67話 話が長い。
章をきちんとつけてみました。
リリィの声が店内に響いたかと思うと、迅の横にいきなり実体化してくる。
「おい、リリィ。いきなり横に立つなよ。びっくりするだろうが。」
咎めるような口調でリリィに一応の抗議をしてみるがリリィに逆に咎めるような目線で見られてしまう。
「びっくりするって。そんな訳ないでしょう。ていうか御主人こそ何をしているんですか?御主人ならサイっていう愚物が暗器を出そうとした瞬間には制圧。店内にいる愚物の仲間たちも3秒とかからずに制圧出来るはずでしょう。それがなんですか。村正が使えないからとか、理由をつけては基本的に回避しかしてないじゃないですか。」
烈火のごとく不満が出てくる。よく噛まないでそんなに長い言葉を言えるなと思わず感心してしまう。
だが、俺も言われっぱなしではいられない。
「とは言ってもだなぁ。あの時点ではただ武器を持っていただけだったし。な?」
「何がな?ですか。というかどの口がそんなことを言うんですか。今まで問答無用でやってたじゃないですか?……はぁ。わかっていますよ。ちょっとこういうイベントに酔ってたんですよね。厨二心に火がついちゃったんですよね。分かってます。ハァ。」
あ、二回もため息をついたぞこいつ。ただ事実だから何も言い返せないのが辛いところだ。
そう、律儀に話を聞いてあげたのもぶっちゃけそれだけの話なんだ。攻撃をあんまりしなかったのも。
「私もそう思って待っててあげたんですけど。長いです。長すぎます。
ぶっちゃけ早く帰りたいです。なので1分以内に早急に、そ・う・きゅ・うに終わらしてください。」
「お、おい。1分て。流石にそれは・・・。」
無理とはリリィさんが言わせてくれません。俺の言葉に被せるように、
「いいですね?返事は?」
なぜかわからないが、有無を言わせぬ迫力の笑顔だ。
そんな風に言われたら俺に言えることはもう・・・。
「はい・・・。」
あの迫力には勝てないって。男は女には弱いのである。はぁ。
俺たちの会話がひと段落した頃になって、ようやく敵さんもフリーズが解除される。
「お、おい。あの女。どこから現れたんだよ。」
「ていうか誰だよあの女は。」
「いや、それよりもどうやってあいつ俺の魔法を弾いたんだ。」
「今の話だとあいつ遊んでたってことかよ。ふざけやがって。ぶっ殺してやる。」
思い思いのことを言い始める敵さん。
「うるせぇ。そんなことは今はどうでもいいんだよっ!それよりも今はあいつを倒すことに集中しろ。話は後からだ!!」
サイがそれを一喝して黙らせる。
リーダーとしてはある程度はできるようだ。本人の実力は大したことないがな。
仲間たちが落ち着いたのを見て俺へと向き直る。
「随分とコケにしてくれるじゃねーか。舐めやがっ・・・。」
ナイフを構えながら意気込むがそこでサイの言葉は途切れる。
「サイ、どうし・・・なっ。・・・?」
店員がサイの方を振り向くと、そこにはすでに首のないサイの姿が。
そして一拍遅れて、血が噴き出す。
迅はすでに元の場所に戻っている。
「あ〜。すまん。俺にはもう時間がないからさ。あいつの話聞いてる暇はないんだよ。だから黙ってもらった。物理的にだが。」
最高級な笑みを残りのやつらにプレゼントしてやる。
残りの9人の反応はというと。ほう。なかなか興味深いな。
4人は顔が若干固まっていて、他の4人は怒りが顔に張り付いているなぁ。んでさっきまで威勢の良かった店員の様子はっと。
冷静に状況を分析しようとしている感じだなぁ。
「貴様。一体どうやって。いつの間に。」
「いや、別になんてことはないぞ?ただ斬っただけだ。
もうそれより、話すのもめんどくさいってか怒られるからな。だからもうしゃべるな。これ強制だからb。」
迅は自然な動作で残りの残党へと歩み寄る。
それは敵でさえも一瞬見惚れてしまうほどのもので、しかしその一瞬は戦いにおいては致命的だ。
