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一枚に二人の思いを乗せて  作者: ほん和花
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第三話 告白

この作品の主人公は事故で手を失っています。そのような内容が苦手な方はこのページを離れることをおすすめします。よろしくお願い致します。

また、この話は第三話です。第一話、第二話もあるので、そちらもご覧ください!

病室に戻った私はすぐさま返してもらった自分のスマートフォンで咲妃について調べた。まずは彼女の学校、霞野高校について。小刻みに震える手で私は文字を打った。え?なんだ??これ…。うそでしょ?!驚くべきことが判明した。なんと、霞野高校は今から10年前に廃校になっていたのだ。聞かない名前だと思ったら、そういうことだったのか。今、その校舎は放置されており、使われていないらしい。 それから彼女が持ってきた参考書。怪しく思った私は、あの数学の参考書の名前を覚えていた。“これで勝つ センター試験2年 数学 レベルA"という書籍だ。これはきっと…。検索をかけると、思った通りだった。咲妃が持ってきた参考書はなんと2009年のものだったのだ。通りで黄色いはずだ。二つ調べて予想は確実に結論に近づいていたが、完全に結論に達したわけではない。私は最後に咲妃の名前を高校名と一緒に検索した。だが、何も出てこない。″2009 咲妃"、“2009 高校2年”などとも検索したが、無駄だった。どうしても知りたい。そして決定的な証拠を得たい。私はさらにいろいろなキーワードを入れて検索してみた。すると…7回目くらいだった。一つのページがヒットしたのだ。キーワードは"霞野高校 2009 咲妃"。これを見ればきっと咲妃の過去を摑める…。私はおそるおそるそのページを開いた。するとそこには想像もしていなかったことが書いてあったのだ。それは、とある新聞記事だった。

『17歳奪われた命 2009年12月24日霞野高校2年、酒代咲妃さんは高校からの帰宅途中、無免許運転をした車にひかれて死亡した。咲妃さんの母親は当新聞の取材に対して、「咲妃は、いい子でした。将来の夢はギターリストになることで、毎日一生懸命に練習していました。私は、娘とそして未来を失いました。被疑者には真相を話して欲しいです。」と言っていた。』

あり得ない、絶対に。今私が見ている記事は現実のものであって私が生きているこの時間も現実だ。なぜ矛盾が生じるんだ?私は何だか息苦しくなってきた。とんでもなく、恐ろしくなってきた。私が数学を教えた咲妃は、死んでいた?なら、あの咲妃は…。あの咲妃は誰?もしかして、亡霊?怨霊?そう思った瞬間だった。また、扉をたたかずに咲妃が病室に入ってきた。タイミングが合いすぎている。なんで今来るんだ?!

「彩音、さっきごめんね~。」

咲妃の声がかすかに聞こえた。私はさらに苦しくなってきた。目の前に得体の知れないなにかがいるのだ。逃げたいが体が動かない。金縛りのようだ。

「咲妃、来ないで。あなたなんか、友達じゃない!」

私は叫んでしまった。そんなこと、言うつもりはなかった。だが、本当に怖かったのだ。何かされるかも知れないと思うと走り去ってしまいたかった。私は言った直後に猛反省した。なんて酷いことを言ってしまったのだろう。言ってはいけないことを言ってしまった…。しかしもう遅い。咲妃は目に涙をためてすぐに泣き出した。大きな声で。その声はだんだん大きくなって地面に水たまりができつつあった。私は咲妃の心の心配をすると共にさらに大きな恐怖に襲われた。怒らせてしまったから、何かされるかもしれない。どうすればいいんだ?!

「誰か、助けて…。」

私はかすれる声で叫んだ。

「私、咲妃に、咲妃に…あーっ!咲妃は亡霊だから、だから…私、あ一っ!!」

私はもう何が何だかわからなくて、ベッドからおりるとその場で倒れてしまった。パニック状態だ。意識がだんだん遠のいていく。前が見えない。あぁ、もうだめだ。苦しいよ。きっと私は咲妃に…咲妃に…。だれか、助けてくれ…。そう思った時だった。誰かが抱え起こした。そして私の左手を握った。誰?誰か、助けてくれたの?私は顔を上げた。しかし、そこにいたのはあろうことか咲妃だったのだ。私は驚きと恐怖で頭の中がごちゃごちゃになっていた。

「気づいたんだね、彩音。そうだよ。でも、何もしないから安心して。」

「でも、何で私だけにあなたが見えるの?恨みでもあるの?私、何もしていない!」

まだパニック状態の私が咲妃から安心してと言われても安心できる訳がない。私は今本当に亡霊を見ているのだから。

「彩音のこと、恨んでないよ。好きだから安心してね。私が恨んでいるのは私を殺した相手だけ。あなたが私を見れるのは多分交通事故に合った日が同じだからじゃないかな?私もよくわからないけど…。とにかく、心配はいらないよ。」

咲妃はその後、私の背中をさすってくれた。ほっとした。なんだか落ちついてきた。死んでいるとは思えない手のぬくもり。あったかい。そこに命は存在していないが、たしかに咲妃は存在しているんだ。亡霊だけど、友達なんだ。だから、何も恐れることはないんだ。そう思ったとたん、さらに涙が溢れ出した。

「もう、彩音。泣き虫だなぁ。」

あの時のように咲妃が涙をふいてくれた。なんだろう。なんとも言えない思いが沸き上がってきた。ほっとしたからだろうか。私は咲妃に抱きついた。

「咲妃…。大好きだよ。傷ついたよね。ごめん。」

「怒ってなんか、いないよ。驚いて当然だよ。私も彩音とずっと友達でいたい。友達、続けてくれる?」

「続けるんじゃないよ。続くんだよ。ずっと、いつまでも友達であることに変わりはないから。」

私はそう言って咲妃にもう一度抱きついた。咲妃が私と違う存在なのはどうでもいい。亡霊でも友達であることに変わりはないのだから。


いかがでしたか?感想を教えて頂けると励みになります。

ここで皆さんに質問したいのですが、作品を第三話から見たというかたはどのぐらいいらっしゃいますか?コメント頂けると助かります。よろしくお願い致します!

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