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64話 昇格試験4

遅くなり申し訳ありません!

もうそろそろ復帰出来てくると思うのですが......はい。(努力はしています...。)


迅と桃太郎たちとの試合は、迅の一方的な勝利で幕を下すこととなった。

この事実は訓練場の観衆は勿論、既存の冒険者、さらにギルド職員の間にもどよめきが巻き起こしていた。そのどよめきはアリアスがあっさりと三連勝した時のものよりもはるかに大きい。

アリアスの圧勝も驚きではあった。それだけでも異例なのだ。しかし言ってしまえばそれだけのことでありなくはないのだ。新人が三連勝するということは。でなければこんな制度はすぐに廃れてしまっているだろう。しかし迅の場合は別だ。

最下位とも言えるGランクで目にも止まらぬスピードで移動して瞬殺、しかもD()()()()()()()()()をも今度は魔法を使って瞬殺。しかもDランクとはいえ本職の魔法使いであるサルゥを相手に、だ。しかも迅の本来の武器である村正は全くと言っていいほど使っていない。

これだけでも迅の戦闘力はDランク以上だと言えるであろう。


「とりあえずこれで2戦目もクリアだな。次で最後か。」


一旦の休憩として迅はアリアスたちの元へと戻ってきていた。全くは必要はなかったが。

その真の目的はこのどよめきを抑えると言うことだろう。スヴェンに一旦戻ってくれと懇願されてすごすごと戻ってきたのではあるが。

とは言ってもそのギルドでも混乱をきたしているので少し時間がかかるとの判断だろうが。


「おつかれ…さま? 」


「おい、なんでそこで疑問形なんだよ。 」


「だって疲れてるように見えないんだもの。それに全然本気も出してないし。 」


そんなアリアスの言葉に反応したのは迅ではなくジュリア。


「え。」


「なんだ。変な声を出して。」


ジュリアの横にいるシュアもジュリア同様なぜか驚いた様子だ。

流石にそれを口に出したりをシュアはしていないが。


「さ、さっきのでも本気ではなかったというのですか?」


「は? 何言ってんだ。当たり前だろ? 」


「ダーリンが本気でやっていたらあの桃太郎はもちろんのこと、観客まで巻き込んでいたわ〜。しかし桃太郎たちは特に怪我もなく意識を失っているだけ。それが何よりの証拠なの〜。 」


訓練場の方を見やるとちょうど桃太郎の2人が担架みたいなもので運び出されるところだった。医務室で仲良く三人で寝ることになるだろう。


「ふふふ。これは予想以上でしたね。あなたから見てどうでしたか、今回の戦いは。今度はしっかりと攻撃していましたよ?」


これはジュリアのシュアに対する意趣返しだろう。シュアが一戦目を見て、攻撃力が判断できないと言ったからの言葉に対してのこととは分かるのだが、なぜ少し誇らしげにジュリアがするのか意味がわからない。

大方自分の目は正しかったみたいなことなんだろうが...。


「ええ。先程はああ言いましたが、十分と言えますね。というよりも十分すぎます。最低でも実力はBランク以上はあるように感じられます。 」


ジュリアのそんな意図には気付かないシュア。良くも悪くも生真面目ということだろう。


「もうつまんない……ってえ? さ、最低でも? 最高の間違いじゃなくて?」


流石に信じられないのだろう。最高でもではなく、()()()()なのだから


「いえ、間違ってないです。最低でもです。」


「てことは少なくてもシュアと同等以上ってことになってしまうのだけど?」


「ええ。そうなりますね。」


へ〜、シュアはBランクぐらいの腕なのか。


「ねぇ。」

「うん、なーに?」


アリアスがレイナの耳元に口を当てる。


「このレベルであそこまで驚くんだから迅が本気を見せたら卒倒するんじゃない? 」


「たしかに〜。 とはいってもダーリンが本気を見せるような機会はまずそこまでないんじゃない〜?大抵の敵なら瞬殺さし。だから大丈夫よ〜。使うとしたらAランク以上の冒険者とか魔人、獣人とかだろうしね。」


「そうね。そうそうこのウルスラというヒューマンの国でそのレベルの敵となんて出会わないだろうしね。」


とかお前ら言ってるけど、俺もうすでにそのウルスラで魔人と戦ってるんだけどな。


そんなことは2人の頭の中にはもうすでにないらしい。

ロノウェとの戦いの影響の治療が目的でここにきているので迅としてはもう当分は魔人との戦いなんてお断りなのだが、むしろ一生戦わなくてもいいのだが。

しかしアリアスの目的を考えればそんなことも言ってられないだろう。


ありさ姉さんさえいてくれたらこんなこともせずに済むんだけどな。いや、あの姉さんなら結局は温泉に行っていたか。



迅は真っ青な空を仰ぎ見る。遥か彼方にいるはずのありさ姉さんの姿を思い浮かべながら。






迅の三回戦の対戦相手であるサイは二回戦の様子を様子を観察していた。そしてわかったことが一つ。


「想定以上に強いということだけ...か。 」


思わず頭を抱えたくなる。

サイが上から命令された内容は「やつを潰すこと。」


なぜだ。そもそもジュリアをあの馬車の襲撃で殺しきれなかったのがそもそものミスだ。あの時、奴らの護衛のやつらがあそこまで粘るとは思わなかった。そのせいでギリギリでこの街に逃げ込まれて、大手を振って探すことが難しくなった。あんなことさえなければ...。


