37話 黒の奔流
お久しぶりです。
拙い文章ですがご容赦を。
ちょっと長いかも。笑
「ハァ。マジか。」
迅に絡みついて来ている蔓は、アナザーアルベロがマナを溜めている間も緩まる気配はない。
そこで迅はまず自分がどの程度動けるかを体を動かして確認する。
迅の両手足、胴体に絡まっている蔓は軽くは動くが、簡単に解くことはできそうにはない。
解けたとしてもその頃にはアナザーアルベロの攻撃にやられている。
「よし。」
迅は唐突に何を思いついたかそう言う。
迅のその自信に満ちた声を聞いて、期待に満ちた目をするアリアスとレイナ。
だが、それもすぐに打ち砕かれる。
「全く動けない!」
「「ならもっと焦りなさい!!」」
自信満々にいう迅に向かって2人からの突っ込みが同時に入る。
「いやいや動けないことが分かったのも収穫だ。
ま、そう焦んなって。」
そういうと、迅はマナを練ってみる。
(よし、マナが練れないわけじゃないな。なら...)
迅はもう一度マナを練り直し、自身に向けてある魔法を発動する。
しかし魔法を発動する迅の顔は若干嫌そうな顔をしている。
「これ熱そうだけど。ま、やるしかないか。
火魔法 ヘルフレイム。」
魔法を発動すると紫色をした炎が発生する。
紫の炎は轟々と燃え上がり、迅の身体を猛烈な勢いで包み込んでいく。
それは迅に絡みついていた蔓も同時に包んでいく。
「なっ。自分に魔法を放つなんて。あんなの自殺行為よ。蔓は焼けても迅自身もただじゃ済まないわ。」
一種絶句して、つぎアリアスが信じられないといった顔をして言う。
そう言っている間も轟々と燃え盛る炎。
それは迅に周囲に生えていた草も塵へと変えていく。
「普通じゃたしかに考えられないけど。なにかを忘れていないかしら〜?ほら」
レイナが落ち着いた声でそう言って迅の方を指差す。
そうするとみるみるうちに轟々と燃え盛っていた紫の炎が小さくなっていく。
それは急速にしぼんでいき、最終的にはプツン音を立ててと消えさる。
炎の後には、蔓の拘束がなくなって自由となった迅が立っている。
その迅の体には傷一つない。
「よかった。でもどうして。」
ホッとしたのと同時に疑問が湧き出る アリアス。
「ダーリンには頼れる相棒がいるじゃない。」
レイナにそこまで言われてアリアスはようやく思い出す。
迅がどうやって魔法を防いだのかを。
「リリィね。
そっか。そりゃ心配ないわね。」
「まあね。でもまだ終わりじゃないわ〜。まだあいつが迅を狙ってるんだから。」
レイナの視線の先には口をあんぐりと開けて未だにマナをため続けるアナザーアルベロの姿が。
アリアスも納得顔から一転してまた真剣な表情となる。
「迅。」
一方、絶賛敵に狙われている迅はというと、
(御主人。)
(はい。)
(どうして私に何も言わずにいきなり自分に向かって魔法を放ったりするんですか。)
アリアスに怒られていた。
(リリィなら余裕で防げるかなと。信用してたからな。)
(信用...。ま、まあ、たしかに余裕ですが!ですがですよ!!何か一言言ってくださらないと焦るじゃありませんか。)
(わ、悪い。)
迅はリリィには頭が上がらないのか素直に謝罪を口にする。
(ふふっ。いいでしょう。それでですが。)
リリィは一瞬してやったりと嬉しそうにするがすぐに真剣な声音となる。
どうやら本気で怒っていたわけではないらしい。
(ああ。あいつだろ。)
くいっと顎を持ち上げアナザーアルベロを指す迅。
迅も気持ちを切り替えて目の前のアナザーアルベロへに意識を向ける。
ーー
(リリィ。お前、あれ完璧に防げるか。)
(そうですねぇ。)
そう言って、悩まげな様子を見せてから迅に答える。
(完璧にと言われると無理ですね。ある程度は受けると思います。)
(だよなぁ。俺も無駄な傷を負いたくないしな。んー。なんかいい手は...)
