32話 山道2
拙い文章ですが、お願いします。
迅はマナを一瞬で練る。
マナ練っているのを感じとったのか様子を見ていたアルベロたちが迅へと向かう。
「キシャァァァァァ。」
アルベロが攻撃的な声を出し両手の蔦を一斉に伸ばしてくる。
その蔦は迅へと複雑な軌道を描きながら襲いかかる。
迅はその様子を見ても微動だにしない。
「水魔法ウォーターソード。
火魔法フレイムエンチャント。」
迅左手に水で1mほどの刀を作り出すのと同時に、引き抜いた村正に火魔法付与する。
「これで延焼の心配はいらないな。」
迅がそう言っている間に、アルベロの蔦は迅の目前まで迫っている。
当たると思われたその刹那。
迅は火魔法が付与された村正で蔦を切り落としていく。
蔦を切り落とす村正はその軌跡を迅の周りに紡いでいく。
アルベロの蔦は迅の後方からも襲いかかるが迅は後ろに目があるかのように最適の順番で防いでいく。
否、後ろにも目があるのである。
コートに戻っているリリィが攻撃が来る方向を迅に伝えているのである。
(御主人。右斜め後ろです。)
リリィの意思が伝わるのと同時にその方向の蔦を切り伏せる。
しかし斬っても斬ってもアルベロたちの攻撃は終わらない。
「あ〜やっぱあの再生能力うぜーよなー。」
迅が蔦を斬り落としながらぼやく。
(まあ、それがアルベロの強みですからね。一体一体はさほどの力もないですが、それが群れをなし連続して、さらには再生までして襲ってくるんですからね〜。
厄介です。)
「あ〜。見つからないようになんか方法考えないとな〜。」
(そうですね。というかもうそろそろ終わらせてはいかがですか?ストレス発散も済んだでしょう?)
迅はリリィの言葉を聞いてニヤリとする。
「ああ、まあな。やっぱ誰かのあとを追いかけていくのはストレス貯まるからな。それじゃそろそろやるか〜。」
迅はそう言うとアルベロの蔦を斬り落とすのをやめて本体へと突っ込んで行く。
アルベロの本体に迅が近づくにつれてその攻撃は苛烈さを増して行く。
少し離れた距離から見ているアリアスたちの顔も少し緊張しているようである。
だが迅はアリアスたちのそんな不安もつゆ知らず、蔦の攻撃に正面から突っ込んで行く。
「おせーなぁ。そんなんじゃうすのろな攻撃じゃ一生当てられねーよ。」
迅はそう言った瞬間一段階スピードを上げる。
アルベロたちはそのスピードに反応できない。
結果、迅はアルベロたちの懐へとはいることに成功する。
懐に入ってしまえばもうそこは迅の間合いである。
次々と迅は斬り伏せていく。
まず、火を纏っている村正で袈裟斬りし、水剣で逆袈裟斬りをしていく。
その結果、アルベロたちは再生することはできない。
火によって完全に切り口が焼かれたためである。
そして村正で絶命したアルベロを水剣で斬り、火を収める。
アルベロたちも仲間がやられている間にも迅へと攻撃していくが、一向に当たらない。
最小限の動きでかわしていき、また蔦を伸ばしたためにできた隙を突かれて斬られていく。
残り五体以下となったところでアルベロたちの攻撃はまばらなものとなる。
そんな時、一体のアルベロが蔦を他の木へと伸ばして捕まり、逃げようとする。
その一体を皮切りに他のアルベロも散り散りに逃げようとする。
「逃がすわけないだろ?」
迅はそう言ってニヤリと笑って真っ先に逃げ出したアルベロに追いつくと、二刀で断ち切る。
その後すぐさま他の逃げ出そうとしたやつを斬っていく迅。
戦闘開始から数分で戦闘が終了する。
戦闘が終わったのを確認したのか、近くで見ていたアリアスたちが駆け寄ってくる。
「どう?調子は?」
アリアスが迅へと聞いてくる。
「ん〜。まあまあだな。この程度の相手なら余裕だがな。」
「ですね。ですが、まだ等価交換は使ってはいけませんよ?あれは身体へのダメージもかなりありますから。」
リリィが擬人化して、忠告する。
「わかってるよ。あれは使った後辛いからな。色々と。」
迅はそこでロノウェと戦った後のことを思い出したのか、苦笑いしながらアリアスたちへと言う。
そんな話をしているなかいつもは話に入ってくるはずのレイナが入ってこない。
迅が疑問に思い、レイナの方を見る。
辺りを見回していたレイナは迅の視線に気づくと、トコトコと駆け寄ってくる。
「お疲れ様〜。」
「ああ、それよりもどうした?辺りを見回して」
「ん〜。なんか違和感があるのよね〜。今まで出会った魔獣はアルベロだけでしょ?でもここには他のハイエナやゴブリンのようなのもいたはずなの〜。」
レイナのその言葉に迅は内心で考えていた。
全く見当違いなことを。
(ゴブリンってあれか??よく異世界ものとかで出てくるあれか?醜くて背丈は低くて性欲が無駄に強い緑色の肌をした集団で行動するあいつなのか!?)
