13話 夜襲
拙い文書ですがお願いします。
「さあ、昼間の続きをしようか。ナッシュ。」
迅がそう言った瞬間。
剣を持った2人がまず迅に向かって飛び出してくる。
残りの3人がそれぞれ魔法の詠唱を始める。
「ほう。今回は1人ずつってわけじゃないんだな。昼の反省が活かされてるじゃないか。」
そう言いながら、迅も村正を抜刀する。
1人を村正で軽く受け流す。
その隙を狙って、もう1人が後ろから迅に向かって斬りかかってくる。
「はああっ。」
その斬撃を身体を半分だけずらして避ける。
そのまま前衛2人が一歩後退し、その瞬間。
詠唱が完了した3人がそれぞれ別の魔法を放つ。
「ウォーターバインド」
「フリーズ」
「ストーンバレット。」
3人の魔法は全て迅の足元に向けられている。
「戦術はまあ分かる。だがバレバレだぞ?」
迅は後方へとジャンプして3人の魔法を交わす。
元いた場所には、水ができ、その水が凍らされ、ストーンバレットによって粉々になる。
迅が着地する場所へと先に回り込む前衛2人。
迅が落下してくるのに合わせて剣を突き出してくる。
仕留めたと思ったのか前衛2人が同時にニヤリとする。
「はあ。甘すぎるぞ。エアーファング。」
迅が前衛の1人に向かって、村正にエアーファングを発動し、前衛1人に向かって飛ばす。
「なっ。魔法を無詠唱で放つなんて。」
後ろで後衛の驚いた声が聞こえる。
(やはり、この世界では無詠唱はあまり使われていないみたいだな。いや、使えないのか?)
前衛はかろうじてその魔法を交わす。
が、そのせいで前衛2人の陣形は崩れている。
そこに向かって、迅が突っ込んで行く。
「ストーンバレット!」
後衛の1人が迅に向かってさっきと同じ魔法を放つ。
「ちっ。」
迅がギリギリで止まる。
(5人を相手にするのはめんどいなやっぱり。)
前衛2人がまた迅に向かってやってくる。
村正で受け流し、体捌きで避けて行く迅。
「なにをしているお前ら。たかが一般人ごときに。」
ナッシュが前衛2人に向かって叫ぶ。
(いや、こいつらは結構できるよ。連携がなかなか崩れない。)
迅が苦戦している理由はここにある。
今は、屋根の上で戦っていて、自分の寝床を壊さないために大規模な魔法は使えない。
1人の剣士が斬りかかって、それを迅が捌いた瞬間にもう1人が斬りかかる。
仮に突破できたとしても、魔法士たちが迅へと足止めする魔法を放ってくるのである。
(うーん。あんまり、リリィの能力をあんまりばれたくないから使う気は無かったんだが。
まあ、殺せば関係ないか。1人残せば十分だしな。)
「ウォーターエンチャント。」
迅は村正に向かって魔法を出す。
その間にも、相手の魔法師たちが、魔法を繰り出してくる。
「ウォータースプラッシュ」
1人の魔法士が水滴状の細かいものを放ってくる。
迅の足に向かって放ってくるが、今までと違って迅は魔法を発動させているため、身動きができない。
身動きできないのをみてすかさずもう1人が魔法を放つ。
「フリージング」
ウォータースプラッシュのすぐあとにフリージングが迫る。
そして、足を使えなくするために最後にナッシュが魔法を放つ。
「ストーンランス」
すると、ナッシュの周りに五本の石槍が浮かび上がり、迅の方に向かって放つ。
3つの魔法が次々に迅へと迫る。
(速度はまあまあ速いな。ま、脅威にはなり得ないが。
俺のウォーターエンチャントもとっくに終わってるしな。)
魔法が近ずいてきても、迅は何の反応も示さない。
ナッシュがニヤリと嗤う。
それを横目で見ながら。
「バカが。リリィ。」
『手を抜きすぎですよ。御主人。』
コートの状態のリリィはそう反抗しながらも3つの魔法全てを吸収。
後ろから迫る剣士に向かって倍にして返す。
「なっ。」
ナッシュと魔法士たちの驚き声。
迅まであと一歩の所にいた剣士の顔もまた驚愕に満ちている。
だが、その顔もすぐに苦痛の表情へと変わる。
剣士の1人は味方の放った魔法をもろに足に食らう。
その剣士の両足がウォータースプラッシュによって、ダメージをうけ、それをフリージングで凍らし、ストーンランスが砕く。
「ガァァ」
「まずは1人。」
迅はナッシュに向けて言い放つ。
「きさまぁぁぁ。殺してやる。」
ナッシュが血走った目で言ってくる。
「ほんとにそれでも衛兵かよ。」
迅は苦笑気味に笑いながらも、剣士の方に向かって行く。
