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39話 簒奪者と他者の恩恵

お久しぶりでーす。

遅くなってすみません。

これからも続けますよ〜。

「これが一つ目の答えだ。

それで?アリエル、質問があるって言ってただろ?さっき。何だ?」

「えーっとね...。迅は元々、無属性魔法を持ってたじゃない?」

「簒奪者のことか?」

「ええ、そう。簒奪者の能力も相手から任意のものを奪えるっていうものだったわよね?

だったら簒奪者で同じ事が出来たんじゃない?わざわざ貴重な五つのスロットを使わなくても良かったんじゃない?」


へぇ。結構鋭いとこに気が付くな。アリアス。抜けているところもあるがたまーにこうズバッと言ってくるんだよなぁ。まあ、元女神としてはどうなんだと思うところではあるが。

ジーッと見ていたからかアリアスに何かを勘づかれたみたいだ。


「ねぇ、迅。今何か不謹慎なこと思ってなかった?」

「えーっとですねぇ。今御主人はですねぇ。」

「ちょちょちょい。待て待て待て。」


慌ててリリィの口を塞ぐ。


「なーにを言おうとしたのかな〜?」

「んーーー。んんみゃぁまあん。」

「ちょっと何言ってるか僕には分からないなぁ。」


ジタバタともがくリリィ。


「何この2人。」

「なーんでしょうね〜。このいたたまれない気持ちは。」


遠目で俺たちの様子を見る2人。

心なしか、アリアスの目がさっきよりも冷たい。

しかもそこにレイナまで加わっている。

あれー?なんかさっきよりも状況が悪化してるよーな気がする。

リリィもそのことに気がついたのかさっきまでのようにもがモガとはしない。

代わりに念話を俺に送ってくる。


(御主人。ちょっとイチャコラしすぎました。早く本題に戻った方が得策かと。)

(いや。イチャコラはしてないけどね!?

ま、まぁ俺も話題を変えるのには賛成だ。それが俺たちにとっての最善手だろう。)


俺はリリィの口を塞いでいた手を離す。


「さて、お前らの質問に答えていなかったな。」

「あなたが変な視線を送ってきたんじゃない。」

「そーなの〜。ダーリンが最初に話題をずらしたの〜。」


くっ。反論したいがここでこじらせるとまた面倒なことになるよなぁ。


(そうです。よく分かりましたね。)


リリィがさっきの事は忘れましたよーと言わんばかりの口調で言ってくる。

しかもみんなには聞こえないように念話で言って来るあたりタチが悪い。

このもう我慢だ。


ぷるぷると震える手を押さえながら俺は歩きながら説明をしていく。


「最初に言っておくが。簒奪者と他者の恩恵の能力は似て非なるものだ。たしかに同じように相手のものを奪える。しかし、簒奪者は魔法よりより明確な定義があるんだよ。」

「明確な定義?」


『相手の生死を問わずに相手の能力を奪える。ただし奪う際にその技を見ていて体のどこかに触れていなければいけなく、自分で扱いきれない能力は奪えない。さらに奪った能力のストックは現在最大五つである。』


「これが定義なんだが、能力、言い換えればその人が先天的、後天的問わず持っている能力は奪える。さて、ここで問題だ。

その人が努力して培った体力は奪えるのか?」


俺は火の魔法で?を両手から作り出す。

ちなみにこれは火を作り出す魔法フレイムの応用だ。

火を自分のイメージ通りに作るだけだからそんなに難しくはないが、魔法の練習に使える。普段からやっているから癖になっているのかも。

俺がそんなことを考えている間もレイナはうーんと頭を捻らせながら歩いている。

もちろん俺の考えが筒抜けのリリィはクイズには参加出来ない。


「んー。奪えるんじゃなーい?」


最初にレイナが答える。


「何でだ?」


俺はニヤっとしながら、再度レイナへと問いかける。


「ん~、だって~...。特に理由はない~。

でも、ダーリンの簒奪種は強奪系のスキルだから出来る気がしたの~。」

「はは。レイナらしい答えだな~。

元女神のアリアスとしてはどう思う?」


今度はアリアスへと聞いてみる。

アリアスがふんっとふてくされたような顔をしている。

ん?なんでだ?怒ってる?


「ちょっと。迅。

元女神を馬鹿にしすぎじゃないかしら?いくら私が今のところ戦闘ではあまり役に立てていないからといってもさ~。知識だけならこの世界の誰よりも知ってるのよ。なのにさ。迅ってばさ。私を馬鹿にばっかりしてさ。」


訂正。怒ってなかった。落ち込んでいたらしい。


「はぁ。」


あ、ため息も出た。

俺がその様子を見ていると、


「そんなことないよ~。ロノウェの時の時だってアリアスの絶対障壁がなかったらだめだったんだよ。」

「でもそれ以外では何もしていないわ。ロノウェから戻ってきた力もわずか。あの戦いにおいて役立たずといえるわ。」

「ならいまから成長すればいいじゃない。自分の力を努力して伸ばすことは出来るんでしょ?」


そう言いながらレイナは俺へと何かを求めるような視線を送ってくる。

しかしアリアスは落ち込んでいるからかそのことには気づかない。

どうやら本気で落ち込んでるようだ。

顔を俯けてしまった。

しかも結構根が深そうだ。

だが、それに触れてしまったのも俺だ。

つまり俺にも責任の一端があるわけだ。


(一端というかほぼ全部ですけどね。反省してください。)


リリィからも厳しい口調で言われる。


まあ、そうだな。

アリアスが悩んでいることに気づいてやれなくて、傷つけてしまった。

なら、俺がなんとかしないとな。


(御主人のそういう素直に認められるところ好きですよ。)


