8話 オケアス
拙い文章ですがよろしくお願いします
「ふー、やっと着いたわね」
アリアスがぐーっと背を伸ばす。
「ここがオケアスか〜。本当に街一個が城壁で囲まれているんだな。」
ちゃんとした都市は初めて見たな。こっちにきてから。
「じゃあ、街に入るか。どうやって入ればいいんだ?」
「たしか、この先に検問所があるはずなのよね。そこから街に入れることになってる〜。」
レイナの言う通り5分ほど歩くと検問所が見えてくる。
「うわ〜、大勢いるわね。これを見ると、ウルスラの緊迫した状況が本当なのかと疑いたくなっちゃうわね〜。」
アリアスが感嘆した様子で検問所の様子を見つめている。
東京駅とかの喧騒にちょっと似ているかもな。
「ほら、俺たちも並ぶぞ。遅れんなよ、アリアス。」
「あ、ちょっと待ちなさいよ。」
列に並ぶこと30分、やっと俺たちの番がやってくる。
「なぜ、オケアスに来たんだ?」
街の門番がアリアスを見て頰を緩ませながら聞いてくる。
ちょっとイラッとするな、なんでかは分からんが。
「田舎から出て来たんです。」
アリアスはそんな目線に慣れているのか淀みなく答える。
なぜ慣れているのかは知らないが。
ちなみにレイナは人嫌いのため、会話しようとはしない。
「そうか、この街は大きな街だからな。何をするつもりなんだ?」
「とりあえず、ギルドにでも登録しようと思っています。」
「そうか、一応全員の顔をみせてもらってもいいか?」
しょうがなくフードをとる。
門番が順々に俺たちの顔を見ていきレイナの顔を見たところで門番の緩んだ顔に翳りがさす。
「オッドアイか。私は何とも思わないが、他の人たちはそうではない。特に、騎士団とかはな。だから気をつけろよ。
行ってよし。次!!」
そう行って、街へと門番は迅達を入れてくれる。
「あの門番の人いい人だったわね。」
「ええ、まあそうね。ダーリンには全然劣るし話したいとも思わないけどね。」
「そりゃまあ迅は別よ。って違うわよ!?そのそう言うやつじゃないわよ!?」
アリアスが顔を赤面させながらあたふたする。
最初会った時は女神っぽかったんだけどなぁ。案外人間ぽいところもやっぱあるな。
てかそういうやつってなんだよ。
2人をぼーっと見ながらそんなことを考えていると、
「....え、ねえってば。聞いてるのかしら?」
「ダーリン??」
アリアスとレイナが不思議そうな顔で迅のことを見上げてくる。
「わるい。ぼーっとしてた。えーとなんの話だっけっか?」
「もう、だからこれからどうするのかってことよ!」
アリアスが呆れたようにしながらも再度教えてくれる。
このあたり面倒見がよい。
「そうだなぁ。まず当面の宿を確保しておきたいけど、どこかいい所知らないか?」
「前、私がお世話になっていたところでよかったら〜。そこは夫婦がやっているところなんだけど2人ともいい人で、珍しく私にもとても優しくしてくれたの。部屋も広くて防犯もしっかりしているしご飯もとても美味しいの〜。ここから10分ぐらいのところにある黄金の豚亭ってところなんだけど。どうかなー?」
レイナが上目遣いで聞いてくる。
あの他人嫌いのレイナがこういうんだ。いい店なんだろう。
「レイナがいいなら、俺はそこでいいと思うぞ。アリアスもいいか?」
「ええ。早く行きましょ。この荷物早く下ろしたいわ。ベッドでゆっくり寝たいし。」
アリアスがテンション高めである。どうやら久しぶりにふかふかのベッドでテンションが上がったらしい。
思わず苦笑してしまう。
「じゃあレイナ、黄金の豚亭に案内してくれ。」
それからレイナの後を追って歩くこと、10分弱。
レイナが二階建ての大きな店の前で止まる。
ここがどうやら黄金の豚亭らしい。店の一階が食堂となっていて、二階が個室となっているみたいだ。外観は昔かある老舗という感じがあるが不思議と汚い印象は湧かない。どちらかというと温かな雰囲気に包まれているような感じだな。
「タリアおばちゃーん。いる〜〜?部屋を借りたいんだけど〜。」
レイナに続いて中へと入る。中には昼を完全に過ぎたためか人はいない。
奥からドスドスとした足音が聞こえ、その足音が段々と近ずいてくる。
奥から出て来たのは、身長が高く、恰幅の良い割烹着の様なものを着たいかにもな中年の女の人だ。
「あら、レイナじゃないかい。あらお連れさんもいるのかい。私の名前はタリアよ。奥にいるのが旦那でこの店の主人のトーマスだよ。よろしくね〜。」
女将さんは俺たちに気づくとにこやかにで挨拶してくれる。
アリアスも女神モードでにこやかに挨拶する。
「あ、これはご丁寧にありがとうございます。アリアスと申します。こっちは迅です。」
「よろしく。」
俺もアリアスに合わせて笑顔を浮かべてみる。
レイナが自己紹介が終わったと踏んで用件を伝える。
「この街に少し滞在することになってね〜。それで3人で泊まるところを探しているんだけど、部屋とかって空いてる??」
女将さんは「たしか空いてたはずだけど〜」と言いながら、宿帳の様なものを取り出している。
「うん、二階の4人部屋の角部屋が1室だけ空いているわ。男女一緒になっちゃうからサービスするわよ。」
