33話 山の主
お待たせしました。
拙い文章ですがお願いします。
迅たちはアルベロたちを倒した場所でリリィが戻ってくるのを待っていた。
軽く談笑でもしていると、突如迅の顔が強張る。
それにアリアスとレイナが気づく。
「どうしたの?何かわかったの??」
「ああ、まあな。ちょっとめんどくさいことになってるみたいだなぁ。」
迅が心底煩わしそうにいう。
アリアスがもっと情報を聞こうと迅につめ寄ろうとした瞬間。
「皆さん。」
さっき偵察に行ったリリィがちょうど戻ってくる。
その顔はいつもの柔らかな笑顔を浮かべている。。
「何かあったの?」
アリアスが緊張した声音でリリィへと尋ねる。
リリィは一拍、間を開けていつも通りに冷静な様子で答える。
「今、この先を少し見てきました。そこにアルベロの上位種ハイアルベロがいました。それが2体ほど。」
リリィのその報告にレイナが愕然とした様子になる。
「二体もなの....!?」
迅はレイナのその様子に不思議そうにする。
「たかが上位種二体だけだろ?何をそんなに驚いているんだ?」
「ダーリン。ハイアルベロはこのステルベンでは上位の魔獣なの〜。普通のアルベロとは段違いの強さなの。もし、ハイアルベロに出会ったら戦うな。逃げろって冒険者の中で言われてるくらいの強さがあるの〜。普通の!冒険者ならだけど」
レイナが含みのある言い方で迅をみる。
「そんな強調しなくてもいいぞ?レイナ。そんなことは俺の中ではあまり関係無いからな。このまま行くぞ。
それに結局前にいるヤツらは俺らに魔獣をトレインしてきたってことになる。
悪質なMPKだな。まあ、意図があるかは知らんが。
あいつらを追う理由が増えたな。」
迅はそう言ってニヤリと笑う。
「そう言うと思ったわ。」
「楽しくなってきたの〜。」
「無茶をし過ぎないでくださいね興奮して。」
アリアスが呆れるように言い、レイナは嬉しそうに、リリィは母親のような感じで迅の意見を尊重する。
その言葉を聞いた迅は一言。
「レイナ、それだとお前戦闘狂みたいになってるぞ?」
迅は引き気味になりながらレイナへと言う。
「なっ。」
その言葉にレイナは絶句する。
(御主人はほんとに通常運転ですのね。)
(ジンはもう。)
リリィとアリアスはそんなことを思いながら苦笑する。
そんなことには気づかない迅とレイナ。
レイナは一瞬絶句するがすぐに我にかえる。
そして猛然と迅へとぶつかるような勢いで向かっていきこうぎする。
「違うの〜!私は早くウィルソンに行きたいだけなの!そして早く温泉に入って身体を休めたいだけなの〜!ついでにいちゃいちゃも...」
後半は萎むように言ってぷんと言った様子でむくれてしまうレイナ。
そしてそのままハイアルベロがいると思われる山の上の方に向かって進んでいく。
「全く迅は女心がホントに分かんないのね〜」
アリアスは迅の肩を軽くポンポンと叩いてレイナの後を追っていく。
側にいるリリィは何も言わないが優しい視線で迅を見つめる。
「なんだ?このバカにされた気分は。」
「まあまあ。御主人。先に進みましょ?」
迅の感情がわかるリリィが迅にそう言って促す。
「あ、ああ。」
女は全くもってわからん。
珍しく考えこむのであった。
「おい、待てよ。さっきのリリィの情報ではこの先にいたって言ってた。いつくるか分からないからな。そんなに先に行くなよレイナ。」
迅がそう言って先を進むレイナを諌めるが、レイナは全くといっていいほど聞く耳を持たない。
はぁ。遠足に来た小学生か。
レイナはいつも通りに静かに歩みを、いやいつもより少し早いペースで荒れた山道を登っていく。
途中に出てくるアルベロは単体か多くても二体程度なのでレイナは魔法を使って瞬殺していく。
そうしてレイナの通った後にはアルベロの死体が残っていく。
その様子を迅たちはただ後ろから眺めるている。
否、レイナから放たれる言い知れぬオーラに眺めることしかできない。
そんなレイナの様子を見て迅がアリアスへとささやくような声で話しかける。
「おい、レイナってあんなに強かったけ?」
「ええ。あの子はもともと強いわよ。私たちと出会うまでギルドで冒険者として活動していたらしいもの。マキロイの時には一瞬で倒していたでしょ?」
アリアスが何を今更いっているのだといったような様子で迅へと答える。
「いや、レイナは幻視の瞳の印象が強かったからな。
やるな。」
迅が感心した様子でレイナの様子を見つめる。
(もちろんそれだけじゃないけどね。)
アリアスは言葉には出さず迅を見ながら内心で思う。
(レイナの元々はあんなもんではない筈よ。長年戦いから遠ざかっていたためか、私たちと会った時の腕は全盛期に比べるとかなり落ちていた。私もね。そしてあのオケアスでの戦いで私たちはそのことを痛いほど痛感したのよ。それとあなたとの差もね。何よりもそんな時に何もできなかったことをわたし達は悔いた。次は隣に立って戦えるように。
