75話 VS レータアクセラ
1月ももう終わりですねぇ。
「ここは見通しが悪くてよくないですね、ちょっと広くしましょうか。 光魔法 拡散光弾」
「くっ。」
魔法は目くらましにもなっているのか爆発的な光を見せ、一泊遅れて上から木屑などが降ってくる。
しかしそれを悠長に確認している余裕はない。
目が少し開けられるようになった時には既にレータが肉薄してきて剣を振りかぶっていた。
「じゃあ、会ったばかりだけどもう死んでよ、名前も知らないヒューマンさん?」
「はっ。それはちょっの気が早いんじゃないか?」
村正で斬撃を防ぐ。
「まぐれはそうは続かないよっ!」
剣による斬撃を幾重にも渡って放ってくる。だが甘い、その程度どうとでも出来る。
レータの斬撃を全て防ぎ切り逆にレータを外へと吹き飛ばす。
「くっ、な、なぜ!?」
レータの後を追って地面へと着地するとレータが動揺しているのが分かる。 そしてその動揺は焦りにも繋がり不用意なミスをレータに犯させる。
真正面から大きく振りかぶりすぎだ、レータくん。
「ほらよ。」
レータの胴体に俺の斬撃が数瞬早く届き、レータが思わず仰け反り後ろへと下がらせる。
「チッ。」
角度が浅かった、それに身体の下に鎧でも着込んでいるのか、ダメージは無いに等しい。
だが肉体的にダメージはなくても精神的には応えたようだ。
「へぇ、たかがヒューマンごときが僕に攻撃を当てるとはね。どうやら君には目くらましとかは効かないようだね……。」
「かもな。 ていうかお前もヒューマンだろ。」
実際はちょっと違うんだが……。
俺はがっつり目くらましを食らっていた、だがレータの接近に気づいた、理由は簡単で俺は一人で闘っている訳では無いから。
『やはり難しいですね。感覚を伝えるのは。』
いや、今回はうまくいったと言えるんじゃないか?
『ですが反撃にまでは繋げられませんでした。修正します。』
その向上心はいい事だな、今度練習でもしような。
「まあ目くらましが効かないからと言って別に困んないんだけどね。 じゃあ、ちょっとだけ本気で行こうかな?」
そう言った瞬間、レータの雰囲気が一変する。
本気になったというのは本当らしい。
「ま、だからどうしたって話だがな。」
「は、戯言を。大概のやつはそう言うよ、俺の実力を目にするまではなァ。」
レータはなぜか自身の指をこちらへと向ける。それはまるでこれから何かを発射するかのような、そんなポーズに見える。
「おい、動かなくていいのかい? 指弾。」
なにか白い物体がレータの指から連続して発射される、それはまるで機関銃のように襲いかかってくる。 だが躱せない訳じゃない。
横にスライドして指弾を躱す。通り過ぎた指弾は迅の後ろにあったレータたちのアジトへと突き刺さっていく。
「これは最初に俺を襲ってきた時と同じ攻撃か。……だがタネが判れば怖くないな。」
そのまま一気にレータとの距離を縮める。
「ハァァァァァ。」
「そんな単調な攻撃、僕の拡散光弾で。」
天井を吹き飛ばした時と同じように爆発的な光がレータから生じ、ついで細かな光弾が波のように迅へと襲いかかってくる。
「バーカ。同じ魔法が通じるかよ。」
それを後ろには下がらずあえて斜め前に踏み込むことで回避し、逆に魔法を放って隙だらけのレータへと一気に肉薄する。
「えっ。」
「驚く前にやんなきゃいけないことがあるんじゃないか? まあもうどうしようもないけど。 」
村正で、鎧の巻かれた胴体ではなく無防備にさらされている、剣を持つ右手を斬り飛ばす。
「ギャァァァァァァァァァ。」
レータは右手を抑えながら地面をのたうちまわり、蹲る。
「弱いな。」
率直な感想だった。確かに最初に相手をした奴らよりは強かった、だがそれだけだ。とてもAランクとは思えない。こんなのが魔人たちと戦える、ましてやロノウェなどといい勝負なんてことはありえないように思えた。
一体どうなっている? 何かが引っかかる。
そしてレータを殺そうと視線を向けるとふと違和感を感じた。
何かがおかしい。この場になくてはならないはずの何かが欠けている。
「チッ、とりあえずレータを……。」
ふと視線をレータの方から感じる。
目線を下げると、レータは嗤っていた。
「やーっと引っかかった。」
俺が斬った右腕を俺の顔面へと向けてくる。
違和感の正体はこれ……か! 血が出ていないのだ。村正で斬ったはずの右腕から、一滴も。
「なにも僕が飛ばせるのは指の骨だけじゃないんだよ。 骨弾。」
至近距離から発射されたのは右腕の尺骨。
くそっ、今の状態じゃ反応できない。
ああ、くそったれ。
今の状態じゃ反応できない、ならどうするか、使うしかない。あれを。
ホントは使いたくないが……。なりふり構ってもられないよな。
使うのは10%ってところか。
「無属性魔法 等価交換発動。」
紅のオーラが迅から吹き出した。
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