5話 妖精が叶えます
ママに料理を何種類か作って貰った。
試しに妖精を料理が盛り付けられた皿で囲んでみる。すると、妖精の鼻がピクピクした。
「いい....匂い...ごは...ん?」
バッと顔を上げて自分の周りに用意されている料理を見て、柔らかく微笑んだ。
「スープにパスタにサラダ、果物や水。ここは天国。きっと僕は死んでしまったんだ」
いや、ちげーよって言いたかったけどもう少し様子を見ようと思った。
妖精はその小さな身体で用意された料理を美味しそうに頬張った。
そして私でも食べきれるかわからない量をあっという間に食べきった。口元についたソースをペロリと舐め妖精は私達を見上げた。私はこの動作に違和感を感じた。
妖精はやっと私たちの存在に気付いたらしく、
「この度は食べ物をお与え頂きまして誠にありがとうございます。僕はティハーレーと申します」
ぺこりと頭を下げた。慌てて私たち3人も、頭を下げる。
ティハーレーがさっと頭を上げるとさっきまで窶れていた顔がツヤツヤで凛々しく愛想のある顔になっていた。そして少しボロかった服も元通りだった。
あれ、生き物ってこんなだっけ?
「皆様のお名前は存じておりますので、自己紹介は不要にございます。ジゼル様、リコリス様、アレストス様」
「何故名前を?」
「妖精は全てのエルフを覚える、そういう者です」
パパはあっけらかんとしていた。
噂ではそう聞いていたが本当にそうなのか。いやはや、世界は広いですなぁ...。
感慨にふけっていると、妖精が私の耳元に寄ってきた。
「貴方が転生者ということをご両親に伝えていないことも」
何だとっ⁉︎お主何故それを知っておる⁉︎
彼はふふふ、と笑いテーブルの真ん中にゆっくりと着地した。
「お礼は何に致しましょう、リコリス様、何か欲しいものは?」
「うーん、いきなり言われても...........あ、」
あったんだね、ママ。その顔はあったんだね。何か閃いた顔してるし、あって言ったし。
「ハーメルンって言うお店の新しいティーセットが欲しいわ!」
「左様でございますか」
彼は腰に提げたレイピアを抜き、自分の親指をチクっと刺した。そして出てきた血でテーブルに大きく円を描き上げた。彼が円から出ると、円の中から光が溢れてきた。光がだんだん強くなり、目を開けないくらいになった瞬間、ふと消えた。そして、そこには綺麗なティーセットが置いてあった。
ママは口が半開きだったけど1つのカップを手に取ってうっとりとした。
パパは何もしてなかったため、お願いを叶えてもらえる事はなかった。
「あー俺も何かしておけば良かった」
「と言うわけで、ジゼル様にも願いを叶えてあげたいのですが、少し2人で話がしとうございます」
パパが言ってから暫く間を開けたのは何でだ?まあ、いっか。
「じゃ、話してくる。ちょっと来てティハーレー」
「わかりました」
私とティハーレーは階段を上って私の部屋まで走って行った。