28話 目的地
拙い文章ですがお願いします。
「それでこれからどうするんだ?」
フリードが迅の方を向いて聞くが迅は何も答えない。
「どうするか。」
迅もまたアリアスたちに向かって尋ねる。
「んー・どうしようかしらね〜。王都には向かうつもりだけど。」
「そうですね〜。」
アリアスとリリィも特に決まっていない様子である。
その時、黙っていたレイナが発言する。
「ダーリンの傷も完治してないし〜、ちょっと王都に行くのには遠回りになるけど有名な温泉地があるのよ。そこに行かない?傷も治りやすいって聞くし。」
「温泉か〜。」
「いいですね。」
女性陣が次々に賛同を示し、迅の方を見てくる。
「温泉か〜。いいな。そこに行くか。
フリード、温泉に行くことになった。」
「そ、そうか。まあ、また機会があったら会おう。」
フリードはそう言って離れて行く。
レベッカがその後をついていこうとするが、一度アリアスたちの方を振り返る。
「助けてくれてありがとな。」
レベッカはそう言うと、返事も聞かずにトトトとフリードの後を追いかけて行く。
全員がその行動に微笑ましく思う。食に夢中の1人を除いて。
フリードは迅たちの元を去っていく。
しかしその顔は一瞬、笑顔になる。
レベッカがそれに気づき、尋ねる。
「どうかしたんですか?」
「いや、別に。」
フリードは曖昧にそう答える。
(あそこに行くのなら、もしかすると........)
フリード内心でニヤリと笑う。
「ふー。温泉に行くのよね〜。一体どんな所なのかしら。て言うかなんて所なの??」
アリアスがウキウキとした様子で、レイナへと尋ねる。
「これから私達が行くところの名前はー..........」
そこでレイナが言葉を止める。
「ん?どうしたの?」
言葉を止めたまま固まってしまったレイナへにアリアスが不思議そうに見つめる。
再度レイナへと尋ねるアリアス。
「どうしたの、レイナ?」
「んーとね〜...........忘れちゃったぁ。」
レイナはそう言って、照れた様子を見せる。
アリアスはそのレイナの様子にに苦笑いする。
その一方、迅はその間にも食事を進めていた。
迅は瞬く間に食事をたいらげると、近くにいたタニアへとおかわりの注文をする。
「タニア〜。この肉の料理とご飯、それにスープを二個ずつくれ〜。」
「あーい。今持ってくるね~。」
タニアは迅の注文を聞くと、急いでトーマスの元へと戻っていく。
少ししてタニアが料理を両手いっぱいに持ってやってくる。
「はーい。お待たせ~。」
「おう。サンキュー。」
そこでようやく温泉街の話をしていたアリアスとレイナがタニアの存在へと気づく。
「あ。タニアおばちゃーん。ちょうどいいところにいた~。
あのさ、王都へ行く道中のちょっと外れたところにある温泉街あるじゃない?あそこの名前なんて言うんだっけ~?」
レイナが可愛らしい笑顔を浮かべてタニアの方へと寄っていく。
「ん?いきなりどうしたんだい?」
「元々王都に行く予定だったんだけどね~。ちょっとこの間ゴタゴタに巻き込まれっちゃってさ〜。
みんなまあまあ怪我しちゃったから一回、湯治でもしにいこうかなーって考えたの〜。
それで名前は〜?」
レイナが状況を説明してからタニアへと再度尋ねる。
「あああそこかい。あそこの名前はウィルシスだよ。
確かにあそこなお湯は怪我や疲労によく効くって言うからね〜。
私も久しぶりに行きたいさね〜。」
そのタニアの言葉に今まで事の成り行きを見守っていたアリアスが入ってくる。
「へ〜。ウィルシスって言うんですか〜。
早く行きたいな〜。
ここからそこまでどのくらいかかるんですか??」
「そうさね〜。
行き方は二つの道があってね、穏やかな比較的安全な道を通ると大体2週間。
ちょっと危険で山を越える道は大体五日から七日ほどで着くことができるよ。」
