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26 Maldives

「後方、NT兵器です!」

 護衛のひとりが、なまりの強い英語で叫んだ。

「来たか。フレイルの小娘どもが」

 スィン大将は、パイロットから無線のマイクを受け取った。

「接近中のドゥルガーへ。こちらUNUF0919。当機には市民イダが搭乗している。当機への攻撃および飛行妨害は、カピィに対する攻撃と看做すと、市民イダはおっしゃっている。ただちに立ち去れ」


「‥‥と、目標から通告されましたが」

 アリサが、オッターにそう報告を入れた。

「無視しろ。ガン島に引き返させるんだ。威嚇射撃を、許可する」

「了解、オッター」

「‥‥強気だねえ、副司令は」

 ぼそりと、ダリル。

「いいのかなぁ」

 瑞樹は頬を掻きたくなるのをぐっと堪えた。

「まあ、いいや。あたしが撃つけど、いい?」

 スーリィが、訊く。

「2、威嚇射撃を。ちょっと驚かせてやりなさい」

 アリサが、許可を出す。


 曳光弾が、AS365の機首前方を通過する。

「正気か!」

 ルシコフが、毒づいた。

 スィン大将は、マイクを持ち上げた。

「脅しには屈しないぞ、ドゥルガー! すみやかに立ち去れ!」

「こちらフレイル1。0919、ただちにガン空港へ向かいなさい。さもないと、強硬手段を取ります」

「これ以上妨害すると、攻撃と看做す。市民イダは、連絡艇射出の権限も持っているのだぞ!」

 スィンは怒鳴った。


「‥‥どうやら、相手も本気らしいわね」

 アリサが、ため息混じりに言う。

「フレイル1。目標は針路を変えたか?」

「いいえ。威嚇射撃は効果ありませんでした」

「ならば、不時着させろ。方法は問わない。できれば、東のガーフ環礁まで誘導してから不時着させるんだ。すみやかに行いたまえ」

「副司令‥‥いえ、オッター。急ぐ必要はないのでは? まだインド艦隊まではかなり距離がありますし、このまま脅しを掛け続ければ‥‥」

 瑞樹は、そう口を挟んだ。

「そうでもないぞ、少佐。そちらから報告のあった目標の針路は、インド艦隊の針路と重ならないのだ。意味は、わかるな」

 ‥‥針路が重ならない。ヘリコプターは、インド艦隊を目指しているわけではないのか。

 瑞樹は首をひねった。この先、アラビア半島まで陸地はないはずだ。どこへ向かおうというのか‥‥。

「潜水艦、ですね」

 USN出身のダリルが、すぐに正解に気付く。

「そうだ。スィン大将が、インド海軍参謀総長だということを忘れてはならん。おそらく、針路上のどこかに潜水艦が潜んでいるのだろう。こちらの潜水艦は当該海域にはいない。潜られてしまえば、NT兵器も無力だ。その前に、確実に三人組を拘束しなければならない。ここで取り逃がしたら、この作戦は失敗だ。手段を選ぶな。ヘリコプターを、不時着させろ」



「三分経過」

 時計を睨んでいた水雷長が、やや上擦った声で告げた。

「シーカーをアクティブに。ワイヤーをカット」

 静かな声で、マクファーレン中佐は命じた。

「1、2探振開始。‥‥目標、回転数上がります。増速中」

 ソナー員長が、告げる。

「間に合わんさ」

 副長のワイマン少佐が、つぶやいた。

 SSN−766〈シャーロット〉に与えられた任務は、〈シルヴァー・ヴァレー〉の護衛であった。ディエゴ・ガルシアに東から接近する〈シルヴァー・ヴァレー〉に対し、北から低速で接近してきた不明艦をシャーロットの曳航ソナーが捉えたのは、四十分前のこと。音響特性からその潜水艦はタイプ877‥‥キロ級と判定された。ロシアの通常動力潜水艦は現在インド洋にいないはずだし、イラン海軍艦艇がアラビア海を離れることはまれである。まず間違いなく、インド海軍所属のキロ級である。

 キロ級は、明らかに〈シルヴァー・ヴァレー〉を狙っていた。マクファーレン中佐は、低速航行でデータを集め、解析値が得られるとすぐに、攻撃を命じた。そして今、二本のMk48長魚雷が、増速しつつキロ級を追っている‥‥。

「魚雷航走音! 1−9−0、本艦の魚雷とは別です!」

 いきなり、ソナー員長が叫んだ。

「全速、右回頭!」

 マクファーレン中佐はとっさにそう命じた。迂闊だった。敵は二隻いたのだ。

「雷数2、目標は本艦ではありません。ずっと浅い。〈シルヴァー・ヴァレー〉を狙っています!」

 ソーナー員長が、告げる。

「針路1−7−0。探振ソナー、スタンバイ」

 マクファーレンは命じた。咄嗟攻撃しか、〈シルヴァー・ヴァレー〉を救う道はない。

「目標2、一軸のディーゼル艦です。増速中。本艦を発見したようです。ノイズが高まっています。‥‥識別しました、タイプ209」

 ソナー員長が、報告する。

「シシュマール・クラスか。‥‥待ち伏せていたんだ」

 ワイマン少佐が、プロッティング・テーブルを見て、そう断言した。

 状況は、混沌と化した。Mk48に追われたキロ級は、デコイを射出しつつ逃げ回っている。〈シルヴァー・ヴァレー〉に接近する魚雷は、電池式らしく雷速はそれほど早くないし、探振もしていない。タイプ209は増速し、遁走にかかったようだ。

 マクファーレン中佐はアクティブ・ソナー発振を命じた。得られた解析値を元に、二本のMk48を送り出す。これでタイプ209が慌ててくれれば、〈シルヴァー・ヴァレー〉は助かるかも知れない。

「遅かったか」

 ワイマン少佐が、つぶやく。

 〈シルヴァー・ヴァレー〉を狙う魚雷が、アクティブ・モードで探振を始めた。

「1、2。爆発を確認。命中の模様」

 ソナー員長が、キロ級の撃沈を告げる。だが、喜ぶ者は誰もいなかった。

 〈シャーロット〉は任務に失敗したのだ。


 二本のSUT長魚雷は、〈シルヴァー・ヴァレー〉の船底で起爆した。260kgの弾頭が、キールをあっさりとへし折る。巨大な船倉はあっという間に海水に満たされた。


「ビーバー、ビーバー。こちらオッター。応答せよ」

 沈みゆく〈シルヴァー・ヴァレー〉のブリッジで、矢野准将は繰り返しビーバー‥‥アークライトが開設するはずの機上代替指揮所‥‥に呼びかけた。だが、応答はなかった。ベトナムで手間取ったアークライトの乗るRC−135Wは、ようやくマレー半島横断に差し掛かったところであったのだ。

