13話 第2グループ
注ノノ視点です
私含めノノ、テナ、タロ、シエル、ジェイ、ナタリー、アーシェは右側のヤゾン大通りのネズミ達を片付けている。
私は転生前は冒険者だった為、グループ長となってしまった。まあ、冒険者と言っても仲間がいなければできることがあまりない付与魔術師だった。これでも最上級魔術師の称号を17歳という若さで取ったエリートだった。器用さは損なわれていないが、前世のとの圧倒的魔力の無さに一度死のうと鬱になったこともある。
しっかし、クラス全員が転生者だとか。笑うしかないね。ここは元冒険者の意地を見せないとね。テナも冒険者だったんだけど接近戦に向いてるから、指示が出来ないとの事。
「タロ!後ろ!」
「うわっとぉ‼︎あっぶなかったぁ‼︎あざす‼︎」
タロに【反射神経】の強化魔法掛けといて良かった。テナは同じく前衛のタロやジェイには指示してくれている。そこまで視野は狭くないね。
「ひ、回復‼︎」
「【ラビットヒール】‼︎」
シエルとナタリーはいい感じのタイミングで回復してくれてる。…ぁあ、魔法失敗してる。仕方ないか、転生者と言っても前世に魔法が無かったんだし。それにしても、魔法が無い世界か…。考えられないな。
「あはぁ…。レアアイテムみっけたぁー」
アーシェ、やる時はやるんだけどね。ってか今本当はしなくちゃいけないんだけどね。アイテム拾って目がキラキラしてるし…。
そんな彼女が先程仕掛けたトラップにはかなりの数のネズミどもが引っかかっている。そのおかげでネズミ達はとても倒しやすい。
「上級魔術師のヘオ様だぞ!」
「ほら、あんた達は下がんな」
おばさんの言葉を聞くフリをし、一瞬の隙をついて、戦闘に突っ込んだ。
ヘオ・ツフク。多分最近入った魔族の新人さんね。ここが正念場だからいいとこ見せないと王族に目をかけてもらえないぞ。
「我、かの姫と同様に永久の眠りへと誘わん【眠り姫】‼︎」
次々とネズミが瞼を閉じ倒れ込む。この魔法が住民に聞かないのは彼なりの器用さがあるからであろう。普通であれば二重魔法で指定魔法と併用するのだが、彼はそれをしなかった。
将来有望だな。
「ぐかぁぁあ」
「あ」
アーシェが掛かってる。
この魔法解くには結構恥ずかしい詠唱しなきゃいけないんだよね。眠り姫って王子様にキスされて起きるじゃん?
「我、汝を永久の眠りから救い出さん【プリンス・キス】」
私の魔力から超絶イケメンの王子様が作られた。かなりの消費量だったのか、疲れが一気に身体中を駆け巡った。
転生前にも1度使ったことがあるけどやっぱり、か、カッコいい。
彼は寝ているアーシェの前で膝を折り、彼女の手をとった。ちょっと心配そうな顔をしている王子が自分の手をとっていることなんか彼女は全く持って知らない。彼はそっと手に柔らかそうな唇をつけた。それはまるで本当御伽噺の世界を見ているようだった。彼はアーシェから手を離し私の元へ歩いて来た。
「いつか現実で貴方と逢う日が来ること願います」
「え、ちょ、どうゆう事?」
彼は頬に少し赤みを帯びたまま微笑んだ。その微笑みを見て私の顔に朱が注がれていく。時間が来てしまったのか、足元から光へと化していく。最後に何か言いかけていたが光が四散する音にかき消されてしまった。
「うぅぅぅ‼︎目覚めよぉぉおしぃ‼︎」
アーシェが起きてハッとした。
「顔真っ赤なぁ?どぅおしたん?」
癖があるゆったりな口調で、首をコテっと傾げるアーシェ。怠け癖がなかったら可愛いのに。勿体ない。彼女を見て、王子があんな事言ってるなんて夢だ、ある訳ないよね、と冷静になれた。