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4 Hangar Party

「NT兵器のマッコード空軍基地への展開は、フェリーで行う」

 いつもの講堂で、アークライト中将。

「フェリーのメンバーは、洋上飛行および長距離フェリーの経験が豊富な者を指名する。ゾリアにローガン中尉。ヴァジェットにコルシュノワ中佐。ネメシスにシェルトン少佐。ベローナに、サワモト大尉。以上のメンバーにしたい。異論はあるかね?」

 アークライト中将が、外れた二人‥‥スーリィとミギョンを見やる。

「ありません、サー」

 スーリィが、あっさりと答える。ミギョンも、少し遅れて同意した。

「結構だ。このフライトに関しては、シェルトン少佐をフライト・リーダーに指名したい。少佐、君は合衆国海軍パイロットとして長距離フェリーや洋上飛行に関しもっとも経験を積んでいるはずだ」

「はい、光栄であります、サー」

 勢い込んで、ダリル。


 NAWCへの派遣準備が、続く。

 瑞樹らの訓練は、シミュレーターを使ったものが多くなった。派遣に備え、機体整備に掛ける時間が増えているのだ。メンテナンス・グループの隊員は忙しいらしく、いつ見ても走り回っている。

 六人は訓練の合間に講堂に集まり、対カピィ戦における戦術を検討した。

 実のところ、カピィ側の戦術はかなり単純であった。戦術単位は、常に三。ファイアドッグは三機編隊が基本で、攻撃機であるフラットフィッシュも同様だ。超大型機であるフルバックは単機で運用されることもあるが、その場合たいていファイアドッグ編隊が一個以上護衛につく。地上兵器も同様で、シーフもティンダーも三両が一部隊だ。超大型戦車であるタイクーンも、三両編成で使用されることが多く、単独使用の場合はシーフ三両が護衛につく。

「最大のライバルはこいつよね」

 サンディが、教材のファイアドッグの模型‥‥もちろん尾部に棒付き‥‥を持ち上げた。日本人的な感覚で言うと、スーパーで売っている350グラム入りの豆腐のパックみたいな直方体のボディをしており、下面の前部と後部の左右に、全長の四分の一ほどの長さの円柱を取り付けてある。前方の円柱はレーザー発生器を収めたポッドであり、後方のそれは対空、対地両方に使えるロケットランチャーだ。‥‥無理に例えると豆腐とミニ竹輪四本、といったところか。

 ファイアドッグの場合、ACMの際は機動性を活かし、近接してのレーザー攻撃を好む。汎用ロケットランチャーでの攻撃も行われるが、命中精度が悪く空対空では多用されない。レーザー自体は出力も大きく、また大気中でのエネルギー減衰が少ないので威力はかなりのものであり、一秒未満の照射で人類側戦闘機を撃墜できるほどだが、その射撃精度は幸いなことに低い。

 一応、三機編隊での戦闘では相互支援を行いつつ戦うようだが、人類側が数を頼りに乱戦に持ち込むと、編隊を解いてばらばらに応戦してくることが多い。そうなれば人類側戦闘機にも勝機が生まれるが、ファイアドッグの装甲はあきれるほど厚い。AAMの弾頭強化が図られているが、その効果は充分とは言えない。

「機動性で同等に立っても、たった四機じゃねえ」

 腕を組んで、スーリィ。

「狙い目はこっちでしょう」

 瑞樹は、フラットフィッシュの模型を取り上げた。その名の通り、平べったいボディをしている。アーモンドをさらに平たくしたような形状で、尖っているほうが尾部となる。両脇に可動式の円柱ポッドがあり、この中に主兵装である対地攻撃用カノン砲が一門ずつ収められている。空対空レーザーの平べったいターレットが、機体上面と下面に一基ずつ取り付けられているが、その出力はファイアドッグのものよりも弱い。運動性能もファイアドッグより多少落ちるから、与しやすい相手なのだが、たいていの場合ファイアドッグの護衛がついているので、襲うのは難しい。

「いや、むしろ狙うならこちらだろう」

 ミギョンが、フルバックの模型をなでる。

 全長120メートル、全幅180メートルを超える化け物。それがフルバックだ。バゲットを思わせる胴体二本がならぶ双胴形式で、両者は中央にある高翼で繋がり、メインフレームは平面図で見るとH字状をしている。胴体外側には高翼形式の分厚いデルタ翼を持っているので、見た目はファイアドッグほど異星のマシン、といった感じはしない。武装はあきれるほど強力で、胴体上部に無誘導ロケットランチャー、胴体下面に八門の対地カノン、機体各所に対空レーザーのターレットを有している。CDで実証したように、大気圏外での運用も可能らしい。今まで人類に撃墜された数は、わずかに四機。まさに空飛ぶ要塞である。

「こいつを落とすのに、フォコンが何十発いるのやら」

 サンディがファイアドッグの模型の棒の部分を持ち、フルバックに近づいた。攻撃をかけるかのように、緩降下でファイアドッグをフルバックに近づける。同一スケールでないから効果的な攻撃に見えるが、実際の両機の大きさの違いは牛と子猫くらい違う。

「こいつに弱点があればねえ」

 ダリルが、指でフルバックの模型をつんつんとつついた。

「ほら、よくあるじゃない。どこかの穴にミサイル一発撃ち込むと、内部から爆発してどっかーん、て」

「B級SF映画かアニメの見過ぎだって‥‥」

 サンディが、ため息をつく。

「弱点がないわけじゃないでしょうね」

 ずっと黙っていたアリサが、口を開く。

「それを見つけられた者が、誰もいないだけ。通常では、攻撃はおろか近寄ることさえ困難。でも、わたしたちなら接近して攻撃をかけることも不可能じゃないわ」

「そうか。わたしたちで弱点を見つければいいのか‥‥」

 瑞樹は唸った。

「言うのは簡単だが、そうそう簡単にいくとは思えないな」

 ぼそりと、ミギョン。

「まあ、弱点があるのなら戦ってるうちに気付くんじゃないの?」

 スーリィが、自信なさげに言う。



「洋上飛行訓練に、合衆国海軍の協力が得られることになった。明日、フィリピン海にいる合衆国海軍空母〈エイブラハム・リンカーン〉まで飛行し‥‥」

「エイブ!」

 ダリルが、アークライト中将の説明を遮る。

「何かね、少佐」

 ぎろりと、アークライトがダリルをねめつける。

「‥‥ああ、失礼しました、サー。古巣だったもので、つい」

 ダリルの言い訳を聞いて、アークライトの表情が和らいだ。

「そうだったな。まあ、楽しんで来たまえ」

「ありがとうございます、サー」


 四機のNT兵器が、西太平洋を南下する。

 搭乗メンバーは、マッコードへのフェリーを予定されている四人だ。すなわち、ゾリアにサンディ、ヴァジェットにアリサ、ネメシスにダリル、ベローナに瑞樹。フライト・リーダーは、もちろんダリルが務めている。

「う〜」

 瑞樹は唸った。上天気のうえ、眼下には鮮やかな青い海が広がっている。しかし、単調な飛行が続くとさすがに退屈である。おまけに、先ほどから尿意を催している。NT兵器は長時間のミッションを想定して造られているため、女性用のリリース・チューブも備え付けてあるが‥‥できれば使いたくないのが、乙女心というものである。