「シール、シール。こちらオッター。応答せよ」

 矢野は仕方なく予備の代替指揮所であるシール‥‥ディエゴガルシアでチョープラー大尉が開設する‥‥を呼び出した。

「こちらシール」

 すぐに反応が得られて、矢野は安堵の表情を浮かべた。

「シール。オッターは指揮所を閉鎖する。ビーバーとはコンタクトが取れない。以後はシールが指揮統制を引き継いでくれ」

「了解しました、オッター。しかし、現在チョープラー大尉は不在です」

「なんだと?」

「わたしはシェールギル中佐。ディエゴ・ガルシア制圧作戦の指揮官です。チョープラー大尉は狙撃され、後送されました。命に別状はありませんが、重傷です」

 矢野は思わず呪詛の言葉を吐いた。

「何をしているのです、サー。当船はもう終わりです。死にたいのですか!」

 ブリッジに走りこんできた船長が、矢野の腕を掴んだ。

「待ってください、シールに事情を説明しておかないと、指揮統制が‥‥」

「無理です! ロドリーゴ! イェータ! 手伝え!」

 船長の命令を受けて、のっぽのイタリア人航海士と巨漢のスウェーデン人通信士が、暴れる矢野を軽々と抱え挙げてブリッジの外へと連れ出す。矢野の分の救命胴衣を手にした船長が、後に続いた。


 新たな報せが、南東へ向け急進するインド艦隊経由で届いていた。

「ニューデリーでも騒乱です。海軍本部にブラック・キャットが突入した」

 凶報を告げるスィン大将の手が、わずかではあるが震えていた。

「ブラック・キャット?」

「ナショナル・セキュリティ・ガードです」

 ヤンの問いに、スィンが答える。

「その上、陸軍と空軍が海軍を非難する声明を発表したそうです。‥‥残念ながら、わたしはインド国内での権力基盤を失ったらしい」

「では、貴国の潜水艦に向かうのはまずいですかな?」

 ルシコフが、訊く。

「いや、艦長クラスは個人的に信用できます。ただし、本国へ戻れば‥‥安全は保障されないというところでしょうな」

 スィンが、投げやりに肩をすくめた。

「どうやら、我々はかなり追い詰められているようですな。‥‥ここから脱出できるだけでも、儲けものと思わねばならぬかもしれません」

 ヤンが、薄い唇を舐めた。

「あの〜、お取り込み中すみませんが、どこへ向かっているのですか?」

 エマ・コーエンが、割り込んできた。ロシア語は判らないらしく、怪訝な表情だ。

「安全な場所です」

 ルシコフが、英語で簡単に答える。

「でも、追ってきているのはフレイル・スコードロンですよね。なぜ、威嚇射撃されたのですか?」

「UN総会を妨害しようとしたテロリストに加担しているのですよ、連中は」

 ヤンが口を挟んだ。

「‥‥でも。わたし、フレイル・スコードロンの方々とお会いしたことがありますが、そのような卑劣なことをなさる人たちだとは思えませんけど」

「すまんが、少し黙っていてもらえるかね、ミズ・コーエン」

 ルシコフが、低い声で告げる。


「わたしが進路妨害をするわ。2と3は左右を挟んで。4は上空を。5は後方で待機。目標を海面に押さえつけるようにして、東へと向かわせます」

 アリサが、決断した。

 瑞樹は低空へと舞い降りた。目標と速度を合わせ、その上100フィートほどの位置をキープする。F−2なら失速しかねないところだが、ホバリングもできるNT兵器ならばそのような心配はない。

 ダリルとスーリィのドゥルガーが、AS365の両脇を挟む。アリサの機が前に出て、進路を変えないと空中衝突しかねない位置に回りこむ。半ばホバリング状態にもかかわらず、かなり強い後方排気がAS365に浴びせられた。


「駄目です、針路を変えないと、墜ちます」

 揺れるヘリをなだめつつ、パイロットが忌々しげに言い放つ。

「市民イダ、連絡艇の射出準備を命じてください。脅しで一隻くらい放たないと、ここから抜け出せそうにありません」

 ルシコフは、そう頼んだ。

「それはやりすぎでは?」

 ヤンが、異議を唱える。

「いや、あくまで脅しだ。反応炉を暴走させなければ、爆発はしないのでしょう? 脅しとして一隻だけ射出すれば、奴らも考え直すでしょう」

「よろしい。命じましょう。目標は、どこにしますか?」

 イダが、訊く。

「ユーラシアはもちろんだめだ。北米もまずい。‥‥南米か、アフリカか」

 スィンが、迷う。

「アフリカはインパクトが弱い。ブラジルか、アルゼンチンか‥‥」

「オーストラリアはどうでしょう?」

 ヤンが、口を挟んだ。

「いいですな。シドニーか、メルボルン」

 スィンが同意する。ルシコフもうなずいた。

「シドニーにしましょう。市民イダ、目標は第五大陸の東海岸南部にある大都市です。くれぐれも、反応炉の暴走をさせないように願います」

「承知した」

 イダが、足踏みをする。

「ちょっと待ってください。いったい何を話しているのですか? シドニーに連絡艇を射出するって‥‥」

 エマが、声を上げる。イダの翻訳機が翻訳できるように英語交じりで喋っていたから、内容を理解したらしい。

 ルシコフは無言で護衛兵の一人に合図した。AK−74Uの銃口を向けられて、エマが沈黙する。



「市民代表代行イダ。現在、軍用船二号の連絡艇はメンテナンスのために射出不能です。軍用船一号搭載艇の射出準備をいたしますが、よろしいでしょうか」

 オハイオの着陸船で指揮を執る宇宙船指揮者代理ヴィドは、そう訊ねた。

「それでいい。くれぐれも、反応炉を暴走させないように」

 通信機から、イダの声が流れる。

「了解しました。すみやかに準備を整えます」

 ヴィドは通信を切ると、自らの触腕を使って上部連絡艇管制室を呼び出した。

「こちら上部連絡艇管制室」

「宇宙船指揮者代理だ。連絡艇一隻の射出準備を整えたまえ。目標は‥‥」

 ヴィドは座標を読み上げた。イダに指定された場所とは、微妙に異なる位置だった。

「くれぐれも、反応炉は暴走させないように。不活性化のコードは、承知しているな?」

「もちろん承知しています」

「よろしい」

 ヴィドは上部連絡艇管制室との回線を閉じた。

「念のため、下部連絡艇管制室の機能をロックしろ。上部連絡艇管制室への出入り口もロックだ。一切邪魔が入らないようにするのだ」

 ヴィドはそう技術員に命じた。


 上部連絡艇管制室に詰めているカピィは、一体だけだった。

 触腕が、コンソールの上を踊る。射出準備は、間もなく整った。反応炉の暴走を阻止するコードも、入力される。



 前方に見える巨大な環礁へ、フレイルの五機はAS365を誘導していった。

「フレイル、連絡艇を射出するぞ。目標はシドニーだ。阻止したければ、すみやかに編隊を解け」

 そう通信が入ったが、アリサは応えない。

「ほっといて、いいの?」

 スーリィが、訊く。

「さすがに無視はできないわね」

 アリサが、オッターに問い合わせる。だが、応答したのはシールだった。代替指揮所の、さらに予備に当たるコールサインである。

 訝りながらも、アリサが状況を説明する。

「フレイル、そちらの判断で行動してくれ」

「‥‥こちらで判断がつかないから、指示を仰いでいるのですが」

「こちらでも状況を把握できていないのだ。すまん」

 シールが謝って、通信を切る。

「呆れた」

 そう言うのは、ダリル。

「ともかく、副司令は手段を選ばず不時着させろ、と言っていたよね」

 スーリィが、言う。

「仕方ないわ。それを行動の指針にしましょう。強硬策でいくわよ」

 アリサが決断した。


「‥‥無視されたぞ」

 スィン大将が、いらだたしげにマイクを置いた。

「射出しよう」

 ヤンが、言う。

「同意します。これは、あくまで市民イダが自らの身を守るために行ったことですからな。悪いのは、市民イダを拉致しようとするテロリストどもです。市民イダ、お願いします」