迅の間合いに入ってからそのことに気づき、慌てて自分の武器をそれぞれ構えるが。
「もうおせーよ。」
迅は既に村正を一閃していた。続いて、二閃、三閃と村正を振るう。
「がはっ。」
「くっ。」
「がっ。」
それぞれが地に伏せる。
魔法師が慌てて詠唱を開始し、魔法を構築しはじめるが。
「ほれ、さっきの返すよ。フレイムバインド。」
迅のコートに巻きついて霧散したはずのフレイムバインドが出現し、魔法師の体へと巻きつく。
「こ、これは俺の魔法・・・。がぁぁぁ。熱い熱い。」
必死にフレイムバインドを振りほどこうとするが、炎の麻縄が取り除かれる様子はない。
「うるせーな。」
迅が魔法師に近づくと掌底を一発当てて魔法師の意識を刈り取る。
「残り4人か。」
迅はそのまま村正を一閃していく。
「なんですと。こんなにあっさりとやられるなんて。これでも、ある程度の腕はあるはずなのに。完全に戦力を見誤っていたか。この男がこれほどまでとは。これは一刻も早く報告をしなくては。」
迅はその間も敵を倒していく。
店員は最後の1人の背中をポンっと押す。そしてバランスを崩した男は迅の方へと向かってくる。
「なっ。」
「仲間を囮に使うかぁ・・・。」
迅は呆れながらも敵に同情するわけがなく囮を村正で薙ぐ。店の壁へと激突する。前を向くと既にそこに店員の姿はなく、店の奥の通路を走っている。裏口から逃げるつもりだな。
だが、それを見ても迅は追いかけない。
「逃げられるわけがないだろ。そっちは行き止まりだよ。」
逃げる店員の目の前に現れるのは、ゆるくパーマがかかる黒と紅のグラデーションのある髪だ。
それを視界に収めた店員は、手に持ったナイフを目の前のリリィへと向かって突く。
「おいおい、それは悪手だろ、完璧に。」
リリィはナイフをついてくる手の推進力をそのまま回転へと変えて、さらに店員の足を払い、そのまま俺の方へと向かって一瞬にこりと微笑むと、こちらに向かって吹き飛ばしてくる。
合気かよ。
迅はなんでリリィがそれを使えるんだよと内心で愚痴りながらも、飛んできた店員を峰打ちで気絶させる。
「これでここにいるのは全部倒したな。」
ふーと、一息つくと、村正を鞘へと戻す。
「何がふーですか。最初から本気でやって終わらしてくださいよ御主人。そしたらもっと早く終わるはずだったのでは?」
「え?俺最初から本気出していたよ?」
「はい、なんですって?」
リリィの言葉を聞いた瞬間に直感した。
あ、やば。ミスったかもしれない。
その迅の言葉が一旦落ち着いた迅への怒りを再燃させた。
「あれのどこが本気を出していたと言うのですか?相手のとてつもなく鈍い攻撃を躱すだけで全く攻撃をしないですし、そりゃ私も最初は様子見なのかなと思ってたんですよ。なのにですよ。全然攻撃しないですし。在ろう事か敵とおしゃべりをし始めてるんじゃありませんか。情報を聞き出すわけでもないですし。さらに、なぜか最初は武器を使わずに戦ってましたよね>いえ、別にいいんです。それでも。室内だから使いにくいからなのかなと。そしたら最後のあれはなんですか。もう普通に村正使っちゃってるじゃないですか。もうあれで確信しましたね。あ。これこのシチュエーション楽しんでるだけだって。と言う事で詳しく聞かせてくださいね。その愚物どを縛っている間、暇ですからね。kwskお願いします!!」
完全にバレていて何も言うことが出来ない。
というか、リリィは俺の心が読めるんだから別に言う必要はないんじゃ・・・。
そんなことを考えた瞬間、リリィが間髪入れずに、
「言う必要なくないですからね。こういうのは言葉にすることに意味があるんですから。」
ニッコリと微笑みながら宣われる。
「はい・・・。」
敵さんを縛りながらきつく尋問された迅だった。
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