ROLL.10:開口。
祝・第十話!(笑)
これからもよろしくお願いします<(_ _)>
オレたちはつるはしを振るい、スコップを動かし続けた。
延々と、延々と――――
ふと気が付くと、辺りはもう暗くなり始めていた。
夕方、宵闇、黄昏、とこの時間帯を表す呼び名は色々とあるが、今ここはこれがしっくりと来るだろう。
――逢魔ヶ刻。
重く淀んだ空気。
何か異形のものが潜んでいそうな気配。
山の近く、というか頂上にも関わらず鳥の、獣の鳴き声一つも聞こえない怪しさ満点の雰囲気。
やはり、ここで正解だったようだ。
オレはそう己の手足を説得しながら、スコップを地に突き立てる。
「暗くなってきたな…諸君、どうする?」
部長が額の汗を拭いながら皆に問うた。
「僕は、まだやれますよ」
「あ、私も」
と健気な葛木姉弟。
後ろでは疲れた表情の、しかし目は輝かせている綾瀬がうんうんと頷いている。
「ふむ、しかし…それならば明かりが必要になってくるが。持ってきているか間君」
「いや、すんません。こんなに時間かかるとは思ってなかったもんで…」
しばしの沈黙。
「ならば、今日の所は――」
あきらめるしかないな、と部長が言おうとしたその時。
「!?」
――ぼおおぅっ
柔らかな、だが力強い明かりがオレらの上に灯った。
「し、獅子正ッ!?」
オレは我が目を疑った。
なぜなら光源の正体が〈雄獅子姿の髑髏〉だったからだ。
オレは自分で掘った穴の中。
得物は穴の上。
これは、やばい。
完全な不意打ちだ。
だが、
奴は、獅子正はオレたちに危害(つか攻撃)は加えず、唯そこに灯りとして存在していた。
こいつ、オレたちの手助けを…?
「…何でだ?」
ソナタラガココマデシテクレテオルノダ――
ソレガシガナニモシナイデドウスル――――
オレの呟きに答えが返ってきた。
あ〜要するにいてもたってもいられなくなったって訳で、敵対する意思は無いって事か。
……そうだよな。
数百年探していた物が見つかりそうなんだから当然だ。
「ふっ、そうか。では諸君、やるぞ…!」
オレたちは獅子正の灯りを頼りに、再び掘り始めた――
スコップの先が何かを叩いたのはそれから小一時間後の事だった。
土を払う。
現れたのは人工的に形どられた正四角の平たい石だった。
「扉か何かですかね?」
サンが上から覗き込みながら言った。
確かに。
入り口を塞ぐ扉に見えないことも無い。
「じゃあ、動かせるかしら?」
スコップを杖がわりにして荒い息をしながら綾瀬が問う。
「試してみるか。部長?」
「よし…」
渾身の力をこめて扉石を押す。
その時に、いちにのさん!とかアインツヴァイドライ!とかチャーシューメン!やら言って力む筈なんだが、オレたちは何故かハウ、アー、ユゥ!と言っていた。
自分でもよく分からないが、力がこもった。
英語万歳。
ズズ。
少し動いた。
確かにこの石はサンの言った通り扉の役割りを果たしているようだ。
ちょこっと空いた隙間から下に続く階段が見えている。
「みんな、手伝ってくれ!」
「う、うん!」
「はい!」
「分かりました!」
はい、せぇの。
ハウ、アァ、ユゥ!
ズ、ズズズ、ズズ、ズ―――ズン…!
五人がかりでようやく石扉を横にスライドさせる事に成功した。
『………』
現れた空虚な闇がオレたちを圧倒する。
そこで、今までダンマリを決め込んでいた獅子正がまるで何かに引き寄せられるように闇の中へと入っていく。
獅子正の焔は地下へと続く闇を払い、オレたちが抱いた恐怖と言う感情までも払拭した。
ソレガシガ――ソナタラノヒカリトナロウ―――
ユコウ――トモニ――――
獅子正がこちらを振り向き、言う。
声は依然として嗄れたままだったが、どこか威厳みたいな、まぁそんな感じの雰囲気を帯びていた。
オレたちは顔を見合わせる。
部長がコクリと頷いた。
オレたちは、獅子正の灯りを頼りに、階段を一歩、また一歩と降りていった――
さて、ついに闇の中へと足を踏み入れた一向。
彼らの先に待つものは?
獅子正の命とは一体?
次回、こうご期待!
……何でここで宣伝?(笑)