 ルシコフが、イダを促す。


「市民代表代行イダ。おやめ下さい。専門家として申し上げます。人類市民を傷つけるのはわが種族の利益に反します」

 レーカは、そう喋った。

「わが友人が望んでいるのだ。それに、わたしは今現在危険に晒されている。自衛しなければならない」

「しかし‥‥」

「黙りたまえ、戦士レーカ」

 イダが、主触腕を一振りする。


「宇宙船指揮者代理、おやめ下さい。人類市民を傷つけてはなりません」

 ヴィドを、人類びいきの部下が止めようとする。

「市民代表代行の命令だ。戦士として、従わないわけにはいかぬ」

 目標は第五大陸の東海岸南部。人類の大都市のひとつだ。

「上部連絡艇管制室。こちらは宇宙船指揮者代理ヴィドだ。準備した連絡艇を射出せよ」


「了解しました。すみやかに射出いたします」

 上部連絡艇管制室のコンソールに着いているカピィが、副触腕でタッチパネルをそっと叩いた。

 すでに稼動していた連絡艇の反応炉が、流入する空気を急速に過熱する。装甲扉と、発着デッキの扉が重々しく開いた。数秒後、連絡艇は晴れ渡った夜空に向け飛び出していった。



「連絡艇を射出した。すみやかに編隊を解けば、反応炉の暴走を止めることが可能だ。‥‥おい、聞いているのか?」

「ごちゃごちゃとうるさいわね。フレイル各機、前方の‥‥なんて発音するんだろう、カンドゥドゥ? とにかくその島に飛行場があるわ。そこへ目標を降ろしましょう」

 アリサが、言う。

「住民がいるんじゃないの? 無人島に下ろした方が、いいような気もするけど」

 瑞樹はそう言った。

「でも、飛行場がないとガンやディエゴから増援が来ないのよ」

「万が一ビズジェットが駐機してたりしたら、厄介だよ。乗り換えちまうかもしれない。増援は、地元のボートでも借りて来てもらえばいい。無人島に追い込んで、チョッパーを壊しちまえば、どこへも行けないよ」

 ダリルがそう提案する。

「‥‥それもそうね。じゃあ、もう少し南の無人島に下ろしましょう」

 アリサが同意した。


 長径300メートルほどの、東西に伸びる細長い島だった。

 その南岸にある白い砂のビーチに、AS365は押し込まれていた。前後左右と上方をホバリングする五機のNT兵器に囲まれ、動くに動けない。

「0919! 着陸しエンジンを停止せよ」

 アリサが呼びかける。

「そこを退け、クティヤー!」

「ねえ、クティヤーって、なんだと思う?」

 編隊内回線で、アリサが訊く。

「褒め言葉には、聞こえないね」

 ダリルが答える。

「仕方がないわ。フィリーネ、テイルブームを撃ち抜いて。わたしに当てないでね」

 アリサが、AS365の後ろに付いているフィリーネに命ずる。

 フィリーネのイシュタルの27ミリ機関砲が、一門だけ単発で砲弾を送り出した。ヘリコプターのテイルブームは単なる金属チューブであることが多く、入っている重要なメカニズムはターボシャフトエンジンからテイルローター‥‥AS365の場合はフェネストロンだが‥‥へ動力を供給するシャフトと配線くらいなものだが、それらが一撃でへし折れる。

 AS365の機体が回りだした。メインローターのトルクを打ち消すことができなくなったのだ。こうなると、飛行は不可能である。

 胴体下面が、砂浜をこする。AS365は、美しいビーチに座り込んだ。


 連絡艇は、ヴィドの指定した座標‥‥シドニー港の沖合い3000メートルの地点に正確に落下した。幸い、付近に船舶はおらず、大きな水柱が立っただけで、人的および物的損害は皆無だった。

 もちろん、反応炉の暴走も起きなかった。


「シールから情報が入ったわ。シドニーに連絡艇着弾。爆発なし。やっぱりブラフだったようね」

 アリサが、告げる。

「でも、射出を命ずることはできるみたいですね」

 フィリーネが、言う。

「早いとこ捕まえちまおう。そうすれば、すべて解決だ」

 焦れたような口調で、ダリルが提案する。

「そうね。着陸して捕らえましょう。フィリーネ、上空援護をお願い。みんなは、着陸適地を探して」

 アリサが、命ずる。

「アリサ、七時の方向にある海岸はどう?」

 瑞樹はそう提案した。砂浜以外の島の大部分は密生した植物に覆われているが、西端の海岸に、砂地ではない地面がぽっかりと空いている。土が悪く植物が繁茂できないのだろうか。

「よさそうね」


 パイロットがクラッチを切り、エンジンを止めた。

「‥‥我々の負けだ。連絡艇を使った脅しに屈しないとなると、もはや打つ手はない」

 スィンが、言う。

「仕方ありませんな。ヴィクラムの言う通りだ。予想したよりも、敵の規模は大きいようだ。モスクワやニューデリーでも反対派が反撃に出たとなると、守りきれない」

 ルシコフが、同調した。

「だが、ユーラシア連邦の夢を諦めるわけにはいきません。こうなったら、最後の手段に出るまで」

 ヤンが言って、凄みのある笑みを見せる。ルシコフが、訝った。

「最後の手段?」

「我々の敵を、連絡艇で一掃すると脅すのです」

 ヤンが、言う。

「‥‥合衆国、ですかな」

 スィンが、訊く。ヤンが、うなずいた。

「当面の目的を、我々の脱出に絞りましょう。合衆国攻撃の脅しが成功すれば、我々は逃げ延びることができる。失敗しても、合衆国を抹殺できる。どちらに転んでも、悪くない結果が得られるのです。‥‥市民イダ。あなた方には、第四大陸を進呈します。もちろん、第三大陸も。ですから、これから述べる場所に連絡艇を射出する準備を整えていただきたい。もちろん、反応炉を暴走させてです‥‥」

 ヤンは手早く八ヶ所の目標を説明した。

「‥‥しかし、これだけの連絡艇を一度に暴走させれば、地球の生態系に悪影響が‥‥」

 イダが、抗弁する。

「構いません。射出の準備をお願いします。やらねば、ここから脱出できません。フレイルはこの機に発砲しました。あなた方を敵と看做しているのです。あなたも、死にたくはないでしょう?」

 そう言ったヤンが、ルシコフとスィンの方を向いた。

「おふたりは、少しばかり時間を稼いでいただきたい」

「時間か。人質ですかな?」

 ルシコフが、エマ・コーエンを見やる。

「もうひとり、格好の人質を見つけました。まあ、人ではないのですが」

 ヤンが、レーカのことを説明する。

「フレイル・スコードロンに縁のあるカピィか。悪くない」

 スィンが、ほくそ笑む。

「よし、君らはこのカピィを抑えろ」

 ルシコフが、二人の副官に命じた。



 フィリーネのイシュタルを除く四機がVLする。

「わたしは留守番しているから、三人で様子を見てきて。もし降伏するようであれば、拘束」

 アリサが、命ずる。

「わたしが留守番してるよ。射撃、下手だし」

「だめ。あんまり歩きたくないの。わたし、こう見えても身体障害者なのよ」

 瑞樹の提案を、アリサが却下する。

 仕方なく、瑞樹はサバイバルキットからP228を取り出した。弾倉二本をポケットに入れ、島に降り立つ。ダリルはなんと、TMPサブマシンガンを携えていた。弾薬パウチやファーストエイド・キットなど括りつけたベルトまで、締めている。