「案外近いんですね〜。もっとかかると思っていました。
何か美味しいものとかってありますか??」
アリアスが嬉しそうな表情でタニアへと尋ねて行く。
「ん〜。まあ、なんでも美味しいのだけど私のおすすめはやっぱり、ウィルシス特有の温泉卵とガルスタっていう溶岩魚かね〜。それがとてもうまいんだよ〜。」
「あ〜、あれは確かに美味しかったの〜。」
タニアの言葉につられて、レイナもその食べ物の美味しさを取り戻す。
アリアスがその食材についてもっと聞こうとズイッと身を乗り出した瞬間。
横から影が。
「そんなに美味いのか?その温泉卵と溶岩魚は。」
迅が皿に盛られた料理を食べながらも会話に入ってくる。
どうやら美味しい料理に反応したらしい。
「美味しいの〜。」
「ありゃ絶品だね〜。」
レイナとタニアが口々に絶賛して行く。
「そうか。ならすぐに行こう。今すぐに。」
迅はそう言うと、料理を急いで全て平らげると、机に手をついて席を立とうとする。
迅の動きはそのまま固まってしまう。
「無理しないでください。御主人。
まだ身体の傷も動けるほどにはなっていませんし、等価交換の影響で筋肉痛も抜けていないはずです。」
リリィはいつの間にか迅の横へと立つと、立とうとしている迅の身体をツンと押す。
そうすると、迅は苦痛の表情を浮かべ椅子に座りなおす。
そんな迅の様子を見てリリィは苦笑して言う。
「後二日はここで待機してもらいますからね。」
迅はその言葉に反論しようとするがそれをリリィが機先を制してもう一度迅へと言う。
「二日ほど休んでもらいます。いいですね!」
それでも往生際悪く助けを求めるようにアリアスとレイナの方を見る迅。
まずレイナが申し訳なさそうな表情となって口を開く。
「ごめんね〜。ダーリン。私もダーリンの思うようにさせてあげたいけど、ダーリンにはしっかり休んで欲しいから〜。」
(くっ。レイナのこの表情には逆らえん。)
迅はレイナから視線を逸らし、一縷の望みをかけてアリアスへと視線を送る。
アリアスはそんな迅の視線を真っ向から受け止めると聖女のような笑顔を浮かべる。
その表情に期待する迅であったが。
次いで放たれた言葉は迅を絶望へと叩き込む。
「二日後ですね。」
オケアスを出発するのが二日後に決まったのであった。
夜の密林。
一つの馬車を馬にまたがった黒の甲冑姿の騎士たちが追いかけて行く。
黒騎士の数は50以上。
黒騎士たちと馬車との距離はすでに100メートルを切っている。
馬車のそばにもにも護衛となる馬に跨った騎士のような格好をした者たちが10名程度いるが、数は圧倒的に黒騎士たちの方が多い。
「隊長、このままじゃ追いつかれます!!」
馬車の御者が一番近くにいる騎士に向かって叫ぶように言う。
「分かっている。
最後尾にいるものは罠を撒け!」
隊長と呼ばれた男が苛立たし気に叫ぶと、最後尾にいたものたちが撒菱のようなものを袋から取り出し、落として行く。
(これで少しは足止めできるか。)
隊長がそう考えた時。
後ろの方で悲鳴が上がる。
「ギャァァァぁぁぁ」
「か、身体ガァァァァァ。」
最後部にいた2人の騎士の腹から炎の花が咲いていた。
「あ、あつぃぃぃ。」
馬の上で鎧をかきむしるように爪で取ろうとするが、炎は消えない。
馬もその熱さに驚き、暴れ回る。。
当然そうなったら馬上の騎手の最後尾の騎士たちは落馬してしまう。
少しして後方で爆発したような音が響き渡る。
「チッ。あの魔法は確か......」
隊長がそう考えた時、後ろの方から声が聞こえる。
「ヘッヘ。やっと追いついたぜ〜。」
1人の黒騎士の男がそう言いながら飛び出してくるが護衛の騎士により殺される。
こちらも精鋭と言われてる者達。そう簡単にはやられはしない。
