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29話 オケアス出発

拙い文章ですがよろしくお願いします


小鳥が囀りを始め、朝日が昇り始める。

それをベッドに寝ながら聞いている迅。


「長かった。」


ベッドに寝転んだまま迅が思い出すのはあの黄金の豚亭でのご飯の後。


(いくら俺が外に出たい。外のご飯を食べに行きたいと言っても言っても出してくれなかったなぁ。

もう少しで抜け出せるってなってもなぜかアリアスに見つかるからなぁ。)


他のベッドでは未だにアリアスとレイナがベッドで横になっている。

リリィは眠ることは必要ないが、することもないため壁に掛けてあるコートの中へと入っている。

迅は窓から外の青空をボーッと見る。

幾ばくか経って、迅はふと外からの視線に気づく。


「ん?」


何分か経ってもその視線は迅から外れることはない。


(こんなことするのあいつぐらいか。この街に知り合いはいないしな。)


そう考えると、壁に掛けてあるコートを手に取り羽織る迅。

すると、リリィが擬人化して出てくる。


(下の者達と?)

(ああ。まあ、大丈夫だ。相手もわかってるしな。そう警戒するなよ。)


警戒するリリィに向けて迅が苦笑しながら落ち着くように念話する。

だが、リリィの警戒心は解けない。

逆に厳しい口調で迅へと言ってくる。


(あの男はどことなくうさん臭い気がするんですよね。

まあ、用心に越したことはありません。まだ会って日も浅いですし。)

(はは。そうだな。

そういや俺が前、アリアスに同じこと言ったな。ちょっと緩んでたか。)


迅はそう思うと、少し警戒心を強めて部屋を出る。

二階の通路を超えて、階段を降りると食堂に行くが、人影はない。

食堂の奥から朝食を調理する音だけが聞こえてくる。

迅は音を立てずにサッと食堂を通り抜ける。

そのまま黄金の豚亭の外へと出て、裏道へと入る。

そこには二つの人影が。

一つは大柄で、もう片方はそれよりも小柄である。


(お、1人増えてる。今来たのか。)


迅は2人の横まで行く。

2人はどちらも長めのローブのようなものを着ており、さらにフードを目深に被っているため顔は見えない。

そんな2人に迅は話しかけて行く。


「こんな朝っぱらから何の用だ。」

「何のことだ?」

「何とぼけてるんだ.....よっ!」



迅はそう言いながら、大柄な方のフードを取る。


「変装が台無しになっちまったじゃねーか。」


フードからさらりとした綺麗な金髪の男、否、フリードが出てくる。


「何言ってんだよ。変装する必要もないだろ。この街にはもうお前が隠さなければならないような勢力はないはずだろ?

この辺に俺らを見張る気配はないしな。この前と違って。」

「ああ、そうだな。あの時は走ったからな。これはただ、そのこっちの方がムード出るかと考えたのだ。

レベッカもういいぞ。」


頭をポリポリとするフリード。

フリードは隣にいたレベッカの肩を軽く叩きながら言う。


「これ本当にやる必要ありました?」


若干ふてくされた様子でレベッカがフードを取る。

顔を見て見ると、照れているのかほんのり赤みがかっている。


「恥ずかしいのか?」

「ちょっと朝だから寒いだけです!!」


フリードが笑いながらそう言うと、レベッカに強めな口調で言い返される。

その後もフリードがからかい、レベッカが生真面目に答えて行く。


(前会った時とは様子が違うな。)


迅が内心でそう感じていると、リリィも同感なのか


(そうですね。前はもっとピリピリしているイメージがありました。)


迅はそんな2人のやりとりを少し見ていたが途中で飽きたのか、


「それで何の用だ?」

「おっと。すまないな。つい楽しくて。」


フリードはそう言って、目をキリッとさせて騎士団長の顔となる。


「今回の要件はこないだのことだ。

お前には報酬を払うと言っただろ?」


フリードはそう言って懐から茶色の皮袋を取り出す。

皮袋を手に取ると迅へと投げ渡してくる。


パシッ。


迅はそれを受け取ってそれをコートの懐へと入れる。


「ちょうど金貨50枚分ある。」

「ほう。魔人を倒して、結果的に第一王子派閥もこのオケアスの街から撃退してやった。

それで俺らはボロボロになった。

その割には少ないなぁ。」


迅がポンポンと皮袋を投げながらフリードの目線を見ながら話す。

だが、フリードにたじろぐ様子はない。

逆に微笑みながら言ってくる。


「ああ。これが全部ではない。だが、何せこの街はルーカスが豪遊していたせいで金がなくてな。

それにお前らに表立っての金ではないからな。

残りは第一王女がこの国のトップになったときに払うさ。」


(出世払いってやつか。

恩は売っておいても損はないか。何かあったら消せばいいしな。)