「ほれ。あんたらも、一個ずつ取りな」

 ダリルが、手にしていた布袋を瑞樹とスーリィに差し出した。手榴弾が、四発入っている。ドイツ製の、DM51破砕手榴弾だ。

「‥‥準備がいいな、ダリルは」

 スーリィが、一発を掴み取って、ポケットに収める。

「なんか予感があってね」

 ぼそりと、ダリル。

 三人は、アリサやフィリーネと通信できるようにTACBEを携帯すると、樹木線にそって歩き出した。さっそく、フィリーネから通信が入る。

「聞こえます? ヘリコプターから人が出てきました。十二名と、カピィが一体。何人かは、突撃銃で武装しています。ひとりだけ、女性がいるみたい‥‥あ」

「どうしたの、フィリーネ?」

 瑞樹は呼びかけた。べつに打ち合わせたわけではないが、いつの間にかダリルが先頭で前方警戒、スーリィが陸側を警戒、瑞樹が殿で通信係という役割が出来上がっていた。

「あの女性、エマですわ」

「エマ? ‥‥エマ・コーエン?」

「こんなとこで何してんだ?」

 交話を聞いていたダリルが、つぶやく。

「まあ、UNUFの広報官だから、ヴィリギリにいてもおかしくはないけどね」

 こう言うのは、スーリィ。

「‥‥どうやら、エマは人質のようですね。腕をつかまれて、拳銃を突きつけられていますわ」

 硬い声で、フィリーネ。

「カピィも人質みたいです。二人がかりで、拳銃を突きつけられていますわ」

「‥‥人質? 市民イダかな?」

 瑞樹は首をひねった。たしかに人質に取られれば厄介だが、イダは悪党三人組に同調していたのではなかったのか?

「他に妙な様子はない?」

「今のところは。緩く散開して、西側を向いています」

 三人はゆっくりと近づいた。見通しのいいビーチなので、相手の姿ははっきりと見える。70メートルほどの距離を置いて、両者は向かい合った。お互い、銃は携えているが銃口を向け合ってはいない。だが、瑞樹らはいつでも樹木線の内側へと逃げ込める態勢だった。サブマシンガン一丁プラス拳銃対突撃銃数丁では、撃ち合いになったらとても勝負にならない。

「あー、全員武器を捨てて投降しなさい。さもないとドゥルガーが機関砲弾を浴びせるわよ!」

 ダリルが、降伏勧告を怒鳴る。

「降伏は拒否する。こちらには人質がいるのだ。それに、カピィにも被害が及ぶぞ。言っておくが、当方には諸君らと撃ち合いを行う意図はない!」

 長身で金髪の男性が応え、控えている兵士に身振りを行った。兵士‥‥数えると六名‥‥が、すぐに銃口を地面に向けた。

 瑞樹は状況をじっくりと観察した。相手は十人。突撃銃‥‥たぶん、AK74のショートバレルバージョンを持った六人と、拳銃のホルスターを身に帯びた長身の金髪の男性と、右手に拳銃、左手にエマ・コーエンの右肘を掴んだ浅黒い男性。おそらく、前者がルシコフ大将、後者がスィン大将なのだろう。カピィに拳銃を突きつけている二人の士官は、たぶん副官たち。‥‥他に、ヘリコプターの中から、銃で狙っている奴がいるかも知れない。

「おとなしく降伏しなさい! 逃げ場はないのよ!」

 ややあざけり気味に、ダリルが応じた。

「ひとつだけ教えておこう。フレイル・スコードロンの諸君。ここで拳銃を突きつけられているカピィは、諸君らの友人の戦士レーカだ」

「なんですって‥‥」

 瑞樹は眼を見張った。

「ほんとかな?」

 スーリィが、わずかに首をひねる。

「この距離じゃ、あたしでも見分けがつかないね」

 ダリルが、軋るように言う。

「すみやかに退去し、代わりのヘリコプターをよこせ!」

 金髪男性が、怒鳴る。

「逃げても無駄よ! NT兵器なら、地球の裏側まで追っかけることができるんだから!」

 ダリルが、怒鳴り返す。


「よし、すみやかに連絡艇射出準備を整えよ」

 ヴィドは、ディスプレイを見上げた。イダに命じられた目標は、八。七ヶ所までが、第三大陸内である。いずれも、アメリカ合衆国と呼ばれる国家内だ。北米で長い間戦ってきたヴィドにとっては、どれも馴染みのある地名だった。ニューヨーク、シカゴ、アトランタ、ダラス、ニューオーリンズ、セントルイス、シアトル、そしてホノルル。

「上部連絡艇管制室、射出準備開始しました」

 技術員が、報告する。

「よろしい」

 ヴィドは頭部を左右に振った。






 ヤン常務委員は、イダと共にヘリコプターを降りた。拳銃を手にした秘書官とパイロットも、そのあとに続く。

「連絡艇射出準備は完了しました。こちらから射出を指令することもできるし、通信が途絶えた場合にも射出するよう指示しました」

 そう、背後からルシコフとスィンに呼びかける。

「では、もう時間稼ぎの必要はありませんな。交渉しましょう」

 スィンが言う。

「逃げるにしても、どこへ逃げますかな?」

 対峙するフレイルの三人を見据えたまま、ルシコフが問う。

「ついでにイダを通じ、本国と連絡を取りました。北京では、まだわたしの味方が優勢です。巻き返しは無理かもしれませんが、それなりの影響力は保持できるはずです」

 ヤンは、スィンを見た。

「提督、潜水艦の位置は?」

「もうすでに近くまで来ているはずだ」

「では、交渉再開ですな」

 ヤンは、ルシコフを見やった。ルシコフが、短くうなずく。


「フレイルの諸君。よく聞きたまえ。我々の行動を妨害した場合、連絡艇八隻を合衆国領土内に射出する!」

 長身で金髪の男性が、怒鳴る。

「どうせブラフでしょ? いい加減、素直になりなさい。こっちの増援が、間もなく到着するわ!」

 ダリルが、ブラフを交えて応ずる。

「シドニーへの攻撃はブラフだったが、合衆国への攻撃は本気だ。すみやかに退去し、代わりのヘリコプターをよこせ! 言っておくが、カピィ着陸船と我々は常時通信を維持している」

 金髪男性が、拳銃の銃口でホバリングするイシュタルを指した。

「通信が途絶した場合、連絡艇を射出する手筈になっているのだ。強攻策など、考えぬことだな」



「‥‥ほんとかなあ」

 瑞樹は、拳銃を左手に持ち替えると素早く右手の平の汗をズボンで拭った。気温は絶対に三十度を超えているだろう。湿度も高く、立っているだけで汗ばんでくる。

「これは本気かもしれないね。合衆国が地図から消えることを厭わない連中だろうから」

 吐き捨てるように、スーリィ。

「だからといって、奴らを逃がすわけにもいかないだろう」

 ダリルが、言う。

「なんとか、エマは助けたいわねえ」

 背後から、アリサの声。

「留守番はどうしたの?」

 振り向いたスーリィが、訊く。

「適当にトラップ仕掛けてきたから、大丈夫」

 ヘルメットを被り、なぜか他の三人分のヘルメットも抱えたアリサが、言う。

「確かに、知らない人じゃないから、助けてあげたいけど‥‥」

 瑞樹は兵士に突撃銃の銃口を向けられているエマを見つめた。

「はい」

 アリサが、瑞樹とスーリィにヘルメットを被せた。

「なにさせるつもり?」

 スーリィが、訝る。

 アリサが、ダリルの頭にもヘルメットを被せた。次いで腰に下げた物入れから小さな双眼鏡を取り出し、ダリルの手に押し付ける。ダリルが双眼鏡を前方に向け、ピントを調節し、そして毒づいた。

