57話 不穏な気配
短めです。
「さて、落ち着いたところで改めて紹介しますね。」
30分の会議の後、落ち着いてきたと判断したのかジュリアがそう切り出してくる。
まあ、改めて紹介されなくてもシュアがどんなやつなのかは今までの会話で分かってはいるのだが........。
「彼女はシュア。シュア・オビルタス。私の護衛長です。年齢は‥‥...いらないですね。彼女の実力は私が保証します。最低でもそこらのCランクなど余裕で倒せる程度にはありますね。」
胸を軽く張り、少し誇らしげにするジュリア。それを受けてシュアは恥ずかしげに頰をほんのりと赤らめる。
いや、うーん自慢されてもなぁ。魔人の数字付きを倒したとかなら素直に感嘆できるんだけどなぁ。と言っても、数字付きはBランクでも20%倒せるか倒せないかって言ってたしな。流石にそれを護衛長に期待するのは無理があるか。
そうやって今度は逆にジュリアがシュアに向かって俺たちを紹介していく。そこでジュリアと俺たちが出会うまでの経緯なども軽く説明している。
やがて、その話を聞き終わるとシュアが俺たちの方を向いてくる。
「お嬢が危機の時、助けていただき感謝する。お嬢は魔法の才能はあるのだが盾役がいないとダメなのだ。本来なら私がそうなるのだが。」
少し悔しそうにしながらシュアが言っているが、というか悔しがってはいるのだ。しかし肝心の問題はそこではない。悔しがりながらさり気なくジュリアをディスっているのだ。そしてジュリアは聞いているうちに段々と微妙な表情へとなっていく。
「そ、そうか。」
あの毒舌で有名な迅でさえどう反応したらいいか迷ってしまうほなのだから相当だ。
これが天然の才能かよっ。エグすぎるぞ。
『確かに。これは凶悪な才能ですね。』
リリィもそれに納得している。
「それに最初の襲撃の時でさえ私がなんとか出来たはずなのにっ!」
め、めんどくさいな。
このまま続けさせるのは非常にだるい。止めなかったらいつまででも続けていそうだな。
「お、おーい。」
「しかしですね。あの時はですね......」
ま、全く俺の話を聞いていない。
これは...
無言で視線をジュリアへとおくる。ほかの面々も声をかけようとしていたが無理だと判断したのか迅と同様にしている。
「やっぱり私よね。」
やる気になったらしい。
それが視線を受けたからかそれともシュアと1番仲が深いと感じたかは分からないが。
スパン!!
「は、叩いた?」
言葉では語らない、ということか。それとも2人のは間には言葉は必要ない。のか。
どちらにしてもなかなかなやり方だな。
「もどってきなさい!!シュア!」
「はっ。お嬢。すみません。また思考に没頭していたようですね。」
「ええ。戻ってきたならいいわ。それよりも話を元に戻させてもらいます。」
シュアによって脱線しかけた話を主人ぽいジュリアが軌道修正した。さらに微妙になったジュリアの感情も自身で戻したらしい。
いい関係だな。
「それで今度の冒険者との戦いの結果であなたたちに仕事を依頼するかを決めさせていただきます。まあとはいっても、今回あなたたちと戦うものたちぐらい余裕で倒せると思いますけどね。」
ジュリアがフッと笑い、今度はシュアへと視線を移す。
「あなたもそれでいいわね?」
「はい。それでいいです。」
「それでその戦い?いえ試験というべきですね。それはいつ行われるのですか?」
「いつだっけ?」
その試験を受けるはずの迅が覚えていない。
はぁ。とため息をつきながらアリアスが、
「ちゃんと話聞いてなさいよ〜全く。まあとはいっても日時はまだ決まってないわ。」
「ああ。そりゃ言われてなきゃ覚えてるわけないな。うん。な?」
俺は悪くない!と思ってることが丸わかりである。
だからか誰も迅に反応しない。
「だから、後で人をよこすとギルド長のスヴェンさんは言っていましたけどそう遅くはならないはずね。」
「理由を聞いても?」
「ま、強いて言うならば彼は戦力が欲しいと言っていたし、ギルドの方達にお灸を据えてほしいという感じだったからかしら。」「てことは、それまですることは無いってことだな。よし、風呂いってこよ。」
迅はそういうと早速風呂に行こうと立ち上がる。
「そういえぱ迅は湯治に来てたのよね。」
「ああ。確かにそうだったね〜。」
迅の怪我のことをどうやらみんな忘れていたらしい。それもしょうがないだろう。
アナザーアルベロ、もといヴェロアルベロと戦い、町ではチンピラもどき、ゴブモヒカンとまで戦っているのだ。忘れ去られてもしょうがないとも言える。
「湯治って迅さん何か怪我をしていらっしゃるんですか?」
「ええ。少しね。」
「今ではないということですね。分かっています。」
「それでいいわよね。迅。ってあれ?どこ行ったの?」
レイナが少し歯切れ悪そうにしながら、
「あ〜もうお風呂に行ったわよ〜。ほら〜。」
そう言って指差す先にあるはずの露天風呂が見える窓はカーテンによって占められている。
男の迅がカーテンを閉めるのは微妙な気持ちとなるアリアスたち。そして一つのことに気づく。
「これって私たちが覗くって思われてるの?」
釈然としないアリアスたちであった。
夕方になって泊まっている宿へと1人の女がやって来て、アリアスへと手紙を渡してくる。
それを渡してすぐにまた帰って宿から出て行く。
「さっき手紙を受けったわよ。」
ハイと迅へと手紙を渡してくる。迅は中身を開けて内容を読む。
「なるほどな。ほれ。」
そう言って今度はジュリアへと渡す。
(絶対分かってないでしょ!!)
アリアスはそう思ってるが、実際はちょっと違う。迅は内容は理解している。まあ、文字を読んだ訳では無いが。
有能な秘書さんが迅さんに教えてくれたのである。
「ふーん試験は明後日なのですね。なかなか早いですね。対戦相手は当日ですか。まあ妥当でしょうね。対策とか練られたら公正にランク相当かどうかの判断出来ないでしょうし。」
「まあ元から調べる気はないけどな。面倒だし。それよりも他のことを注意すべきか...。」
「とは??」
ジュリアが疑問に思うが迅はそれに答えない。どうやらジュリアは気づいてないらしい。
暗がりの路地裏。一人の男がそこを走っていく。やがて、一つの家の前で止まり中へと入っていき1人の若い白髪の少年の元へといき、報告する。
「対象を確認いたしました。どうやら新たに護衛を雇ったたようです。人数は数人ですが。」
「そうかそれでそいつらはこないだの?」
「はい。チンピラ共を殺し、私たちを追いかけてきたヤツらです。」
「はー。面倒だなぁ。町中だと手も出しづらいしね。」
「しかしそれよりも面白いことが。」
「ん?」
面白いことと聞いてつまらなさそうにしていた顔を興味深そうにする白髪の少年。
「どうやら奴らは冒険者になったそうなんです。それで今度飛び級で、ランクをあげる試験があるらしいです。」
「それは信用できる情報か?」
偽の情報だったら許さないぞという視線を向けられるが男はそのまま続ける。
「ええ。ギルドの者に聞いたので間違いないです。」
「そうか。ふーん。なるほどねぇ。」
妖しく舌なめずりをしながら笑う少年。
「いいこと思いついちゃったァ。」
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