迅が不思議そうな顔をしていることにレイナが気づく。
「どうかしたの〜?ダーリン〜。」
「あのさ、ゴブリンってさ〜どんな感じなのかな〜....と思ってね。」
「え?ってあ、そっか。ダーリンはもともとこの世界のヒューマンじゃないから知らないのか〜。」
「ていうかあったことのない魔獣は大体わからないな。」
「じゃあウィルシスに図鑑みたいなのあったら買おうなの〜。
それでゴブリンはね〜、大体背丈が1メートルぐらいある魔獣なの。顔には牙が二本あって耳が頭に三つ付いてて目が黄色ばっていて結構醜い様子なの。肌は青みがかかった灰色なの。知能はそこまで高くないんだけど〜、身体能力はヒューマンに比べると高いわ。まあ、私達なら余裕で倒せるけどね。そしてこれが一番最悪なことなんだけど性欲が強いよ〜。」
(俺の知ってるゴブリンと違うのは肌の色ぐらいか〜。そこまでは変わらないんだな。異世界でも。)
「それでレイナ。お前の違和感はこのステルベンにいるはずのそいつらがいないってことでいいな?」
そう言って、レイナの方を見るとレイナはこくんと頷いてくる。
それをみて今度はアリアスの方に向き直る迅。
「この世界じゃ、こういうことはよくあるのか?」
「ん〜。あんまりこういうことはないわね〜。ある時は大体、一つの強い個体が出てきて、その周辺の生態系が変化して、その種族が残ったりするぐらいかしら。」
迅ははそれを聞いてため息をつく。
「そういう強い魔獣って普段どの辺りにいるんだ?」
「ん〜。大体奥の方にいて自分から出てくることはなくて手したみたいなのにやらせるわね。」
「そうか。ってことはだ。アルベロの上位に当たる魔獣がいるってことでいいのか?」
「そ、そういうことになるのかしら。」
アリアスとレイナの顔が少し曇る。
だがすぐにアリアスがハッとした顔になる。
「でも私たちの先には誰かいるはずでしょ?倒してくれているんじゃないかしら?」
「そうだといいんだがな〜。まあ、用心するに越したことはない。今俺たちがいるここがステルベンのどの辺りにいるか、レイナ。わかるか?」
迅が一瞬考えてからそう答え、レイナの方に向かって聞く。
だが、レイナは申し訳なさそうな顔をする。
「ごめんなの〜。この道であっていることはわかるけど〜。一本道だし、惑わされなければ〜。だけどここには私もきたことはないから〜...。」
「まあ、気にするな。」
そう言って謝るレイナの頭を迅はポンポンと軽くする。
レイナは顔を赤くして下を向いてボソッと言う。
「......ありがとうなの〜。」
その様子を見たアリアスはもやっとした気持ちとなって不機嫌になる。
「なんでレイナだけ〜。私も情報教えたのに〜。」
リリィがその様子に気づいて、苦笑いする。
迅はアリアスの様子には気付かずに、苦笑いしているリリィの方を向いてくる。
「なあ、リリィ。ちょっと上からここがどこらへんか見てきてくれないか?見れたら山の麓の死体をやった連中もな。頼めるか?」
「了解しました。御主人。」
リリィは、そう言って偵察に行こうとするが、なにかを思いついてその場に止まる。
「ん?」
迅がリリィが止まったことに不思議に感じて声をかけようとする。
「どうかした...いやなんでもない。」
迅が言おうとした瞬間にリリィが念話してくる。
(御主人。アリアスさんが少しふくれっ面をしていて不機嫌そうです。褒めて慰めてあげてください。)
(なんでアリアスは不機嫌になったんだ?さっきまでは普通だったじゃないか?)
迅の返答を聞いてリリィが頭を抱えそうな気持ちになる。
それはもちろん迅にも伝わる。
(おい、リリィ、なんだ?その感情は。)
(いえ、御主人。なんでもありません。それよりもちゃんとアリアスさんのことお願いしますね。)
リリィは気持ちをすぐに切り替えてそう言うと、偵察に行こうとする。
(ちょ、おい。ったく。どうすればいいんだ、おーい、リリィ。)
(さっきレイナさんにしたようにすればいいんですよ。)
リリィはそう言って、本当に偵察に行ってしまう。
「リリィが止まっていたようだけど、何かあったの〜?」
レイナが迅へと聞いてくる。
「いや大丈夫だ。ちょっとどんな感じで偵察に行くか話し合っていたんだ。」
迅はレイナにそう答えながら、そっとアリアスの様子を伺って見る。
ため息を吐いて頭を軽く押さえる迅。
(あ〜。確かにあれは不機嫌になっているな〜。レイナになんかしたかな?ていうか、なんでアリアス怒っているんだ?ああ、わからん。)
「アリアス」
「何よ。」
「さっきの情報ありがとな?」
そう言って、レイナと同じようにポンポンと頭にする。
「い、いきなり何よ。」
アリアスが頰を軽く赤く染めながら迅に向かって言ってくる。
「いや、役に立ってくれたからさ。」
「あ、当たり前よ女神なんだから。」
そう言って顔をプイッと背けるアリアス。
迅はその様子に困ってしまう。
(これで本当によかったのか?)
迅から見えないところでアリアスはほのかに笑っていた。
「ふふ。」
しかしそれには気づかない迅。
女心はわからないと思う迅であった。
迅たちは気づいいなかった。
脅威はすぐそばまで来ていることに。
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