「これから、君と」
彼女が急いで隠した腕には確かに、青痣が痛々しく刻まれていた。
「それ、どうしたの………?」
「……なんでもない」
「いや、なんでもないってそんな」
「なんでもないのっ!」
何を言っても何もないの一点張り。最初は怪我かとも思ったが、その怯えた様子に虐待の可能性も出てきた。
「もしかして、お母さんとかお父さんになにかされたのか……?」
お母さんといったところで、彼女の体が硬直したのを俺は見逃さなかった。
「お母さんになにかされたの?」
「ち、ちがうの……だから、お母さんには、何も言わないで…..」
そう酷く怯えた様子で言う彼女の姿に、俺は我慢ならなかった。
大方、彼女の逸脱した容姿と髪色が原因だろう。
ただ怒りが込み上げてくる。
そんなことで彼女を傷つけたのか!
「君のお母さんに言ったりしないよ、絶対」
ゆっくり近づき、優しくギュッと手を握る。
一瞬ビクンと驚いたようだったが、同じ髪色というのがかなり効いたらしく、逃げることはなく、触らせてくれた。
そして、驚いた顔をした彼女に優しく語りかける。
「もしさ、君のお母さんに痛いことされて、助けてほしいと思っているんなら言ってくれ。全力で助けるから」
彼女のしゃがみこみ、彼女の視線に合わせ、しっかりと目を見て語りかける。
もし彼女が助けを望んでいるのなら、俺は全力で助けるつもりだ。幸い家の権威は相当ある。父さんに土下座頼みをしてでも頼み込むつもりだ。
いったいどれくらいの時間がたったのだろう。たった数分の出来事が、俺にはとても長く感じた。
彼女が意を決したようにようやく重い口を開いた。
「どうして、」
「ん?」
「どうして、そこまでしようとしてくれるの……?」
彼女の疑うような、そして不安そうな瞳が俺を射抜く。
何故だって?
そんなの決まってる。
「俺が君に一目惚れしたからだ」
「えっ」
「どうしようもなく君を好きになった。好きな人を助けたいと思うのは、当然だろ?」
「えっ?えっ?」
彼女は混乱しているようだが、かまわない。
信じてくれるまで言い続ける!
「君が好きだ」
「ちょっ」
「愛してる」
「ま、待って….!」
「結婚してくれ!」
「ちょっ、ちょっとまって!わかった、わかったからっ!」
「結婚してくれるのか?」
「ちっ、違うっ。いや、別にいやって、わけじゃ…….」
そう言って、顔を赤くして俯く彼女。可愛い。
少しの間彼女はあわあわしていたが、やっと落ち着き恐る恐るといった感じでこちらを見てくる。
「ほんとに?」
「あぁ、本当だ」
彼女のそれがどれに対しての問いなのかはわからない。
いや、全部に対してのかもしれない。
だが、どれであっても俺の答えは変わらない。
「本当だよ」
念を押すように言い、そっと彼女を抱きしめる。
抵抗することなく、彼女は俺の腕の中におさまった。
優しく、優しく、こわれものを扱うように抱きしめる。
少し経つと彼女のほうからも抱きついてきた。
時間が経つごとに、強く強く抱きついてきた。
そして最後には大きな声で鳴き声を上げた。
これが答えだ。
さぁ、彼女を救い出そう。
急展開すぎるけど、しょうがないんや。
でもやっと本編に....!