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59話 模擬戦2

拙い文章ですがご容赦を。


まず先に突っ込んでくるのはやはりアリアス。レイナはアリアスの後ろから魔法を詠唱し始めている。


いやいや、これ剣技がメインの模擬戦なんだけどな。初っ端から魔法を使うってどうなのよ。連携という意味で考えればいいんだけどさ。まあ、それだけ本気ということか。


アリアスが小刀を振りかぶる。しかし迅に届くリーチまでは20センチ(・・・・・)ほど足りない。迅は避ける必要もないかと一瞬考えるが…。


いや待て。確かあいつの魔法は…。


そんな迅の考えを読んだかのようにレイナの魔法が発動する。


「風魔法エアーエンチャント。」


風の魔法が振りかぶっているアリアスの小刀へとかかり、その周りに高密度の風の刃が作られる。アリアスの小刀は風の魔法の影響か、キィィィィィンという甲高い音を鳴らしている。

こんなことができるのはレイナの魔法の腕のおかげと言えるだろう。


これはたしかハイアルベロの時に使っていたやつか。あの時は遠目からだったが。これは…風の刃ともいうべきものが日本でいう電動ノコギリみたいなっているのか。人間相手に使ったらろくなことにならないな。

それこそスプラッタだ。

迅はそう考えながらも風魔法によって突如伸びてきたアリアスの上段をバックステップで回避する。


「あら、随分と大きく距離をとったわね。でも、まだまだぁ!」


そう言ってバックステップをとった迅へと小刀を持って猛追するアリアス。そのスピードは中々のもので普通の低ランクのものでは避けることは叶わないだろう。しかし迅は危なげなくアリアスの攻撃をを避け続ける。

実際アリアスのスピードはなかなかの物なのだ、しかし言ってしまえばそれだけだ。フェイントなども特になく、直線的な動き。

ある程度の経験があれば迅同様に避けることはできるだろう。迅のように汗もかくこともなくできるかというのは別の話となってくるだが。


「ねぇ、誰かを忘れていない?」


背筋の凍るような声が聞こえた。

いつのまにか背後へと回り込んでいたレイナニヤッと笑いながら双剣で斬りかかってくる。


「いや、お前のことをひと時も忘れたことなんてねーよ。」

「あら、それは嬉しいわ。」



軽口を言い合いながらも流麗な動きで迅へと斬りかかってきてくるレイナ。その声音はいつもの間延びした口調では既になくなっている。さらにアリアスの攻撃も続いており、前にアリアス、後ろにレイナという状況だ。


「ねぇダーリン。私とは眼も合わせてくれないの?」


甘い声で囁いてくるレイナ。それは模擬戦とはいえ、戦いには似つかわしくないようにも感じるがこれもレイナの作戦の内。


「ああ。俺もお前の瞳と見つめ合いたいんだけどな。ちょっと今は忙しくてな。」

「え〜。残念。でもなんとか振り向かせてあげる。」


迅もレイナが何を狙っているかは察知しているので決して眼を合わせることはない。避ける時もレイナの体の動きだけを見て避ける。

そんなめんどくさく非効率的な避け方でも2人の攻撃が当たることはない。

これは即ちそれだけ迅の技量が離れているということで。


なかなかやるな。アリアスに隙ができた時にはレイナがフォローするように苛烈な攻撃を仕掛け逆もまた然り。いい感じだ。だがな…。


迅は避けながらも体内でマナを練り、魔法を一瞬で発動する。

レイナもそのことを察知するが迅の魔法は発動する方が早い。


「土魔法 アースウォール。」


迅とレイナの間を高さ2メートル幅1メートルの土の壁が阻む。


「なっ。」


(やっぱりダーリンの魔法の発動速度は以上に早い。というか反則級ね。もう!)


これは迅の強みとも言える。地球において魔法というもののイメージは漫画やアニメなどの映像で大体が既に固まっているからそれを元にマナを練り魔法を構築すれば良い。しかしレイナたちの場合、自分の魔法のイメージがそこまで固まっているわけではないため、詠唱というものでそれを補わなければならない。その差は戦闘においては如実に現れる。しかも詠唱があれば相手がどのような魔法を使うかの判別はつくが、迅の場合魔法名を言ってるだけなので即座に反応できない。


