ROLL.9:採掘…?
――平日の昼下がり。
オレたちは学校を抜け出して裏山の頂上にある〈堂陰塚〉にいた。
獅子正のヤローに印籠を…じゃなかったそれじゃコーモン様だ、えっと…そう、引導を渡すためである。
「黙雷君、説明してくれないか」
部長が少し困り顔で言う。
昨日、電話した時はあまりにも興奮しすぎて話の根本を伝える事が出来ず、結果、ただの呼び出し電話になってしまった。
彼はもう三年生だ、サボりで学校を休むのは流石にやばい。
だが、部長はオレの呼びかけに不満も言わず来てくれた。
感謝で頭が上がらない。
大人になったら酒の一杯でも奢らなくては。
……心の中でそんな変な事を誓った。
「そうよ。謎が解けたから、って主人公っぽい台詞を吐くから来てみれば…なによコレ」
綾瀬も不満げに口を尖らせながら、俺に手渡された物をブラブラさせる。
少々、愚痴っぽいが来てくれたのだ。
それだけで良い、ありがたい。
「何って……スコップだよス・コ・ッ・プ」
「そんなの見れば分かるわよ!私はコレで何をする気なのかって聞いてんのよ!」
……なら、そう言えよ。
オレは大型のスコップをビシリと構えた。
「そりゃあ、スコップだからよぉ…」
「…………………掘るの?」
「掘るの(ふんぞり返って)」
「真剣に?嘘とか冗談ではなく?(脱力しながら)」
「なんでオレが嘘つかなきゃいけねぇんだよ。マジだマジ」
「何故ですか?堂陰はもう関係無いんじゃあ…」
綾瀬がガックリと膝をついている間に、今度は葛木姉弟、姉の方である瑠奈が頭の上に疑問符を浮かべながら俺に質問する。
後ろでは弟の太陽――サンも怪訝顔でスコップを持っている。
「それが関係あったんだよ実際。オレもつい昨日分かった事なんだが…」
そう言いながらオレは持ってきたでかい鞄(スコップなどを入れてきたのだ)から昨日、
経蔵で見つけた「巷浮流風」を取り出し、とあるページを開いて見せた。
「これ。これ見てくれ。奴がぼやいていた〈命〉って意味が解るから」
皆がページに目を落とす。
そして目が、ミミズがのたくったような草書体を辿ってゆく。
――皆の目が同時に、精一杯見開かれた。
「出来事の奥の奥に、真実は隠れている、か。…確かによく言ったものだ」
「私たちは…全然これっぽっちも解ってなかったのね」
「だから、だから。獅子正さんは…あんな姿にまでなって…」
「彼は、ずっと探していたんだ……」
ようやく、解ったみたいだな。
「〈堂陰塚〉は〈鹿賀 堂陰〉が埋葬された場所でもある。死後もこの頂からこの土地の発展を見届けるためらしい。ちなみに土葬だった。弔いのため、様々な宝物供物が共に埋められた。獅子正の探し物も、恐らくその中に紛れているはずだ」
「だから、掘る訳か」
部長がスコップを手に、何かを決心したように呟いた。
「でも、どうやって掘るの?」
…まぁ、綾瀬の疑問も当然だ。
堂陰塚の回りは石畳である。
しかし、だ。おれもちゃんと用意はしてるぜ。
「まず、これで」
『…………ん?』
「つるはし」
『…………………………』
「これで塚の裏手、一番古くてぼろいトコをガツッ!とやって石畳を剥ぐのさ」
「……間君って、実は考えているようで考えていないわよね」
綾瀬が頭に手をやり、溜息をつく。
それを、部長が苦笑しながら制する。
「はは…いや、まぁ綾瀬君。現段階では他にどうしようもない。人目が無いうちに済まさなければ」
「あぁ、部長。人目の件なら問題無いっすよ。「工事中」の看板立てておきましたから。ほら、あの工事のひとが頭下げてるポーズの奴」
ふっ、俺って抜け目無いだろ?
どーぞ誰か褒めてくれ。
ほらほら苦しゅうないぞ?
なんだよ、そこウザいとか思うなよ。
『…………………………………………………………』
あれ、何故に黙る。
いたたた、皆の視線が痛い。
なんでだ?いやなんとなく誰のせいかは分かるけど。
「……あ〜、まぁ、そのなんだ、善は急げ、だろ?ほら、やろうぜ?」
微妙な空気の下、作業は始まった。
お天道様が、そんなオレたちを静かに見下ろしていた―――――
裏話。
黙雷君は、おバカさんかもしれませんね。
まぁ、同義で著者もバカ…?、みたいなことは言わないで下さい(苦笑)
……でもなんで、黙雷はつるはしとか持っているんだろう?
…盗んだ?(笑)




