23話 残虐紳士
拙い文章ですがお願いします。
迅が魔法を発動した瞬間。
迅は1歩を踏み出す。
その1歩で地面がエグれる。
メリッ
エアーブラストによって迅の突進のスピードが上がる。
迅のスピードが高速の域へと達する。
「なっ。速いっ。」
迅はそのまま剣を抜刀し、ロノウェを斬り上げようとする。
鞘走りによって剣尖のスピードはさらに上がっている。
「喰らえ。三日月!!!!!!!
ハァァァァァ。」
斬りあげる迅。
迅の一刀はその威力によって扇状の残像ができる。
ガギィィィィィン
迅の刀とロノウェの爪が切り結んだ影響で火花が散る。
「くっ。」
ロノウェはとっさに自身の爪で迅の一刀を防ぐ。
迅とロノウェの力が拮抗する。
「そんなものでぇぇぇぇぇ!」
迅は村正を振り切る。
ロノウェの爪は押し切られる。
「なに!?」
ロノウェの身体が真後ろへと勢いよく吹き飛んでいく。
ドガァァァン
屋敷の壁を突き抜けて外へと吹き飛ぶロノウェ。
そのまま地面へと激突する。
激突の衝撃によって砂煙が巻き起こる。
迅もその後を追う。
二階からぴょんと飛び降りると、屋敷の庭へと着地する。
「おい、早く出てこいよ。
お前、しっかりガードしてただろ。」
その声に反応してか、砂煙の中からロノウェが現れる。
「やはり、気づいていましたかぁ。」
ロノウェは自分の服をパッパと払いながら出てくる。
「ちッ。無傷かよ。傷ぐらいはあって欲しかったんだがなぁ。」
「ええ。まあ、危なかったですよ。びっくりもしましたしね。ヒューマンが私を吹き飛ばすなんてね。
すごいですね〜。貴方のあの技。さすがはアリアスが選んだだけのことはある。」
ロノウェが楽しそうな様子で迅へと言ってくる。
「あ〜。楽しそうだなぁ。お前は。」
ロノウェとは対照的に迅は憎々しげな様子でロノウェへと言い返す。
「ええ。まあ。久しぶりの歯ごたえのある相手とのお遊びの時間ですからねぇ。
それじゃあ、行きますよぉ。」
ロノウェがそう言った瞬間。
ロノウェ身体青白い光が弾けたかと思うとその姿がかき消える。
「ちッ。これはあの時屋上で見たやつか。」
しかし周囲からは空気を切って移動するような音が聞こえてくる。
だが、迅はあの時とは違い、視界の端でロノウェの姿を捉えている。
(あの時はとっさのことで訳が分からなかったが。転移とかそっちの魔法ではないようだな。)
そこにアリアスの声が聞こえてくる。
(ええ。あれはなんらかの移動魔法と考えていいでしょう)
(そうか。ならとりあえずは身体を慣らすしかないな。)
迅とアリアスが心の中で会話をしていると移動しているロノウェが話しかけてくる。
「お。その目の動きどうやら私の姿は見えているようですね。ですが、身体は追いつけますかな。
さっきは貴方からの攻撃でしたからね。今度は私の番ですよ。」
そう言うと、迅の後方にロノウェが現れる。
「そ〜れ。モルテ・アルティッリォ。」
ロノウェの五本の鋭利な爪が迅へと向かって振り下ろされる。
だが迅もその攻撃に辛うじて反応する。
「後ろか。」
身体を無理やり動かし村正で防御する迅。
「ぐうっ。」
一瞬、火花が散る。
だが、すぐに青白い光が弾けロノウェの姿がまた消える。
「ちっ。捉えきれない。」
ロノウェは左右、上空から攻撃を仕掛けては消えていく。
迅がロノウェの攻撃に舌打ちをする。
「ヒットアンドアウェイかよ。うざいな。」
「大丈夫ですか?まだ全然スピードは出していませんよ〜。」
余裕綽々の様子でロノウェは移動した状態で迅の独り言に応える。
そして上から爪を振り下ろしてくるロノウェ。
迅はそれを村正で受け止める。
鍔迫り合いをして火花が散る。
ロノウェは爪を体重を乗っけて押し込んでくる。
ジリジリと押されていく迅。
「今度は引かないんだな。」
迅が受け止めながらもロノウェに対して挑発をする。
「ええ。このまま押し込めても倒せそうですからねぇ。」
「あんまり俺を舐めるなよ。」
迅は村正を斜めにしてロノウェの爪を滑らせる。
「何ですと。」
ロノウェは迅の横へと着地する。
そのがら空きのロノウェの胴体へと迅は村正を横へと薙ぐ。
ロノウェは青白く発行してその場から後方へと移動する。
迅の村正に初めて斬った感触が残る。
「ハァハァ。」
ロノウェは息を乱した様子で後方で片膝をつく。
「おいおい。どうしたそんなに息を切らして。ん?てかやっと当たったか。」
村正の切っ先がロノウェの青い血で濡れ、ロノウェの肩あたりに薄い切り傷が出来ている。
迅がロノウェに対して嘲るような笑顔で言う。
「ハァハァ。予想外でしたよ。まさか攻撃を当てられるなんてね。ですがここからはこんな簡単には当てられませんよ」
「どうだかな〜。やってみろよ。」
迅がそう言った瞬間。
ロノウェが青白い光を発する。
「また同じ手か。
なんだと!?」
迅がそう言った瞬間に、ロノウェは迅のすぐ目の前へと現れる。
ロノウェはニヤッとしながら爪を迅へと振り下ろす。
「モルテ・アルティッリォ」
迅は辛うじて後ろへと下がって直撃は避ける。
ロノウェは迅の血がついた爪をぺろっと舐めながら喋り始める。
「言ったでしょう。スピードをあげますよと。まさかハッタリだと思っていたのですか。それだったら滑稽ですねぇ。私はまだ50パーセントのスピードしか出していないと言うのにねぇ。ハハハハハハハハハハ。」
ロノウェが腹を抱えて笑い始める。
「ちっ。」
迅は自分の顔についた傷を撫でる。
(傷はそこまで深くない。かすり傷みたいなもんだ。だが血が流れ続けていて一向に止まらない。
もし傷がもっと深かったらかなりやばいことになるな。)
迅が自分の傷を抑えながら見ているのを見てロノウェが話し出す。
「ハハハハハ。気づいたようですねぇ。私の爪には傷が固まらないようにする毒がありましてね。早く直さないと血が減っていく一方ですよ。」
ロノウェはそう言った瞬間にまたも青白い光を発して消える。
迅は血を抑えながらもロノウェの姿を追っていくが掴みきれない。
(まじで追いつけねぇな。こうなったら。
リリィ。後ろ側を任せてもいいか。俺は前面だけに集中する。)
(了解しました。御主人。)
そう言って、迅は前面だけを見る。
そして響くリリィの声。
(左斜め後ろ!!)
