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65話 昇格試験終了

お久しぶりです笑


「勝負あり!!」


スヴェンが天にも轟かんばかりの声で迅の勝利を告げる。

彼の野太い声は訓練場内の隅から隅まで行き渡り、その場にいたものすべてにその事実を理解させる。


一拍の間の僅かな静寂。

そしてその後に遅れてやってくる観客たちの歓声。

迅は迷惑そうな視線で観客たちを一瞥する。

しかし熱にうなされた観客たちは止まらない。

迅はため息を一つ吐くと、


「おい、スヴェン。これなんとかならないか。流石にうるさいんだが・・・。」


「お、おぬし・・・。この喚声はお主に向けられたものじゃというのに・・・。とわし言っても意味は無いのじゃな。まあ、まだ言うこともあるし一旦静かにしてもらおうとするかの。」


やれやれといった様子で首を振りながらも律儀に静かにしようと行動するスヴェン。その手をゆっくりと上げていく。


ああ、これはあれか。手が完全に上げきると歓声がピタッと止むっていう感じのか。

やるじゃん。スヴェン。


そしてとうとうスヴェンの手が完全に上がりきる。

しかし歓声は止まない。全くと言っていいほど止まない。むしろ、増えているような気さえしてくる。

スヴェンがの手がプルプルと震えだす。

彼の野太い声を張り上げないのは盛り上がっているところに水を差したく無いという彼の配慮からだろう。

しかし歓声が止む気配は一向にない。

そしてストレスの多いギルド長の限界にすぐに達し、


「静かにせんかっ!まだ話は終わっとらんわ!」


スヴェンの声でようやく訓練場が静かになり始める。

ヒソヒソ声も未だに結構あるが・・・。


「迅とアリアスは無事ランクアップじゃ。あとで2人は細かい手続きがあるからの。それではこれで2人のランクアップ試験は終了じゃ。ここにいるものすべてがこやつらのランクアップの証人じゃ。」


スヴェンがそう宣言すると同時に、太鼓のようなものの大きな音が鳴り響き昇格試験の終了を告げる。

それと同時に観客たちも熱を持ったまま、訓練場の外へと出て行く。

そこかしこでこのまま酒場に行って一杯やるか、とかこれから仕事に向かうかなどと言った声があちらこちらで聞こえてくる。

しかしそれは一般の市民だけで冒険者たちの多くは帰らずにそのまま訓練場に留まっている。


俺たちの戦いに触発されてこのまま訓練場に残って自分たちの実力を鍛えるっていう殊勝な心掛けの奴ら・・・・・・ってわけじゃないよな、多分。


『勧誘でしょうねぇ。きっと。将来有望なものたちにって感じですか。』


俺が今まさに思ったことを的確に言ってくれる。

まるでリリィに心を読まれているかのような・・・・・・


『何を仰っているんですか。血の盟約で私たちは心は繋がっているじゃないですか。 』


即座に帰ってくるリリィの返答。

とか言う割には俺はリリィの心はあんまり読めないんだがな・・・。


『コツがあるんですよ。コツが。』


ウインクでもついてきそうな声音だな。

なら、早く俺にそのコツを教えてくれよ。


『それはダメですよ。私は御主人のすべてを知っておきたいので。それこそ考えたことなどすべて。』


楽はさせてくれませんか。さいですか。

というかそのセリフは結構危なくないか?下手したらヤンデレのそれに聞こえなくもない。

ていうか、俺にプライバシーというものはないのか、プライバシーというものは。

それを聞いたリリィはやれやれと言った感じでため息を一つこぼすと、まるでできの悪い生徒に諭すような口調になる。


『いいですか。御主人。ここは異世界ですよ。御主人のいた現代世界とは違うんです。それこそヒューマンの命なんて吹けば飛ぶほどに軽く考えられているんですよ。その世界に人権、さらにプライバシーの権利なんてあるわけないじゃないですか。』


少し誇らしげに言うリリィ。もし、実体化していたらその大きなたわわがぷるんと揺れていただろう。

おっと、おじさん思考になってしまった。

しかしうん。言っていることはわかるんだがな。なんか納得できないんだよなぁ。その論理だとリリィにもプライバシーはないはずなのだからやはりコツを教えるべきなのでは・・・・・・。


