76話 アンデッド
お久しぶりです。
今回の話はアリアスたちがメインです。
混乱しないように追記させていただきました。
アンデッドというのはその名の通り、ヒューマン、魔人、獣人などの死体が魔獣化したものと言われている。アンデッドは生前に強い怨念などを残して死んだ時などに死体がアンデッド化する。そしてアンデッド化した死体は誰彼構わず見境なく襲ってくる、ヒューマンも、魔人も、獣人も関係なく。
そのため戦争などが起こりアンデッドの大量発生が確認された場合はどの大陸でもアンデッドの処理が優先される。なぜならアンデッドが発する腐臭などは凄まじくまた疫病などを撒き散らし原因ともなるからだ。
アンデッドそのものの実力自体は大したことはなく動きも他の魔獣と比べれば比較的トロイ。 ただそもそも発生させないことが望ましく、そうしないために死体を焼き、遺品だけを持ち帰るのが戦場での常識となっている。
だからこの程度の大量のアンデッドが自然に湧くということはありえないはずだった。人工的にアンデッドを発生させない限りは。
レータたちのアジトを出た2人は目の前のアンデッドの数に思わず息を呑んでしまう。
アジトを中心として、大量のアンデッドがアリアスたちの元へと押し寄せてきている。
その数は軽く見ただけでも200は超えており、その数はさらに増え続けている状態だ。
「「「グ……アァァァァ。」」」
「……どんだけ大量発生してんのよ。これは自然発生したとは考えにくいわね。 」
十中八九誰かが、いやおそらくレータたちが意図的にアンデッドを発生させたのだろう。 そうとしか考えられない。そうじゃなければレータたちにとって都合がよすぎる。
「ならどこかにアンデッドを操ってる黒幕がいるってことになるね~。レータの仲間の誰かが、しかもこの辺りに隠れてるはずね~。黒幕を見つけるためにもアンデッドの数は減らすべきだけどそれにしてもこの数を2人で殲滅ってかなり厳しくなーい?」
「そうね、でもやるしかないわよ。じゃないと……。」
アリアスたちの脳裏に浮かぶのは失敗したことを知った時の迅の、人を小馬鹿にしたような、おちょくったようなそんな笑顔。
それはレイナも同様だったようで苦笑している。
「流石にダーリンに笑われていじられるのは嫌ですね〜。」
そこにあるのは迅への絶対的な信頼。
彼女らの中では迅が負けるなんていう前提は存在していない。
故にアリアスたちもこんなところで負ける訳にはいかないのだ。
いずれこんなアンデッドがちよりも遙かに強いはずの数多の魔人たちと戦いそしてその全てに勝たなければいけないのだから。
そう考えていた。
「さっさと終わらせましょう。 こんなアンデッドごときに手間取ってなんかいられないわ。 だから、レイナ例のアレお願いできるかしら。」
それだけでアリアスのの意図は通じたらしい。
すぐに魔法の詠唱をし始める。
「じゃあ、私はそれまでの間レイナに敵が集まらないように注目でも集めましょうか。」
アンデッドに向けてアリアスは一直線に飛び出していく。
アリアスは何の考えもなしにアンデッドの群れの中へと飛び込んでいったわけではない。
そもそもアンデッドは火や水の魔法でも倒すことは出来る、他にも剣で戦斧なども使え他の魔獣と同様に攻撃は通る。
だがただそれは倒せるというだけであって、アンデッドにとって効きやすいというわけではない。 火が水に弱いようにアンデッドにも聴きやすい属性というものがある。
1番アンデッドに効く属性が何かと問われれば光に冒険者なら誰もが答えるだろう。そしてアンデッドとの親和性が高い属性は闇である。
そしてまた元女神であるアリアスは力の多くを失っているとはいえ、存在それ自体が光のようなもの、さらにその上の聖なる属性とも言える。 そのため常人なら、通常の属性を何発か当てなければ倒せないアンデッドも彼女なら1発で倒せるのだ。
そういう点では今回のアンデッドはアリアスにとっては相性の良い魔獣と言えるだろう。
「魔法撃つね〜。」
レイナの声が聞こえたのと同時にアリアスは射線上から退避。
それを視認した瞬間に魔法を発動する。
「風魔法 エアーヴェステイラー。 」
ハイアルベロ戦でも見せたレイナの風の魔法。
金の風が生み出され、アンデッドへと向かってその腐った肉体にに当たった瞬間に金の風が細切れへとしていく。
魔法が収まった後には前にいたアンデッドの大半が物言わぬ肉塊と化していた。
「うーん、まあまあかな〜。」
そう言いながらもレイナは既に次の魔法の詠唱に入っている。
「なら私のやることは変わらないわね……。 レイナのための露払いってのはあんまり気乗りしないけど。」
そうぼやきながら新たに現れたアンデッドへと向かって行った。