3話 ジャージ男の怒り
拙い文章ですがよろしくお願いします。
「本日はお家にお泊めいただき有難うございます。マキロイさん。」
「いえいえ。お二方には村で厄介者になっていたベアーを退治していただいたのです。こちらがお礼を言わなければならないくらいですよ。あ、そういえばお名前を伺っていませんでした。お名前はなんと?」
「あら、これは失礼いたしました。私はアリアスと申します。連れの男は迅と言います。」
「アリアスさんに迅さんですね。はて、それでいきなりで申し訳ないのですがどうやってお二方であの魔獣をお倒しになられたのですかな。村の者10人でかかっても倒せなかったベアーをです。後学のためにもお願いできませんか?」
村のために役立てるのでしょうねきっと。
何の疑いもなくアリアスは答える。
「いえ、それは正確ではりませんね。正確には彼一人で体術で倒したんです。」
「か、彼一人で!?それは真のことですかな!?」
「ええ本当です。」
こともなげにアリアスはその時の様子を事細かに話してくる。
それを聞くマキロイは冷や汗が背中に流れるのを感じる。
なんで体術だけであのベアーを倒せるんだよ。わしの手下が10人がかりで歯が立たなかったんだぞ。そのせいでこの村の制圧も遅れているというのに。
あの男は要注意だな。しかし逆に奴ひとりなら手下の魔法師で囲めばなんとかなるはずだ。所詮は人間。ベアーは思っていた以上にわしらの攻撃で傷ついていたようだな。そうでなければあんな変な奴に負けるはずもないし。とりあえずははこの女を・・・。
「マーサ、食事はまだかな。」
マキロイはそういうと同時に彼女に目配せをする。
それに気づくとコクリと彼女も頷いて調理場へと戻っていく。
それから少ししてマーサが料理を持って戻ってくる。
「はーい、できましたよ。特製のシチューです。」
そう言いながら3人分のお皿を配っていく。
「ああ、ありがとうマーサ。自慢になってしまうかもしれないですが、マーサのシチューは絶品ですぞ。
しかし本当にいいのですかな。迅さんは夕食をお食べにならなくて。彼にも味わってもらいたいのですが・・・。」
二階の迅が寝ている部屋をみるマキロイ。
「ベアーとの戦いは壮絶でしたからね、多分もう疲労困憊で寝てますよ。あとでパンか何か持っていきたいのですがいただいてもいいですか?マキロイさん」
「そうなんですか。それならば致し方ないですね。また明日にでもいただいてもらいましょう。私たちだけでお先に頂きましょうか。」
お前がここで朝を迎えることはないがな。
アリアスが先に料理を食べ始める。それをみたマキロイは内心でほくそ笑む。
「お味はいかがですかな。」
「とても美味しいです。これは何を使っているのですか。」
「これはこの周辺で採れたものを鹿の肉と一緒に煮込んで臭みをとってそれをスパイスで煮込んだんです。」
マーサが若干苦笑しながら答える。
「なるほど、だから肉が柔らかいのに臭みが全くないんですね。
そう言って、どんどんと食べ進める。
マキロイたちは唖然としながらその様子を見つめる。
「あれ?なんだか眠気が.......