「1より3へ。まだなの、ダリル?」

 痺れを切らしたのか、サンディが無線で呼びかけている。

「もう少しよ」

「大丈夫でしょうね」

「任せなさい!」

 自信ありげに、ダリルが応じる。

 カピィによって衛星のほとんどが撃ち落されてしまったために、GPSの使用は不可能だ。今回は訓練のためにタカンその他の航法支援施設もできうる限り利用しないことになっている。したがって、航法はINS(慣性航法装置)とチャート、ストップウォッチ、それにダリルの勘と経験に全面的に依存している。まあ、燃料切れの心配がないから、安心なのだが。

「3より各機へ。会合点まで、あと五分」

 ダリルが告げる。瑞樹は安堵した。どうやら、リリース・チューブを使わずに済みそうだ。

 時計が時を刻む。瑞樹は身を乗り出すようにして眼下の海原を覗いた。随伴艦数隻を伴った原子力空母ならば、すぐに視認できるはずだ。

 海原に‥‥船影はなかった。

 五分経過。いまだ、空母の影はない。

「ダ〜リ〜ル〜」

 サンディの、どすの効いた声。

「計算に‥‥間違いはないと思うんだけど‥‥」

 珍しく、ダリルが気弱な声を出す。

 瑞樹らが教えられたのは、エイブラハム・リンカーンが特定の時間に存在するはずの洋上の位置だけである。軍艦というものは、通常航行中の自艦の位置を暴露することはない。戦術的な優位が失われるからである。むろん、問い合わせれば誘導電波を出してもらえるだろうが、それでは訓練にならない。

「探すしかないわね。ダリルが推定位置にとどまり、残る三機でボックスサーチしましょう」

 アリサが提案する。空母の針路や速度がわからない以上、現在位置を推定するのは無理だ。近いところからくまなく探すしかない。

 サンディのゾリアを先頭に、アリサのヴァジェットと瑞樹のベローナはアローヘッド編隊を組んだ。サンディが前方、アリサが右、瑞樹が左の海面を探す。

 艦隊はすぐに見つかった。四機は編隊を組み直し、エイブラハム・リンカーンのタワーとコンタクトする。着艦許可を得た四機は、後方から空母のフライトデッキに接近した。ダリルの操るネメシスから順に、VLで着艦する。

 NTを停止させ、着陸後の処置を済ませた瑞樹は、キャノピーを開けた。どこにラダーを掛けようか困っているデッキクルーを手で制して、自前のラダーを下ろすスイッチを入れる。

 一足早く降り立ったダリルは、早くも歓迎委員会の中へと飛び込んでいた。大勢のパイロットやデッキクルーの列が、盛大にダリルを迎えている。

「さすがに古巣だけのことはあるわね。大人気じゃない」

 大騒ぎを眺めながら、サンディ。

「羨ましいわね」

 瑞樹も、サンディとアリサの隣に並んだ。

 海軍士官が近づいてくる。大佐だったので、瑞樹らは先に敬礼した。

「艦長のウェストだ。乗艦を歓迎する」

「ありがとうございます、サー」

 三人は、アリサから順に‥‥階級順である‥‥名乗った。

「では、案内しよう」

 ウェスト艦長が、くるりと背を向ける。瑞樹らは、そのあとに従った。艦長は、アイランドのハッチをくぐり、ラッタルを下りてゆく。

「さあ、自由に使ってくれ」

 案内された小部屋は、女性用のトイレだった。


「まあ、戦争中だから、仕方ないけどさ‥‥」

 珍しくアンニュイな雰囲気を漂わせながら、ダリルが言う。

「なにアリサみたいな眼してんのよ」

 サンディが、すかさず突っ込む。

 四人は士官食堂でコーヒーをご馳走になっていた。

「だって‥‥ろくに艦載機積んでないんだよ」

 ダリルが、言う。

 エア・ボスの案内で、ざっと艦内見学をさせてもらったが、ハンガーデッキ内はがらがらだった。固定翼機は、F−18Fが八機ばかり、それにT−45が十数機いる程度である。

 むろん、合衆国海軍航空隊が総力をあげて対カピィ戦に臨んでいるからである。数隻の空母は北大西洋で哨戒任務に従事しているが、大半の作戦機は、地上基地をベースに作戦行動を行っている。このエイブラハム・リンカーンは、今は練習空母として使われており、安全なインド洋や西太平洋を巡航している。随伴しているのは、シマロン級タンカーが一隻と、これまた練習艦任務についているアーレイ・バーク級駆逐艦が一隻、O.H.ペリー級フリゲートが一隻だけだ。世界最強を謳われた合衆国海軍の面影は‥‥まあ、原子力空母は他にフランス海軍が一隻保有しているだけだが‥‥消え失せている。

