22話 大きな背中
拙い文章ですがお願いします。
屋敷の中へと入った迅は危機的状況へと陥っていた。
「道がわからないんだけど。」
(ふふ、しょうがないですねぇ御主人は。私が精霊化して見てきますよ。)
リリィは迅に念話でにこやかにそう告げると精霊化して様子を見に行く。
(さて、どうするか。ただここで待っていてもどうしようもないしな。)
迅はそう考えるとリリィが行った方とは逆方向へと進んで行く。
右へ左と迅は自分の感に従って突き進んで行く。
(こんなことなら屋敷の地図でも持ってくるんだったな〜。)
迅はそう後悔するが今更考えても後の祭り。
(まあ、リリィが道を見てきてくれているし、気楽に行くか。)
迅は五分程度気ままに廊下を歩いて行く。
(ん?ここの壁。)
迅は1つの壁の前で立ち止まりじーっと凝視する。
そして壁を手で触り、壁の周囲も観察する。
迅は壁の音を叩いて確認して行く。
コンコンコンコン カツカツカツ。
(やはりな。うまく偽装されてはいるがここに繋ぎ目があるな。ならどこかにこの壁を開けるスイッチがあるはず.....)
壁を手探りで探ると、不意に壁がガコッと押し込まれる。
迅が探っていた壁が左右に割れて行く。
「おっと。」
迅は中へと引きずり込まれそうになり、三歩後ろへと下がる。
少しすると、壁は人2人分が通れるほどのスペースを開ける。
中は薄暗くなっており、螺旋状の階段が地下へと続いている。
「地下へと続く階段か。確かここには...............何があったけ。まぁいいか。行くか。」
迅は村正を抜剣すると、中へと続く階段を降りて行く。
階段を降りて行くにつれて腐敗臭がしてくる。
「これは.....死体の匂いか。こりゃろくなことしてねぇな。」
口元を押さえて下へと降りる迅。
地下はほぼ暗闇となっていて、何も見えない。
奥の曲がり角の方に光が見えるだけである。
(あそこになにか見えるな。)
迅は暗闇に溶け込んで、光の方向へと向かって行く。
曲がり角から中の通路を見る。
中の通路は大人3人ほどが通れる広さとなっていて、その真ん中で2人の男が椅子に座っている。
2人は酒を飲みながら机でカードのようなものをしている。
その男たちの奥にはいくつもの牢屋のようなものが。
(見た感じここは地下牢のようなものか。てことはあの男たちは見張りみたいなもんだな。そういえば前領主が地下牢にいたようなこと言ってたな。ついでに....ん?)
迅はふと階段を降りてくる者の気配を感じる。
(しまった。扉を開けたまんまだ。ちっ。)
迅はそのまま暗闇で息を殺しして待つ。
足音が少しずつ少しずつ近ずいてくる。
(おかしい。敵なら光でもなんでもつけてこんなコソコソする必要はないはずだ。まさか....)
1つの可能性を思いつく迅。
迅は忍び足で近ずいてくる者の後ろへと一瞬で回り込む。
「んっ。」
迅は相手の口を手で抑えこむと耳元で囁く。
「お前、サイモンか?」
迅がそう言うと、コクコクとその者は頷く。
それを確認した迅はゆっくりと手を離しながら言う。
「サイモン、お前扉は閉めてきたか。」
「はぁはぁ。驚きました。なんでここに?ええ。私が着くと扉が開いていたので怪しいなとは思ったんですが、迅さんが敵を引きつけているのは分かっていたので。なんとかなるかなと。」
「いや、表の奴らは倒したんでな。そうか。
奥に男が2人いてその奥に牢屋がある。前領主も多分そこにいるはずだ。
てことで、先にあの牢屋番を殺すぞ。」
サイモンはコクリと頷き、自分の剣を抜剣する。
「行くぞ。」
2人は、一瞬で通路に滑り込むと牢屋番へと接近する。
「なんだおま...ガハッ。」
迅が一瞬で剣で牢屋番の1人の胸を貫く。
「おい、だいじょ....グアァッ。」
もう1人はサイモンが迅に数瞬遅れて斬り殺す。
「それでんーと、前領主はどれだ。」
迅が村正についた血を振り払いながらサイモンへと尋ねる。
「えーーっとですね。」
サイモンは牢屋を見回して行く。
牢屋の中には若い女に使用人の格好をした者など様々な格好をした者がいる。どいつもボロボロの状態である。
牢屋の1番奥。一際ぼろぼろの白髪頭で下着姿で倒れ込んでいる老人が1人。
「おい、そいつじゃないのか。」
迅が牢屋の1番奥を指差しながら言う。
サイモンは牢屋番の身体を探って鍵を見つけると、急いで前領主の牢屋へと駆け寄り、牢屋を開ける。
「ガースさん!ガースさん!!!」
サイモンがガースのことを揺り動かすが反応はない。
「ちょっと見せてみろ。」
迅はそう言うと、ガースの様子を見てみる。
「かなり衰弱しているな。かなり痛めつけられたようだ。なるべく早くしっかりと休ませた方がいい。」
「分かりました。ここの牢屋に閉じ込められている人を解放したら一旦この屋敷をでて騎士団の本部まで連れて行きます。」
「ああ、俺も牢屋を解放するのは手伝おう。」
迅がそう言って、牢屋を解放しようとした時。
(御主人!!!!)