すみません。ちょっと眠気が出て来てしまいました。私ももう部屋で休ませて頂こうかしら。」
「いえいえ、どうぞこのまま」
アリアスはそういうマキロイとマーサのにやけた顔をグニャグニャとした視界と重たくなるまぶたで一瞬しか見ることはできなかった。
「やっと寝たな。あの女。おい。マーサ。お前ちゃんと本当に薬を入れたのか。普通のやつなら口に入れた瞬間に眠気が来るのに、あの女全て完食してから効き始めたぞ。」
「おかしいねぇ。ちゃんと入れたんだけど。何か薬とかにに対して耐性とかでもあったのかしら」
マーサが不思議そうに寝ているアリアスを眺める。
「まあいい。では私はアジトにこの女を連れてもどるからな。しっかりとあの小僧を見張っとけよ。」
マキロイはそう言って部屋を出て行き、家に残ったのは迅とマーサのみとなった。
迅は部屋に入るとベッドに寝転がることはせずに部屋の窓から外へと出て辺りを見回す。
やはりか。
村の中は一切の明かりがなく、静まり返っていた。
おかしいよな。文明レベルは俺たちよりは低いとしても全く明るくないというはないだろう。そこまで遅い時間でもないし。さっきも思ったが村の家の数に比べて人の気配が少なすぎるし。
それにあの村長と名乗ったマキロイとかいうやつもおかしかった。すみ慣れた自分の家のはずなのにお茶の場所もわからず、俺が部屋に行こうとしたら止めてきた。ベアーの肉を持っていくと言った者たちも微かにだが人間の血の匂いもしてたし。まあ、以前にベアーと戦ったと言っていたからそのためかもしれないが。何にしても怪しすぎる。とりあえず他の家も調べて見るか。なんか言われたら散歩とでも言っておけばいいし。
しかしその心配は杞憂に終わる。
素早くマキロイたちのいる家から離れ、他の家々の中を慎重に見ていく。
しかし中には誰もおらず、中は争いでもあったかのように荒れている。
やはりだ。全ての家の中が荒らされている。しかもどこの家にも人がいない。それもごく最近いなくなったらしい。ここに調理中らしき料理が置いてある。明らかに不自然すぎる。
なぜだ。これじゃまるで村人が丸ごとすり替わったような・・・。
「ん?」
俺が調べ終わって部屋から出て村長の家に戻ろうした時。
ちょうどマキロイが家から出て来るのが見える。何かを背負っているな。
マキロイの背後に誰かが現れ、マキロイとの話し声が聞こえてくる。
「おい、静かにしろ。いつ迅とかいう野郎が起きて来るかわからないんだぞ。」
もう起きているんだが。というか寝てないし・・・。
「わかってます。でもさっき見た時はあいつは布団に丸まって寝ていたってマーサの姉さんが・・・。」
「ああ、まあ疲れてるらしいからな。
まあそれでも用心に越したことはない。静かにいくぞ。奴が起きて来る頃には全て終わっているな。」
マキロイは二階にいる迅の部屋を見て怪しげに笑って何かを抱えて家から出て行く。
俺のことを見て笑っているんだろう。いないけどな。
てかあれはアリアスか。少々めんどくさいことになったな。害がなければ無干渉で行く気だったんだが・・
ちょっとは用心しろよ。あのダ女神。これは後で説教だな。
一旦深呼吸をして落ち着く。
よし、不満は後でたっぷりとアリアスに言ってやろう。
まずは現状の確認だ。
この感じからすると、盗賊とか野党が村を占拠していた。そこでベアーが出てきて討伐しようとしたが、失敗。一時村に戻っていたら、森で音が聞こえ、村人のふりをして俺たちに出会ったら倒していたとかそんなところか。まあベアーに負けるような奴らなら余裕そうだが一応情報を得ておくか。アリアスも並みの奴らには負けないって言ってたし今すぐにってほどでもないはずだ。実力を見てないのが不安要素だが。
とりあえずマキロイの後を追うか。
それにしてもなんで1日でこんなにめんどくさいことが起きまくるんだよ。
迅は鬱屈とした気持ちになりながらマキロイの後を追いかけて行く。