そう言って、迅が考えこもうとする。
そのまま目を閉じて少しの間考え込む迅。
しかしいつまでたっても目を開けようとしない。
(って考え込まないでくださいよ。御主人。)
(ん?)
(ほら多分もうそろそろ撃ってきますよ。そんな感じがします。)
(しゃあねー。まだ試したことがないからぶっつけ本番になるが。 やってみるか。)
そう言って迅はあることを実行に移そうとする。
その考えは血の盟約によって繋がっているリリィにも伝わる。
(っ。)
一瞬驚いた表情となって、その後にふふふと笑う。
(こんなこと普通思いついてもやりませんよ。でもまあ、面白いですね。どうなるかは想像もつきませんが。もう他を考えている時間もないですしね。出来る限りサポートします。)
未知のことへの挑戦を楽しそうに、だがそれと同時に真剣さも伺わせるような様子が迅に伝わってくる。
そのリリィの気持ちに迅はニヤリと笑う。
「じゃあ行くか。リリィ。」
今度は念話ではなくて声に出して言う迅。
「ええ。御主人。運命はあなたと共に。」
そう軽口で返してくるリリィ。
どうやらリリィもとっくに覚悟は決めているらしい。
迅は軽くフッと笑うと、アナザーアルベロへと向かって高速で移動する。
その軌道は今までのようにジグザグに、相手を困惑させるような軌道ではなく、どちらかというとその反対、直線的にそして最短の距離で向かっていく。
その行動からは迅の相手の攻撃を全て受けてやるという強い意思が感じられる。
しかし迅のその行動はアリアスとレイナにとっては全くの予想外であった。
「「えっ。」」
彼女らはてっきり蔦を取った迅がその高速移動でアナザーアルベロの攻撃を回避すると考えていたのである。
そのため2人は一瞬絶句する。
しかしすぐに我へと帰る2人。
「何してるのよ迅!!」
「ダーリン!!回避して〜。」
迅の身を案ずる2人の悲痛な叫びが迅の行動の後に一拍遅れて聞こえてくる。
アリアスとレイナは感じていた。
アナザーアルベロの口に溜まっているマナに今の彼女達にどうすることもできないほどの絶望的な威力を秘めていることに。
せめて迅の身をと案じて叫ぶ。
しかし2人の叫びはもう遅い。
元々、迅とアナザーアルベロの距離はそれほどなかったのである。
高速移動ができる今の迅にとってその距離は無いに等しい。
迅へと声が届く頃にはもうアナザーアルベロの目の前へとたどり着いていた。
迅がたどり着くいたその刹那。
アナザーアルベロが口へと貯めていた大量のマナを迅に向かって高速のレーザーのように吐き出してくる。
その口に内包されているマナは最初の白色とは打って変わってどす黒い黒色へとなっている。
迅は気づいていた。
アナザーアルベロが自分の動きを捉えていたことに。
目の前に現れた迅に向かって一気に吐き出してくる。
それは高速のうねりを持って迅へと向かってくる。
ただ無策にそれを受ける迅ではない。
手をスッと前に出すとある魔法を発動する。
「他者の恩恵。」
圧倒的な威力を纏ったドス黒い大量のマナが迅に襲いかかる。
それが迅の身体へと当たりすぐに迅の全身を包む。
いな、そのように見えた。
「迅ーーーーーーーー」
「ダーリンーーーーー」
黒の奔流に飲み込まれた迅。
その姿を見て膝から崩れ落ちていく2人。
しかしそこである異変が起きる。
黒の奔流は迅がいたあたりから進まないのである。
よく見ると、黒の奔流の中心に一つの青い小さな光が輝いている。
それはよく目を凝らさなければ小さい光。
だが、それはアリアスとレイナにとっての希望を持たせる光でもある。
「あ、あれはなに?」
それに気づいたアリアスがその点を指差しながら言う。
レイナも遅れてその光に気づく。
青の光は2人がそう言っている間にもどんどん大きくなっていく。
