12話 第1グループ
第1グループは私とメルニアス、ルータス、ナタリー、ニル、ナル、ゼーロの7人。
第2、第3グループと別れてから陣形を整えながらネズミの駆除を着々と行なっている。彼らモンスターを倒しても光となり四散しドロップアイテムが出るので罪悪感はあまり無い。でも、深く考え込むと罪悪感は半端なく酷い。あいつらにも家族がいるって思ったらねぇ…あー泣ける。
それはそれとして、
今は通りの中間くらいまで来ている。アイテムボックスは今は所持していないから、ドロップアイテムは住民達に勝手に拾ってもらうことにした。たまに、あんた達も逃げろという声が聞こえるが大丈夫です、とグループみんなで爽やかに笑いながら駆逐していく。1に人助け、2に駆逐、3に報酬うへへへへ。
なーんて考えてるわけですよ。報酬の話についてはまだ教えていない。報酬目的でやってることがバレたら必ず1人は抜ける人が出てくるからだ。
それにしても、メルがモンスターだったなんてな。もしかしたら親とか子とか倒してそうで怖くなって来た。彼女の前世は戦い方を見ていて何となく把握はできる。足取りだけだと踊り鳥の亜種かと思ったが、脇差での対処の仕方が舞鳥のかなりの強者だと見受けられた。……舞鳥か。たおした、たおした。だって、討伐依頼の報酬が当時にしては凄く良かったんだもん。
「王家から上級魔導師ホホ様がいらっしゃったぞ!」
遠くの方から空を飛ぶホホと言う名の奴が飛んで来た。何で1人なんだよ…、と愚痴を吐いたのを見てしまった。けしからん、最上級の奴らにしっかり躾けてもらわないとな。彼はブツブツと呟き、持っていた杖を地面に突いた。すると、その杖を中心に淡い光を放った魔法陣が現れ、ホホが魔法陣から退くと大きなマシンガン一丁が湧いた。彼はそれをよっこいしょと担いだ。
「付与・ホーミング、指定敵のネズミ」
二重魔法をかけた彼は引き金を引いた。銃弾が放たれる前にゼーロが凄く深く息を吐いた。
「どうしたの?」
気になったので聞いてみた。すると、彼は死んだ魚のような目でホホを見た。
「あいつ、兄貴なんすよ。あいつまた愚痴愚痴呟いてんすよ。それでも上級魔導師ですかい。だらしないったらありゃしない」
そうでしたか。お兄ちゃんいたんですね。
「それと、呼び捨てで結構っすよ。ぼかぁ、あんたのこと呼び捨てで呼ぶっすよ」
弾丸が目の前や頭の上を通り越していく。それは次々とネズミ達の眉間をぶち抜き、奴らは光となり空に吸い込まれてった。ボトボトとドロップアイテムが落ちていた。あ、レアアイテムみっけ。一応拾っておこう。
『装備品【水の数珠】を手に入れました』
ドワーフ時代の小さい頃に生まれて初めて倒したモンスターがネズミ族のアサシンマウスだった。倒したのはちょっと語弊があるかもしれない。気がついたら倒していた、という方が適切だろう。なぜかというと、『俺』が打刀の素振りをしている時にたまたまアサシンマウスは隙がありすぎる『俺』を奇襲しようとしたのだろう。『俺』は後ろから敵が来ていることなんて全くもって知らず、適当に刀を後ろに振ったら真っ二つに切れてた!んでその時のドロップアイテムが【水の数珠】なんだよね。
その頃から死ぬまでずっと装備したままだったな。
「レアアイテム握って何ボーッとしてんすか、ジゼル。行きますよ」
兄貴を尻目に援護に取り掛かる優秀な弟。素晴らしきかな兄弟。そろそろネズミ軍の勢いも抑えられてきた。
「Chuuuuu!!!!!」
奇襲か…。
後ろから飛びかかってくるグレイトマウスに振り返り、短刀で薙いだ。そしてこびりついた光を振り払った。
「切れ味10くらいかな?」
この常人離れした動きは一瞬であり、誰も目に止めることが出来なかった。
私は【水の数珠】を装備し、空を仰いだ。
宙に吸い込まれて行く無数のポリゴンに思わず、前世の妻の名を零した。
「愛してるよ、ニーナ」
『称号【マウスキラー】を手に入れました』