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66話 他人が優しいわけがない



「ああ。すみません。いきなり手を差し出しても意味がわからないですよね。握手して下さいってことです。迅さんは将来とても有名な人になりそうですからね。」


屈託のない笑みでサイがそう言ってくる。簡潔にすると、将来有名になりそうだから今のうちにコネクションを作っておこうって考えてるよ☆ってことか。

なるほどな。


「そうやって油断させて俺を殺すつもりなのか?」


「え?」


サイは何を言っているのかわからないといった表情だ。

いきなり自分を殺すつもりなのかなんて言われたら普通はそんな反応するだろうな。もし、これを現代でやったならそれはもう簡単に、中二病判定されることは想像に難くない。

とはいってもまあ、ここは異世界だ。それはないとしても、変人扱いされるのは間違いない。こいつが()()のやつならだがな。


「え?って。嘘だろ?俺がこんな手に引っかかるとでも思っているのか?」


思わず苦笑が溢れてしまう。


「いやぁ、それは無理だろ〜。流石に。まずさっきまで戦っていた俺をお茶に誘うってのはまずおかしいだろ。まあ、純粋にそういう奴もいなくはないのかもしれないが、あいにく俺にはそういう経験はない。」


「そ、それはあなたがーーー。」


「次にだ!」


サイが何かを言いかけた気もするがそのまま続ける。まさか人付き合いの経験が少ないだけとか言おうとしてたわけじゃないはずだ。


「なぜお前があの通路を知っている?あれは一部のものしか知らないものなんだろ?」


「そ、それは私が地元のものだから、訓練場を使っている時にたまたま気づいてですね・・・。」


ああ言ったらこう言うって感じだ。

いい加減こんなやりとりもめんどくさくなってきたから確信に触れていこうか。


「じゃあ、そういうことにしといてやるよ。んでじゃあ聞くけどさ。お前のその腕の中に仕込まれている小さい針はなんなんだ?まさか友好関係を築きたいっていってた相手に暗器みたいなものをを差し向けるわけはないよなぁ?」


一瞬の静寂。


「ああ。そういう道理だよっ!!」


今までの丁寧な言葉遣いから一変して粗暴な口調になり、それと同時ににサイの腕が跳ね上がり、俺の腕をつかもうとしてくる。あの小さい針で殺せるわけないから先端には何かしらの毒か何かが仕込んでいるんだろう。


迅はサイの腕を間に置いてあったテーブルを蹴り上げて迅の体から逸れさせる。


「チッ。」


サイは腕を一旦引っ込めると、懐から何かを取り出そうとする。


「させると思ったか?」


迅とサイの距離はさほど離れていない。サイが懐から何かを取り出す前に倒すこと朝飯前だ。


「そんなことはわかってるんだよ」


サイが言った瞬間、横合いから何かが飛来してくる。

それを首を後ろにずらすことで回避。

その間にサイはナイフを取り出すことに成功する。


「よく避けれましたね。」


横を見てみると、先程エールを出してくれた店員が肉を切る時とかに使うナイフを投擲したようだ。


「そう難しいことじゃないさ。サイが敵なんだ。その敵がわざわざ連れてきてくれた店なんだから全方位警戒していて当然だろ?」


周りをみて見れば、店内にいた客の全員がそれぞれの手に手斧や小剣、棍棒などの武器を手に持っており、そしてその一つ一つが小回りが利きやすく、屋内での戦闘に使いやすいものが選ばれている。

対して迅の武器はいつも通り、村正であり、サイたちが持っているような武器とは違いリーチが長い。故に、屋内での戦闘となると少々の窮屈さを感じることとなるわけだが・・・。



まあ、ぶっちゃけだからどうしたって感じだけどな。



「中々の観察眼を持っているようで。 しかしそれ故に疑問ですねぇ。 ならなぜわざわざこんな敵の懐のど真ん中に飛ぶこむような真似をしたのですか? 仲間たちを呼んで一緒に来るとかならまだわからなくもありませんが。まさかとは思いますが一人で私たち全員を倒せるとでも思っているので? 」


