63話 昇格試験3
拙い文書ですがお願いします。
「おい、お前。サルゥだったか。 」
「……な、なんだ。 」
サルゥの反応が若干だが遅い。緊張しているのか?一匹だけだとお得意の口も発揮されないな。
「お前そんな調子で一人で大丈夫か?よければ仲間も呼んでいいんだぞ?ん? 」
「なっ。貴様、俺を愚弄しているのかっ。」
迅の親切心からでた言葉を聞いたサルゥの怒気がありありと伝わってくる。全く怖くはないが。
『思ってないでしょうに。』
ぼそっとなんか聞こえた気がするが無視だ。
「いや、何だ。せっかくの機会だしな。お前らは3人でパーティーみたいなの組んでるんだろ? だったらそっちの方がまだ戦えるんじゃないかと思ってな。キジィはまあうんあれだが。ギルドとしてはそれでも大丈夫なんだろ?なぁスヴェン。」
「あ、ああ。大丈夫だ。それをやって不利になるのはお前だけだしな。あとは其奴らが納得すればじゃだが。」
キジィはさっきアリアスが盛大にやらかさせたから出てこれないだろう。うん。そこは本当に同情する。もしこれで出てきたら勇者として称えよう。少なくとも俺には無理だな…。
スヴェンがサルゥたちの意思を確認するかのように視線を送る。そのスヴェンの口元が一瞬ニヤリとしていたのは気のせいだろうか。いや、気のせいではない。
その視線を送られたサルゥは悩んでいるようでスヴェンの表情の変化には気づいていない。
冷静になってその魅力に気づいたのだろうか。ここで新参者に全員が瞬殺されて更に恥をかくよりは、パーティーで戦てみたほうが勝てる可能性は上がるからな。要はプライドを取るか実利を取るかということだ。それを選択しかねているのだろう。
ふぅ。ならもうあとひと押しと言ったところか。
「ああ。あれか? お前らはもしかしてプライドでも気にしているのか?もしパーティーで負けたら面子丸つぶれだもんなぁ? ってことはつまりだ。自信がないわけだ。俺らに勝つ自信がなぁ。違うのか? ん? 」
嘲るように見下す迅。
もう喋り方も喋っている内容も完全に悪役の、しかも序盤で倒される悪役の、それである。
「そ、そんなわけない!あるに決まっているだろう。」
「ならパーティーで戦えばいいだろう。さっきイヌゥの戦いも見てただろ?やる気になればさっきと同様のことができるぞ?それにイヌゥだってもう一回やりたいんじゃないんか?ほれ。見てみろ。」
サルゥの後ろでは音が出そうなほどに歯を食いしばるサルゥの姿が。
その態度が指し示すことは言わずもがなだろう。
「俺としてはそれで問題ないんだなっ! 」
これでもう結果は決まっただろう。
しかしサルゥの度胸は中々のものと言えよう。さっき俺にあっさりと瞬殺されたのに今では既に対抗心を燃やし始めたのだから。
あるいは、さっき瞬殺しすぎて理解できなかったのかもしれないな。確かにさっきは殺気とか一切出さずに瞬殺するだけだったしな。実力の差を上手く落とし込めなかったのかもしれない。
「じゃあ、そっちはパーティーでやるんだな。」
念を押すように告げる迅。
それを訓練場で見ていたジュリアたち。
「なぜ迅さんはあえて自分に不利になるような条件をあの桃太郎?さんたちに提示したのでしょうか。」
「ん~。なんとなくでいいなら答えられるけどそれでもいい? 」
「ええ。それで大丈夫です。」
知るものがしればこれは驚くべき光景となっているだろう。王国の王女であるジュリアに元女神のアリアスが談笑しているのだから。まあ、その両方の事実を知っているのは迅たちだけのため、それが顕在化することはないだろうが。当のジュリアですら知らないのだから。
「色々考えられるのだけどね。」
そう前置きして話し始める。
「まずはっきり言っちゃえば、あの桃太郎?だったかしら。あれが一人からパーティーを組んだところでどうってことないわ。」
「とは言っても、迅さんの基本的な戦い方は中・近距離での戦闘ですよね? ならばあのスピードがあったとしても遠距離から魔法を撃たれてさらに近距離からの攻撃を受けるのはきつくないですか?」
「そうね。普通なら、そうなんだけどね。」
苦笑するアリアス。その表情が物語っていることは一つだろう。
迅は普通じゃないから、と。
迅がそれを聞いたら断固として拒否するだろうが。
その意味が理解できなかったのかジュリアが困ったような顔をする。シュアも同様だ。
「見ていれば分かるの~。」
昇格試験第2戦が始まる。
迅は先ほどと同様に村正を持ち、自然体の状態で立っている。
対してイヌゥ、サルゥの桃太郞組はというと、イヌゥが片手剣を構えて前衛をし、そのかなり後方で後衛としてサルゥが杖を構えている。
てことは、キジィが中衛として入ってたみたいな感じか?