『・・・・・・・・・。さっき御主人に負けた方がこちらにやってきますよ。』


露骨に話題を変えやがったな。リリィ。

リリィの言う通り、一応前を向いてみるとさっき倒した男がこちらに向かってゆっくりと歩いてきていた。

俺の目の前まで来て止まる。


「先程はどうも。それにしてもとても強いですね〜。僕、剣術と魔法にはちょっと自信があったんだけど全くと言っていいほど歯が立たなかったですよ。」


飄々とした見た目のイメージにに違わず、笑顔を浮かべながらいきなり迅へと話しかけてくる。

その意図はわからないが。


「ああ。そう言うお前も中々だったな。魔法と剣術をうまく併用できていた。悪くなかったぞ。」


迅も相手に合わせてお世辞を言っておく。

しかしサイにばかり迅は注視はしていられない。周りを囲んで来ている冒険者共にも注意しなければいけないからだ。別に物理的な意味では全くと言っていいほど危険性はない。というか、そういうことなら倒せばいいだけなので手っ取り早くてむしろいい。

しかしだ。勧誘っていうのはそう簡単にいかない。無論迅も速攻拒否することはできる。しかしまず誰かと話すのは億劫だし、全部に断るとうのもそれはそれでめんどくさい。


そんな迅の視線の意味を悟ったのか、サイが


「あの、迅さん。あんまり多数の方と話すのは苦手なのですか?」


「なぜだ?」


「いえ、しきりに辺りを気にしていられたので。」


そんな露骨に出ていたか?


『出ていましたよ。』


出ていたらしい・・・。おかしいな、ポーカーフェイスは結構自信があるんだが。



「それでは早々にここから出てもう少し落ち着いたところに行きませんか?迅さんのもう少しお話を聞いてみたいですし。」


「うーん、まあいいが。」


ここから出たら、さっさと話を切り上げればいいしな。

っとその前にアリアスたちの方はっと。

ジュリアもいるし、いつのまにか抜け出したみたいだな。

何人かの冒険者がアリアスのことを探しているが見つからないみたいだ。


「それでは行きましょうか。」


サイはそう言うと、訓練場の出口とは反対側の方向へと向かって歩いて行く。

一見そっちにはないにもないように見えるが・・・。


「ああ。こちらにはギルドの抜け道のようなものがあるんですよ。たまに催し物などを開くときはこの訓練場が使われることがありましてね。そうなった時に訓練場からの出口は一つだと色々勝手が悪いと言うことから作られたらしいです。」


「なるほどな。」


サイが訓練場の壁を押すと人1人ぐらいがちょうど通れるくらいのスペースが現れる。

そこを通ると、どこかの屋内へと繋がっている。

まあ、十中八九ギルドの建物のどこかではあろうが。


「それではこのまま話せる場所まで行くと言うことで・・・。

まあ、こんな小さな町ですから行く場所なんて限られていますがね。」


笑いながらそう言うと、そのままギルドの建物を出て街中へと向かって行く。

五分ほど歩いて行くと、落ち着いた感じの店の前へとたどり着く。

居酒屋というよりはどちらかといえば、バーのような感じであろうか。

店の中へと入ってみると、外観通り落ち着いた内装となっていて、客は10人いないぐらいだ。


端っこの席で席を取ったサイが店員を呼びつける。


「とりあえずはエール二つと、軽く摘むものをお願いします。」


注文を取ってすぐにエールとつまみが出てくる。

ちなみにこの世界での成人は15歳からなので迅も酒を飲めるのだ。一応は。


「それではとりあえず乾杯!」


控えめな口調でそう言ってお互いのエールを軽く打ち合わせる。

この辺は現代日本のものとそう変わらないらしい。

何の乾杯はわからないが。

サイは半分ぐらいまで一気にエールを飲み干す。

それに合わせて俺も飲むが、ふむ。中々に悪くない味だな。


「今日はありがとうございました。私が試験をする側であったはずなのにいつのまにか挑戦者みたいな気分になっていましたよ。」


そう言って手を出してくる。

えーと?


俺が意図を掴みかねていると、サイが。


「ああ。いきなりすみません。握手して下さいってことです。迅さんは将来とても有名な人になりそうですからね。」


屈託のない笑みでサイがそう言ってくる。

なるほどな。

思わず顔がにやける。


「は、そうやって俺を殺すつもりなのか?」


感想やポイント評価などしていただけると嬉しいかなーと思ってみたり・・・。(笑)

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