さっきとは違った感情がリリィから流れ込んでくる。

アリアスの方を見てみると、レイナがなんとかしようと奮闘いているが、アリアスが顔を上げる気配はない。

(ま、気休めなんて言わないけどな。)


「アリアス。」


「え?」


迅がアリアスの名を呼びレイナは迅の方を向く。

そこには彼女の愛しのダーリンの姿が。

どんな風にアリアスを諭すのだろう。

そんな期待の満ちた目をレイナはしていた。

しかし彼女の瞳に映った迅は諭すような顔をしていなかった。

どちらかといえば厳しいもの。普段の私たちと会話しているような表情ではなくて。

そう。戦闘に行くような。そんな感じ。

そうレイナが考えた瞬間。

迅は、村正を一瞬で引き抜いた。

迅がなぜ?レイナがそう感じたときには迅の姿はその場所から消えていた

否、稲妻のように殺気を纏った迅が移動していた。

迅が纏う殺気は敵に向けるほどのもの。

それがかろうじてレイナには見えていた。

迅が向かう先にいるのはもちろん。


アリアス。


レイナはとっさのことに動くことが出来ない。

迅が纏う殺気は本物。

敵に向けるのと同質のそれ。

止めなきゃと思っているのに。

眼では見えているのに。

身体が自分の思うとおりに動かない。

それは迅が何故そんなことをしたのかの真意がつかめないからでもあった。

絶対の信頼からくる迷い。

それは彼女の甘さを示しまた同時に彼女がまだ幻視の瞳を完全に使いこなせていない証拠でもあった。

それでも迅の一太刀は無情にもアリアスへと迫る。


「何してんのダーリン!!」


迅が何故かにやっと笑った。ように見えた。



カキィィィィィィィィィン。



何かと何かがぶつかり合う甲高い音がステルベンへと響き渡る。

目をゆっくり開けてみると、そこには。


村正を持った迅がアリアスと鍔迫り合いをしていた。

アリアスもいつの間にか短剣を取り出している。


「どういうつもりかしら?」


若干怒気が篭った声で鍔迫り合いをしているダーリンへと向ける。

そりゃそうよね。

落ち込んでいたらいきなり斬りかかられたんだもの。

だが、怒気を向けられた当のダーリンは何故か飄々としている。


「いや、まだ分かんないのか?

昔のお前なら今の俺の斬撃なんて全く反応出来なかったぞ?

だが、今お前は反応した。いや、反応だけじゃない。完璧に防いだ。不意打ちに近い一撃をだ。

これらつまりどういう事だ?」


意味あり気な視線をアリアスへと向けるダーリン。

なんだぁ。そういう事かぁ。

ふっと肩の力が抜ける。

しかし、アリアスは未だ真意を汲み取れていないようだ。

もうこの鈍感女神は〜。世話が焼けるの〜。


「ダーリンはね。あなたに気づいて欲しかったの〜。あなたも成長している〜ってことを。この世界に来てからも。女神の力を取り戻して力を得るだけじゃなくて〜、今の自分を成長させても強くなれることをね〜。」

「そっか。そうなのね。」


俯くアリアスの顔からは表情は私からは見えない。

でもその声はさっきまでとは違くて、上向いようにみえた。




ふ〜。ヒヤッとしたぁ。アリアスが反応出来なきゃただただ落ち込んでいる奴に斬りつけたヤバイやつになるとこだった。

(でもちゃんと当たっても峰打ちになるようにしてたじゃないですか。

まぁ、かといって女性に斬りかかるのを肯定はしませんが。)



リリィが念話でしっかりと追い討ちをかけてくる。

前々から思ってたけどリリィって絶対Sだよな。


(え?違いますよ?)


なんで真面目に否定すんねん。

おっと。柄にもなく関西弁がでてしまった。

まあ、でもあれしか思いつかなかったんだよ。アリアスに出来ることは。こういう時、スキルとかレベルとかあったらなぁって思うよ。

目に見えて成長を確認できるからな。


(ああ。御主人の知識にあったやつですか。まぁ、でも人生は小説ほど甘くないってことですよ。)


ま、確かにそうだな。

手探りでやってく面白さもあるしな。


「ねぇ。あれ見て!」


リリィと念話していると、アリアスの声が聞こえる。

その声は少し高揚している。

空に向けて指さしているようだ。

ん?何か見つけたのか?


「あれ湯気じゃない?」


指差す先には白い煙がいくつも上がっていた。

よくよくみてみると、いくつかの煙突のようなものちらほらと見える。


「ってことはー?」


レイナが嬉しそうにこっちをみてくる。


「あれがウィルシスだ!」

「「やったーーーーーー!!」」


さっきまで落ち込んでいたのが嘘のようである。


「そうとわかったら早く行くわよ!!」


前は急げとばかりに街へと向かうアリアスとレイナ。

やれやれなかなか長かったな。


(ええ。そうですね。代わり映えのしない光景に私も飽きました。いっそ私の魔法で全部焼き尽くしてやろうかと思いましたよ。)


さらっと恐ろしいことをいうな。リリィ。

俺も何度かそう思ったけどさ。

とりあえずすることはあれしかないな。


(ああ。あれですね。わかってますよ。)


なんか嫌な予感がする。


(覗きですよね。)


キランと効果音が聞こえてそうな凛々しい声でリリィが言い放つ。

違うわ!!

久しぶりにゆっくり温泉に入るんだよ!!湯だけに湯ーっくりとな!!


(.....なんか冷えましたね。早く行きましょうか。)


そう言って、リリィもアリアスたちの後を追って行く。

あれ?俺の湯治にためにきたはずだよね?俺置いてかれてるんだけど。

ハァ。とため息をつく迅であった。




感想とか欲しいな。ブクマとかも。ポイント評価も欲しいかな。


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