タニアがウインクしながら教えてくれる。
サービス精神が嬉しいな。
「本当に!?よかった〜ありがとう!!」
「料金は前払になっているから、先に払ってね。で、延泊したら別途もらうってことで。あ、ご飯とかってどうする?」
「じゃあとりあえず一週間で!ご飯はたしか朝と夜だったよねー、もちろんつける〜。タニアおばちゃんのご飯久しぶりに食べたいしね〜。今日の夜楽しみにしてるね〜。
んーとそれで料金はいくら??」
レイナがマシンガンのように話している。珍しい。
「ちょっと待ってね〜・・・。」
タニアが計算機の様なものを出してきて計算しだす。
それを見てレイナが小声で俺たちに
「タニアおばちゃんはこう見えて几帳面なんだよ〜。」
「そうなのか。見た目とのギャップがあるな」
と3人で小声で話していると、タニアが顔を上げる。
「ん?どうしたんだい?笑ったりして。まあいいか。ほれ、3人で銀貨二枚、大サービスさ!」
迅は顔には出さないが心の中で驚愕する。
やっす。日本じゃ1日しか泊まれないぞ。もしかしてこっちは物価が安いのかもしれないな。あとで聞いてみるか。それにしても俺、本当に何もこの世界のこと知らないな〜。
迅がそんなことを考えているうちに、話はいつのまにか進んで行く。
「よし、大体こんなもんだね〜。じゃあ部屋に案内するね。ついてきな。」
タニアの後に続いて、アリアスとレイナも階段を登っていく。
そこで、レイナがぼーっとしている迅に気づきトタタと戻ってきて
「ほら、ダーリン何してんのー。早く行くよー。」
と言って、腕にしがみついて一緒に階段を登って行く。
それを先に登っていたタニアが驚きの様子でついでにやつく。アリアスは難しい顔で俺たちを見てくる。
その視線に気づいたレイナが
「な、なによー??」
と照れたように言うとなぜかタニアがニヤニヤとしなが
「あんなに男が、ていうかヒューマンのことが嫌いだったあんたがそんな感じだから驚いてんのよ〜。へ〜あんたもそんな顔すんのね〜。」
それを聞いて、レイナが顔を赤くする。
「もう!昔の話はやめてよ〜
ほ、ほら早くお部屋に行こう!!疲れちゃったし。」
そう言って、レイナは迅の腕を持ったまま、そそくさと歩きだす。
「お、おいちょい待てって。危ないだろそんなに急いだら。」
だがレイナは迅の話も聞かずに先に行く。
それを未だにうれしそうに見つめるタニア。
女って困ったもんだ。それにしてもアリアス難しい顔してどうしたんだ?
そうこうしているうちにレイナが立ち止まる。
「ここだよー!」
そう言ってそそくさと部屋に入ろうとする。
ガチャガチャ。
が、開かない。
それもそうである鍵がないのだから。
「そんなに焦んなさんな。私もそんなに鬼じゃないし、これ以上は何も言わないよ。ほれ鍵だよ。」
その言葉にぱあっと笑顔を輝かせて、鍵を受け取るレイナ。
「じゃあ、あたしは店に戻るから。3人で部屋でゆっくりしなー。あ、防音はバッチリだから夜も楽しみな〜。」
そう言って、そそくさと食堂の方へと戻って行くタニア。
とんでもない爆弾を置いていったなおい。
「........................」
「........................」
「.....とりあえず固まってないで2人とも入るぞ。」
「そ、そうね。」
「は、速く入ろ。は、速く。」
そう行って、3人で中へと入る。
「お、結構広いな。これで銀貨2枚かよ。」
中にはベッドが四つあり、左右に二つずつ並べて置かれている。簡素な机と二脚の椅子があり、トイレも備え付けられているのにそれでも十分な広さがある。
レイナとアリアスが荷物を置き、同じサイドのベッドへと腰掛ける。
「あー、疲れた〜」
アリアスも同じ様で
「確かに疲れたわね。歩いて旅したのって初めてだから余計ね〜。久しぶりにベッドで寝れる。」
といって、ベッドにゴロンとなる。
迅もそれを見ながら、アリアス達とは反対方向のベッドへと腰掛ける。
「こうやってしっかり休めるのそういえば初めてじゃないか?ルーン村ではギルバートの家で気を使ったしな。」
「え、あんなに爆睡して気を使っていたの?」
呆れたようにアリアスに言われる。
何故呆れられたかは意味わからないが。
「当たり前だろ。あの時はちゃんと昼過ぎに起きただろ。家とかだったら1日中でも俺はすることなかったら寝ているぞ?」
「「はぁ。」」
2人から全く同時にため息が漏れる。息ピッタリかよ。
「これは私が悪かったわ。あなたが規格外な存在ってことを忘れてたわ。」
アリアスが露骨にさらに疲れた様子になる。
「まあまあ。そんなことよりもこれからどうする?俺は今日はこのまま宿にいるがお前らはどうする?」
「私も今日はゆっくりしたいわね。」
「私もダーリンといる〜。」
「じゃあみんないるってことでいいな。じゃあこれからの予定でも決めるか。
なんかしたいことある人!」
「「ショッピング」」
2人同時に威勢良く言ってくる。
迅はその圧力に若干引き気味になりながらも
「じゃ、じゃあ明日はみんなでショッピングで。」
迅は大事なことを失念していたことを後に悟る。
ブックマーク、感想、評価お願いします