そうして追って行くとマキロイは一つの洞窟の前で止まると中へとアリアスを運びながら入って行く。
やっと止まったか。あの家から20分は歩いて村から完全に出たな。さて、これからどうっすかな・・・。
「ん..........ん、んんー!?」
こ、これは一体・・・。
何で手と足には枷がかかっているのよ。たしか私は最後、マキロイさんとマーサさんと夕食を食べていて・・・。
そうだわ、突然眠気が襲ってきたと思ったら、あの二人のニヤついた顔が見えて意識を失ったんだわ。
目線を前に向けるとそこには大勢の人たちがいた。その誰も彼もが多かれ少なかれ皆傷ついているようである。
「起きたようじゃな。」
「・・・あなたは?」
しわくちゃの顔で腰が曲がっている白髪のおじいちゃんだ。
「わしはこの村の村長をやっておるギルバートじゃ。お主はどうしてここに?」
「ちょっとどうしてかは分からないわ。マキロイさんの家で夕食を食べていたら突然眠くなっちゃって。多分睡眠薬かなんか飲まされたんでしょうね。その理由に心当たりはないけど。」
私は睡眠薬とか飲まされても耐性があるはずなんだけど・・・・・・。もしかして耐性とかも落ちているのかもしれないわね。
「その前後の話を詳しく聞かせてもらってもいいかのぅ。」
アリアスは大まかにっこまでの流れを話す。
私の話をギルバートはふむふむと頷いて聞いてくる。
それで大体の事情を察したらしい、彼らの情報を教えてくれる。
「なるほど。そういうことじゃったのか。実はなマキロイはこの村の村長ではない、その正体は盗賊団ヘイカーズの首領だ。ここは奴のアジトとなっている洞窟なのじゃ。大体20〜30人弱の盗賊団みたいでその全員がここにいるみたいじゃ。」
「村人は?」
「大体50人弱じゃな。」
「なるほどね〜。」
私の身体能力がどのくらい下がってるかによるけど多分このぐらいの鉄の枷なら力を込れば案外簡単に壊れそうだ。
「よいしょっと。」
バキッと音を立てて枷が壊れる。
それをみていたギルバートは目を丸くしている。
「お、お主、すごい力じゃのう。」
「このぐらい女の嗜みよ。」
ウインクしながらギルバートに言い返す。
女の嗜みではないはずじゃが・・・。
そうは思うがギルバートは年の功でそれを抑える。
それにしてもどうしようかしら。私一人じゃこの村民たちを逃せないし。かといって、ヘイカーズを倒せるかしら。私一人で。
「ねえ、ヘイカーズって何人ぐらいいるのかしら。」
「村を襲ってきた時には魔法師10人ぐらいとその他の雑兵20人くらいじゃな。数はわしらの抵抗で減ったかもしれんが。大体そんなもんじゃな。」
「そう。」
平然と答えるがアリアスの内心では舌打ちでもしたい気分だった
まずいわね。魔法師10人と雑兵は相手にできないわ。迅がいれば何とかなりそうだけど。
無性にイライラしてくる。
「もうっ。何してんのよ迅は!!」
とりあえず叫んでおく。それは返事を期待してのものではなかったのだが・・・。
「呼んだか?」
思いがけなく返答が返ってくる。
声のした方を向けば、檻越しに迅がこちらに向かって歩いてきていた。
「何してんだよアリアス。起きてんならさっさとこんなとこ出るぞ。手錠も足枷も外れているようだし。せっかく人が心配してやってきてみれば。とんだ無駄足だったようだな。」
迅は檻の中にいるアリアスへと呆れたような目線でみる。
「どうしてあなたがここに?というかどうやってここにきたのよ。」
「そんなこと今はどうでもいいだろ。ここから出るぞ、アリアス。」
「出るって・・・。ちょっと待って。この人たちはどうするのよ。」
「知るかよ。この檻自体は開けてやってんだ。後は自分たちでなんとかするだろ。」
それを聞いた村人達は一様に顔を青くする。
この檻を出てもヘイカーズにまた捕まると分かっているからだ。
「ちょっと。そんなの許されないわよ。」
「誰が許す許さないを決めるんだよ。俺はベアーの肉が心配だし面倒はもう避けたいんだよ。」
