした。そして、それ以上に嬉しいと思った。


 その声を、僕が聞き間違えるはずはなかった。


 僕はにっこりとほほ笑みながら、そちらに振り返りそして答える。


「ええ、もちろん。いくらでもお手伝いしますよ」


 振り返り、僕が見たのは陽だまりのような笑顔がまぶしい女性、彼女は今は笑っておらず、驚いたような顔で僕の方を見ていて笑ってはいないが、そんな顔すら僕には見られたことがうれしかった。


「き、君はみt……」

「僕の名前は聖レティって言います。レティって呼んでください」

 思わず僕の名前を言おうとした彼女の言葉を遮るように、僕は人差し指を口の前に立ててそう言った。


「うん…うん、レティ。私はルナルナって言います。今日はよろしくお願いします!」


 僕の初恋の相手はルナルナと名乗った。久しぶりに見た彼女の姿はとっても魅力的に見えて、縛り通りの可憐さを持っているなと僕は思った。





 こうして僕たちはパーティを組んだ。

 パーティ登録が済んだ後、僕たちはお互い初対面という演技をしているのが少しおかしくなって笑い合い、その後いつものような雰囲気に戻った。


「それにしても、レティは何というか2Pカラーって感じね」


「意味が解らないんだけど…そういえば、どうしてルナルナはここに?」

「最初も言ったと思うけど、クエストを達成するためにあの死霊魔術師を倒す必要があるのよ。でも一人じゃ勝てなくって行き詰っていたところにこの時間帯ならお助けキャラがいるかもしれないっていううわさが聞こえてきたから探してたんだけど、まさか君だったとはね」


「あはは……そんな噂になってたんだ。そっかそっか、だから最近そういう要請が多かったんだね。納得したよ。それにしてもルナルナは聖国にいたんだね」


「最初に王国を選んだんだけどね。馬車に乗って旅してたらいつの間にかこっちに、それでむなk…あー、ソアラレートがレティはこっちにいるって聞いたから探しながらいろいろやってたんだ」

「で、その最中に受けたクエストで僕と合流できたという感じかな?」


「そうね。そんな感じ」

「となると、あとは山の主の人だけだけど……ルナルナは彼がどこにいるか知ってる?」


「本人に聞いたら帝国のどこかの山にいるみたいよ。どこの山かは本人も分かっていないらしいわ」

「となると、合流はだいぶ先になりそうだね」


「そうね。ま、私はレティと会えたから野蛮な山の人はいなくてもいいけど…」

ルナルナは嬉しいことを言ってくれたが、それだと山本君がかわいそうだ。


「仲間外れは善くないよ」

「そうね。レティ、私が護衛してあげるから今度一緒に帝国まで旅してみない?」


「うん。その時はお願いするね」

「わかったわ。でも、今日は死霊魔術師の討伐を手伝ってね」


 ルナルナと会話をしながら、僕たちは目的の相手のところまで歩いた。その道中で、今までずっと気になっていたことを聞いてみる。


 それは、みんなが何のクエストでここにやってきてるのかということだった。


「他の人たちは知らないけど、私はとある屋敷にいる双子の妹がここにいる死霊魔術師に呪いをかけられて苦しんでいるから助けてほしいって言われたよ」


 ルナルナはそう言ってそこに行くまでの経緯を放し始めた。


 ざっくりと要約すると、道を歩いているとアンデッドの群れに襲われている馬車がありそれを助けたところ中から豪華な服を着た中年の男性と双子の兄妹がいて、お礼をしたいからと屋敷に招かれた。

そこでもてなしを受けていると、双子の妹が突然苦しみ始める。


 調査の結果、その子は呪いを受けていることが判明、原因はどうやら死霊魔術師にあるみたいだと言うことがわかった。


 しかし、死霊魔術師は強力で手出しができそうにないから助けてほしいと言われ、それに了承した結果が今の状況なんだそうだ。


 僕はその話を聞いていくつか違和感を覚えるが、それが何なのかをはっきりと明示できなかったので言わなかった。

 そんなわけで、僕は何度目かになるかわからない死霊魔術師との戦いに挑んだ。




 まぁ、今更あれの戦いを事細かに説明する必要はないだろう。

 僕が湧き出るアンデッドを全部浄化して、ルナルナが本丸を殴って終わりだ。ちなみに、僕はパーティプレイの時はとある理由から聖域は使わないので、実は一人のほうが楽だったりするが、それはまた別の話だ。


 普段と違い驚いたことがあったとするならば、ルナルナの使用武器が戦斧で、豪快な戦い方としていたところだろうか?