迅は厳しくしていた表情を緩める。


「借り1だからな。」


そう言って、そのまま表通りの方へと歩いて行く。

その迅の後ろ姿を見送りながらフリードが軽く呟く。


「次は王都でな。」


その言葉に軽く手を振って応える迅。



こうして後に伝説と語り継がれる2人の出会いはひとまず幕を閉じた。




迅が黄金の豚亭の部屋へと戻ると、アリアスにとレイナはすでに起きていた。


「おはよ、ジン。」

「ダーリンおっはよ〜。」


アリアスとレイナに向かって軽く返事をし、そのままベッドに腰掛ける。

その横にレイナと擬人化したリリィが座る。

アリアスがその光景にちょっとムッとした顔となるが、何を思いついたのかパッとした顔となる。

そのアリアスの様子を不思議そうに見つめる3人。

迅の後ろにトコトコと回るベッドへと座り、そのまま迅の背中へともたれかかってくる。


「アリアス?」

「あーらまー。」

「あらあら恥ずかしがり屋さんですこと。」


「な、何よ。」


迅の問いかけとレイナとリリィの冷やかしに若干照れたのかツンとした様子で応えるアリアス。


「いや、なんでもないぞ。」


アリアスのその様子に微笑ましく迅は思うが顔には出さない。

そんないつもと変わらず、動揺しない姿に呆れたのか話を変えるアリアス。


「全くもう。

それで話は終わった?」

「ああ。問題ない。

お前らは準備はできているのか?」

「ええ、もちろん(なの)!!」


迅の問いかけに元気よく答えるアリアスとレイナ。


「そうか。じゃあ、とりあえず飯でも食いに下に行くか。」

「そうね。これから長い旅になるからゆっくり食べられるのは今日で最後だものね。ちゃんと食べましょうか。」


そう言って、部屋を出て行く食堂へと降りて行く一行。

食堂では何人かが朝食を取っているが、まだ朝が早いためかそれほど人はいない。

迅たちは奥の方に席を取ると、近くを通りかかったタニアを迅が呼ぶ。


「おーい。タニア〜。4人分飯くれ〜。俺のは大盛りで。」

「あーいよ。ちょっと待ってな。」


タニアはそう答えてからものの数分もしないうちに迅たちのものにウェイトレスとともにお盆を4つもってやってくる。


「はーい。お待たせ〜。今日はいつにも増して腕によりをかけたからね。

あんたたち今日行くんだろ?」


タニアがいつも通りの口調で何事もないように言う。


「おばちゃん。なんで……まだ言ってなかったはずなのに。」


タニアの言葉にレイナが驚いたように聞き返す。


「私らが何人あんたたちみたいなのを見送ってきたと思っているんだい。」

「…………おばちゃん。」

「まあ、私らはここにいるからいつでも戻っておいで。レイナ。それにあんたたちもね。」


そのタニアの言葉に感動したアリアスとレイナがタニアへと抱きついて行く。

そんなタニアに迅も声をかける。


「タニア。

お前ら夫婦の飯はとても美味かった。

ありがとな。」

「いいってことよ。」


迅の感謝の言葉に嬉しそうに返すタニア。


「それでだな。」

「ん?なんだい?」

「この飯美味すぎて、もうなくなった。

おかわりくれ。」


そう言って、空になった皿をタニアへと渡す迅。

それを唖然とした顔で受け取るタニア。


「ん?どした?」


タニアの様子がおかしいことに気づいた迅はタニアへと聞く。

抱きついていたアリアスとレイナも迅が見て見ると唖然としている。


(一体どうしたんだ?)


迅が念話でリリィへと尋ねる。

リリィは一言だけ迅へと伝えてくる。


(空気よみましょうね御主人。)



迅たちはその後無事に朝食を食べ終えると、別れの言葉をタニアたちへと言うと、荷物を持って黄金の豚亭を後にする。


「ふ〜、この街でも色々あったな〜。」


迅が街を出るための門まで向かう大通りを歩きながら感慨深げに呟く。


「そうね。濃密な時間だったわ。

この街に来た時にはリリィはいなかったものね。」

「そうですね。まだ出会って1週間ぐらいしか経っていませんものね。」


それに続いてアリアスとリリィも頷く。


「まぁ、悪くはなかったの〜。この街も。

またみんなで来たいのー!」

「そうだな。またこなきゃな。あそこのご飯は絶品だからな。」


迅がそう言うと、アリアスが呆れた口調となり


「もうほんとにご飯のことばっかりなんだから。」


アリアスの指摘に迅以外の全員が笑う。

そんなことを話していると、いつのまにか街を囲む門へと到着する。

そして入って来た時と同じように列へと並ぶ、

そして何分か待ち、迅たちの番がやってくる。

門番をしていたのは迅たちへと忠告してくれた門番をの男だった。


「お前たちか。無事だったようだな。

どこへいくんだ。」

「ちょっと疲れをとるためにウィルシスへ行こうと思っています。」


入る時と同じようにアリアスが代表して答える。


「そうか。あそこの温泉ははいいからな気を付けて行けよ。

次!!!!!」


そう言って、門番は迅たちを通してくれる。


「ふ〜。やっと街の外か。

じゃあ美味いものと温泉目掛けて行くぞウィルシス!」


迅たち一行は街道を歩き始めるのであった。

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