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「出会い、発覚」

 あれから半年ほど経ち、桜並木が目立ち始めた。

すっかり春の温かな空気になり、縁側でぬくぬくしていると母さんが近くの公園に散歩に行こうと言いてきた。父さんは仕事で今日はいなく、母さんも趣味のガーデニングも一区切りついた様だ。

俺自身あまり乗り気じゃなかったが母さんの笑顔には逆らえず頷いてしまった。公園で他の幼児に交じって遊ぶのは精神年齢的なことはもちろん、いろいろと問題が無理なんだけどなぁ。


そう思いながら母さんと手をつなぎ公園を目指す。近所の公園はとても広く多種多様な遊具も揃っている。この時期、多くの子ども達が遊びに来ている。




閑話休題(それはおいておいて)




唐突だが、この体はチートである。ただのチートではなく超絶チートと言っても過言ではない。才能の塊とも言っていいこの体はただ見る、または知識として知っているだけでその技術が身につくのだ。

分かりやすく言うと、知っていなくとも実際に見れば(動画でも可)完璧一歩手前の技術を身に付き、それを自身で一度でも実践することで完璧に習得することができる。

また見たことがなくともその知識を有していれば、大体は身につけることができるが、実際に見て学ぶことよりは完成度は下がるし、実際に実践してみても完璧に習得することは無理だが。


だから、そのことを知っている父さんはいつものサッカー勝負では一度使った技は決して使ってこない。だから俺もサッカー動画は見ない様にしてる。父さんは動画で見て練習してるみたいだからね。まぁ最近はそのストックも付き始めたから、今度はバスケにかなぁともつぶやいていた。


他にも、身体能力や頭脳に関しても超絶ハイスペックであったり、一度見た聞いた事を忘れることのない記憶能力などがある。これが転生特典というやつなのかと実感した。

人生をベリーイージーにしてくれた神様には感謝感激である。



だが悩みがないでもない。



「………」

 

 まぁ所謂ボッチなのである。来たるべき父さんとのバスケ対決の日々に向けてバスケボールを使い一人で練習しているのを、母さんが心配そうな不安そうな何とも言えない顔で見つめてくる。


 それを振り切るようにさらに集中して取り組んでいく。

 俺の頭で本来ないはずの黒髪が跳ねる。今の俺は本来の銀髪を隠している。

両親が言うに俺のばあちゃん譲りの銀髪は他の子ども達からは異質に見えてしまうだろうからと、黒のウィッグをつけている。

ある程度大きくなればそういったこともなくなるだろうが、今はまだまだ周りの子ども達は幼く純粋過ぎるのだそうだ。


子どもの純粋さは恐ろしく、思った事そのまま言ってしまうことが多い。

周りが皆黒髪なのに一人だけ明らかに違うとなると、それが気味悪く映ってしまいそれを排除しようする。悲しいな。

目は素のままだ。そこまでは気にしないだろうというのもあるが、俺自身コンタクトが嫌いなのだ。


遠くでは何人かの子ども達が楽しそうにサッカーボールを追いかけあっている


別に最初からボッチだったわけではない。


はじめは乗り気じゃあまりなかったが、母さんの笑顔には逆らえず普通に子ども達と遊べていた。だが俺が父さんとやっているように、とまではいかないが三割くらいの技術で子ども達とサッカーをしたら圧倒してしまったのだ。父さんと遊んでやっていたことのレベル予想よりもはるかに高かったようで、相当手加減したつもりだったのだがそれでも三、四歳には無理があったようだ。


俺も体験したことがあるが、遊びでもなんでもあまりにも力の差がありすぎると楽しみは生まれない。ただストレスがたまるだけ。

それからはただ時間が残酷に過ぎて行き、一緒にいてもつまらない俺はこうしてボッチとなった。


「あっ」


ぼーっと考えながらやっていた所為か、手の中のボールは跳ねながら遠くのブランコへといってしまった。

思わずため息が出てしまうが、そろそろ母さんの視線に耐えられなくなってきたので、その視線を振り切るように走る。

その間にボールはころころと転がっていき、ブランコに一人座っていた深くフードを被った子の足に当たり止まった。


「…..っ」


「あっ、ごめんね」


その子がボールに気付き、びくんと体を強張らせた。

悪いことしたなぁと思い、怖がらせない様に努めて優しく謝りすぐ立ち去ろうとした。

しかし、強めの風が急にふき、よろめいてしまった。


「あっ」


立ち去ろうとした後ろで驚いたような声が上がり思わず振り返った。


「……..」


その時、俺は天使を目撃した。

俺と同じプラチナブロンドの髪が風にさらわれ、日光に反射しきらきらと光る。

その小さな顔にくりくりとした大きな可愛らしい瞳。

まだまだ幼さがあるが、将来美少女になることが定められていると一瞬で理解できた。

本当に天使や妖精を彷彿とさせる容姿だった。


口の中が急激に乾き、何か話しかけようと思っても何も口からは発せない。

言葉を失うとはこのことか、と思った。

おそらくこれは一目ぼれなのだろう。




そう、俺は、ブランコに揺れるフードの女の子に恋をした。




「あっ、あの!」


「っ!?」


緊張の所為か、大きな声をあげてしまった。その所為で彼女がまたしてもびくんと体硬直させてしまった。

やっちまったー!

この年でこんなに緊張するとか恥ずかし過ぎる!

いや、お、落ち着け落ち着け。

優しく、優しく語りかけるのだ!


「ごめんね、急に大きな声を出しちゃって。俺は天導集」


「…………」


「えーっと、もし良ければ君の名前も教えてくれたら嬉しいかなぁ、なんて」


「………….」


くそ、反応が全くない!

彼女は少し驚いた顔をしていて何も言わない。

失敗したかなぁと思っていたらようやっと彼女が反応してくれた。


「…気持ち悪くないの?」


「えっ、なにが?」


「この髪、みんな気持ち悪いって…..」


「っ!気持ち悪くなんてない!むしろキラキラして綺麗だと思った!」


「…..」


思わず叫んでしまったが、彼女の疑うような眼は晴れない。

きっとこれまで散々言われてきて、信じられないのだろう。

だからさっきからずっと警戒を解いてくれない。

だが、俺にはとっておきの秘策がある!


「ほら、これを見て!」


「っ!そ、それ……」


バサッ!と勢いよく取り去ると、彼女と同じプラチナブロンドの髪が現れ、肩にかかる。

ちょっと長いかなぁと思うのだが、母さんとばあちゃんが切らせてくれないのだ。


「そう、君と同じ。だから嘘じゃない、その髪すごく綺麗だと思うよ」


「っ……あ、ありがと….」


やっと警戒を解いてくれた。

照れた様子も可愛い。やっと少し笑ってくれた。



だから、油断していたのか。



「そ、それって....!」



彼女の袖がめくれ。



「っ!?み、見ないでっ!」



ちらりと見えた腕には、青痣が痛々しく刻まれていた。


あと少し、あと少しで本編に.....!

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