思わず笑いが溢れてしまう。

店員が奇妙なものを見るような目線で俺を見て来る。


「何が可笑しいのですか? 」


「そりゃ可笑しいだろ。逆にお前たちごときが俺をどうにかできるとでも思ってることがな。 」


店員はこめかみをピクッと一瞬不機嫌そうにひくつかせるが、逆に笑顔を浮かべると。


「さっきの昇格試験でサイ一人に勝ったからって随分と調子に乗っているようですねぇ。 それを世間一般ではなんという風に言われるか知っていますか? 」


挑戦的な眼差しを迅へと向けてくる店員。

その眼からは絶対的優位なのは自分だという自信が伺える。

まあ簡単に言えばビビらせたかったんだろう。


「ほぉ。なんていうんだ? 俺は常識には少々疎いところがあってなぁ。 ちょっと分からないから教えてくれよ。店員さん。 」


だから迅はあえてそれに、淀みない笑顔で応える。


お前達程度、緊張するに値するような敵ではない。

そう、サイは感じ取ったのだろう。今度はさっきとは違いハッキリと分かるほどに顔を顰める。


「おい、どうした?顔が歪んでいるぞ?」

「この糞ガキがぁ。そういうのを自信過剰って言うんですよ!!それがすぐに思い上がりって思い知らせてあげますよ。」


そんな言葉と同時に5人が一斉に迅へと向かってくる。

迅は自分の後ろ、ではなく逆に店員たちの囲んでいる前方へと突っ込んでいく。


「はっ。このバカが。自分から突っ込んできやがった。」


サイは嘲笑を浮かべながら向かって来る迅へとナイフを振りかぶる。

そのスピードは確かに訓練場で相対した時よりは速い。彼が本来の獲物だったらと思うのも分からなくはない。

だが、その違いは迅枯らしたら些細なものでしかない。


いくら雑魚が頑張っても雑魚であることに変わりはないんだけどな。


迅はナイフを体を軽くひねり、最小限の動きだけで躱す。

そしてサイの脇の間をすり抜けていくついでに掌底をおみまいしておく。


「がはっ。」


振り向くと、サイは膝を地につけ苦悶の表情を浮かべている。

周りの仲間が支えてやっと立っていられるって感じで、さっきの威勢が嘘のようだ。

残った仲間は怒りに満ちた目をしながらも、さっきと変わらずに迅を囲むように陣取っている。


それが動揺している証と逆になってるんだけどな。


実際、迅のすぐ近くにはこの店に出入り口が位置しており、いざとなれば逃げれる場所に位置している。

そのことにはすぐにサイと店員も気がついたのか、店員が声を荒げる。


「おい!やつの後ろにも回り込め!!」


慌てて、小斧を持った仲間の男がが迅の後ろへと回り込んでくる。

その様子を特に何もするでもなく、迅はただ眺めていた。


「おい。なぜ今逃げようとしなかった?お前なら逃げれただろ。」


「はっ。逃げる必要がないのになんで逃げる意味があるんだ?」


「減らず口はへらねぇなぁ。

おい、お前ら。一人でそいつにかかるな。実力がないわけでない。複数でまとめてかかれ。」


サイが指示をそうだすと、小剣と小槌を持った小柄な男二人が襲いかかってくる。


右から小剣の男が迅へと斬りかかってくるがそれを避けると、今度は左からは小槌を持った男が振りかぶってくる。

それを避けると小剣の男が体制を立て直し突きを放ってくる。

外側のローブを着た男は魔法の詠唱をし始める。

その間も残りの二人は間髪入れずに攻撃を仕掛けてくる。

二人がかわるがわる攻撃してくるのはここが狭い店内でだからだろうが、それにしても・・・。


二人で攻撃していて単調な攻撃になっちゃダメだろ。避けられてるんだからさ。


そのことにもサイは気づいたようだ。焦ったように口を開こうとする。


「おせーよ。」


内心で呆れながらも、迅はサイが口を開く前に行動を開始する。

小槌を振りかざす瞬間に、その手を迅が掌底で跳ね返す。軽く仰け反り、手にしていた小槌を床に落としてしまう。小剣の男はまだ隙が出来ていて、フォローに入ることができない。


「なっ。」


迅が攻撃仕掛けようとする瞬間、詠唱していた魔法が完成し慌てたように魔法を放ってくる。


「フレイムバインド!」


炎が麻縄のように細くなり、迅の身体を取り巻くように囲んでくる。

だが、フレイムバインドが迅に絡みついた瞬間、炎は一瞬で霧散してしまう。


「なっ。」


魔法師のみならずサイなどその場にいる全ての敵がその場で一瞬呆然となってしまう。


「おい、これで全部か?」


思わず迅も拍子抜けと言った顔となってしまい、迅もまた呆然となってしまう。

そんなこの感じどうする?みたいな空気感がお互いにで始めた瞬間だった。


「御主人。ちょっとお戯れが過ぎるのではないですか?」


リリィの声が店内に響き渡った。


どうやら時間をかけ過ぎたらしいです。








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