83話 半年後
オケアスの領主の名前忘れてたのでめちゃくちゃ探しました(汗)
ついでにロノウェ戦の辺り改稿しました。
内容に大きな違いはありません、少々読みやすくしただけです!
宜しければご一読ください!
迅がレータによって魔王城へと転移させられてから既に半年が経っていた。
なのに……
「なんの連絡もない……」
窓から空を見てみれば既に日は落ちかけている、もう直に真っ暗になるだろう。 この半年間の記憶を思い出す。
私とレイナはジュリアの依頼もあってここ半年はオケアスを拠点にして冒険者として活動していた。 ジュリアの依頼だから留まっていたというのもあるが、それ以上に見過ごせない問題がレータの尋問によって出てきてしまったのだ。
「もう後2週間もしたら戦争か……」
そう、レータの情報によれば魔人軍が総攻撃を仕掛けてくるらしい。 これはレータの情報だけでなく、各都市部にも王城から伝達が来ている。
『魔人軍に大群でウルスラへと近づく気配あり。 食料などの備蓄を集めてはじめていることから時期は3か月後とみられる』
この電報が領主のガースとフリードのもとに来たのが二か月ちょっと前。レータの情報とのすり合わせで第一王子、第二王子の罠の可能性が排除されたのである。
「魔人との戦争か……」
彼らの一人一人が、ヒューマンと比べて圧倒的な個の力を持っている。
数ではこちらが勝っているが、それでも旗色は良くない。 良くて勝率は20%と言ったところだろう。
「こんな時に迅がいてくれたら……」
思わず本音が漏れてしまう。
「何をたそがれてるの~?」
「えっ」
後ろを振り向けば、いつの間にか笑顔を浮かべたレイナが立っている。
「まぁ、弱音を言いたくなる気持ちは分かるけどね~。 ダーリンからは連絡は一切ないし~」
「ほんっとに今何してんだか」
迅に限って死んだということはありえないだろう。
何とかして魔大陸でも生き延びているに決まっている。
なんなら魔人に囲まれたって平然と全滅させていそうな予感すらある。
そんなことを考えていると……心配するだけ無駄な気がしてきた。
というかふつふつと怒りまで沸いてきた。
「帰ってきたらまた模擬戦をやらせましょう、うん」
「強くなった私たちの力を分からせてあげようね~、ダーリンの、身体に」
「魔人と闘って倒した時よりもやる気がみなぎるわね」
「ダーリンに恨みありすぎでしょ~」
「あら、迅が悪いのよ、私たちをほっといてどっかにいって連絡さえよこさないんだから」
迅が連絡をよこさないこの半年間、私たちは実力を上げるために血反吐を吐く思いで戦ってきたのだ。そのおかげで迅と一緒にいたころはDランクだった冒険者ランクも二人してAランクまで上げることが出来た、まぁこれは私たち二人のパーティーとしてだけど……。
それでも私たちはあのころよりも格段に強くなった。
「それでどうしたの? 何か用があるから私のところに来たんじゃないの?」
「あっ、そうだったわ。 ジュリアが私たちのことを呼んでいるから呼びに来たんだ~」
ジュリアが?
「てことは戦争関係ね」
「だと思うよ~」
「じゃあ、行きましょうか」
「もう下にいるよ~」
「ちょっと急ぎましょう、待たせるのは悪いわ」
私は開けていた窓を閉め、レイナと共にジュリアが待つ階下の部屋へと向かった。
*
アリアスたちの会話より一月ほど前へとさかのぼる。
「準備はどうだ?」
「はい、糧食、ポーションなどの準備は滞りなく準備できています」
「ふむ……」
玉座に座る男は鷹揚にうなずく。
「して、第57位のオセと第61位のザガンと連絡はとれたか?」
「オセは第一王子の篭絡は完了との事、いつでも展開している結界を壊すことは出来るそうです。 それでそのザガンですが……」
そこで言葉を詰まらせる。
「悪い知らせなのだろう、良い、申してみろレラジェよ」
「はっ、ムルムクスに続き、61位のザガンもどうやら倒されたようです」
「やったのは誰だ? 同一人物か?」
「いえ、それは分かりません。 ただムルムクスはご存じの通り、自身が使っていた死体にトラップを仕掛けていました」
「ああ、お前がわざわざ付与してやった転移魔法であろう?」
「はい、それは問題なく発動されています。 それでもやられたということは複数の相手がいたのでしょう。 ただそのうちの一人は転移しました」
「どこにだ?」
「……魔王城です」
「……魔王城? それほどの相手だったと言うのか?」
「そうなのでしょう。ですが飛ばされたものについては、考えなくてもいいでしょう。 あなたと同じシングルナンバーが複数いる場所に飛ばされて生きているはずはありませんから。 そうでしょう? アガレス様?」
アガレス様は顔をピクリとも動かさない。
何かをお考えのようである。
「まあ痛み分けといったところか。 ヒューマンの数少ない戦力を減らせたのだ。 どやつもヒューマンでいうところの冒険者ランクAかBぐらいのものだろう。 それを削れたのは良い。 問題は魔王城へと転移陣をおいていることがばれたことか……。それえお考えるのは後でもよいか、続けよ」
「ザガンをやったものたちの名前は判明しております」
「ほう?」
「片方は我々が探していたやつやもしれませぬ」
その言葉を聞いた瞬間、アガレスの黄色の双眸がわずかに見開かれ、次いでその顔には喜色が浮かぶ。
「アリアスか?」
「名前上はそうなっております、それとレイナという名ですね。 二人とも冒険者だそうです」
「ほう、ということは今度の戦い、そ奴らは来るであろうな」
「ええ、もし女神のアリアスならば絶対に来るでしょうね」
「楽しみがまた増えたようだな。 はっはは」
一笑いすると満足したのかアガレス様は、すぐに厳しい顔つきになる。
「魔王城の腑抜けたやつらは?」
「今のところは……としか」
「ヒューマンよりもこちらのほうが厄介だ、重々気をつけよレラジェ」
「はっ!」
レラジェは報告し終わるとアガレスの部屋を退出する。
その寸前。
「お前を殺すのを待ちわびたぞ、アリアスよ」
アガレス様の喜色に満ちた声が聞こえてきた。