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82話 これから


 「そうですか…………レータは魔人だったのですか…………」


 沈痛な声を出すのはジュリア。 隣にいるシュアも声にこそ出さないが非常に厳しい顔色をしている。 多分私達もそんなにいい顔はしていないなずだ。


 なんせ私たちは今、要の迅を失っているのだから。



 あれから私とレイナは一旦、ジュリアたちがいる宿へと戻って来ていた。 元々ジュリアを守るという名目の元で戦っていたし迅からも言われていたからだ。

 それに落ち着く時間も欲しかった。


 「ということは第1王子が魔人繋がっている、少なくとも関わっているということになりますかね?」

 「ただ利用されてるだけということも有り得るわ、ただいずれにしてもこの国に魔人がかなり入り込んでいるというのは確かね。私たちが戦った2体だけとも考えにくいし」

 「また厄介な問題になりましたね」


 ジュリアの政争に魔人の侵入。

 相手の戦力はこちらの予想よりも強そうだ。

 迅がいない今では、私たちだけではジュリアの戦力としては明らかに物足りない。

 彼がいるといないでは話が変わってくるのだ。 なんせ迅は魔人を単体で倒せる程の実力を持っているのだから。


 「彼が飛ばされてしまったのが悔やまれますね……」


 ジュリアも同様の考えに至ったのだろう。


 場に重苦しい沈黙が漂い始める。

 だが、この沈黙を破ったのは以外な人物だった。


 「今はいないもののことを考えるのは止めましょう。 そんな後ろ向きなことを考えていても時間の無駄です。 私は小難しいことはよく分かりませんが、それでもいないもののことを考えて今後の具体的な方針を考えないことが良くないことというのは分かります!」


 シュアの言葉を聞いていた私も、レイナも、そして彼女の主であるジュリアでさえもその発言に、しばし呆気に取られてしまう。


 「…………すいません、出過ぎた真似を致しました。どのような懲罰も覚悟しております。」


 シュアがジュリアの目の前で跪く。


 「…………面をあげなさい、シュア。 私はそのような事で懲罰にしたりしません。 あなたは私のことを思って言ってくれたのだから。そのようなものを懲罰するのは愚の骨頂。 それに正道に導いてくれたものを懲罰するほど私は面の皮が厚くはありませんしね」

 「お嬢……」


 ああ、この2人の信頼関係は既に主君とその臣下というだけではないらしい。もっと深いところでつながっている、そんな関係、例えるなら親友、いや家族というものに近いのかもしれない。

 

 それに比べて私たちの関係は…… いえ、これは今考えることではないわね。


 「今後の方針を考えましょう」


 ジュリアはさっきとは一転した、毅然とした眼差しへと変わっている。


 「元々、私たちはオケアスに向かっていました。 レータアクセラたちの攻撃を受けてやむを得ずにこの町に訪れることになりましたが……。 あそこに向かえば私の味方になってくれる方が少数ですがいるはずです。 元々その手筈でしたし、そこでオケアスをまずは制圧します」

 「オケアスを制圧~? なんで~?」

 「なんでって、あそこは私の派閥ではないからです。 確か今はルーカスって男が領主をー「ちょっと待って」


 ルーカスって確かロノウェに殺されていた男だってはず……


 「あれ~? ルーカスって死んだよね、確か」

 「ええ、確か。 今はその父の名前はなんだったっけ、まぁ、その父親が領主に戻ったはずだけど」

 「え? え?」

 「それで騎士団はフリードがまとめてたはずよ?」


 ……あ、ジュリアが固まった。


 「どうやら私たちとジュリアの間に認識の齟齬があるようね」


 それから私たちはオケアスで私たちが行ったことをかいつまんで説明した。







 「ってことは、ええ!? 迅さん、この街に来る前にも魔人を倒してたんですか!? そりゃただものじゃないととは思ってましたたけど、まさかそこまでとは……」

 「ええ、まあね、その時の傷を癒すためにこの街にきたのよ……まあ結果、こうなったわけだけど……」


思わず苦笑してしまう、どんだけ迅はトラブルに巻き込まれているんだろう。 彼がこの世界に来てからまだ一か月ぐらいしか経っていないのに。


 「そうですか……まずはありがとうございました。 フリードを助けていただいて」


 ジュリアが深々と頭を下げる。

「私たちは出会う前から迅さんに助けていただいていたんですね。 これで不安要素はもうありません、さっそく明日にでもオケアスに向かいましょう、今は一刻も早く味方が欲しいですし……

 それでアリアスさんたちはどうしますか? 私としては、ついてきていただきたいんですけど」


 これから私たちがどうするか……


 「私たちは強くならないといけない、迅の隣に一緒に立てるぐらいに」

 「そうだね~、今の私たちじゃ明らかに力不足だからね~」


 そう、私たちじゃ魔人とは戦えない。勝てない。

 だから……


 「あなたたちについていくわ。 あなた以外の王だとヒューマンが滅びそうだもの。 それこそ私たちが力をつけるその前に」

 「でも~、ずっとじゃないよ~」

 「それに私たちは冒険者として活動するわ。 力もつけたいし。 シュアみたいにずっとってわけじゃない。 それでもいいなら一緒に行かせてもらうわ、迅が戻ってくるまでだけど」

 「それで大丈夫です! お二人がいれば心強いですから!」

 「それじゃ、よろしくね」

 「はい!」


 和やかな笑みで二人は握手した。



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