「ほんとにレーカだ。あいつを死なせるわけにはいかないよ」

「仕方ないわね。ちょっと身体を張りますか」

 アリサが言って、TACBEを取り上げた。

「フィリーネ、聞こえる? さっき話した作戦、やってみましょう」

「作戦って、なんだ?」

 視線を前方に据えたまま、ダリル。

「人質交換よ。フィリーネが合図したら、ゆっくりと近づいてきて。事が起こったら、突入ね」

 アリサがそう言って、腰の物入れを外し、砂の上に置いた。TACBEも、その隣にそっと置く。

「じゃ、お願いね」

 そう言い置いて、アリサがすたすたと砂地の上を歩みだす。

「ちょっと、アリサ‥‥」

 瑞樹の言葉も無視し、アリサが待ち受ける銃口へ向かって近づいてゆく。


「止まれ!」

 ルシコフが、歩み寄るアリサに拳銃を向けた。

「撃たないで。交渉に来たの。銃は、捨てるわ」

 歩きながら、アリサは左手で拳銃をゆっくりと抜き、砂地にそっと投げた。ルシコフらから10メートルほど離れたところで、立ち止まる。

「ロシア空軍大佐、アリサ・コルシュノワ。フレイル・スコードロンのリーダーよ。わたしと、ミズ・コーエンの身柄を交換して。そうすれば、部下を離陸させて、ディエゴ・ガルシアに向かわせるわ」

「本当ですかな?」

「約束するわ」

 ルシコフは、ちらりとヤンとスィンを見やった。ふたりが、わずかにうなずく。

「いいだろう。来い」

 アリサは両手をヘルメットの上で組むと、前へ出た。

「行きなさい」

 呆然としているエマ・コーエンへ、声を掛ける。我に返ったエマが、慌てて砂浜を走り出した。


「皆さん、バイザーを下ろして、固く眼を瞑って砂浜を歩き出してください」

 フィリーネが、TACBEを通じて指示を出す。

「わけわからん」

 文句を言いながら、ダリルが眼を閉じると東へと歩き出した。

「なんで、アリサはこうも強気なの? 連絡艇が射出されたら、どうする気なんだろう?」

 スーリィが疑問を呈しながら、ダリルに倣う。

「わかんない。でも、アリサのことだから策があるんだろうけど‥‥」

 瑞樹もバイザーを下ろすと、眼を固く閉じた。


「注意しろ!」

 フレイル・パイロットの動きに気付いたルシコフが、拳銃を構えなおす。突撃銃を持つ部下も、射撃姿勢を取った。

「動くなよ」

 スィン大将が、アリサの顔に拳銃を向ける。

「狙うなら胴体ですわ、提督。頭部では、少しの動きで避けられてしまいますよ」

 アリサはスィンに向けて挑戦的に胸を突き出し、半歩前に出た。捕虜を扱う時の基本を思い出したのか、スィンが拳銃を握った腕を引き、アリサの腹に狙いを変更した。

 アリサは拳銃を突きつけられているレーカに向かって、笑みを投げかけた。

「初めまして。ミスター・レーカ。フレイルのアリサ・コルシュノワと申します」

「静かにしたまえ、大佐」

 スィンが、不安げに身じろぎする。

「アリサ。ダリルから、話は聞いていますよ」

 レーカが、喋った。

「そう。じゃ、眼を閉じて下さいます?」

 アリサは、さりげない動作でヘルメットのバイザーを下ろした。

「何をする気だ!」

 スィンが、拳銃をアリサの腹に突きつける。


 フィリーネは慎重にタイミングを計っていた。この作戦の成否を握っているのは、彼女なのだ。

 ‥‥いまだ。

 フィリーネは、素早く機体を傾けた。


 いきなり、イシュタルの後部から数十発の光の粒が噴射された。フレアの、一斉投射だ。

 発火したマグネシウムにより、島の南岸が強烈な照度で照らされる。

 皆が、視覚を奪われた。

 五人の女性と、一体のカピィを除いて。


「わっ」

 バイザーを下ろした上に眼を固く閉じていても、視野がぼんやりと赤く染まるほどの光だった。

 すぐに、瑞樹はアリサの作戦を悟った。フィリーネに、フレアを放たせたのだ。

「走るよ!」

 ダリルの声。

 瑞樹は眼を開けると、走り出した。フレアはまだ燃焼しているが、水中に落ちたり樹林の中に突っ込んだ物も多く、バイザーを降ろしている限りそれほどまぶしくはない。


 スィン大将は、本能的に引き金を引いていた。

 反射的に眼を閉じたが、それでも視野は真っ赤に染まっている。

 いきなり、側頭部に打撃を喰らう。闇雲に引き金を引いてさらに一発放ったが、今度は首筋に打撃が来た。一瞬、意識が遠のき、拳銃が手から零れ落ちた。

 三回目の、胸部への打撃で、スィン大将は意識を失った。


「闇雲に撃つな! 同士討ちになる!」

 ルシコフ大将は、叫んだ。むりやり眼を開けたが、視力は一時的にせよ完全に失われていた。


 アリサはスィン大将が落とした拳銃を拾い上げると、眼を押さえて呻いている兵士の頭部を素早く撃ち抜いた。

 どっ、とフィリーネのイシュタルの27ミリが咆哮し、少し離れた処にいた二人の兵士の上半身が消えてなくなる。砲弾は、樹木の間に突っ込んでから爆発した。

 アリサは片膝を着いて、ヤンの秘書官を射殺した。レーカはすでに副官の一人を踏み潰し、波打ち際の方へと逃れていた。残る副官とパイロットを相次いで撃ち倒したアリサは、たなびく煙を掻き分けるようにしながらイダに駆け寄り、その頭部に拳銃を突きつけた。



 ダリルがTMPを発砲した。

 突撃銃を構えていた二人の兵士が、弾かれたように砂の上に倒れる。二度目の斉射で、残る一人も死んだ。

「ルシコフ大将! 拳銃を捨てなさい!」

 スーリィが、走り寄りながら叫ぶ。

 ルシコフが、音を頼りに拳銃をスーリィに向けた。素早く、スーリィが伏せる。

 ルシコフが放った一弾は、スーリィの頭上を通過した。スーリィが撃ち返し、ルシコフの右腕をきれいに撃ち抜く。拳銃が、砂に落ちた。



 瑞樹は、膝を着いて眼を覆っている東洋人に、拳銃を突きつけた。

「抵抗しないで下さい」

 おそらく、彼がヤン常務委員なのだろう。

「またフレイルか。たいした小娘たちだ」

 砂浜にへたり込んだまま、ヤンが苦笑する。

「兵士は全員倒した。こっちはクリアだ」

 油断なくTMPを構えながら、ダリルが報告する。

「こちらもクリア。さあ、市民イダ。連絡艇射出中止命令を下しなさい」

 拳銃を突きつけて、アリサが強要する。

「アリサ。あなた、撃たれてるじゃないの!」

 瑞樹は眼を見張った。フライトスーツの腹部に小さな穴が開いており、その周囲に黒い染みができている。

「大丈夫。それよりも、連絡艇よ。市民イダ。中止させて。さもないと‥‥」

 アリサが、銃口をイダの頭蓋に押し付ける。

「その通りです、市民代表代行イダ。射出を中止してください」

 波打ち際から戻ってきたレーカも、迫る。

「‥‥わかった。中止させよう」

 イダが、装備ベルトから通信機を外した。

 と、いきなりルシコフ大将が動いた。伏せたまま、隠し持っていた小型拳銃を左手で抜くと、発砲する。

 ほぼ同時に、スーリィが撃った。

 スーリィの発射した銃弾は、ルシコフ大将の後頭部を撃ち抜いた。だが、その一瞬前に、ルシコフの放った銃弾は、市民イダの左主触腕の先端を貫通して通信機に喰いこんでいた。

