31話 山道
遅くなりました。
拙い文章ですがお願いします。
迅たちは元の分岐点まで戻って来ていた。
「そういえばこの山のこと何も知らないんだが。何か知っているか?」
迅がアリアスたちへと聞く。
「この山の名前らステルベン。別名惑わしの山と呼ばれているところなの〜。」
「惑わしの森?」
迅がレイナへと尋ねる。
隣のアリアスもそのことは知らないのか、首を少し傾げている。
その様子を見たレイナが余計なことを言ってしまう。
「アリアスも知らないみたいね〜。」
レイナが意地悪げに笑みを浮かべて言う。
その様子にアリアスが少しムッとした表情をして言い返す。
「し、しょうがないでしょ〜。ポラリスは広いのよ。女神だからといって全てはわからないわよぅ。」
アリアスの言葉は尻すぼみになっていく。
顔を見ると、若干涙目となっている。
迅とレイナがアリアスのその様子を見て、慌ててフォローする。
「だ、大丈夫だ!アリアス。完璧な奴なんていない。気にするなって。」
そう言いながらポンポンと軽くアリアスの肩をたたく迅。
だが、アリアスは何も言わない。
迅が不思議に思っているとアリアスが一瞬顔をあげて言う。
「でも迅が失敗してるとこ私見たことない。」
アリアスはそう言うと、また顔を下げてしまう。
逆効果だったらしい。
一瞬、固まる迅とレイナ。
迅はレイナの方を見ると目線で訴えかける
(どうしてくれるんだ?)
迅の目線に若干怯みつつレイナは勢いよく首を上下に振ってアリアスへと話しかける。
「そんな落ち込まないで〜。アリアス。
ここは誰も通らないし、知らなくてもしょうがないよ〜。」
なぜか発端となったレイナが諭し始める始末。
「ううん。名前しか知らなかったなんて女神、いえ元女神として失格だわ。」
そう言って、さらに落ち込んでしまう。
それからレイナが慰めようと言葉を発していくが、逆にアリアスは落ち込んで言ってしまう。
レイナは一歩下がって迅の方を向くと手を当ててこちらに謝ってくる。
迅は軽くため息をついて空を見上げて考える。
(どうすりゃいいんだ?おれ女心は分かんねぇしな。姉さんの機嫌直す時は買い物とか行ったが、ここじゃできねぇしなぁ。
ああ。ワカンねぇ。どうすりゃいんだァァァァ。)
迅がとりあえず行こうとすると、その前にスッと影が。
いつのまにか擬人化していたリリィである。
リリィは一瞬迅の方をみてパチッとウインクする。
(リリィは何しても可愛いなぁ。)
迅がそんなことを思っているうちに
リリィはそのままアリアスに近ずくと、優しく肩を抱く。
「そんな落ち込まないのアリアス。
あなたは私たちを何度も救ってくれたわ。
今は私たちにとっての勝利の女神なの。
だから元気出して?ね?」
リリィが優しく諭しかける。
その言葉が響いたのかアリアスは下げていた頭をあげて、涙を拭う。
「ごめんみんな!!
さっきの話の続きをしましょう。」
アリアスがさっきまでとは打って変わっていつもの調子で話し始める。
ありあすのその様子にホッとする迅とレイナ。
リリィは迅のそばまで戻ってくる。
(御主人。ご褒美を期待してますね。)
リリィはみんなにバレないように念話でそう告げてくる。
迅がリリィの方を見るとさっきと同じようにウインクする。
そのウインクはさっきとは少し違い妖艶なものであった。
迅はドキッとするが、タイミングよくレイナが話し始める。
「なんでかわからないけどこのステルベン山は山に入ったものを惑わせるの。それで山から抜けられなくなり、魔獣の餌となることになるの〜。
でも心配は必要ないの〜。一定以上の力があれば惑わされないし、もし幻覚にかかっても私がなんとかできるわ。幻視の瞳でね。魔獣もベアーよりちょっと強いぐらいのしかいないの〜。
ま、危険て言うのは一般人に向けてのものね〜。」
「そうか。どのぐらいで山を抜けられる??」
「ん〜。ある程度の強さを持った者が4日ぐらいだから〜。
本気出せば私たちなら2日ぐらいじゃないかしら。」
「でも私たちも全快してるわけではないからね。無理しないようにしましょ。」
「そうだな〜。ま、さっさとこの面倒な山を抜けるか。」
「あなた人の話聞いてた?」
アリアスが迅へと聞くが迅は何も答えない。
迅はそのまま山へ続く道を進んでいく。
不満そうにしながらアリアスもその後に続く。
レイナとリリィは苦笑するのだった。
山へと入って数時間。
迅たちは道と言えるかもわからないけどような所を歩いていた。
辺りには雑草が生い茂り、その高さは迅の背の中ほどにまで達している。
迅たちはそれを
「なあ、これは道と言えるのか??」
迅がこの数時間みんなが確実に思い、しかし誰も口に出せなかった事を 代弁する。
迅はレイナの答えを期待するが、その質問に最初にステルベンのことを説明したレイナも答えられない。
沈黙が場を支配する。
「まあいい。ここはあまり人は通らないって言っていたしな。」
そう言って、迅は進み始めるがすぐに歩みを止める。
「今度はどうしたの、迅?」
迅の様子を訝しんだアリアスが聞いて、迅の隣まで行く。
すると迅の様子を訝しんだアリアスも歩みを止める。
「こ......れは?」
迅とアリアスの目の前の道に生い茂っている草の中に一つだけ他と違う場所が。
そこは青々と生い茂っている他の草とは違い、その部分だけが紅い。
「俺が先に行く。
お前らは待っていろ。」
迅はそう言って、その茂みに近ずいて行く。
茂みの場所にあったのはヒューマンだったと思われるものの肉片。
それと同時に来ていたであろう黒い鎧の残骸がそこにはあった。
(おい、リリィ。こいつらは......)