アースウォールの強度はそれほどない。レイナなら少しの間あれば破壊するなり回避するなり、簡単に突破できるだろう。

しかしそれでも一瞬は迅への攻撃が止まってしまう。ということは今まで2人でなんとか抑えていた迅をアリアス1人で抑えなければならないということで…。


「私1人なら一瞬あればどうとでもなるというわけ?舐められたものねっ!」


アリアスが小刀で迅へと連続して斬撃を放っていく。それを先程と同様に避けていく…だけでなく斬撃を放った後の常人なら隙とも言えない間に迅は反撃していく。しかも全て軽くだ。アリアスを怪我させないためにだ。


「くっ。」


手加減されていることに苛立ちを覚えたのか、アリアスの太刀筋が少し乱れる。そんな隙を迅見逃すはずがない。


「チェックメイトだ。」

「アリアス!」


レイナがアリアスから離れさせようと斬撃を放つ。

レイナも1人では一太刀入れるのは難しいと考えているのだろう。それがこの必死さだ。

だが、既に遅い。

迅の手刀がアリアスの喉に軽くトンと触れすぐに離れて後ろを振り向きもせずにレイナの斬撃を躱す。

続くレイナの舞うような連撃をかわし続け、一回大きくバックステップを取り距離を取る。


「あら?逃げるの?受けてくれないの〜?」


その言葉とは裏腹にレイナの呼吸は若干乱れている。スタミナが少ないと言っていた彼女にとって先程の息つく暇のないほどの攻撃はきつかったのだろう。さらに同時に幻視の瞳も発動しているのだ。息も上がって当然だ。



とは言ってもそこまで大きな隙は出さなかったな。アリアスみたいに簡単には隙は晒さないかやっぱ。まあ、もう分かった(・・・・)けどな。



アリアスとレイナの違い、それは一重に戦闘経験の差であろう。

迅はレイナが大きな隙を出すのを待つのを諦めて、今度はレイナの方へと漫然と歩き始める。


「俺が逃げる?んなわけないだろ?」

ニヤリとしながら一直線にレイナへと向かっていく。


(なんのつもり?)


レイナが迅の意図を考えている間にも迅はどんどんレイナの元へと近づいてきている。

迅はただ悠然と歩いているだけだ。しかしそれが逆に相対するレイナとしては非常に不気味な印象を与えてくる。

そうこうするうちに迅はレイナの間合いまであと少し。


ゴクリ。


レイナが間合いに入った瞬間に攻撃しようと双刀を握る手に一層力を込める、込めてしまう。必要以上の力は逆に隙となる。自然に攻撃を繰り出せないからだ。普段のレイナならそんなミスさしない。しかし迅という自分よりも格上の相手と戦い、しかもその迅が意味の分からない動きをし始める、そしてスタミナの問題。色々な要素が絡まっての出来た隙。


ニヤっ。


かかった。

今まで悠然と歩いていたのはなんだったのか、レイナの間合いのギリギリ一歩外で急加速する迅。それは通常状態の迅が出せる最高スピード。

そのまま一気にレイナへと向かってくる。最短距離での最速の動き。

間合いの外だったため一瞬反応が遅れてしまう。


(迎撃は……無理か。なら……)


とっさに双剣を前に構え迅の攻撃に備えるレイナ。


「惜しい。」


レイナが双剣を出してくることは迅にとっては想定済み。

双剣の下へと潜り込み足払いしレイナの体のバランスを崩す。



(くっ。しまった。でも……。)



地面に倒されると同時に立ち上がり迅の攻撃に備えようとするが、時既に遅し。

レイナの首元へは既に迅の手刀が置かれていた。

それを認識してハァと軽いため息をついて手をあげひらひらとするレイナ。


「参ったわ〜。完敗〜。」


戦闘モードも解けたのかレイナの口調がいつもの間延びしたものへと戻っている。

その後ろからは先にやられたアリアスもやってきてレイナの隣に腰を下ろす。


「私も完敗よ。武器すら持っていない迅にこんなに簡単にやられちゃうなんてね。」

「いや、2人とも十分強かったぞ。アリアスとレイナの最初のリーチが伸びるやつは、うおってなったしな。」

「って言う割には余裕で避けてけどね。」

「ね〜。」


若干訝しむような視線が2人から迅へと向けられる。


「ま、それはいいとしてだ。反省会したあとは個別にやってくぞ。」

「「え?」」

「えっ?って。まだまだ時間はあるからな。さっきから30分ぐらいしか経ってないぞ?」

「え?嘘でしょ?」


そう言って、あたりを見回してみると日の長さは最初からちょっとしか変わっていない。


「じゃあ、みっちりとやろうな!」


前を向くとやけにいい笑顔の迅が仁王立ちしていた。



((嫌な予感しかしない。))


2人同時に思った。

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