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45話 裏路地2

花粉が辛いですね...


そう叫び声が聞こえたのと同時に後ろでチンピラの魔法師が詠唱していた魔法が完成する。


「ストーンランス」


岩でできた槍が5本、迅へと向かって来る。その1本1本は50cmほどで先端は尖っており円形に広がって向かってきているため避けることも出来ない。もしあたれば致命傷とはいかなくても、ただではすまないだろう。まあ、当たればの話ではあるが。


まあまあ長い時間、詠唱していこの程度の魔法か。これならそこまで難しい魔法でもなさそうだが。いや、チンピラとしては魔法が使えたというだけでも上出来なのか?


「はぁ。ウインドウォール」


それでも口から出てくるのは溜息である。


そんなことを考えながらも、迅の目前に風のバリアが作られる。そこに当たったロックアローは勢いを完璧に殺され、ぼとっと落ちる。


「なっ。マジかよ!?そんな!俺のストーンランスが!!!しかもお前今のは無詠唱!?いくら初級魔法とはいってもだ!」

「フォーの魔法が止められただと!?」

「嘘だろ!?」


魔法師同様、ほかのチンピラも驚愕の声を上げる。


「うるせーよ。ウインドランス。」


迅が風魔法を発動する。それは、チンピラの魔法師フォーが放ったロックアローの風魔法版ともいえるものである。ただその数は10本なり、その1本1本の長さも太さもストーンランスの比ではない。

その10本のウインドランスは残りの4人のチンピラへと向かっていく。


「なっ。」


避ける暇もなく、防御の魔法を使う暇もない。


ドッ。


「がぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

「がはぁぁぁぁぁ。」


ウインドランスが4人のチンピラの身体へと突き刺さる。それは4人の身体の中心を貫くと、程なくして消え去る。

迅はそれを見ると、後ろにいる残り1人の長髪のチンピラへとニヤリとしながら喋りかける。


「これでお前ひとりだぞ?どうする?」


長髪の男はまさか、全員が倒されると思っていなかったのか唖然とした様子となっている。


まあ実力差も分かってなかったみたいだしな。こんなもんだろ。それよりも気になるのは...。


そのまま周囲を見渡す迅。


やっぱ目の見える範囲にはいないか。

リリィ。


念話ですぐにリリィが反応する。


(はい。)


周囲に見張っている奴はいないか?


(確認します。)


「てめぇぇぇぇぇ。よくも俺の部下達をぉぉぉぉぉ。」


その間に状況をようやく理解することが出来たのか、唖然とした様子から怒り心頭といった様子と変わっていた。


「うるせぇよ。」

「お前ぇぇ。こいつを殺されたくなかっ...がはっ。」


そこまで言いかけて、懐に忍ばせていたナイフをジュリアに押し付けようとしたところで、長髪の男の声が止まる。


「動くなとかいうんだろ??あ?黙れ。」


迅は長髪の男が喋り始めた瞬間に動き出し、長髪の男との距離を一瞬でつめて、その鳩尾に峰打ちをたたき込んでいた。その一撃であっさりと男は意識をその身から手放す。


「お前には聞かなきゃならないこともあるからな。お前だけは生かしておいてやるよ。今は、だけどな。つっても、もう意識はないか。」


迅は長髪の男を一瞥すると、徐にジュリアに、ではなく自身が出てきた方向に振り向く。


「あれ?え?ちょっ、え?」


その事に驚いたのジュリアである。まさか、助けた相手を一瞥もせずにそのまま出てきた方向を迅が向いてしまうとは思わなかったのである。

そんなジュリアの様子には気づかずに、迅はまずリリィに念話する。


リリィ。どうだった?


『はい。私が確認したところ2名ほどの者が別々の方向に逃げていくのを確認できました。後で合流するものと思われます。ただ、私が確認に出た時には、まあまあ遠くまで行っていましたので、追いかけはしませんでした。何かしたわけでもないですし。まあその距離を考えますと御主人がそこの雑兵共を倒し始めたときには撤退し始めたものと考えられます。』


となると、そいつらはここに転がっている雑兵共とは違って、俺との戦力差を理解することができる程度の実力はあるってことか。しかも2人が別々の方向に逃げたのはひとりが捕まっても、もう1人が確実に情報を伝えるようにするためか。なかなか訓練はされてるな。しかし、2人か。少し少ない気もするが...。


『それは単純に王女を襲わせるとはいっても、戦闘力はなさげですからね。そこまで大人数は必要ないと考えたのでしょう。』


たしかにそれなら筋は通るな。この女、チンピラをナイフで切りつけたりとかなり度胸はあったが戦闘力自体は大したことは無いものな。まあもしかしたら、魔法を使うことは出来たりするのかもしれないが。


そうしてここでようやく迅はジュリアの事をみる。ジュリアの瞳には、困惑の色が強く出ている。


ん?何でだ?