迅は念話でリリィへと話しかける。
(ええ。御主人。魔獣に生きたまま食べられたようですね。ですがそれ以外のマナも同時に感じます。これは多分山のですかね。)
(やはりそうか。だが、こいつらの来ている鎧は山に入る前にあった死体たちが来ていたのとは違うな。
どう見る?リリィ。)
迅がリリィにそう聞いた瞬間、入り込んでくる者が。
否、アリアスとレイナである。
「痛ましいわね。
ていうかジン、私たちを除け者にして2人で会話に没頭するのはどうなのかしら?」
「うわ〜、これはなかなかなの〜。
ほんとなの!私たちも話を聞くべきね!」
アリアスとレイナが赤く染まった茂みの中を見ながらそれぞれ迅に文句を言ってくる。
「お前たち、あっちで待ってろって。
見たって気分のいいものじゃないだろ?」
迅が少し厳しめの口調でそう言うが、アリアスとレイナはなんのその。
「そんなこと言われても〜。」
「もう見ちゃった〜。」
アリアスとレイナは互いに顔を見合わして言う。
迅はその様子を見て深々とため息を吐く。
「ハァ、お前らは全く。」
「そんなことよりも今はこの状況のことについて話すべきではないかしら。」
アリアスがそう言うと、リリィも擬人化してきて同様の意見を述べる。
「私もそのように考えます。
この死体の血は乾ききっていません。この先にもしかしたら...」
迅は一瞬逡巡する。
アリアスたちもその様子を見守りなにも言わない。
心が決まったのか迅が顔を上げる。
「確かに今はこっちの死体の方が大事だ。
だが!忘れるなよ?この話は温泉街についてからするからな。」
迅のその言葉に軽く返事をして死体の話をし始めるアリアスたち。
(こういう自由な感じ、ありさ姉さんに何処と無く似ているよなぁ。)
迅はそう考え、ありさとの思い出へと馳せそうになる。
だが、そこにアリアスの声が。
「で、この死体の鎧はさっきとは違うわね。
て、ジン?どこ見てるの?話聞いてる?」
「ああ、すまん。ちょっと考え事してた。
この死体についてでいいか?」
「そうなの〜。」
「そうか。さっき俺とリリィで話していたんだがな。」
迅はそう言ってさっき話していた内容をアリアスたちへと話す。
「て言うことは、こいつらは実力が足りなくてこのまどわせの森のマナに当たって幻術を見ていたところを魔獣に襲われたってことかしら?」
「ああ。そう言うことだ。」
「少し疑問ね。この鎧は第一王子派閥のものが着るもの。なら複数で行動していたはずよ。
どうして1人なのかしら。」
「それは多分....」
アリアスの疑問にレイナは言い淀んでしまう。
「切り捨てられたんだろ?多分。第一王子の奴らに。」
「嘘。そんなことできるわけが。」
迅の答えにアリアスは予想外だったのか驚愕した様子となる。
「お前はヒューマンの汚さを知れない。これはたぶん俺の生きていた世界の人間と同じだ。あの馬車の死体をやったやつは死体もそのままにするような非常で残酷なやつだ。力の足りないものを連れてスピードが遅くなるようなら置いて行くことを選ぶだろう。」
「まあ、これのおかげで相手がわかったの〜。こんな危険な道を行くのは何かをの目的があってのもの。
そして山の前には多数の死体。第一王子派閥は何かを追っているの〜。
それが何かまではわからないけど〜。」
迅はその話を聞いてフムと考え込む。
(第一王子が今のこの時期に追うものか。)
迅がそう考えていると、突如殺気が迅たちを襲う。
そのため迅は考えるのを中断せざるを得ない。
辺りを見回すと、1メートルぐらいの木に顔がついたような魔獣が10数体迅たちに向かって近づいてくる。
それを一瞬で確認する迅たち。
「またアルベロか。」
迅はため息を吐く。
迅たちはここまでの道中で何回もこの魔獣たちと戦っていた。
「こいつらはなかなかしぶとくてめんどいんだよなぁ。いっそホワイトアウトでもうつか。」
迅がめんどさそうに呟くが。
「ダメ!!」
アリアスとレイナが即座に反応する。
「あれを使ったら私たちもただではすまないから。」
「そうなの〜。それに私たちの先にいる奴らに追手がいることを悟られてしまうの〜。」
「はぁ。分かっているよ。火系の魔法も山に燃え広がるから使えないしなぁ。
ん?あ、そうか。広範囲だからいけないのか。」
何かを思いついた迅。
その顔を見たアリアス、レイナ、リリィは引きつった笑みを浮かべる。
「ジンが悪い顔で笑ってる。」
「何か思いついたみたいなの〜。」
「まあ、任せとけって。」
迅はそう言うと、アルベロたちへと向き直る。
「お前ら。散々手こずらせてくれたな。
ま、俺ももっと早く考えついてもいいもんだが。
そんなことはどうでもいい。
覚悟しろよ雑魚ども。」
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