「何いってるのよ!!」
「は?」
お互いに剣呑な視線をぶつけ合い、今にも一触即発という雰囲気だ。
「あの、すみません」
ギルバートが申し訳なさそうに俺たちの間に入ってくる。
「なに?」
迅の口調は不機嫌さを隠そうともしていない。
「話題になっていたベアーの肉ですがもう全て食べられたと思いますよ。ヘイカーズの奴らがさっきベアーの肉が手に入った。宴だ。って騒いでいたのじゃ。」
「おい、アリアス。」
「何かしら。ジン」
アリアスが微笑みながら俺に聞いてくる。俺が何をいいたいのかわかっているようだ。
「お前の希望に沿うのは癪だが、しょうがない。村のヤツらをたすけることになる。結果的にだがな。
そしてヘイカーズは皆殺しだ。」
それを聞いてアリアスは笑みを一転させる。
「皆殺しって。ちょっと。生かしはあげてよ。」
「生かしていいが利点を示せ。ないのなら面倒は省く。」
「利点ね・・・。」
そう言って考え込む。
「時間ないから早くしろ。」
幾ばくか置いてアリアスがポツリと漏らす。
「・・・お金。」
「金?」
「ええ。そうよ。奴隷として売ってお金にするの。お金は必要でしょ?」
一考する必要もないな。金は必要なのは常識だ。今は金がないしなんとかしなければならないのは確かだ。
「はぁ。お前は・・・わかったよ。基本は奴隷として売ることにする。それでいいか?」
迅がそうアリアスに聞く。
アリアスは不満そうだ。しかし彼らに何か罰を与えなければならないのも確かなのも事実なのだ。
「できたらだからな。
あとさっきから気になっていたんだがそこの後ろでフードを被っているのは誰だ。」
「ああ、そいつは村で忌むべきものとして扱われているものですよ。それが何か?」
ギルバートは迅の問いに答える。
「ほう、なるほどな。ふーん。
まあ、いい。とりあえずこの盗賊のようなものヘイカーズといったか。こいつらを潰してくる。アリアス行くぞ。」
「分かったわ。村人の皆さんはここでじっとしていてください。」.
そう言って檻から出て行く二人をフードを被った女はじっと見つめていた。
「ここの村は楽勝だったすね。」
ヘイカーズは洞窟で宴を開いてどんちゃん騒ぎをしていた。
「ああ。そうだな。俺たちの実力も上がってきたってことだな。
おい、お前ら。明日奴隷商が朝一番でここにくることになっている、それでこの村の奴らを売れば結構な金になるぞ〜。いい女も結構いたからな。だからお前ら女には手を出すなよ。
その金が手に入ったら、いよいよ始まるぞ。この生活から抜け出す旅が。
下克上じゃーーーーーーー」
「「「「「おおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーー」」」」」
マキロイは部下達の声をきき満足すると酒を煽りながら考える。
あ〜、そういえばマーサにあの家を任せっぱなしだったな。誰か人を送ってやんねーとな。
しかしあの、迅とかかいう野郎だったか。掴めねー野郎だったな。ほとんど俺たちとも会話もしなかったし。まあ、マーサも見てるし。考えすぎか。いざとなったら保持者を使えばいいしな。ベアーの肉も手に入ったし。この喜びに久しぶりに浸るとするか。
「おい、ベアーの肉と酒をもっと俺の方にもってこい。あとマーサんとこに人送って様子みてこい。」
「了解っす。 」
一人の若い男がマキロイの命令を受けアジトから出ていく。
その姿を見たマキロイは今考えたことをすぐに忘れ、自分の酒を煽りながら、自分の部下達と盛り上がっていく。
迅はその様子を遠くから見つめていた。
そして底冷えするような声で呟く。
「覚悟しろよ。お前らの罪はでかいぞ。」
そう言い、迅は怪しげに笑むと先ほどアリアスと話し合った作戦を実行に移すのであった。
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