「ステーツがあれじゃあねぇ」

 自嘲気味に、サンディが言って、コーヒーをすすった。

 合衆国本土の五分の三がすでにカピィの占領下にある。そしてその領域は、日々わずかずつではあるが拡大中だ。これを阻止する方策は、現時点では皆無と言っていい。



「ああ、准将。いや、春彦。ちょっと、いいかな?」

 副司令執務室に、珍しくアークライト中将が顔を出す。

「どうぞ、司令」

 訝りながらも、矢野准将はアークライトを室内に招じ入れた。そう言えば、ファーストネームで呼びかけられるのも珍しい。

「少し、相談したいことがあってね‥‥」

 ソファに掛けながら、アークライトが言う。口ぶりからすると、深刻な話ではなさそうだ。

「わたしでお役に立てるのなら、なんなりと」

 向かい側に腰掛けながら、そう矢野は応じた。

「実は、フレイルの六人のことなんだが‥‥わたしの予想以上に、頑張ってくれていると思うのだ。そこで、北米派遣前に、個人的に労ってやろうかと思っている」

 組んだ両手をテーブルに置き、やや前かがみでアークライトが言う。

「‥‥一応、食事会でもと考えているんだが‥‥何がいいかね? この近くで食べさせるとなると、やはり日本食だろうか。寿司とかが、いいのかな?」

「寿司は、この前六人で食べに行ったそうです」

「‥‥やけに事情通だな」

「総務の日本人の女の子に聞いただけですよ」

 苦笑しつつ、矢野は応じた。

「でも、食事会はいいアイデアですね。彼女たちも、喜ぶでしょう」

「寿司がだめなら‥‥何がいいかな。わたしは、その、日本食にあまり詳しくないのだ」

 やや照れ気味に、アークライトが言う。

「わたしも宮崎は詳しくないのですが、日本食にこだわらなくても、おいしい店は探せばあるでしょう」

「ふむ。宮崎で食べ物といったら、なにが有名なのかね?」

 アークライトにそう問われ、一瞬矢野の脳裏に茄子とピーマンが飛び交った。

「‥‥そうそう。宮崎といえば、ビーフでしょう」

「ビーフか。ありきたりだな」

 アークライトが、わずかに口の端をゆがめる。

「ステーキだけがビーフじゃありませんよ。しゃぶしゃぶなんか、どうでしょう」

「シャブシャブ?」

 矢野は、日本風のしゃぶしゃぶをアークライトに身振り手振りを交えて説明した。

「ふむ。それは旨そうだな」

「予算はどのくらいを想定しています?」

 矢野の問いに、アークライトが渋い表情をする。

「‥‥そうだな。総額千ドル程度で抑えたい」

「まあ、コースで頼めば何とかなるでしょう。いい店を、探しておきますよ」

「頼む。‥‥君も、来ないか? さすがに君にまで奢る気はないが」

 笑顔で、アークライト。

「行ってもいいですが‥‥それよりも、やってみたいことがあります」

 矢野は、居住まいを正した。

「なんだね?」

「ハンガー・パーティの許可をいただきたいのです」

「ほう」

 矢野の言葉に、アークライトが珍しく驚いた表情を見せる。

「NAWCへ派遣されるのはあの娘たちだけではありません。それに、居残り組もよくやってくれました。彼ら‥‥彼女らも、労ってやりたいのです」

「いい提案だが‥‥予算はどうする?」

「士官連中から巻き上げるしかないですな。まあ、飲み物さえ揃えられれば、あとはウーがなんとかしてくれるでしょう」

 矢野は、厨房責任者の名を出した。

「よろしい。許可しよう」


 四機のNT兵器は、ダリルのネメシスを皮切りに次々とフライトデッキを飛び立った。

 居並ぶ空母乗員や飛行訓練生たちが、手や帽子を振って見送ってくれる。

 見る見るうちに、巨大な空母が背後に小さくなってゆく。

「フレイル3より各機へ、針路3−4−5。我に続け」

「帰りの航法は大丈夫でしょうね」

 サンディが、訊く。

「はは。キューシューは空母より大きいからな。安心しろ」

 上機嫌で、ダリル。

 やや傾いてきた日差しを浴びながら、四機が編隊を組んで北上する。


「というわけで、君に幹事を頼みたい」

「よろしいです。お引き受けします」

 矢野准将の依頼を、有賀中尉はあっさりと引き受けた。

「予算の方は、わたしが責任を持って集める。料理の方は、ウーが快諾してくれたから、何とかなるだろう。君はその他の事を準備してくれ。総務の連中を助手に使っても構わん」

「任せてください。宴会のお膳立ては、得意中の得意ですから」

 有賀はそう言って、自信ありげに微笑んだ。



「うはは。全部ばれてる‥‥」

 読み進めながら、瑞樹は苦笑した。

「なんか楽しそうね。なに、読んでるの?」

 アリサが近づいてくる。

 瑞樹は読んでいた月刊誌の表紙をアリサに向けた。VTOするヴァジェットを捉えた鮮明な写真だ。

「航空雑誌?」

「うん。さっき新田原の売店で買ってきたんだけど‥‥分析記事が鋭すぎて」

「面白そうね。なんて書いてあるの?」

 サンディも寄ってきた。

「えーとね。一番鋭いのはここ。UN基地‥‥つまりメイス・ベースのことね‥‥の離陸時間、松島基地上空通過時間、UN基地帰投時間を勘案すると、洋上で数十分間アフターバーナー使用は確実。しかし全自衛隊基地、周辺合衆国空軍基地、民間空港に当該新兵器が離着陸した形跡はない。同時刻、航空自衛隊および合衆国空軍のタンカーに在空機なし。当該新兵器にドロップタンク装備を認めず。‥‥結論。当該新兵器のパワープラントはファンジェットにあらず」

「まあ、その前に音でばれてるんじゃないの?」

 サンディが、言う。たしかに、NT兵器の騒音は、通常のファンジェット装備軍用機に比べると、かなり静かである。

「でも、この記事はいわば動かぬ証拠を掴んだわけだからね」

 瑞樹は記事の始めに戻った。‥‥航空雑誌には、よく寄稿している軍事評論家の記事だった。さすがである。



「では、これからランドナビゲーションの実習を開始します」

 ホーキンス大尉が、宣言した。

 フレイル・スコードロンの六人は、大分県の日出生台ひじゅうだい演習場に来ていた。乗機が撃墜された場合のサバイバル訓練の一環としての、ランドナビゲーション訓練である。

「現在我々がいるのが、お配りした地図のポイントAです。ピックアップポイントは、D。途中のBとCを経由し、速やかにDまで移動してください。Bにパオ中尉、Cに北村少尉が待機しているので、チェックを受けてください。何か事故が発生した場合は、速やかに連絡をお願いします。出発の間隔は十分とします。以上です」

 相手に上官も含むので、ホーキンス大尉の口調は丁寧だった。

「では、最初はシェルトン少佐から‥‥」

「待った」

 ダリルが、片手を軽く挙げてホーキンスを制した。

「みんな。賭けよう」

「‥‥言うと思った」

 すかさず、サンディ。

「いや、なにか報酬があったほうが、訓練に身が入るだろう。そうは思わないか、大尉?」

 ダリルが、ホーキンスに同意を求める。

「ある意味正論ではありますが‥‥」

 大尉が、首を傾げつつ言う。

「まあ、あたしは十ユーロくらいならお遊びで賭けてもいいけど‥‥」

 スーリィが言って、ちらりとミギョンを見る。

「ひとり二十ユーロなら、乗ってもいい」

 ミギョンが、言った。

「よく言った!」

 ダリルが、ミギョンに握手を求める。

「アリサ。瑞樹。お前らも乗るな?」

「いいわよ」

「仕方ないわね」

 瑞樹は苦笑した。

「判ったわ。乗るわよ」

 肩をすくめて、サンディ。

「よし。掛け金はひとり二十ユーロ。もっともタイムが短かった者が総取りだ。訓練中に重大なアクシデントが生じた場合は、賭けは不成立となる。異議は? ‥‥なければ、開始だ」

 ダリルが、ホーキンスに向き直った。

「では大尉。頼む」

「シェルトン少佐。どうぞ」

 ダリルが勢いよく歩き出す。ホーキンスが、クリップボードに出発時刻を書き留めた。


 瑞樹は三番目だった。

「どうぞ、大尉」

 ホーキンスの合図で、歩き出す。

 出発前に、瑞樹は渡された地図をじっくり検討して、最適と思われるルートを選んでおいた。コンパスも渡されたし、開けた土地のうえに周囲にいくつも目立つ山があるから、迷う心配はない。

 ‥‥一着でゴールなら二十掛ける五人で百ユーロ。

 結構な額である。

 もちろん、単なる体力勝負となればダリルやサンディ、スーリィには敵わないだろう。しかし、地図で見る限りポイントAからB、Cを経由してポイントDに至る距離は直線で十二キロほどしかない。歩きにくい地形であることを考慮しても、勝負はむしろコースの選択にかかってくるだろう。

 それに、ここは日本だということも、瑞樹にとっては有利だ。もちろん日出生台は初めてだが、本州の自衛隊演習場でランドナビゲーションの訓練を行ったことはあるし、山歩きは何度も経験している。外国の山の中にいきなり放り込まれた他の五人より、条件は恵まれているはずである。

