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ROLL.15:輪廻。

とうとう最終話です。

あと一息!

その通路は、山の中腹に位置する広場へと通じていた。

雲一つない満天の星空がオレたちを迎える。


「おぉ、なんと見事な夜空か」


獅子正が感嘆した声を上げる。

そうか、髑髏ン時は見る余裕無かったんだな。

「この様な夜に逝けるとは、某は何とも幸せ者よ」

こちらを振り返り、ニコリと笑う。

今の獅子正は無垢だ。

それ故に斬るのが、辛い。

「遠慮は要らぬよ。斬ってくれ」

湖面のような静かな心が見える気がする。

穏やかな、武士とは思えない表情を浮かべる。

――全て開放されたように。

――しがらみを振り解いた様に。

「……いや、その前に一つ、某の願いを聞いてはくれぬか?」

ふと何か思いついたように獅子正が言った。

オレは、後ろにいる現研の皆を振り返る。

皆は静かに頷いた。

「オレたちに出来る事なら何でもやるよ」

「助かる――」

獅子正は俺に近付いて来た。

そして。


「某の刀を、受け取ってはもらえぬだろうか?」


―――何ッ!?

い、今、何て―――

「何を言っているんだ!あなたはその命を求めて数百年彷徨ったのだろう!?」

「そうよ!せっかく取り戻したのに…また手放すの?」

部長と綾瀬の当然の反論。

「確かにこやつは某の命、共に歩んできた唯一無二の相棒だ。だが、それ故でもある」

獅子正は心を込めて言葉を紡いだ。

「先程、いやその前からも黙雷殿の御力は拝見させて頂いた。その力は、万象の中でも非常に希少な力だ。そしてその力はこれからも必ず必要になるはず。先程の一戦で黙雷殿の刀が使いものにならなくなった事位解っておる」

……お見通しかよ。

確かに、オレが今まで共に現象を斬ってきた相棒は、悲しい事に刀身が触るとポッキリ折れそうなぐらいボロボロになり、ガタが来ていた。


「世の為、そして黙雷殿たちの為に某の命が役に立つと言うのならこれ以上の事は無い」


『………』


「だから、どうか貰ってはくれまいか…?」


獅子正は真摯な目で見つめてきた


「……解ったよ。それでアンタの気が晴れるなら。そしてアンタが良いってんなら有り難く、その命、使わせてもらうとするよ」


オレがそう絞り出すと、獅子正はこの日一番の微笑みを見せた。


「ありがとう」


その一言で、こっちも報われると言うものだ。

オレは獅子正から刀を、命を受け取る。

ズシリ、と重たい感触。

「〈麗閃刀・日輪〉と言う。よろしく頼む」

紅の柄巻き。

真円の鍔には神々しい太陽が刻まれている。

「一生、大事にする」

「ありがとう。……では、黙雷殿」

笑いながら両腕を広げる獅子正。

今までの放浪の罪を甘んじて受け入れるかのように。

――その姿は十字架に磔にされた有名なキリストにも似て。

――それならオレはロンギヌス役で。


「頼む」


――しゃりん。


澄んだ音を立てながら日輪を緋鞘から引き抜く。

幾星霜たっても曇り一つない刀身に朱が走った。

「間流、古典斬鬼術――――」

日輪を正眼に構える。

声は震え、目は涙で霞む。

後ろでは現研の誰かのすすり泣きの声もする。

〜っ、今回は入れ込みすぎた。

こんなに辛いとは。

常磐堅磐(ときわかきわ)に彼岸安寧を。安らかに昇れ―――鞍富 獅子正」

日輪を優しく、獅子正の胸に突き立てる。

「少々痛いかと思ってはいたが…心地良いものだな。心が洗われる様だ」

柔らかな光に包まれながら、獅子正は満足そうにそう呟いた。

そして、


「本当に、有り難う」


そう言って、獅子正は光の粒子になり、天へと確かに昇っていった―――




その後も、オレたち現象研究会はよろしくやっている。

校長率いる学校側とのいざこざも有ったが、部長が一方的に言い負かしていた。


俺たちは続く。

人間と言う器で世界を廻り続ける。

その器から、レールから外れたモノがいるなら、どうか放っておかないように。

そして、

オレたちを呼んでくれ。

廻る現象研究会は、

すぐさま駆けつけよう―――――――



ではまた

近いうちに。


「玖刻奇譚」からの人も、今回からの人も。

とにかく皆様、ここまでお付き合いくださりありがとうございます。

ひとまず、終わりです。

しかし、この〈魔都〉の物語はまだ終わりません。

「玖刻奇譚」の第二部も鋭意執筆中ですし、本物語の過去話的続編もあります。

今後も、どうぞよろしくお願いします<(_ _)>

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