しかし、いつのまにか黒騎士たちとの距離はさっきの半分以下となっている。
「チクッショウ。さっきの魔法のせいでこっちのスピードが遅れたのか。」
隊長は忌々しげにそう呟くと、覚悟を決める。
(このままではこのお方を守りきることはできんな。この方だけでもなんとか逃さねば。)
隊長はそう考えると、部下へと指示を出す。
「2人はこのままこのお方ををお守りしろ。残りの者は全力を尽くして追っ手を守るぞ!!」
「「「了解!」」」
部下たちの返事が聞こえると、2人を残して他の騎士たちは反転する。
黒騎士たちの数を見て見ると、最初より幾分か減っているが、勝てるほどの人数にはなっていない。
黒騎士たちはスピードを落とさず一斉に護衛の騎士たちの方に向かってやってくる。
「ここは通さんぞぉぉぉぉぉ。この国の未来がかかっているんダァァァァァ。」
隊長の男がそう叫ぶと、他のメンバーもそれに合わせて雄々しい叫びをあげる。
「オオオオォォォォォォォォ。」
そのまま黒騎士たちに向かって飛び込んで行く面々。
黒騎士たちもそれに応戦して、何人かを先に行かせあとは一旦追いかけるのをやめる。
最初は果敢に攻めていく護衛の騎士。
しかし黒騎士たちは1人につけて2人、3人で襲いかかってくる。
護衛の面々は、1人、また1人と斬り殺され、または魔法で撃たれていく。
隊長はその様子を見て分かっていながらも部下の命は助けることはできない。
出来ることは眼前の敵を薙ぎ倒していくことだけ。
(俺にもっと力があれば...)
自分の力を嘆きながらも、黒騎士の攻撃をいなしカウンターを入れていく。
「こいつだけ、やけになかなかしぶといな。」
1人、黒騎士とは明らかに違った様子白髪の少年が呟くと。
護衛の隊長が周りを見ると、他の護衛の騎士達は皆地面に倒れ伏し、血を流していた。
皆、微かに息はあるように思える。
「貴様ら、よくも私の可愛い部下をぉぉぉぉぉ。」
隊長が憎しみのこもった目線で威圧するが、それを受けた白髪の少年は微動だにしない。
「雑魚が何言ってんだよ。弱いから死んだんだよ。こいつらは。それを守れなかったお前も弱い。
弱いから抵抗もできない。俺がこれからやることにもね。」
少年はクイっと自分の指を倒れている者達一人一人に向けていく。
そして魔法を発動する。
「光輪の花束」
少年が魔法を発動した瞬間。
幾筋もの線がせき、部下の体へと当たる。
「うぐっ。」
息がある護衛の者達が苦しそうに呻きはじめる。
「魅せな。」
少年がそう言った瞬間。
倒れている者達から一斉に五輪の炎の花が咲いていく。
息のあったものが絶叫し苦しみながら死んでいく。
「あははははははは。いい。いいよぉ。美しいぃぃぃぃ。」
少年はそれを見て身体を悶えさせながら笑う。
「貴様ァァ。」
隊長が馬を悶え走らせ、少年の元へと向かう。
だが、黒騎士たち少年を守ろうと動こうとはしない。否、分かっている。守らなのではない。守る必要が無いのだ。それほどまでに彼は強いということなのだろう。
少年は隊長の男など気にせず未だに笑い続けている。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇ。」
隊長が槍を突こうとしたとき、少年が身体を隊長へと向ける。
「遅いよ、もっと工夫しなよ。まあ、死ぬから関係ないんだけどね。」
少年がいつ詠唱したのか、魔法を発動する。
カラン。
隊長の槍が地面へと落ちる。
その槍の持ち主の隊長は、全身を何かに貫かれ驚いた様子のまま絶命していた。
「ほら、お前たち。追うよ。」
少年は隊長の死体には一瞥もせず、馬車を追うのであった。
後には不可思議な様子の死体が残されたのであった。
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