「市民イダ!」

 アリサが、拳銃を下ろして膝を着く。

 イダが、左主触腕を右主触腕で抑えて呻いた。通信機が落ち、砂の上に転がる。

 駆け寄ったレーカが、自分の装備ベルトから銀色の円筒を外した。手早く中から白く太い輪ゴムのようなものを出し、イダの左主触腕に嵌める。‥‥一種の止血帯だ。次いで小さな金属筒を手にして、頂部のシールを副触腕の先で破り、中の粉末を傷口に振り掛ける。

「ごめん、みんな。あたしのミスだよ」

 スーリィが、謝る。

「謝るのはあとでいいわ、スーリィ」

 アリサが、砂にまみれた通信機を拾い上げた。

「市民イダ。中止命令を」

 砂を手で払ってから、イダに通信機を差し出す。

「‥‥だめだ。壊れている」

 副触腕で通信機を操作したイダが、そう告げる。

「予備の通信機はないのですか、市民イダ」

 瑞樹は訊いた。

「ない。近距離で使えるものならばあるが‥‥軍用船とは連絡が取れない」

 イダが答える。

 アリサが、レーカを見た。イダの手当てを終えたレーカが、副触腕の先を曲げる。

「わたしも持っていません。装備ベルトに付いているのは、近距離用のものと、光通信機だけです」

 レーカの返答を聞いて、アリサがダリルの腰からTACBEを取り上げた。

「フィリーネ。どのような方法を使ってもいいから、このチャンネルにカピィ着陸船を出して。急いで!」

 瑞樹は拳銃をポケットに納めると、アリサに歩み寄った。

「治療するわ、アリサ。横になって」

「たいしたことないわ。貫通してないし」

「治療しないと」

「大丈夫。さわってごらん」

 瑞樹は、アリサの傷口付近に指を走らせた。

 ‥‥硬い。

「なに、これ」

「チタンプレート。手術するのに肋骨半分くらい切り取っちゃったから、腹部の強化と保護のために入れてあるの。小口径の拳銃弾くらい、跳ね返せるわ」

 そう言って、にやりと笑う。

「とんだワンダーウーマンだね」

 ダリルが、うんざり顔で突っ込む。


 不意に、ヤン常務委員が笑い出した。

「うざいよ、おっさん」

 念のため気絶しているスィン大将を調べていたダリルが、無造作にTMPの銃口をヤンに向けた。

「最後にいい仕事をしてから死んだな、わが友は。通信が途絶した以上、八隻の連絡艇は射出されるだろう。合衆国は消え去る」

 ヤンが、満足げに言う。

「その前に、あなたを消してあげましょうか」

 スーリィが、睨んだ。

「撃ちたいのであれば、撃つがいい。わたしは、満足しながら死ねる。合衆国がなくなれば、ユーラシア連邦設立を阻むものは存在しない」

「いずれにせよ、あなたの負けですけどね」

 辛辣に、アリサが言う。

「負けは認めるよ、フレイルの諸君。君らはことごとく我々の邪魔をしてくれたね。諸君らの実力はわたしも認めていたが、利用できると思っていたわたしが甘かったようだ。まあ、わたしは敗北して去るが掲げた理想は誰かが受け継いでくれるだろう」

 満ち足りた笑顔で、ヤン。

 アリサのTACBEが、低い音を発した。耳に当ててしばし聞き入ったアリサが、ぼそりと言う。

「連絡艇射出阻止に失敗したわ。八隻が、飛翔中。一隻を除き、北米に着弾する模様」

「マジかよ」

 ダリルが、砂を蹴った。

 瑞樹は天を仰いだ。命がけの強攻策も、無駄に終わったようだ。おそらくは、一億を超える死者が出るだろう。スーチョワンの惨劇が、北米でも繰り返されるのだ。しかも、拡大された形で。

「これで決まったな。合衆国消滅。わが夢は、十数年後には達成されるだろう」

 くすくすと笑いながら、ヤンが言う。TACBEを下ろしたアリサが、その顔を見下ろした。

「それは怪しいわね」

「どういうことだね?」

 笑みを湛えたまま、ヤンが訊く。

「八隻の連絡艇の反応炉が、予定通りに暴走すると思ってるの?」

「何が言いたい?」

 ヤンが、訝しんで眼を細めた。アリサがにやにやしながら、指を一本立てる。

「問題です。イダが権力を掌握するまで、カピィの指導者だったのは誰でしょう?」

「もちろん、ティクバだろう」

「そう。宇宙船指揮者は、その必要があると認められる場合には、連絡艇の射出を命ずることができる。そしてもちろん、その必要があると認められる時には、連絡艇反応炉の暴走不活性化を行うこともできる」

「まさか‥‥」



「連絡艇の無駄遣いか。まあ、多いとつい強気に出てしまうからな」

 上部連絡艇管制室で、ティクバはそうつぶやいた。

 ヴィドは戦士である以上、市民代表代行イダの命令に逆らうことはできない。しかし、すでに戦士の地位を追われたティクバが軍用船一号の連絡艇管制室に忍び込むのを見逃すことくらいはできた。そして、ティクバが連絡艇に対し反応炉の暴走不活性化コードを打ち込むのを黙認することも、可能だった。イダの命令は、あくまで連絡艇の射出である。ヴィドは、あからさまな命令違反は犯していない。

 もちろん、戦士でないティクバはイダの命令に逆らうことに対しなんら痛痒を覚えることはなかった。

 ‥‥友人に頼まれた役目は終わった。捕まらないうちに、合衆国の庇護下に帰るとしよう。



「ティクバはオハイオの着陸船にいるわ。万が一、イダが連絡艇射出を命じる気になった場合に備えてね。アークライト中将の計画がうまく行ったとすれば、ティクバはヴィドの手引きで管制室にいたはずよ。忙しかったでしょうね。八隻分の暴走不活性化コードを打ち込まなきゃならなかったんだから」

 からからと、アリサが笑う。

「そうだったのか。道理で副司令が強気だったわけだ」

 ダリルが、TMPの銃口をヤンに向けたまま、小さく肩をすくめた。

「‥‥早く教えてよ、そーゆーことは」

 瑞樹も大きく息を吐いた。

「ごめんね。でも、これは秘中の秘でね。ばれたら、イダが不活性化コードの書き換えを命じたり、ティクバの身柄が拘束されたりしかねなかったから。単なる技術者だったイダの無知に付け込んだはかりごとだったわけよ」

