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84話 威力偵察



 「はぁぁぁ!」


 アリアスの一刀が魔人の喉元に突き刺さる。


 「かはっ……なぜ貴様がこれほどの力を……確かにあの時神たちによって力を……」

 

 ありえない……。

 最後にそうつぶやいて絶命する。


 「これで全員ね?」

 「……いえこれで最後!」

 「ぐひっ」


 アリアスの背後に潜んでいたトカゲ型の魔人を風の魔法でレイナが屠る。


 「もう最後まで油断しちゃだめよ~」

 「ええ、ごめんなさい」

 「それにしてももうここ1週間で何回目なの~、魔人共の散発的な攻撃は」

 「もう4回よ、うんざりちゃうわ」

 

 でもまだロノウェやレータのような数字持ちじゃないのはましだけど。


 「私たちの戦力を図っているということかしら?」

 「でも自分たちでいうのもなんだけど戦力差は結構あるよ~? いくら結界があるとはいっても」

 「相手が持つ全軍を向けられたらまず間違いなく王都は落ちるでしょうね」


 しかし実際問題今は落ちてない。

 それはつまり……


 「戦力を集中できない理由があるということかしら」

 「でもこの状態もそう長くは……」


 続かない、そう言おうとしたのだろう。

 正にその瞬間。


 「き、緊急のご報告があります!」

 「……えーとあなたは?」


 早馬に乗って息も絶え絶えで現れた男。

 その装備は移動速度を重視したためか最低限のものしかもっていない。


 「はぁはぁ、じゅ、ジュリア様の使いのものです」

 「とりあえず落ち着いて水でも飲みなさい」

 「し、しかし……」

 「いいから飲みなさい。 そうでないと話が進まないわ」

 「そ、それでは失礼して」


 水をすごい勢いで飲み干す連絡の男。

 よほど急いできたらしい。

 それだけで何か重大なことがあったと察せられる。


 「……落ち着いた?」

 「は、はい! すみませんBランク冒険者でありジュリア様のご盟友の前で」


 アリアスとレイナはこの半年の間に冒険者ランクがBランクにまで上がったいた。

 それは自分たちが目標としていた迅よりも上。


 (ただ実力はあの頃の迅の方が強いんだけど)


 そんなことをふと考えてしまうがすぐに切り替えて目の前の男の話に集中する。

 そうしなければまた後悔の連鎖が止まらなくなってしまう。


 「それは気にしなくていいわ、それよりもどうしたの?」

 「はい、お二方には至急オケアスの方に戻っていただきたく……」

 「何かあったのね?」


 魔人が出たと報告がありオケアスを経ったのが一昨日。

 それからこの海岸線の町サノバに着いたのが昨日。

 町の警備隊の懸命な働きもあって町を防衛できたと思っていたのだが……。


 「はい、お二方が町を出て半日後に魔人軍の進撃があったんです」

 「オケアスに向けて?」

 「そうです、しかも偵察に出て無事に帰ってきたものの話では圧倒的な力を放つ魔人が複数隊いたとのことです」

 「てことは数字持ちが複数いるってことね」


 今のアリアスとレイナならここに20番台までの数字もちなら戦える。

 それ以上となると二人で戦っても勝てるかは怪しい。

 それほどまでに20とそれ以下との差は大きい。

 しかしこの国には結界があった。

 あれならそんな複数の魔人の侵入を許すはずがない。

 

 「結界はどうしたの? あれがあるうちは……」


 その話をした瞬間、伝令の男は悲痛そうな表情を浮かべた。

 

 「……まさか結界が破られたというの?」

 「いえ破られてはいません」


 その言葉に安堵しかけた。

 しかしその心は伝令の次の言葉をきいて凍り付いた。


 「しかし結界自体が解除されました」


 その言葉を聞いた瞬間思考が停止した。


 「…………は?」


 誰がそんなことを?

 そんなことをできるのは王族のみだがそれにしてもこの国を守る上で絶対に必要なものを手放すとは考えにくい。

 それぐらい常識的なことだ。

 そんな結界を解除するなんて狂気の沙汰としか思えない。


 「誰がやったかは分かっているの?」

 「はい、第一王子です。 しかしかの第一王子はジュリア様が解除したとの声明を発表しオケアスに向けてこちらも進軍してます」

 「権力争いに国の安全事態を巻き込むなんて……いえということはまさか」

 「はい、第一王子と魔人の連合軍が迫ってきています」

 「オケアスには誰が残ってる?」

 「フリード様を筆頭に騎士団の大多数、あとは冒険者ではBランクパーティーが3つ、Aランクが一人です。 それにオケアスにいたCランク以下の冒険者ですね。 複数人で相手すればただの魔人なら何とかなるはずです。」

 「……そう、相手の総数は?」

 「目算とのことですが魔人が1000、それに第一王子軍が5000、総勢では6000ほどかと」


 多い……

 対するこちらの戦力はオケアスにいるのは2000ほど。

 これでもこの半年間でジュリア達が必死にかき集めた結果だ。

 

 「分かった、とりあえず私たちは今すぐ戻るわ、あなたは少し休んでからこのことを各支部に伝え増援を要請しなさい。 さすがにこの状況なら日和見を決めている北部の貴族たちも動かざるを得ないでしょう」


 確かあそこには魔人嫌いで有名なゴーン公爵もいる、魔人に侵攻されたと知れば必ず増援に来る男、上から見たときにはそういう剛直な男だった。

 後はその増援が間に合うかどうか……ね。


 そんな不安を抱えながらアリアスとレイナはオケアスへ向かった。

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