青の光が大きくなるにつれて黒の奔流は相対的に小さくなっていく。
そして彼女らは視認できるようになる。
その青の光の正体がなんであるかを。
もちろんそれは迅、その人であった。
青の光は厳密に言えば、彼の右手から出ている光。
その右手に黒の奔流が吸い込まれているのだった。
そして最後にはトプンと言った音をたてて黒の奔流を右手が吸収してしまう。
それにはアリアス達も驚きで声も出ない。
アナザーアルベロもそれは同様のようで、一歩も微動だにしない。
「っつう。これかなり辛いな。身体の中でマナが暴れまわっているみたいだ。」
全てを吸収した迅が腕を抑えながら苦痛の表情をしている。
「そりゃあれだけ吸収すればそうなりますよ。しかも魔獣のですからね。さらに今御主人は自分の限界以上のマナを持っていますからね。ですから一刻もはやく放出すべきです。」
真剣味を帯びた声でリリィが迅へと警告してくる。
「チッ。しゃあねぇ。とりあえずあいつにこれ返してやるか。」
そう言って、迅を目の前にいるアナザーアルベロに向かって軽くデコピンをする。
それは何気なく放たれた攻撃。
普通であれば少し痛い程度の攻撃である。
しかし迅はその手に黒の奔流を吸収したことによって得たマナを乗せている。
「ほいっ。」
それの動きに一拍遅れて反応し防御しようとするアナザーアルベロ。
だが、迅の方が速い。
迅のデコピンがアナザーアルベロの中心付近に当たる。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォン。
軽く放たれたとは思えないほどの音をたてる。
アナザーアルベロは受けた瞬間に爆散。
アナザーアルベロがいた後方の森は威力の余波で扇状に樹々がなぎ倒される。
「まじか。」
これにはデコピンをした本人も驚いている。
しかし迅の驚きは一瞬で、すぐに気持ちを切り替えていた。
(結構派手に戦ったからな。誰かが後ろにいるのは気づかれたかもな。警戒は高まるだろうな。めんどいな〜。どうすっかな。)
腰が抜けたのかアリアスとレイナは2人してへたへたと腰を抜かす。
戦い終わった迅はいつも通りと同じようにアリアス達の元に戻ってくる。
その横にはいつのまにか実体化したのかリリィが笑顔で迅の腕を組んでいる。
「よし。少し休んだら行くからな。
今日中にこの山を抜けるぞ。」
「「え。」」
その言葉に2人の顔はサーっと青ざめるのであった。
彼らは知らない。
このアナザーアルベロが放ったとしている技が何かを。
アナザーアルベロが放とうとしている技の名がはブラックフラッシュということを。
冒険者のギルドの文献の中にこの魔獣について書かれている。
それにはこう書かれている。
「アルベロには幹部級の強さを持つアルベロがいる。それはハイアルベロと呼ばれる。もし、これと出会ったら戦うべきではない。なぜか。それはハイアルベロが勝てないほど強いからではない。ハイアルベロなら上級の冒険者が集まれば勝つことができるであろう。しかし怖いのはその次に待ち構えているものである。その名はヴェロアルベロ。これはアルベロのなかでもボスクラスであり、アルベロたちの群れを束ねている。それはハイアルベロ十体分以上にもなる。そしてもし口にマナを貯め始めたら逃げろ。。その攻撃はブラックヴェロと呼ばれる。それは最初のうちのマナは白く、次第に黒くなっていくそして終いにはドス黒くなる。その威力は山一個分を吹き飛ばす威力があったと報告が上がっている。よってこれの討伐ランクはA」ーギルド魔獣図鑑から抜粋
評価、感想など頂けたら幸いかなーと笑
あと質問なんですけど人物紹介や魔法紹介欲しいです?
ここのとこわかんないとかあったら言ってね笑
ここからステルベンを抜けて新たな街へと入りまーす。
楽しみにしててね!