 いつも僕の家に来る彼女は穏やかな女性だったと記憶しているのだけど、縛りの力は恐ろしいね。


「これこれ、これがいるんだって」


 ルナルナは死霊魔術師がドロップした杖を回収した。

 そういえば、今までのパーティも手伝ったお礼としてドロップ品は大目にくれたが、杖だけは譲らなかっ たなと思いだした。

 それ、クエストアイテムだったんだ。


 僕がそんなことを考えていると、ルナルナが速く帰ろうと催促してくる。

 僕はそれに従って、廃墟の外に向かった。


 廃墟の入り口でルナルナは僕に問いかける。


「レティ、これから私はこれをもって件の双子のところ行くけど、一緒に来る?」


 そもそも僕はここに一人でいたから、彼女は僕がここに用事があっていたのだと考えていた。実際はそんなことはないのだが。

 だから、彼女は一緒に来るかどうかと僕に聞いた。


 僕は、せっかく一緒になれたのだからもっと長い間一緒にいたいと思ったので、ついていくことにした。




 僕たちが向かったのはいつもの街―――ではなく、聖国内になる別の街。


 そこは聖国の中心部に位置する都市で、教会の総本山がある場所でもあった。言ってしまえば聖都である。

 その聖都の中でも、金持ちが住んでいそうな場所にその屋敷はあった。聞いていた通り立派なつくりの屋敷で、敷地は小学校のグラウンドくらいありそうだった。


 門番の人が、ルナルナの姿を見ると頭を下げて快く通してくれる。一度、見覚えのない人間である僕に懐疑的な目を向けられたけど、ルナルナが仲間だと言ったら問題なく通れた。


 そして、屋敷に入るとメイドさんが出迎えてくれて双子のもとへと案内される。



 案内された部屋でには、宣言通り双子の兄妹がいた。どちらもまだ子供としか言いようのない姿で、兄のほうは部屋に入ってきた僕たちに目をやり、妹のほうはベッドに横と横たわって荒い呼吸をしていた。


「言われてきた通り、死霊魔術師タオの杖を持ってきたよ」

「ありがとう。これで妹も助かるよ」


 まるで決まれたセリフを読み上げるかのように、そのやり取りがなされたとき、僕はふと疑問に思ったので聞いてみた。


「というか、呪いって術者が死んでも続くものなの?」

 僕の疑問を聞き、双子の兄のほうがこちらを見る。


「ルナルナさん、この人は?」

「私の友達。それを手に入れるのを手伝ってもらったからついてきてもらったの」


「へぇ…」

 じろじろとこちらを見る双子の兄は、やがて一つため息をつき僕の方から視線をそらした。

そして、杖を持ち妹が眠るベッドの横に歩み寄り一言


「これから呪いを取り除くから、すまないが君たちは部屋から出て行ってくれ」

と言われた。


 僕たちは一瞬だけ顔を見合わせ、言われたように退室した。


「元気になる瞬間は見せてもらえないんだね」

「まぁ、僕たちは治療に関して言えば部外者だからねぇ」


 僕たちは部屋から出てそんなことを言い合いながらその場を立ち去ろうとした。

だが、その時、何やら嫌な予感がしたので僕は耳に意識を集中させた。


…………???


 しかし何も聞こえなかった。

 自慢ではないが、目が見えない分僕は耳が発達している。その耳を使っても、何も音が聞こえなかった。

 一瞬、杞憂かと思ったがそれではおかしいと気づいた僕はくるりと振り返り今出て来たばかりの部屋に戻ろうとした。



しかし、扉は開かずガチャガチャとノブを回す音だけがその場に響いた。


「レティ?」

 突然の僕の奇行に、屋敷から出ようと歩き出していたルナルナが僕の方を振り返った。

 そして


「レティ! 危ない!!」

 そう叫んだ彼女は僕のほうに手を伸ばしていた。


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