リリィの声が聞こえた瞬間。
迅はその方向に向かって村正で斬りつける。
突っ込んで来ていたロノウェは十分な防御をすることができない。
「オラァァ。」
迅の一撃がロノウェの爪に当たり、ロノウェの身体を吹き飛ばす。
ドガァァァン。
迅はロノウェが吹き飛ぶ瞬間にマナを練り上げ魔法を発動。
「ウォーターカッター。」
大小無数の水の刃がロノウェ吹き飛んでいった方向へと炸裂する。
リリィがその間にマナを練りもう1つの魔法を発動する。
「フレイム。」
そう叫ぶと、リリィが放った魔法は自分の頰についた傷へとフレイムを当てる。
フレイムででた炎により迅の傷が塞がる。
「くっ、いってぇ。」
(大丈夫ですか。御主人。)
(ああ。大丈夫だ。助かった。しかし回復魔法使えたらよかったな。今度覚えようかな。)
(ええ。そうですね。)
リリィが笑って受け流すがすぐに真剣な表情となって。
(それよりも御主人。今はロノウェに集中なさって下さい。今の一撃は奴にほとんど聞いていません。というか、あいつをさらに怒らせたようですね。)
(ああ、そうみたいだな。)
迅がそう言った瞬間、ロノウェが飛び出してくる。
くるっと一回転し迅から少し離れたところへと着地するロノウェ。
だが先ほどまでのにやにやしたロノウェの顔はなく、不機嫌そうな様子で迅を睨み付けてくる。
「おい、さっきまでのニヤニヤした表情はどうした?自分が攻撃されて怒っちゃたのか??」
迅も挑発をしながらもその表情に笑みはなく、いつでも対応できるように細心の注意を払っている。
ロノウェは着地したきり何も喋らず、かといって攻撃もして来ずにただ黙っている。
その様子を訝しむ迅。
「おい、どうした?来ないのか?」
「貴方。どうして私が残虐紳士と呼ばれているか知っていますか?」
ロノウェは迅の質問には答えずに逆に問いかけくる。
「知るわけないだろう。」
「理由を教えてあげましょう。昔ね。私は飼っていたヒューマンがいたんですよ。」
迅の顔がそのことを聞いた瞬間ピクッと動く。
「おや、どうしました?まあいいでしょう。その子はたいそう可愛い子でね。いつもいつも私へと歯向かって来たんですよ〜。ですが痛めつけていくうちに、手、足ともいでいくうちに段々と抵抗が弱くなっていきましたね。ああ、あれはいつだったでしょうか。言ってきたんですよ。この憎いはずの私にね。「「殺して下さい。お願いします。」」ってね。その時の泣いて、鼻水を垂らして懇願してきたあの表情を忘れられなくてね。それから他のヒューマンたちにも試していてね。その後からですかねぇ。その行為を見ていた他のヒューマンどもが私のことを残虐紳士と呼び始めたんですよ」
ロノウェは恍惚な表情で迅へと話していく。
「それがなんだ?」
迅は汚物を見るような目でロノウェへと尋ねる。
「そう。その目。その目ですよ。私を軽蔑したその目。そういう目を屈服させていく、絶望させていくのががたまらなく気持ちいいんですよ〜。
だから決まりました。あなたは私のペットなります。あ、そうだ。アリアスも一緒に連れていきましょう。
あなたの他の仲間さんたちも。
今、連れてきましょう。」
ロノウェが恍惚な表情を浮かべたままそんなことを言いはじめる。
迅は下を向き、黙ってロノウェの話を聞いている。
ロノウェは興味深そうな表情で見ていたが、アリアスたちを連れてくることに決めたのか青白い
光を発して消える。
その瞬間。
「保持者」
迅が無属性魔法の保持者を発動。
屋敷の壁の前にウォーターウォールを出現させる。
ウォーターウォールに遮られロノウェは中へと入れない。
ロノウェが迅の方を向くと、そこには鬼のような表情をした迅の姿が。
そして一言迅が告げる。
「ただで死ねると思うなよ。」
そう言って、迅は怪しく嗤う。
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