リリィが切羽詰まった声音で迅のところへと戻って来る。
(どうした。)
(アリアスさんたちが二階のルーカスたちの部屋に入って行くところを見ました。しかしその状態がかなり消耗していまして。)
(そうか。)
「サイモン。ちょっと用事ができた。牢屋の人々を解放したらそのままここを出ろ。任せたぞ。」
迅は一方的にそう言うと、サイモンの返事も聞かずに地下牢を飛び出して行く。
「は、早い。」
後にはサイモンと地下牢の人々が取り残されたのであった。
「おいリリィ、アリアスたちのところまで案内してくれ。」
(ええ、分かりました。御主人。)
リリィはそう言うと、念話で迅へと的確に指示を出して行く。
迅はその通りに走って行く。
「まだかリリィ。」
表情には出さないが内心では焦っているのか、そんなことを聞いてしまう。
廊下を通って行く道すがら、アリアスたちが倒した敵の死体が目にはいる。
(結構な派手な戦いだったみたいだな。多分だがレイナも幻視の瞳を使ったのか。あれはかなりマナを使うはず。だとするとなおさら急いだ方がいいな。)
迅はより一層スピードを上げる。
二階へと続く階段を登り、曲がり角を曲がる。
すると目の前に大きな扉が開かれた状態になっており、中の様子が見える。
そこにはアリアスを自分の爪で切り裂こうとするロノウェの姿。
そして聞こえる微かな声。
「迅。」
迅はその場で等価交換を発動。
ロノウェとアリアスの間へと割り込み、村正でアリアスへと迫るアリアスを切り裂こうとしている爪を防ぐ。
カキィィィィン。
硬い金属がぶつかり合った音が周囲に響き渡り、そのまま鍔迫り合いの状態となる。
「よう呼んだか?ダ女神。」
迅が視線はロノウェへと捉えたまま軽くアリアスへと応える。
「遅いわよ......バカ。」
アリアスは掠れた声でそう言うと、体力を使い切ったのかそのまま気絶してしまう。
迅は、力を込め、ロノウェの爪を弾く。
ロノウェもそれに合わせて後方に大きく飛び、ルーカスが座っていた玉座へと着地する。
「驚きですねぇ。私の攻撃をを防ぐなんて。常人には理解できないスピードだったはずなんですがねぇ。
一体あなたは誰なんですかねぇ。私の楽しみを邪魔するなんて。」
ロノウェが自分の爪を眺めながら不思議といった様子で迅へと話しかける。
「おいおい、喋り方は知的ぶってんのに礼儀がなってねぇんじゃないか。エセ紳士さんよ。名前を教えて欲しいときはまず自分からって言われんなかったか。」
ロノウェはふむと少しの間そこで考え始める。
「それもそうですね。あなたには私の名前を特別に教えて差し上げましょう。どうせ死にますしね。
私は魔人軍第27位 残虐紳士 ロノウェ・ヴァン・コンテです。以後お見知り置きを。」
そう言って、優雅に一礼してみせるロノウェ。
(魔人軍だと!?だからアリアスが狙われたのか。でもおかしい。なぜこいつがこんなとこにいるんだ。チッ。情報が少なすぎる。もう少しこいつから聞き出すか。)
「なぜ魔人軍のお前がウルスラのこんなとこにいるんだ。」
「フフフ。そんなことですか。もちろんそんなことは教えませんけどね。」
「まぁそうだよな。別にいいんだ。実際聞けるとも思ってなかったしな。逆にこれで聞けたらどんだけアホなんだって呆れてたわ。どうせアリアスにウルスラの滅亡を阻まれてなかなかヒューマンを滅せないから内部から崩していこうって感じだろ。」
迅の言葉を聞いてロノウェの顔がピクリとも動かない。
「さぁ。どうでしょうね〜。
そういえば貴方の名前まだお聞きしていないんですが。確か名乗るのが礼儀だったのでは?」
迅はロノウェの言葉を聞いて鼻で笑う。
「あ?何言ってんだ。別に俺は礼儀を重んじる人間じゃないぞ。
名乗る義務もないんだがな。
だがまあ、名乗って置いてやるよ。
これからお前を殺すものの名前だ。よく覚えてけよ。
ジンだ。神楽坂迅。」
「ジンですか。まあ、覚えておいてあげましょう。この戦いが終わるまではね。」
そう言ってニヤッと笑うロノウェ。
「ああ、それでかまわないぞ。水属性魔法ウォーターエンチャント」
迅は村正へと水魔法を付与する。
村正を構える迅。
(この戦いは簡単には終わらせることはできそうにないな。
リリィ何かこいつについての情報はあるか。)
迅は目線をロノウェから視線を逸らさずにリリィへと語りかける。
(こないだの黒ローブはおそらくこの魔人ですね。マナの感じが同じです。ということはあのナッシュたちを持ち帰って一瞬で消えた魔法を使ってくる可能性がありますね。それを使ってアリアスたちを人質にされると辛いですね。これはあくまで感ですが他にも何かしらの魔法は持っているはずです。
さっき御主人が言ったようにかなり厳しいものになりますね。)
リリィが厳しい表情をしながら告げてくる。
(そうか、ならまずすることはやはり....)
迅は村正を一旦鞘へとしまう。
「なんの真似です?もう降参ですか?」
ロノウェは訝しげな様子で迅を見る。
迅は何も答えずに右半身を前に出して左半身を1歩後ろへとずらす。
「行くぞ。エアーブラスト」
ここに迅とロノウェの闘いが幕を開けた。
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