 ‥‥ふふふ。

 怪しい笑みを浮かべながら、瑞樹は先を急いだ。


「百ユーロか。貰ったようなもんだな」

 水筒の水を呷って一息つきながら、ダリルはほくそ笑んだ。

 合衆国海軍航空隊は、本国から遠く離れた敵地上空で戦うことを前提として編成されている。したがって、E&E(脱出および回避)訓練は他国の空軍よりも重視している。その上、ダリルの訓練成績は、常にかなり上位だった。

「負けるわけない」

 ダリルは地図と地形を照合した。コンパスで方角を確かめ、歩み出す。


 サンディは黙々と歩を進めた。時折地図とコンパスを取り出し、針路を修正する。

 彼女の出身地は、ニューロンドン。コネチカット州にある潜水艦基地で有名な都市ではなく、ウィスコンシン州にある田舎街だ。それゆえ、周囲の自然は豊かだった。当然、山歩きの経験は豊富となる。

「もとレンジャーの田舎者を舐めないでもらいたいわね」

 サンディはつぶやいた。レンジャーといっても合衆国陸軍のそれではなく、ガールスカウトだったが。


 揺れていたコンパスの針が、安定する。

 方位を読み取ったミギョンは、周囲のランドマークを地図と見比べ、わずかに笑みを浮かべた。ほぼ、完璧なナビゲーションだ。

 彼女の父親は技術屋だったが、趣味はアウトドア派で、川釣りと山歩きが主だった。ミギョンもまだ幼い頃から父親の趣味につき合わされたものだ。おかげで韓国内の観光登山ができる山は、チェジュのハルラ山以外はほとんど踏破している。

 勝つ自信があったからこそ、ダリルに対し二十ユーロへの増額を要求したのだ。ミギョンは地図とコンパスをしまった。あと少しで、ポイントBだ。


 スーリィが生まれ育ったところは、カンスー省の西部である。

 食堂を営む父親の店は市街地にあったが、自宅はかなり郊外だった。小学生の頃は、片道4キロの農道をてくてくと歩いて学校まで通ったものだ。初級中学校はさらに遠く、自然と脚力は鍛えられた。

 山歩きの経験は乏しかったが、体力と脚力はフレイル一だと自負している。

「百ユーロか。貰えるといいな‥‥」


「百ユーロは大きいわね‥‥」

 アリサはつぶやいた。

 彼女の特技は色々とあるが、その中でも自慢のひとつが抜群の方向感覚だった。子供の頃から、道に迷ったという経験は皆無だ。今回も、コンパスは出発直後に一回使っただけで、あっさりとポイントBに到達した。地形的特徴が何もないステップやツンドラではこうはいかないだろうが、日本は地形も複雑だし植生もバラエティに富んでいる。

 アリサはコンパスを取り出すと、方角を確かめた。地図と地形を照合し、満足するとコンパスをしまった。

 ポイントCに到着するまで、コンパスの出番はないだろう。


 ポイントCが、見つからない。

「この辺のはずだけど‥‥」

 瑞樹は地図に眼を落とした。

 アカマツの疎林の中である。枯葉が降り積もって柔らかい地面の上を、瑞樹はうろうろと歩き回った。

「ここです、大尉」

 日本語のささやき。

 瑞樹はびくっとして上を見上げた。樹の上に、ギリースーツ姿の兵士が隠れていた。顔を黒く塗っているので、誰だか見分けがつかない。

「‥‥やだ。脅かさないでよ。で、誰?」

「北村です。ホーキンス大尉から、正確な地点から二十メートル以内に入らない限り通過を認めないと言われてるものですから」

「‥‥厳しいのね」

「大尉の通過は記録しました。どうぞ、先に進んでください」

「了解。お仕事ご苦労様」

 瑞樹は一言労ってから、ゴールのポイントDへ向け歩みだした。


 ポイントDは、低く細長い丘の上に設置されていた。南側にアカメガシワが繁茂しているので、遠くから見ると歯ブラシのようだ。

 ダリルはススキを掻き分けながら、ゴールを目指した。双眼鏡を覗くホーキンス大尉の姿が、見える。フレイルの他のメンバーの影はない。

「終わった‥‥」

 ダリルはホーキンスの足元に倒れこんだ。

「タイムは?」

「五時間二十二分。まあまあですな」

「疲れた‥‥」

 ダリルは喘いだ。道が使えるところはなるべく利用したが、結構高低差があったので、思ったより体力を消耗してしまった。

「車の中に冷たいものがありますよ」

 ホーキンスが、丘の下に止めてある中型トラックを指し示した。

 ダリルはむくりと起き上がると、トラックに向かった。クーラーボックスから冷えたミネラルウォーターのボトルを取り出すと、飲みながら丘を登る。

 ダリルは立っているホーキンス大尉の隣に座ると、水を飲みながら残りのメンバーが到着するのを待った。


「ごめんね、みんな」

 満面の笑みで、スーリィ。

「結局、体力勝負になっちゃったね」

 瑞樹は頬を掻いた。

「くやしい‥‥」

 ダリルが、落ち込む。

「もういいよ。疲れたから、帰ろ」

 うんざりしたようにサンディが言って、幌付きトラックの荷台に乗り込む。

「同感だ」

 ミギョンが、そのあとに続いた。

「やっぱり、若い娘にはかなわないわね」

 年寄りくさいことを言いつつ、アリサも荷台に上がる。

「うん。腹も空いたしな」

 ダリルが、落ち込んだまま荷台に登る。瑞樹も、疲れた身体を持ち上げた。最後に、上機嫌なスーリィが乗り込む。

 ホーキンス大尉が、トラックをスタートさせた。

「お腹空くはずよね。お昼抜きで歩き回ったんだから」

 瑞樹は苦笑した。

「一応、こんなものがあるけどね」

 アリサが、隅のダンボール箱から暗緑色のパックを取って、瑞樹に放った。

 UNUFの標準コンバット・レーションだ。

「あんまりおいしくないのよね、これ」

 瑞樹は頬を掻いた。〈ジャイナ教徒以外なら誰が食べてもOK〉が謳い文句なので、乳製品に基づく原料はもちろん、蜂蜜すら使われていない。イスラム教徒、ヒンドゥー教徒、ユダヤ教徒、さらにはヴィーガン(完全菜食主義者)が食べても問題ないレーションだ。

「とりあえずくれ」

 ダリルが、手を差し出す。アリサが、ひとつ放った。

 結局空腹には勝てず、全員が暗緑色のパックを手にする。瑞樹はパックを引き開けて、中身を出した。レトルトパックのメインディッシュとフルーツ。ビニールパックのクラッカー。スナック類が入った袋。フルーツ・バー。アクセサリー・パックなどが出てくる。

「うわ。ブラック・ビーンのシチューだ。誰か、交換して!」

 ダリルが、わめく。

 瑞樹はメインディッシュを調べた。トマトソースのパスタだ。良かった。これは比較的ましな味の方である。アクセサリー・パックからスプーンを出し、食べ始める。

「ねえ、サンディ。交換してよ。あ、アリサはホワイトソースだ。いいな。交換して」

 往生際の悪いダリルが、駄々をこね続ける。

「ほら。これでも食べてなよ」

 スーリィが、フルーツ・バーとシリアル・バーをダリルに放った。受け取ったダリルが、ブラック・ビーンのシチューを放り出して、シリアル・バーの包装を剥く。

 瑞樹は無言で食べ続けた。時折、クラッカーをかじる。お腹が空いていたせいか、結構おいしく感じる。

「足りなーい!」

 自分のフルーツ・バーとスナック類も完食したダリルが、わめく。すぐに、四方からフルーツ・バーとクッキー、それにドライケーキを投げつけられる。瑞樹も、ドライフルーツ入りのスナックブレッドを巨乳の谷間目掛けて投げてやった。