 悪びれた様子もなく、アリサ。

「フィリーネから連絡だ。パルマー中佐が、スペツナズ一個小隊を引き連れてボートで来るって。ETAは、十五分後」

 TACBEから耳を離して、スーリィ。

「煙草を吸っていいかな、お嬢さん方」

「だめ。わたし、煙草と空気の読めない男は嫌いなの」

 アリサが冷笑を浮かべた。




 一連の事件の結末は、すっきりしないものであった。

 アッドゥ環礁への攻撃は、〈テロリスト〉によるものであると発表された。ヴィリギリ島警備統括責任者であったゲンナディー・ルシコフ大将は、テロリストとの交戦で戦死したと報じられた。ヴィクラム・スィン大将は、当日ニューデリーのインド海軍本部に詰めていたとされ、数日後に心不全で死亡したとの発表がなされた。

 ヤン・チャンイー常務委員は、歴史から抹消された。中国政府も、中国系メディアも、そして一般大衆も、ヤン・チャンイーなる人物が当初から存在しなかったかのように振舞っている。

「‥‥すごいことになってるわね」

 新聞を拾い読みしながら、瑞樹は唸った。

 余波は世界中に広がっていた。パキスタンとインドネシアでクーデター未遂。イラン大統領暗殺未遂。韓国で政変劇。アルジェとマナーマで爆弾テロ。ウズベキスタンは内戦の一歩手前だし、トルコとギリシャが久しぶりに小競り合いを行った。日本でも、元首相が服毒自殺を図った。親中派と目されていた人物だけに、おそらくは関係あるのだろう。

 ロシアは沈黙を続けているものの、かなり多くの軍人と政治家が追放されたと噂されている。インドも同様で、特に海軍の将官の半数は退役させられたらしい。中国でも、それなりの動きはあったようで、いくつかの地方都市では人民解放軍が出動するほどの騒乱が発生しようだ。

 〈オペレーション・サイドライト〉は、結局UNUFによる秘密作戦として事後承認され、アークライト中将を始め参加した軍関係者にお咎めは一切なかった。フレイル・スコードロンに関しては、テロリスト掃滅のために急遽出動したと公式にアナウンスされた。MiG−29連隊との戦闘はもちろん、ヴァルキリーとの戦闘もなかったこととされた。‥‥スーリィは十二機ものスコアを損したわけだ。

 市民イダは能力不足とされ、市民代表代行の座を追われた。健康を取り戻した市民ウシャイトが、今は代表だ。戦士の指揮は、変わらずヴィドが執っている。ウシャイトは当初からUNが提示していた案‥‥地球上の数箇所に分断した領土を譲渡されるというもの‥‥を正式に受け入れることを表明した。今は、細部を詰める交渉に入っている。いずれ、条約が締結されるだろう。安全保障の問題は、カピィが残っている連絡艇を保有する、という形で落ち着きそうだ。

 ティクバは変わらず合衆国の保護下にある。憲法に修正条項をつけてカピィが市民権を得られるようにして、大統領顧問に迎えるという話もあるようだが‥‥さてどうなるか。

「あたしたち、どうなるのかねえ」

 頬杖をつきながら、ダリルがぼそりと言う。

 アリサはモスクワへと帰ってしまったので、フレイル・メンバーはまた四人に戻ってしまった。一応訓練は続けてはいるが、もうカピィと戦うことはないだろう。

「まさか、解隊なんてことにはならないですわよね」

 フィリーネが、言う。

「どうかなぁ」

 新聞を折りたたみながら、瑞樹は応じた。

「自賛になるけど、いいチームだよね、あたしたちって」

 ソファに寛いだ姿勢で座っているスーリィが、言う。

「確かにね。運が良かったこともあるけど、ここまで生き延びてこれたんだし」

 ダリルの言葉に、瑞樹の脳裏に戦死した仲間の顔が浮かんだ。アレッシア、ニーナ。ミギョン。ミュリエル。ヘザー。‥‥サンディ。そして、生き延びたものの飛べなくなったエルサ。

 平和にはなった。だが、代償も大きかった。

「あのー、みなさん。司令代行が、エプロンに集合するようにとおっしゃってます」

 美羽が、リビングに顔を出した。

 ドレスラー司令が急遽転出してしまい、今現在メイス・ベース司令職は空席となっているので、当面矢野副司令が代行を務めている。

「エプロン? 講堂でも作戦室でもブリーフィングルームでも待機室でもないの?」

「はい。エプロンです。お客様がいらっしゃるようですよ」

 スーリィの問いに、美羽が答える。

「とにかく行きますか」

 瑞樹は腰を上げた。


「ご苦労、諸君。待っていてくれ。もうじき、来るはずだ」

 整列した四人を前に、矢野准将が腕時計に眼を落とす。

 ほどなく、新田原基地の滑走路にボーイングBBJが着陸した。タキシングを続け、メイス・ベースにそのまま入ってくる。

 四人が見守る中、タラップから下りてきたのは、見慣れた顔であった。

 アークライト中将だ。

 四人の表情が、一斉にほころんだ。

「突然だが、諸君らはまたわたしの部下になる。悪いな」

 苦笑しながら、アークライト。

「司令復帰ですか!」

 勢い込んで、ダリル。

「いや。メイス・ベース司令は矢野准将が引き継ぐことになった。‥‥最初から説明しよう。現在、UNUFAFは復員および組織再編を進めている最中だ。NT兵器に関しては、対カピィ戦争での実績から、戦後もこれを保有するべきだとの結論に達している。わたしは、新設されるNT航空兵器ウィングの司令に任ぜられる予定だ。メイス・ベースおよびフレイル・スコードロンは存続し、わたしの指揮下に入ることになる。ちなみに、ソード・ベースおよびダガー・スコードロンも再建される予定だ。北米に、第三の基地とシスター・スコードロンを新設する計画もある。だが、それらはまだ先の話だ。諸君らはこのままフレイル・スコードロンとして、NT兵器のマザー・スコードロンとなり、戦技研究と後進の育成に当たってもらいたい。頼めるかね?」

「やります!」

「喜んでお引き受けします、サー」

「はい、お受けします」

「もちろんですわ、サー」

「ありがとう。春彦、この娘たちを頼めるかな?」

 アークライトの言葉に、矢野准将が微笑んだ。

「難儀な任務ですが、楽しそうですな。任せてください」

 ふたりががっちりと握手を交わす。

「それと、市民ウシャイトから預かり物だ。好きなものを取りたまえ」

 アークライトが、ポケットから布袋を取り出し、中身を手の平に空けた。

「これは‥‥」

 ピンクの組紐を括りつけた木片が五個。‥‥カピィの、勲章だ。

「うわ。いいんですか、貰っても」

 すでに半ば手を伸ばしながら、スーリィがアークライトの顔を見上げる。

「諸君らは、それだけの功績を挙げたと市民ウシャイトはおっしゃっておいでだ。さあ」

 アークライトが、手のひらをスーリィに向け突き出す。スーリィが、ひとつを取っていとおしげに手の平に包み込んだ。

「君もだ。シャハト大尉」

 フィリーネが、礼を言ってひとつを取った。誇らしげな笑みだ。

「少佐。君も、頑張ったな」

「ありがとうございます、司令‥‥いえ、中将」

 瑞樹は、木片を指でつまみあげた。微妙なぬくもりが、指先に伝わる。何十光年も離れた惑星上で、色の違う恒星からの光を浴びて育った植物の一部。カピィの伝説の木。それが、いま手の中にある。不思議な気分だ。

