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50話 なんかめんどくさそうだった。それが理由です。

ちゃんと50話目です笑


モグモグ、ムミュムミュ、ごっくん。


迅はテーブルに置かれていた肉をよく噛み、飲み込むと中断していた会話を何事もなかったかのように再開する。


「てことはつまりだ。異世界から来たとか言うのは言う気になれば誰でも言えるが、そこに日本という具体的な名前が出てきたから真実味が出てきたってことだな。」

「え、ええ。そう言うことになりますね。勇者という存在がいるとは公表していますがどこからきたとかは言っていないですしね。」


いきなりの変化に驚いたためか、若干戸惑いながらも返答したジュリア。その辺、臨機応変に対応できる辺り、王女としての賜物であろう。だがジュリアの言葉はそこでは止まらない。


「それで、あなたたちにはお話したいことが他にもあるのですが......」


そこで、ジュリアは言葉を一旦止めて、一瞬目間を置いて、再度口を開こうとする。


「しかし「無理!」................え?」


会話の途中で遮られた自分の言葉。呆けた声が出てしまう。あまり自分の言葉を遮られると言うことはないのだろう。もし、王宮などでそのような真似をしたら死刑にされても文句は言えないからだ。実際、第1王子の言葉を諌めようと遮ったものはは首をはねとばされている。

しかしジュリアはその様なことは気にしないためすぐに切り替える。いい意味で貴族らしくないのである。その辺がジュリアが民衆に好かれる理由の一つなのかもしれない。


「な、なぜでしょうか?」


理由を聞かずにいられないジュリア。当たり前だろう。まだ自分は何も言ってないのだ。言わせてもらえなかったの方が正しいのだが。

迅の返答はというと、


「なんとなくだが、めんどくさくなりそうな予感がした。」



スパンっ。



アリアスからツッコミの一撃が入る。


「イタッ。」


迅が軽く手で頭を抑えながら抗議の目線をアリアスへと向ける。

しかし、アリアスは逆にギンっとした目線を迅へと返しそれに応じる。

迅はその視線を受け、プイッと目線をそらす。形勢は不利と判断したらしい。


「じ〜ん?なんで話を聞こうとしないのかな〜?てかあなたのせいであの脂ののった美味しそうなお肉、レイナに取られちゃったじゃない。」


アリアスが薄い笑みを表情に浮かべている。若干、額に青筋が浮かんでいる様にもみえる。

しかし僅かばかりの抵抗を試みてみる。


「だ、だからめんどくさそうだな〜と。てかお前、なんか肉取られた方で怒ってないか?絶対そっちだろ。」

「え?なんですって?」


聞こえてるはずなのに、聞き返してくるアリアス。


「に、にく「はい?」.......なんでもないです。」


迅の言葉は途中で遮られてしまう。もう最後まで言わせる気もないらしい。


「そう。ならいいわ。それで、さっきあなたは何を言おうとしたの?」


迅からジュリアへと視線を移すアリアス。


「えーと。うん。あの〜、それでですね。」


この急変化にやはりまだ慣れないのかしどろもどろになってしまうジュリア。

それでもなんとか立て直す。


「お、お話の続きですが、話したいことはあるのですが、やはり相応の身分がないと色々困ってしまうんですよ。なので、身分を手に入れていただいてからお話させていただきたいのですが。」

「は?なんで?」


迅から不満げな雰囲気がありありと周囲にいるアリアスへと伝わってくる。


「ちょ、迅。」

「ダーリン。抑えて〜。」


しかし迅は止まらない。


「いや、無理。お前が言う場合の困るってのは、お前的に困るってことだろ?なんでわざわざ俺たちが?」


迅が不満に思うのも無理はない。迅からしたら一方的に話を聞かされてこれをやってくれと命令された様なものである。自由に生きたい迅としては到底、許容できることではない。


「もしお受けいただけたら、報酬などはあとでしっかりと払わせていただきますので。」

「って言っても、お前今逃亡中だろ?払える保証はなくないか?」

「分かりました。それでは、前金として少し払わせていただきます。これは国にかけて誓います。」


王女が国にかけて誓うと言うのは並大抵のことではない。場合によっては命より重い誓いとなる場合があるからである。王族としての誓いでは最上級のものだ。


「ふーん。国に、かけるねぇ。まあ、いいだろう。ギルドには行こう。まずはそれからってことだな。」


迅は面白そうに笑いながら、ジュリアの条件を呑むことにする。否、元々迅には断るつもりはあまりなかった。第1王子とはもう敵対しているし、その部下に襲われたり間接的に魔獣を差し向けられたりもしている。しかしだからといって素直にうんと頷くつもりもなかった。本当に第1王女のジュリアが慕われているかもわからなかったからである。噂なんて所詮は噂。信用するに値しないからだ。