「諸君。明日の晩は暇かね?」

 アークライト中将が、訊く。

「明日は、ハンガー・パーティの日だと思いますが‥‥」

 サンディが、当惑した表情で言う。

「そうなのだが‥‥それとは別に、わたしが個人的にフレイル・スコードロンのメンバーに慰労を兼ねた食事会を開きたいと思う。出席してくれるかね?」

「司令の奢りですか! 喜んで」

 ダリルがあっさりと食いつく。

「そういうことでしたら、お受けいたしますわ」

 アリサが、言う。

 瑞樹らにも、異存はなかった。

「そうか。場所は、ここだ」

 アークライトが、一枚の紙を差し出した。日本語のホームページをプリントアウトしたものらしく、下のほうに案内図が描いてある。

「なんて書いてあるんだ?」

 ダリルが、瑞樹に訊く。

「しゃぶしゃぶのお店。牛肉料理よ」

 瑞樹は答えた。宮崎市内の店のようだ。

「堅苦しい食事会にするつもりはない。楽な格好で来てくれ。いいな」

 アークライトが、念押しする。


「また私服か‥‥」

 自室で、瑞樹は首をひねった。

 楽な服装で、と指定されたが、上官にご馳走になる以上あまりラフではまずいだろう。とは言え、瑞樹の現在のワードローブはきわめて貧しい状態にある。

 結局、彼女のファッションは以前六人で寿司を食べに行った時と大して代わり映えしないものとなった。シャツがおとなしめのものに変わり、キュロットが大人っぽい黒のタイトスカートに変わっただけだ。これにグレイのジャケットを羽織り、ブルーグレイのドレスコートを着る。

「あらら」

 リビングに顔を出した瑞樹は眼を見張った。

 今日のサンディは、カーキのパンツスーツ姿だった。普通にOLがオフィスに着て行くような大人しいデザインのものだったが、サンディが着るとなぜか映える。その上にダークグリーンのロングコートを羽織った姿は、どう見てもモデルさんにしか見えない。

 ダリルも今日はロングのパンツ姿だった。セーターはミントグリーン。その上に、いつものオフホワイトのハーフコートを着ている。

 その隣のスーリィは‥‥。

「‥‥お葬式?」

 瑞樹はおもわずそう訊いた。

「まともな服って、これしかないのよね‥‥」

 スーリィのスタイルは、このまま冠婚葬祭に出席できそうなフォーマルな黒のスーツだった。羽織っているのは、モスグリーンのロングコートだ。

 アリサのファッションは、寿司を食べに行った時とあまり変わらなかった。ワンピースだけが別物で、やや光沢のあるベージュに変わっている。大きな黒いウェストリボンがついているのが、可愛らしくもあり、妖しくもある。

 ミギョンは相変わらず少女趣味だった。ネイヴィブルーのタイトスカート。トップスにはシャツとレンガブリックのベストを着込み、ネクタイを締めている。なんだか、女子大生っぽい雰囲気だ。その上に着込んでいるのは、いつものトレンチコート。もちろん、キャップはかぶっていない。

「じゃ、行きましょうか」

 サンディが、言った。


「なんだ、みんな。楽な格好で来てくれと言ったのに‥‥」

 座敷の上座に座っていたアークライトが、立ち上がりながら言う。

 かく言うアークライトも、ダークブルーのスーツ姿だった。軍服姿を見慣れているせいか、どうも似合っていないように感じる。

「まあ、座ってくれ」

 アークライトが、席を勧める。

 設えられた席は七つ。上座は、すでにアークライトが占めている。しゃぶしゃぶ鍋は、ふたつ用意されていた。‥‥必然的に、上座に近いところに座った二人はアークライトと鍋を共有することになる。

 ‥‥これは気まずい。

 瑞樹はさりげなく近くにいたサンディとアリサを奥へと押しやった。‥‥アークライトも美人と一緒の方が気分がいいだろう。スーリィとミギョン、ダリルには、テーブルの反対側へと廻るように促す。

 瑞樹は首尾よく一番下手の席を確保した。良く事情が飲み込めないまま、サンディがアークライトのそばに座る。その隣はアリサだ。

 テーブルの反対側、アークライトのそばに座ったのは、ダリルだった。さすがに日本食に詳しいミギョンと、食堂の娘であるスーリィは、瑞樹同様状況をすばやく察知したに違いない。

「おお、これは上物の肉だ」

 気づかないダリルは、並んでいる薄切り牛肉に眼を奪われている。

「この中に、アルコールが苦手な者はいるかな? 飲める者は、ワインを付き合ってもらうぞ」

 アークライトが、言う。

「わたしは‥‥飲まないんです」

「わたしもワインは飲めません」

 サンディとミギョンが、相次いで言う。

「お付き合いしますわ、司令」

「お酒は好きです」

「ただ酒は大好きです」

 アリサ、スーリィ、ダリルがそう応じる。

「ミズ・サワモト?」

「‥‥飲めないことはないですけど、弱いんです」

 頬を掻きながら、瑞樹。

「四人か。なら、ボトルで注文してもよかろう」

 嬉しそうに、アークライト。


「旨い!」

 ダリルが叫ぶ。

 たしかに良い肉だった。出汁でしゃぶしゃぶされ、ほどよく温まった肉の脂が、舌の上でじんわりと溶ける。

 座は和やかに進んだ。スーリィとミギョンは、食べながらなにやら話し込んでいる。アークライトは、ワイングラス片手にサンディと談笑中だ。ちなみに、サンディの飲み物はミネラルウォーターである。

 ダリルは凄い勢いで食べまくっている。

「ワインが減らないわよ、瑞樹」

 アリサが、言う。

「弱いんだって」

 瑞樹は微笑んだ。グラス半分飲んだだけだが、結構気持ちよくなっている。

「いいワインよ、これ」

 そう言って、アリサがワイングラスをぐっと傾けた。たしか、三杯目くらいのはずだ。色白の顔の目元がほんのり赤らんで、妙に妖しい色気がある。

「サー!」

 急に、ダリルがアークライトに詰め寄った。

「なんだね?」

「兵站に重大な問題が生じました!」

 そう言いながら、ダリルが空のワインボトルを振ってみせる。

「いかん。早急に追加の補給を受けたまえ」

「イエス・サー!」

 ぴしりと敬礼したダリルが、すっくと立ち上がると、ワインボトルを手に勇んで座敷を出てゆく。すぐに戻ってきたダリルの右手には、ワインのボトルが握られていた。その上、左手には‥‥。

「おいおいおい」

 瑞樹はおもわず突っ込んだ。日本酒の四合瓶なんて、どっから持ってきた!