迅は今回はさっきのようにいきなり瞬殺というようなことはしない。
しないということは逆に言えばもう1度しようと思えば出来るということなのだが…。
「おい、さっさとしろよ。今回は待っていてやるんだからよ。」
そう、迅は今回は相手の攻撃をしっかりうけてその上で倒すことにしたのである。
さっき言われたスピードだけではないということ分かりやすく示そうというわけである。
「これじゃどっちが試験してるか分かったもんじゃないな。」
自重するようにいう迅。たしかにこれではまるでDランク冒険者の桃太郎たちがGランクという最下位ランクの迅に試されているような形になってしまっている。
「余裕ぶっこいて後で吠え面でもかくといいんだな!」
イヌゥが片手剣を構えながら迅の方へと向かってくる。そのスピードは迅の体感でいえば全然遅いため村正で冷静に捌いていく。その後方ではサルゥが魔法の詠唱を始めている。
詠唱する時間を稼ぐのが桃太郎の作戦なのだろう。そのためだろう。イヌゥの攻撃はその挑発的な言動とは裏腹にカウンターを入れられないように攻め急いだりはしていない。
「ははは。俺の攻撃に手も足までないみたいなんだな!受けるので精一杯なんだな。さっきのはまぐれなのだ。」
そんな馬鹿みたいな安易な挑発には乗らない。というかまず聞いてすらない。
さっきよりは隙は少ないな。少なくなっただけでまだまだある訳だが。だが、迅は敢えてそこの隙をつかない。
そうこうしているうちにサルゥの魔法がようやく完成する。
「土魔法 アースランス。喰らえっ!」
10本の1mほどの石柱がサルゥの周りへと浮かび上がる。先端は潰されて平面になっているため突き刺すというよりは押しつぶすという感じだ。それが一斉に迅に向かってかなりのスピードで飛んでくる。かなりと言っても一般人感覚で、ではあるが。
それをイヌゥの攻撃を捌きながら避ける事など迅にとっては造作もない。
「土魔法 サンドウェーブ」
避けきった瞬間にはサルゥの次の魔法が発動している。たぶん、さっきの詠唱の時に同時にやっていたかなんかしたのだろう。
迅の目の前砂の波が襲いかかってきてくる。イヌゥは素早く一際強い力で斬撃を放ってサンドウェーブの射程から飛び退く。
村正で防がれないように、か。まあ少しは考えたな。けどま浅いなぁ。
「エアーブラスト。」
迅が一瞬でマナを練り上げ風の突風を巻き起こす。それは眼前に迫るサンドウェーブへと当たると拮抗したのは一瞬。すぐに吹き飛ばす。
これにはサルゥとイヌゥも絶句して行動を止めてしまう。
さすがにそこまで見逃してやる気は無い。当初の目的の攻撃もある程度受けてやったしな。
もう決めようか。
「エアーバレット。」
迅の魔法が発動する。それは風の塊。つまり不可避の一撃。形のないもの。それらを見る術は桃太郎たちはもっていない。必然的に全段二人に命中することとなり……。
「ぎゃフッ。」
「きぃぃ。」
エアーバレットはそんな無様な声桃太郎たちに上げながら意識を狩りとった。
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