プロローグ
プロローグ
「お爺ちゃん!嫌だ!逝かないで!」
孫に手を強く握られる。泣かないでくれ。可愛い顔がくしゃくしゃになってるじゃないか。それにしてもお爺ちゃんか。ははは、もう男か女かわからなくなってしまった。
もうすぐ死んでしまうのか。
始めて転生した時のことを思い出す。
いや、あれは呆気なかった。
*
目が覚めると大きな草原にいた。最初は夢だと思った。灰の色をしたモフモフの毛玉が手であることを理解した。石ころ一つ一つが大きく見える。自分はモフモフのチビモンスターか、としみじみしていたところ、轟音と同時に一瞬、体が浮いた。後ろからの地響きに身を震わせ、ゆっくり振り返る。そこには、鼻息が荒く自分の何百倍もあるドラゴン。奴は毛玉に目もくれず歩みを進める。恐怖で体が動かないってこういうことなんだ。毛玉を中心にした半径5メートルほどの影が現れた。そして、潰された。
*
ちなみに今はさっきの毛玉から転生したドワーフ、つまり2度目の転生。毛玉の前はJKだった。
男になってからは、男は男なりの苦労があると実感した。この体になってから、いろいろあったな。初めてみる文字に驚いたり、たくさん武器を作ったり、ニーナと結婚して2人の子が出来て、孫の顔も見られた。
子供たちは優しく育ってくれたし、武器を作る才能もある。それぞれの家庭を養っていく力も十分にある。心配することはないもない。安心して逝ける。
でも、もしかしたら3度目の転生あるかもしれない。
「ゼス、お爺ちゃんが生まれ変わったら何になると思う?」
目に涙を溜める孫の頭を撫でてみる。孫が鼻をすする。
「わかんないよ、お爺ちゃん」
小さい子の手って小さいな...。
何当たり前なことを考えているんだ。
死ぬってわかってたら当たり前のことに感動するんだ。微笑みと共に視界が薄れていった。