『それはあれじゃないですか?御主人がこの女の方を助けはしたものの、それから一言も声をかけずに元いた方向を見たからではないでしか?大丈夫か?の一言も無いのはちょっとどうなんでしょうか?それを常識のある方だったら困惑の様相を呈してしまうのは致し方無いのではないでしょうか。』


あれ?ちょっとリリィ。君、さりげなく俺のことディスってるよね?俺が常識ない人みたいなこと暗に言ったよね。今。普通じゃないみたいな、わ


迅がそんなリリィの念話に抗議していると、


「あ、あの〜」


突如横から聞こえてくる声が。


「ん?あ、あーー。

その、大丈夫だったか??」

「もしかしてですけど、いえもしかしてなくてもですね。完全に!私のこと忘れていませんでしたか?」


さっきまでの困惑の様子はどこへやら。今では普通の会話ができるようになっている。というか、若干ご立腹の様子である。


な!?勘が鋭いなこの女。


愕然とする迅。


「ま、まあ気にするな。それよりも大丈夫か?そこの倒れている男に掴まれてただろ?」

「ええ。大丈夫です。あのままだったらろくなことにはならなかったでしょうけども...」


自嘲気味に笑いながら、それでも強がっているのか自らの身体を抱きかかえるようにしている。


「そうか...。」


そんなジュリアの反応に困り、ろくな言葉も出てこない。これは、今までアリアスやレイナなどとは接してきた迅であるがそれでも、女性との会話などは経験があまり無く、その結果が如実に現れてしまっていた。


「あ、そういえばアリアスとレイナはあっちの角に待たせたままだったな。」


迅は自分に不利な話題から目をそらすように、またはそういえばアリアスたちのことを忘れていたからどうしただろうと。もちろんそれをアリアスたちにいったらそれはそれでジュリアのように一波乱、いや仲の深さを考えたらジュリアよりもあるため二波乱は起こりそうではあるのだが...。もひ波乱が起きなかったとしても今のセリフを聞かれたら間違いなく不機嫌にはなるだろう。だが、角の向こうにいるはずのアリアスたちには聞こえない。そう考えての迅の発言ではあるが。彼はひとつ大事なことを忘れていた。


『今のセリフ、アリアスやリリィが聞いたらさぞ不機嫌になるでしょうねぇ。』


心が繋がっているリリィにはバレバレなのある。

もし、今リリィが実体化していたらニヤリとした悪い笑みを浮かべているだろう。

こうなってしまった迅にはもはや残された道一つしかない。


『勘弁してください。』


平謝りである。

念話での平謝りである。


『ふふ。また私に借りが一つ増えましたね。』


そのうち膨大な数に膨れ上がりそうな気がするな。

しかし、今迅にはそれよりもやらねばならぬ事がある。半ば強引に意識を切り替える。


「おーい、アリアース、レイナー。もうこっち来てもいいぞー。」


なかなか出てこないな。おかしい、いつもならひょこっと顔を出しながら見ていたり、さっさと終わらせるために戦闘に入ってくるはずなのに。

ん?返事もないぞ。


迅が元いたメインストリートまで出てみるがそこにはアリアスとレイナの姿はやはりない。


まさか、連れ去られたとか?いやそれはないか。あの2人の戦闘力ならそこら辺のヤツらに負けるはずはない。それに、観察してたやつと比べてもアリアスたちの方が強いはずだが。


『リリィ。アリアスとレイナがいないんだが何か知ってるか?』


『ああ、アリアスとレイナならあの2人を追いかけていきました。』


『はあ!?あいつら、待ってろ言ったのに。ったく。』


『まあ、彼女達も深追いはしないでしょう。だから大丈夫ですよ。』


『それもそうか。』


『ええ、彼女たちを倒せる者なんて余程のことがない限り出てきませんよ。』


「あ。あのー。」


そんな、またすっかり忘れられていたジュリアの声が後ろから聞こえてくるのだった。



お読み頂きありがとうございます!

評価、ブクマなど面白いと思ったらお願いします。

18時にもう1話投稿します!

そちらもぜひぜひ。

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