まあ、話してみてそこまで裏がありそうな感じはしなかった。王女としては、どうなんだって話だが国に賭けるとまで言っていた。根は素直でいい子なんだろう。そこは俺には実際、関係はないんだが。

本当に協力するかは本題の話を聞いてからだな。











食堂で大量の食事を済ませた迅たちは自室へと戻ってきていた。さすがに今日知り合ったばかりのジュリアとは同じ部屋に泊まるわけにもいかないので、彼女は自分で部屋をとっている。まあまあ、高い値段の宿に泊まれるぐらいのお金は持っていたらしい。念のため、何かあっても迅たちが対応出来るように隣の部屋にしていた。



「あ〜、今日は色々あって疲れたなぁ。」


ベッドに倒れこみながら迅がボヤく。チンピラ共との戦闘は迅にとっては朝飯前レベルなので、疲れたに入らない。必然的に消耗したのは精神ということだろう。

それは普段ならばこんなこともないのになぁと迅は感じているらしい。しかし全くそれに同意できない、アリアスとレイナは。


「とかいっちゃって、何も無い日なんて今まであまり無かった気がするのだけど?」


アリアスが悪戯ぽい笑みを浮かべながらからかえば、



「そうだね〜。でも私はダーリンと出会う前までは割と普通の日常をおくっていたな〜。楽しくは無かったけど。」


そこにレイナの追撃がはいる。


「あ、確かに。私も昔は普通だったわね、迅と出会うまでは......って本当は言いたいのだけれども。私は実際のところ変わらないわね。あっちでも色々とそれこそ毎日、何かしらあったし。でも今の方が楽しいのは確実ね。」


そう言って、アリアスが考えるのはこことは別の場所にある神の世界。


「昔かぁ。日本にいた時はありさ姉さんと2人でのんびりしてたなぁ。たまに、忙しかったけど。」


迅も昔の日本に住んでいた頃のことを思い出し笑いながら言う。最後のセリフのあたりで迅の笑みが別種の笑みに、それこそ妖しくなったのだが。


「い、忙しかった時、何をしていたのかを聞いてもいいかしら?」


アリアスが内心ろくでもないことだろうと考え、引き攣りそうな顔を抑えながらながらも一応聞いてみる。


「んー、俺たちに手を出そうとするヤク○や裏組織、はてはどっかの機密期間なんかと戯れてたな」


あの頃は大変だったなぁと言いたげな様子の迅。

それと反対に、質問したアリアスと聞いていたレイナは盛大に顔が引き攣っている。今回は元女神様もお顔を引きつらせない様にすることには失敗したらしい。

聞かなきゃよかった、それが2人の内心の心情であろう。

そんな中リリィだけは至って、普通の顔をしていたのだが。


「最近ね思ってたことがあるのよ。」


と、いきなりアリアスが語り始める。


「迅のあの残忍さというか、容赦のなさはこっちの世界に来てからのものなのかなぁって。本当は元々、それこそ地球にいる時からそうだったんじゃないかなって思ってたのよ。やっぱりそうだったのね。」


得心がいったわと頷くアリアス。


「ちなみにそれはいつから思ってたの〜?」


んーと、アリアスは顎に手を当てながら考えて


「ベアーを倒した時ぐらいかな。」

「結構序盤、もはや最初からじゃねぇか!!」


迅のツッコミが入る。内心で、そんな風に思われていたとは考えていなく、ちょっぴりショックを受けていたりもする。


「そんなに残忍な真似はしていないはずなんだけどなぁ。」


ボソリと呟くと、


「「「え?」」」


3人から疑問の声が返ってきた。あのリリィでさえである。忠実な秘書にまで裏切られた迅はその事でさらに凹む。


そのままプイっと不貞腐れた迅は布団へと豪快にダイブ。



ボフッ。


布団へと寝転がった迅はそのまま睡魔へと襲われるであった。



ちなみに、お風呂は部屋に帰ってくると同時にすでに済ませていた。別々に。そう別々に。

はい。大事な事なので、2回言いました。






読んで頂きありがとうございます!

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