だからあれからレイナは腕の鈍りを取り戻すためにできるだけのことはしたわ。だからこれぐらいはできて当然よ。
ま、ジンの言葉にむくれてそれを出すのはどうかとは思うけど。)
アリアスは迅から戦っているレイナへと目を写す。
(この山はちょうどいいのかもね。レイナはいざって時に幻視の瞳を頼ってしまうことが多かったから。)
アリアスがそんなことを考えているうちにレイナが最後の一体を魔法で倒す。
「風魔法。 エアースラッシュ。」
そう言って最後のアルベロに向けて魔法を放つ。
アルベロは自身の枝で防御しようとするが、エアースラッシュはまるで紙を切るようにそれを切り飛ばし、アルベロの本体も同時に切りとばす。
それを見届けるとレイナは方向転換して迅の方向へとすたすたとやってくる。
そして迅の目の前までやってきて止まる。
顔は下を向いていてレイナの表情は迅からは伺えない。
迅がレイナの出方を伺っているとレイナが唐突にバッと顔をあげる。
その勢いで、レイナの豊かな胸もぷるんと揺れる。だが、防具を纏っているためかいつもの揺れより少ない。
迅は慌てて目をそらしてレイナの眼をそーっと見てみる。
レイナはジーとその綺麗なオッドアイの瞳で迅を見つめていた。
胸を見ていたことがバレたのかと思った迅の額には汗が一筋ツーと流れる。
「ダーリン。」
「は、はい。」
レイナの迅への呼びかけになぜか迅は返事が敬語になってしまう。
「そんな怯えなくていいの。もう怒ってないしね〜。」
レイナがいつものおっとりとした口調で話してくる。
そのことにホッとした迅だったが。
「でももう戦闘狂とか言わないでね?」
迫力のある笑顔でレイナが迅へと言ってくる。
「お、おう。」
「はい、じゃあこの件は終わり〜。早くこんな山でてウィルソンに行こう〜。ね、ダーリン?」
レイナが可愛らしい笑顔でそう言いながら迅の腕に抱きついてくる。
その時にレイナの豊かな胸の膨らみを腕で迅は感じてしまう。
迅は顔が若干赤くなってしまう。
「おま、今はやめろって。まだここは敵がわんさかいるんだぞ?」
迅が慌てて、レイナの腕を振りほどく。
「むー。わかったよ〜。でもあとでならいいんだ?」
後半は小声で言うレイナ。
そのため後半は迅には聞こえない。
「ん?最後なんて言ったんだ?」
迅が聞き返すが、レイナはニヤッと笑って何も答えない。
逆に懲りずに迅の腕を掴んで、
「いこっ。」
と可愛らしく言ってくる。
「ったく。」
迅がやれやれと思って頰をポリポリとかいてアリアスたちの方を見るとそこには黒いオーラを出したアリアスが。
その隣ではリリィがあらあらと言った様子で眺めている。
アリアスのその気配を察知したのかレイナは迅の腕をいつのまにか離している。
「ジーーーーンーーーー」
「ま、まて。今度はなんでお前が怒っているんだよ。」
「そ、それはあれよ....。その〜。」
アリアスが言い淀む。
迅はそのことでさらに困惑する。
「な、なんだよ。」
「そのあれよ。そう!こ、ここは街とかの安全な場所じゃないのよ?イチャつくのはやめなさい!」
アリアスにさっき迅が言ったことを返されてしまう。
だが、ただ言われっぱなしの迅ではない。
「どこがいちゃついてるように見えんだよ。あれのどこが!」
「腕を組んだりしてることを他になんていうのよ!!」
そう言って2人はいがみ合う。
「レイナさんの機嫌が治ったと思ったら今度はアリアスさんですか。」
それを見ていたリリィが呆れるように笑う。
「もうそろそろ。仲裁にはいろ....。っとその時間はなさそうですね。御主人!!」
魔獣の気配を感じたリリィは言おうとしていた言葉を止め、迅の名前を呼ぶ。
「ああ、わかってる。」
迅たちもリリィと同様に魔獣の気配に気づき、いがみ合うのをやめて意識が戦闘態勢へと切り替わっている。
「ハイアルベロだよな?」
「でしょうね。到着が思ったより早めですが。」
「ま、遅いか早いかなんて大した問題じゃない。サクッと倒すしな。どうせっ。」
迅が言っている間に森の中から多数のアルベロたちが出す枝の何倍もの大きさ枝の先端が一行を襲う。
迅がそれを正宗で弾こうとするが。
「「待って。」」
それを迅の前で全て撃ち落としたアリアスとレイナの制止の声が同時に聞こえる。
その声を聞いて迅は抜こうとしていた剣を止める。
「なんだ?話し合っている時間はないぞ?」
迅真剣な声で言う。
「分かってるわ。ハイアルベロたちは私たち2人に任せて。この程度の敵、私たちだけで十分だわ。」
しかしアリアスもまた決意のこもった眼差しで迅へと言ってくる
レイナの方も同様に力強い目線をして迅へと訴えかけてくる。
「わかった。お前たちに任せた。」
迅がアリアスたちの言葉に頷いてみせ、出していた正宗をしまう。
それを見届けてアリアスとレイナは軽くニヤッと笑うと表情を切り替える。
(じゃあ、お前たちの力を見せてくれ。)
山の主との戦いが幕を開ける。
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