「あたし、もう貰ってるんですけど‥‥」

「遠慮するなど君らしくないな」

 ダリルを見て、アークライトが笑う。

「じゃ、いただきます」

 ダリルが、二個目となる木片を手にする。

「春彦。色々と迷惑をかけたな」

「これが、例の勲章ですか。ありがたく頂戴しましょう」

 矢野准将が、最後の木片を手にして、微笑んだ。

「さて諸君。わたしはエカテリンブルクへ行かねばならない。済まんな」

 布袋をポケットに突っ込みながら、アークライト。

「ええっ。久しぶりに、パーティでもしましょうよ。色々と、お祝いしたいこともあるじゃないですか」

 ダリルが、口を尖らす。

「そうもいかんのだよ。悪いな。お祝いは、諸君らだけでやってくれ」

 そう言い置いて、アークライトがタラップを登って行く。

 BBJがタキシングを開始した。

「解散」

 矢野准将が、命じる。

「准将、メイス・ベース司令就任おめでとうございます」

 瑞樹は、まじめな顔で矢野に向かって敬礼した。

「‥‥ああ、ありがとう、少佐」

 矢野が、少し当惑した表情で答礼する。瑞樹は、表情を崩すと、猫なで声で続けた。

「‥‥ここは、やはりお祝いをすべきではないでしょうか?」

「そうですわ、司令。ぜひともお祝いを」

 瑞樹の意図を察したフィリーネが、すかさず援護にまわる。

「‥‥君らの期待に応えたいのは山々だが、最近懐が寂しくてなあ」

「しゃぶしゃぶは駄目か。なら、ハンガー・パーティでもやりますか」

 ダリルが、言う。

「そうだよね。新司令就任のお祝いなんだから、ベースのみんなでお祝いしないと」

 スーリィが、賛同する。

「じゃ、有賀さん呼んでこなきゃ」

 瑞樹は言った。

「ハンガー・パーティの許可は喜んで出そう。だが、手配は君たちでやってくれ。‥‥わたしは酒代を稼ぎに行ってくるよ」

 矢野准将が、足早に管理棟へと歩み去る。

 BBJが、ゆっくりと誘導路を回り込み、滑走路端に達した。エンジンパワーが上がり、ブレーキがリリースされ、滑走を開始する。やがて、揚力を得た主翼が機体を持ち上げた。翼上面に日の光をまぶしく反射させながら、BBJが高度を上げ、遠ざかってゆく。

 四人の女性は、その姿をいつまでも見送っていた。


第二十六話、すなわち最終話をお届けします。読了いただきまことにありがとうございました。ではひとまず第二十六話簡易用語集/キロ級 Kilo Class ロシア製中型通常動力潜水艦。/SSN−766 アメリカのロサンゼルス級原子力潜水艦の一隻。後期建造艦。/Mk48長魚雷 アメリカ潜水艦が主兵装とする長魚雷。長魚雷とは対艦、対潜に使用される大口径かつ大型で有効射程の長い魚雷のこと。/シシュマール・クラス Shishumar Class ドイツのベストセラー輸出用潜水艦タイプ209の、インド輸出およびライセンス生産クラス。タイプ209の型式は何種類かあるが、当クラスはもっとも大型の209−1500である。/プロッティング・テーブル Plotting Table 軍用潜水艦の司令所に設けられている設備のひとつ。ここで自艦の位置、ソナー情報などから得られた目標の推測位置、速度、進行方向などを描き込んでゆき、戦術を検討する。最近の潜水艦ではコンピューターが自動的にプロッティングしてくれるディスプレイが別に設けられているが、バックアップおよび訓練のため(優秀な乗員であれば脳内で三次元プロッティングができるらしい)いまだ現役。/デコイ Decoy 囮。兵器としてのデコイは案山子のような張りぼて兵士から、弾道弾のダミー核弾頭まで多種にわたる。この場合のデコイは、魚雷のシーカーを混乱させるためのもの。安価なものはガスを封じ込めた缶であり、これが泡を吹き出すことによって海水中にアクティブ・ソナーに反応する塊を作り出し、魚雷を欺瞞する。/アクティブ・ソナー Active Sonar 自らが音波を発振することによって、目標の反射波を捉えるタイプのソナー。反対に、聴音に徹するのがパッシブ・ソナー(Passive Sonar)である。/SUT ドイツ製の長魚雷。電池式。/ブラック・キャット Black Cat インドの国家保安防衛隊特殊部隊の愛称。/AK−74U ロシアの突撃銃AK−74のショートバレルバージョン。/DM51 ドイツ製の破砕手榴弾。/フレアによる視覚の妨害 最新型のフレアは、市街地などの上空での使用を考慮し、煙の低刺激性や地上に落下した場合の火災発生の抑制、さらには見た目の眩しさの減少などが図られているらしい。だからここでフィリーネが使ったのは、旧式の猛烈に明るいタイプだと思う(笑)/マザー・スコードロン Mother Squadron 母飛行隊。新型機導入などの際に、最初に集中的に機体を配備される飛行隊。ここで得られた運用のノウハウなどが、他の飛行隊の新型機導入に役立てられる。   続きまして後書きっぽいものを多少書かせていただきます。本作の構想が浮かんだのは、実はとある古いアニメを某動画サイトで眺めていたときでありました。ちなみに、本作主要登場人物のうちある方は、そのアニメ作品キャラへのオマージュであります。‥‥決してキャラ盗用ではありません(笑) そのような経緯で書き出した作品ですので、随所に「アニメっぽさ」を意識しました。二十六話編成というのも、2クール放送(十三話+十三話)をもじったものですし、一話が一万字前後で前半後半に分かれているのも、AパートBパートに分かれる30分アニメの構成を真似たものです。 では完結記念に設定資料の蔵出しを。本作では中国系地名や人名、韓国系人名などは原則的にカタカナ表記を行いましたが、たぶんキャラの名前の漢字表記に興味がおありの方もいらっしゃると思うので、ご披露いたします。まずは中国系人名から Xia Su-Li 夏 素麗/Song Guo-Zheng 宋 国政/Chen Gang 陳 剛/Zhang Li-Li 張 莉莉/Yan Jian-Yi 楊 剣偉  続いて韓国系人名 Heo Mi-Gyeong 許 美京/An Seong-Ha 安 星河/Geum Jin-Hui 琴 真姫 端役の方々は割愛させていただきました。 最後になりますが、最終話までお読みいただいた皆様、本当にありがとうございました。評価なしでも構いませんのでアドバイス的な感想をいただけると嬉しいです。 で、次回作ですが‥‥まだプロット段階です。このままミリタリー系戦記ものを続ければいいのか、それともファンタジー系に走るべきか‥‥悩んでおります。しかしながら、連載が途切れるのは面白くないので、以前書いた異世界ミリタリーものの中篇をリライトし、週一ペースくらいでのんびりと掲載しようかなと思っております。また女性士官が主役で、「空もの」ではありますが、ローテクな世界観の作品であります。‥‥本作よりは出来が悪いと思いますが‥‥なにしろ数年前の作品ですので‥‥よろしければアクセスしてみてください。 追記/新連載開始しました。「蝶の記憶」もよろしくお願いします。 さらに追記/「蝶の記憶」完結しました。現在「グリーン・シールド」連載中です。こちらもどうぞご贔屓に。

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