「サー、ぜひこれをお試しください」

 ダリルが、空いているグラスに日本酒をどぼどぼと注ぎ、アークライトの手に押し付ける。

「サケか?」

「この銘柄はおいしいです。フェニックスにいたとき、よく飲んでおりました」

 手ずから自分のグラスに注ぎながら、ダリル。

 アークライトが、日本酒に口をつけた。眼が、大きく見開かれる。

「うん。これは、旨いな。香りもいい。肉にも合いそうだ」

「でしょう」

 にやりと笑ったダリルが、自分のグラスを呷る。

 アリサが、ワインの封を切った。空になった自分のグラスに注ぎ、やっと三分の一まで減った瑞樹のグラスにも注ぎ足す。

「やめてよアリサ。そんなに飲めないんだから‥‥」

「いいじゃないの。こんな時くらい、付き合いなさいよ」


「副司令」

 有賀中尉に促され、矢野准将は航空機牽引トラクターの上によじ登った。

「諸君。静粛に願いたい」

 ざわめきが、ぴたりと静まる。

 広い航空機格納庫の一棟。折りたたみ式のテーブルと椅子が多数運び込まれ、やや雑然と並べられている。テーブルの上には、多数の料理の大皿、袋に入ったままのスナック類、うず高く積まれた紙皿の山、使い捨てのプラスチックカップやフォーク、割り箸のストック、紙ナプキンの束。そして、林立する様々な酒瓶と缶ビール。

「まずは、このパーティの趣旨を説明しよう」

 集まった二百名近い男女を前に、矢野は語り始めた。

「言うまでもなく、明後日にはこの基地からNAWCに向け派遣部隊が出発する。メンテナンス・グループの過半、セキュリティ・フォース・グループの約半数、ミッション・サポート・グループと司令部からも若干名、それに、フレイル・スコードロンを含むオペレーション・グループの面々。あわせて約八十名だ。今回のパーティは、派遣部隊の健闘を祈念するとともに、派遣準備の慰労を兼ねるものである。‥‥まあ、要するにちょっと羽目を外して楽しみつつ、北米に行く連中を気持ちよく送り出してやろうじゃないか、という集まりだな」

「サー。質問よろしいですか」

 整備隊に所属する、中年の一等軍曹が挙手する。

「なにかね、ニューマン軍曹?」

「肝心の司令はどこにいらっしゃるのですか? それに、フレイル・スコードロンの皆さんも見当たりませんが‥‥」

 当惑のざわめきが起こる。

「そのことだが‥‥実はフレイル・スコードロンの面々は、司令の奢りでしゃぶしゃぶを食べている頃だ。〈しゃぶしゃぶ〉というのは、ちょっと高級な日本の旨い牛肉料理のことだ。だが、羨ましがらんでくれ。あの娘たちは、NAWCで直接戦闘任務に就くのだ。‥‥言いたいことは、判るな」

 起きかけたブーイングが、あっさりと静まる。

 そう。生きて帰ってこられない可能性があるのだ。フレイル・スコードロンの面々は。

「まあ、こちらには向こうにはない強みがあるからな」

 にやにやしながら、矢野が言った。

「どういう意味ですか、副司令?」

 誰かが、尋ねる。

「司令がいないということだよ。喧嘩とセクハラ以外なら、多少のことには眼を瞑るつもりだ。諸君、今夜は楽しくやってくれたまえ」

 控えめに、歓声があがる。

 矢野はトラクターから降りた。替わりに登った警備隊の巨漢、ホーキンス大尉が、乾杯の準備をするように大声で指示を飛ばし始める。


 肉がなくなった。

 アークライトは日本酒‥‥吟醸酒らしい‥‥が気に入ったらしく、完全にワインから切り替えてしまった。ダリルが持ち込んだ瓶はとっくに空になり、今飲んでいるのは三本目だ。ダリルはかなり酔いが回ったようで、しきりに高笑いしている。アークライトは、酔ってはいないもののかなりご機嫌のようだ。

 ‥‥大丈夫かな。

 瑞樹はそっとあたりを見回した。スーリィもワインを何杯も飲んでいるし、アリサはそれ以上に飲んでいるはず。まあ、飲酒組が酔っ払ったとしても、まだサンディやミギョンがいるから‥‥。

「ってなに飲んでるのよミギョン!」

 アイスウーロン茶を飲んでいたはずのミギョンが、いつの間にか透明な液体の入ったグラスを握っている。頬が赤らんでいるところを見ると、中身はどう見ても日本酒だ。

「‥‥ワインは苦手だが、日本酒なら多少は飲める」

 涼しい顔で、ミギョン。その隣では、スーリィが自分のグラスにワインを注いでいる。

「あら」

 紫色の液体の流れは、グラス三分の一ばかり埋めたところでストップした。

「ダリル! 追加補給!」

「了解!」

 すぐさま、ダリルが立ち上がった。意外にしっかりとした足取りで、空のワインボトルを掴んで出てゆく。

「飲みなさいよ、瑞樹」

 アリサが、しなだれかかってくる。

「‥‥酔うと癖が悪くなるのね」

「酔ってなんかいないわよ。ロシア人がワインで酔ったりするもんですか」

 アリサが、笑った。

「ちょっと、トイレ」

 アリサが立ち上がる。‥‥少なくとも、足元がふらついたりはしていない。

 戻ってきたダリルが、ワインボトルをでんとスーリィの前に置いた。すかさず、スーリィの手が伸びる。ついでに持ってきたらしい日本酒の瓶も開け、ミギョンやアークライトのグラスに注ぎ足して回る。

「お待たせ」

 アリサが戻ってきた。

 ‥‥酒癖悪いのが揃ってる。

 瑞樹はため息をつきながら、残っている水菜とエノキを鍋に入れた。ワイングラスに手を伸ばす。酔いは、ほとんど醒めているから、もう少し飲んでも構うまい。

「うっ」

 ひと口飲んだ瑞樹は呻いた。‥‥ワインに異物が混入されている。

「あんたねえ‥‥」

 瑞樹はアリサを睨んだ。アリサは霜がついたストリチナヤのボトルを手に、にやにやしている。‥‥トイレに行くついでに手に入れたに違いない。

「ロシア人が酔っ払うためには、やっぱりこれがないと‥‥」

 アリサが、グラスにウォッカをどばどばと注ぎ、三分の一くらいを一気に飲んだ。

「はあ。久しぶりだと効くわねえ‥‥」

「なんという至福の表情‥‥」

 瑞樹は呻いた。

「お、アリサ。いいもの持ってるじゃないの」

 目ざとく見つけたダリルが、さっそくグラスを差し出す。アリサが、なみなみと注ぎ入れる。

「司令もいかがですか?」

 アリサが、ひざでアークライトににじり寄った。

「お、ウォッカか。貰おうか」

 アークライトが、手にしていた日本酒のグラスを干すと、アリサに突き出した。アリサが、恭しくストリチナヤのボトルを傾ける。


 ハンガー・パーティは大いに盛り上がっていた。

 そこかしこで、人の輪ができている。ギターを持ってきてかき鳴らしている警務班の日本人青年。男数人に取り囲まれてご機嫌の、会計班のオーストラリア人女性。プラカップ片手に北京語で声高に議論している整備隊の中国人三人。カードを持ち込んでテーブルの隅で勝負を始めた一団。何の意味があるのか判りかねるが、お互いの手の甲を見せ合っている数名の女性。勤務時間の終わった者も逐次合流したので人数も増えている。