サイの視線の先には楽しげに談笑するアリアスやジュリアの姿が。


「チッ。 」



それが余計にサイを腹立たせる。


楽しそうにしやがって。こっちは命令を遂行しなければいけないってのに。もしそれが遂行できなかった場合、俺は多分……。

クッソ。あんまり使いたくない手ではあるが、多分あれをやるしかないな。死ぬよりはマシ......か。


サイは自身の武器である剣を優しく撫でると、三回戦を行うべくスヴェンが待つギルドの訓練場の中心へと向かった。






他愛もない雑談をアリアスたちがしているのをみていると、ギルドの職員ぽいやつがこっちへと向かってくる。

第三戦がもうそろそろ行われるということらしい。


「じゃあ、そろそろ行ってくるか。」


訓練場の中心へと行くとは既に対戦相手のサイがいた。

その表情には何も出さず、自然体でそこに立っていた。

一方でスヴェンは若干苦々しそうな顔をしている。


(わしに今できることは何もないのじゃ。じゃが、絶対にお主を死なせるようなことはさせんからな。)


静かに拳を握りしめるスヴェン。

しかしすぐにそんな決意に満ちた表情を消して、その大きな声を会場へと震わせる。


「それではこれより最終試験を始める。2人とも準備はいいか。」


スヴェンの問いかけに視線で返す迅。サイは無反応だが、剣を握り直す。

迅も村正を引き抜く。

互いの距離は15メートルほどか。


「それでは.........はじめ!!」


開始と同時に迅がサイに向かって、サイは迅に向かって駆け出す。

一瞬の交錯ののち訓練場に甲高い音が響く。



中央で迅とサイはお互いに一瞬鍔迫り合いをする。

だがそれも長くは続かない。

お互いに強く打ち合って一旦後方へと飛び退く。


「へぇ。なかなか。今までのやつとはちがうってことね。 」


何度も斬り合う。

一見すれば互角のようにみえる。ランクの低い冒険者や一般の観客にはそのように見えるのだろう。そのこと肯定するかのように訓練場にいる観客たちはかなり盛り上がっている。よく考えれば今までの勝負が全て迅たちの圧倒劇だったのだから互角に見える戦いというのは盛り上がりやすくなっていたのだろう。


しかし打ち合ってる当のサイはというと。


チッ。やっぱり強いな。

なんでこんだけ斬り合っているのに汗一つかかねーんだよ。


サイが迅の村正へと強く剣を打ち付け大きく後ろへと飛び退く。

と、同時に魔法の詠唱を開始。


「ん?魔法か。」


着地したと同時に魔法が完成する。


「ツインフレイムトルネード。」


二つの渦を持った火の竜巻が迅へと一直線に向かって行く。

スピードはないが効果範囲は広い。


てか、これ俺避けたら観客に当たったりするんじゃないのか?

いや、防御の何かしらの魔法があるだろう。

しかしうーん。避けてもなぁ。熱いのは変わらんからな。

追尾機能とかもしあったら最悪だし。


一応、俺も魔法使っとくか。


「水魔法 レインフォール。」


迅の前方に大量の水の壁が出現する。

それは薄い水のアクアカーテンの数倍の密度でできている。

ツインフレイムトルネードが自分からぶつかって行くような感覚だ。


「おおっ。」


観客から感嘆の声が漏れる。


ツインフレイムトルネードはレインフォールにぶつかった瞬間、ジュワッとした音を残し、消滅する。

観客が魔法を放ったサイの姿を見ると先程までいたサイの姿はもうそこにはない。



キン。



迅の方から甲高い音が鳴り響く。

いつのまにか迅の後ろへと回り込んでいたサイが迅とまた斬り結んでいる。

さっきの魔法は囮でしかなかったらしい。


「やるじゃん。まあ、これで終わりだけどな。」


迅はサイの剣を一気に振り払う。


(なっ。どこにこんな力が。)


サイの目が驚愕で見開かれる。


「じゃあな。」


迅の刀がサイの首へと向かって振り払われる。

観客の誰もがアッと口を広げ、次に繰り広げられるであろう光景を予測して目を覆う。


フッ。


すんでのところで迅が刀を止める。

サイは何もすることができない。



「勝負あり!! 」


一拍置いて審判のスヴェンの大声が訓練場内へと轟く。


「迅の勝利じゃ!! 」



その声が聞こえた瞬間、割れんばかりの観客の歓声が訓練場へと響く。



「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」」」」」



そんな渦中の人物である迅はというとその歓声に酔いしれる.........なんてことはなく、思いっきり耳を塞いでいた。



「うるっせえぇぇぇぇ。」


迅は平常運転だった。


お読み頂きありがとうございます。

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