「まずまず成功のようですね」

 有賀中尉が、矢野に声を掛けてくる。

「そうだな。ありがとう、君には世話を掛けた」

「いいんですよ。わたしも居残り組ですし」

 ビールの入ったプラスチックカップを手に、有賀中尉が微笑む。

「で、副司令。ここだけの話ですけど‥‥」

「なにかね?」

「無事帰ってこれるんでしょうね、あの娘たち?」

 有賀が、矢野の眼を覗き込むようにして訊く。

 矢野は視線を逸らした。

「たぶん、な。司令は無理はさせないおつもりだし、HQの意向も、同様だ。優先順位は、パイロット、試作機、実戦データ、戦果の順だからな。とは言え、北米は戦場だ。なにが起こるかわからん」

「副司令!」

 いきなり、矢野は背後から肩をつかまれた。

 セキュリティ・フォース・グループ司令のソン大佐だった。

「飲んでおられんではないですか。さあ」

 手にしたシーヴァス・リーガルの瓶の中身を、ビールが三分の一ほど入っていた矢野のカップにどばどばと注ぎ入れる。

「困るよ、大佐。わたしは酒はあまり強くないんだ」

「少しずつ飲めばよろしいのですよ、サー」

 かなり飲んでいるのか、上機嫌で、ソン大佐が言う。いつもの鋭い目つきも、酔いのせいかいくらか穏やかに見える。

「大佐! 逃げちゃだめです。大佐の番ですよ!」

 いささか怪しい口調のアン少佐が、近づいてくる。顔はすでに真っ赤だ。

「おう、すまんな、ソンハ。では、失礼します、副司令」

 きちんと一礼し、ソン大佐が歩み去った。アン少佐に連れられて、警備隊の面々が集まっている一角に向かう。‥‥なんの順番なのだろうか。

「警備隊の連中は酒が強そうだな」

 矢野は、恨めしげに大量のウィスキーが注ぎ込まれた自分のカップを覗き込んだ。

「とてもじゃないが、こいつは飲めそうにないよ」

「あら。でしたら、交換しましょうか?」

 有賀中尉が、自分のカップを指して、そう提案した。

「そうしてくれればありがたいが‥‥」

 有賀がさっとハンカチを出して、自分のカップについている口紅をぬぐった。

「どうぞ」

「ありがとう。助かったよ」

 矢野は微笑むと、有賀中尉の飲み残しが入ったカップを旨そうに傾けた。


「もうやめときなさい!」

「やだ! もう一本飲む!」

 瑞樹の制止を、ダリルが振り切ろうとする。

「もう完全に酔ってるでしょ!」

「酔ってない!」

 どう見ても充分に酔眼のダリルが、瑞樹を睨む。

「このくらいじゃ、酔ってるとは言わないの! いまでもネメシスに乗ったら、あんたの乗ったベローナくらい簡単に撃墜してあげられるくらいなんだからね!」

「はいはい。わかったから、あとはウーロン茶でも飲んで大人しくしてなさい」

「瑞樹がいじめるぅ」

 ダリルが、アリサに泣きついた。

「アリサ。瑞樹がいじめるよ」

「可哀想に。じゃ、これでも飲んで」

 アリサが、ダリルに妙に色の薄いウーロン茶が入ったグラスを押し付ける。

 受け取ったダリルが、それを一気に飲み干した。

「おいしい! お代わり」

 ダリルが、空のグラスをアリサに突きつける。

「はいはい」

 アリサが、水差しに入ったウーロン茶をグラスに半分ほど注いだ。そして、その上からストリチナヤのボトルを‥‥。

「アリサ!」

 瑞樹は、アリサの手からボトルをひったくった。

「あ〜ん。やっぱり瑞樹がいじめるぅ」

 ダリルが、アリサに抱きつく。

「アリサもいい加減にしないと。そのうち壊れるわよ」

「‥‥わたしたちより、向こうを心配したら?」

 アリサが指差す。

 ミギョンが、テーブルに突っ伏して寝息を立てている。その隣では、ワインボトルを抱え込んでちびちびとやっているスーリィの姿がある。‥‥こちらも、そうとう出来上がっているようだ。

 アークライトは、サンディを相手にぼそぼそと話しながら、日本酒を舐めている。サンディは素面のようだが、アークライトの方は完全に酔眼だ。‥‥ネクタイ緩めてるし。

「アリサお姉さま、ストリチナヤおいしい」

「あんたらはちょっと眼を離した隙に‥‥」

 まるで魔法のように、アリサの手に新しいウォッカのボトルが現れていた。ダリルがウーロン茶割りで、アリサがストレートで、乾杯している。

「こんなのよく飲めるわね」

 瑞樹はあきれて、手にしたボトルをテーブルに置いた。

「ロシア人を舐めちゃだめよ、瑞樹。あなたも飲んでごらんなさい」

 アリサが勧める。

「‥‥もうやめた。みんな面倒みきれないわ」

 瑞樹はどっかりと腰を下ろした。空いているグラス‥‥たぶん誰かの使いかけだろうが構いはしない‥‥に、ストリチナヤのボトルを傾ける。グラスの底に溜まったわずかな量の透明な液体を、瑞樹は思い切って喉に流し込んだ。

 熱いものが、喉を流れ下ると同時に、不思議な清涼感が口中に広がった。決して旨いとは思えないが、なんともいえない後味のよさがある。

「へえ。ウォッカって、こんなお酒なんだ」

「さあ、遠慮せず」

 アリサが、瑞樹のグラスにストリチナヤのボトルを傾ける。


「終了時刻五分前!」

 クム・ジニ軍曹の、子供っぽい声が響く。

 料理はあらかた食べ尽くされていた。あちこちで、残った酒瓶の所有権をめぐり、ジャンケンやコイントスやカードでの勝負が行われている。

「中尉。そろそろ行ってまいります」

 福西美羽軍曹が、有賀に告げた。まだ二十歳前なので、一応一滴も飲んでいない。

「ああ、そうだったわね。気をつけて」

 有賀はそう言って、美羽を送り出した。

「やれやれ。たいしたトラブルもなく終わったな」

 矢野が、安堵のため息をつく。

「たしかに、たいしたトラブルはありませんでしたね」

 有賀はくすくすと笑った。酔って倒れた者が三名。補給隊の若い男が暴れそうになり、ホーキンス大尉にヘッドロックを掛けられて大人しくなった事件がひとつ。鼻血噴出が一件。防空隊の軍曹が酔った勢いで総務の女の子にプロポーズした事件がひとつ。ウー特製のホイコーローの中に携帯を落とした事件がひとつ。

 まあ‥‥国籍も民族も人種も肌の色も母国語も信じる宗教も異なる男女二百人以上の酔っ払いが集ったにしては‥‥平穏無事に済んだと言えよう。

「北米派遣もたいしたトラブルなしに終わればいいのだが‥‥」

 矢野が、つぶやくように言う。

「居残り組としては、そう願うしかありませんね」

 有賀中尉はそう応じた。

「終了時刻一分前です!」

 クム軍曹の声が、響いた。


「はい皆さん、もう閉店の時刻です。お開きにしましょうね」

 襖を開けてにこやかに入ってきたのは、福西美羽軍曹だった。

「あら、美羽じゃない。‥‥一杯やる?」

 瑞樹は酔眼を向けた。

「未成年ですので、遠慮します‥‥。あらあら、酔ってないのはローガン中尉だけですか」

 美羽が、皆の醜態に唖然とする。

 ミギョンはすっかり熟睡モードだ。スーリィは、据わった眼で美羽を見上げるばかり。アリサとダリルは、半ば抱き合ったままずるずると飲み続けている。‥‥一切喋らないまま眼だけを見合わせて微笑み合い、もうなんか二人だけの妖しい世界へと旅立ってしまったかのようだ。アークライト中将も、胡坐をかいたままグラスを片手に微動だにしていない。いつのまにかネクタイも外している。

「さて、増援も来たことだし。とりあえず、将軍からお連れしますか」

 サンディが、立ち上がった。美羽と共に、アークライトの腕を取る。

「手伝うわ‥‥あらら」

 瑞樹は立ち上がろうとしたが、なぜか腰が立たなかった。

「うわー。ウォッカって、怖い」

 サンディと美羽が往復し、ミギョンを運び出す。瑞樹はぬるくなったウーロン茶をグラス半分飲み干すと、気合を入れて立ち上がった。よろよろとした足取りでスーリィに近づき、立たせる。

「あら。もう帰るの?」

 意外としっかりした口調で、スーリィ。

「とにかく、外へ出ましょう」

 瑞樹は、スーリィの腕を取って歩き出した。だが、足取りはスーリィの方がしっかりしている。靴を履き、もたれ合うようにしながら歩く。すでに店内に、他の客の姿はなかった。片付けに入っている店員の見送る声を聞きながら、瑞樹はスーリィにすがるようにしながら店外へと出た。

 店の駐車場に、美羽のランドクルーザーがエンジンを掛けたまま停まっていた。最後部の座席に、アークライトとミギョンの姿がある。

 瑞樹はサンディを手伝って、ミギョンの隣にスーリィを押し込んだ。次いでサンディに促され、後席に乗り込む。ほどなく、美羽がダリルとアリサを連れて戻ってきた。瑞樹の隣にダリルとアリサを押し込んだサンディと美羽が、再び店内へと消える。二人は、雑多な品々を持って戻ってきた。各人のコートやバッグ、外したアクセサリー、アークライトのネクタイなどだ。

「さあ、行きますよ」

 サンディが助手席に、美羽が運転席に収まる。

 瑞樹の意識はこのあたりでいったん途切れた。



「う〜」

 唸りながら、瑞樹はベッドから這い出た。かすかに頭痛がする。‥‥二日酔いなんて、何年ぶりだろうか。

 のろのろと身支度して、部屋を出る。食堂に入った瑞樹は、いつものテーブルを見やった。‥‥スーリィが座っているだけだ。

 瑞樹はトレイに中華風の朝粥を取った。さすがに食欲がない。いつもの米飯メニューは入りそうになかった。あとは味噌汁と緑茶、フルーツジュースのパック、果物の盛り合わせとカップ入りのヨーグルトだけ取って、テーブルに座る。

「おはよう。‥‥調子悪そうね」

 スーリィが、訊く。

「ちょっとね‥‥。あなた、平気なの?」

「少し胃に来てるけど。五苓散飲んだから」

「ゴレイサン? なに、それ。漢方薬?」

「うん。利尿効果があってね。効くわよ。よかったら、一服あげる」

「ありがとう」

 瑞樹は粥をすすりつつ味噌汁を飲んだ。蜆ではなく浅蜊汁だったが、胃は喜んでくれたようだ。

「おはよ〜」

 サンディが、テーブルに加わった。今日のチョイスはシリアルだが、なぜかスライスチーズをトッピングしてある。生野菜のサラダにたっぷり掛けてあるのは、どう見てもトマトケチャップだ。

「あれ。ひとり足りないみたいだけど‥‥」

 シリアルをスプーンでつつきながら、サンディ。

「うん。ダリルが、まだ来てないよ」

 ヨーグルトにスライスしたキウイを載せながら、瑞樹は答えた。

 しばらく無言のまま、三人は食事を進めた。

「来ないね、ダリル」

 ぽつりと、サンディ。

「うん」

 うなずいた瑞樹は、士官食堂を眺め渡した。ミギョンはすでに食事を終え、出て行った。しかしいつもの席に、アリサの姿がない。‥‥彼女も二日酔いか?

 結局瑞樹とスーリィが食べ終るまで、ダリルとアリサは士官食堂に姿を見せなかった。心配になった瑞樹とスーリィは、もそもそと妙な取り合わせの朝食を続けるサンディをそのままにして、宿舎に二人を探しに行くことにした。

 ダリルの部屋をノックする。だが、応答はなかった。瑞樹はドアを開けてみた。

 ベッドの中は空だった。寝た跡はあるが、別段異常は見られない。

「ふん。次、行こうか」

 スーリィが、促す。

 瑞樹はアリサの部屋をノックした。すぐに、反応がある。

「はぁい。どなた〜」

 アリサの声だ。‥‥だが、普通じゃない。間延びしている。

「瑞樹だけど。開けていい?」

「ど〜ぞ〜」

 瑞樹はドアを開け‥‥危うく中へと倒れ込みそうになった。

 アリサとダリルが、床に胡坐をかいて向かい合っていた。二人のあいだには、林立する缶ビール。

「何してるの、あんたたち」

 腰に両手を当てて、スーリィが詰問する。

「昨日はちょっと飲みすぎちゃったから。二日酔い治してるのよ」

 しれっとした表情で、アリサ。

「いやあ、ちょっと気持ち悪いな、と思ってたら、二日酔いの特効薬があるってアリサが言うから‥‥」

 気恥ずかしそうに、ダリルが金色の頭を掻く。

「ビールが二日酔いの特効薬‥‥」

 瑞樹は壁に両手をついた。呆れたあまり、支えがないと膝を突いてしまいそうだ。

「あら。ロシアじゃ常識よ」

 アリサが言って、缶ビールをひと口呷る。

「いやあ、なかなか効くよ、これ」

 にこやかに言って、ダリルもひと口ぐびりとやる。

「お邪魔しました‥‥」

 スーリィが、瑞樹を引き摺るようにして通路に出すと、ドアを閉めた。

 ドアに背を持たせ掛け、盛大にため息をつく。

「はあ。あの二人に常識は通用しないわ。心配して、損した」

「同感ね」

 瑞樹もため息をついた。


第四話簡易用語集/ハンガー・パーティ 格納庫で行われるパーティのこと。/アローヘッド編隊 Arrowhead 矢じり型、つまりは三角形の三機ないし四機編隊。/ギリースーツ Ghillie Suit 狙撃手や長期潜伏任務の特殊部隊員が着用する迷彩戦闘服の一種。様々なものが存在するが、主流は細切りの布切れを多数縫い付けたもの。「モリゾー」を思い浮かべてもらうとわかりやすいかもしれない(笑)/ビールが二日酔いの特効薬 アリサの言うとおりロシア人酒豪の間では常識らしい‥‥恐るべしロシア人(笑)

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