剣士も迅の攻撃を自分の剣で防ごうと斬りかかってくる。
シャキン。
迅の攻撃は剣士との剣を真っ二つにする。
「なぜだぁ」
剣士は自分の剣が斬られたことが信じられないのか、その場で固まってしまう。
「二流だな。」
迅は剣士の剣を斬った勢いのまま逆袈裟斬りで剣士の胴体を薙ぐ。
剣士の血が、迅の顔面へと降りかかる。
「チッ。」
剣士2人が倒されたことにより魔法士たちに困惑が広がる。
「おい、ライだけじゃなくジェイまでやられたぞ。」
「どうする。前衛が全滅するのは流石に不利だぞ。撤退するか。ナッシュ!!」
「くっ。撤退だ。この前の借りと合わせて、何倍にもして返してやるからな。」
ナッシュは何か玉のようなものを投げてくる。
ボンっ。
その玉が地面に触れると同時に煙が発生する。
「煙玉みたいなものか。だが、その程度で。」
迅は魔法士たちの方に向かって、煙玉の中へと突っ込んでいく。
『御主人。敵がどこにいるか分かるのですか!?』
リリィが心の中で、迅へと驚いた様子で問いかけてくる。
『まあな。このぐらいの距離ならな。行くぞ!』
魔法士の1人が、迅が追ってきていることに気づく。
「お、おい、奴が追って来ているぞ。なんでこの煙の中俺たちを追ってこれんだよ!?」
「くっ。」
ナッシュが走りながらまた魔法を詠唱し始める。
「おい、おせーよ。」
迅が1番後ろにいた男の足を村正で斬りつける。
「ぎゃああああああ」
その場に崩れ落ちる魔法士。
迅はそのまま魔法士を置き去りにして、もう1人の魔法士に向かって行くぞ。
「スイもやられたぞ。なんだあいつは化け物かよ!?」
魔法士が家々の屋根を飛びながら叫ぶ。
「うるさい。いいからお前も魔法を発動させろ。
アースウォール!!」
ナッシュがそう叫ぶと迅とナッシュ達との間に屋根の上に5メートルほどの土の壁が形成される。
「ちっ。」
迅は一回舌打ちすると、その壁に向かって走りながら剣で切りつける。幸い、咄嗟に発動した魔法のためか厚さも強度もそこまでない。
アースウォールの真ん中に人が通れるだけの穴を開ける。
しかしその間にナッシュ達との距離が広がる。
「逃がすかよ。
フレイムアロー。」
迅が五本の火の矢を2人に向けて放つ。
そのうちの1つが魔法士の1人に当たる。
「ぐはっ。」
4本の矢もナッシュめがけて進んで行く。
ナッシュに当たる寸前。
ボシュっ。
「なっ。」
迅の目の前に全身真っ黒のローブを着た男がナッシュをかばう形で出現する。
「お、お前は。」
その姿にナッシュが驚愕で目を見開く。
「時間がかかりすぎだ。行くぞ。」
そういうと、謎の男は魔法を高速で詠唱し始める。
「何する気か知らんが、そいつは渡してもらう。」
迅がその男に向かって、村正で斬りかかるが。
その瞬間に青い光が弾けたかと思うとその男とナッシュたちが突如消え去る。
「なっ。なんだ今のは、
逃げられたのか?一体どうなってるんだ。
リリィ分かるか。」
リリィが実体化してきて、迅の質問に答える。
「詳しくはわかりませんが、何かしらの魔法でこの場から消えたのでしょう。まんまとやられましたね。」
リリィも悔しそうにする。
「とりあえず他の倒した奴らから情報を引き出すか。能力も奪いたいしな。じゃあ、さっき倒したや...つ」
先に倒したやつのところまで戻るが、誰もいない。
慌てて、最初のとこまで戻るが、もはや誰もいない。
そこには、戦いの跡が残されているだけであった。
「ちっ。完全にやられた。なんだったんだ。最後のあいつは。」
迅が不機嫌そうな顔で呟く。
「ええ、明日ますます騎士団長と会って事情を聞く必要が出てきましたね。」
「ああ、そうだな。本当にめんどいことになってきたなぁ。」
「とりあえず、今日はもう宿に戻りましょう。
アリアスとレイナも心配してるでしょうし。」
「そうするか。まあ、さすがに今日はもう襲撃もないだろうしな。
はぁ。疲れた〜。寝よ。」
そう言って、迅はそそくさと黄金の豚亭の部屋へと戻る。
「大丈夫だった!?」
部屋に入るなり、アリアスとレイナが詰め寄ってくる。
「ああ、大丈夫だ。しかし全員に逃げられた。」
その言葉にアリアスたちが驚愕の表情をする。
「迅が戦って、逃げられるなんて。相当厄介な相手みたいね。」
「いや、暗殺者自体はほぼほぼ倒していたんだが、そこに全身真っ黒いローブのやつが現れてな。そいつらを全員連れて行ったんだ。
それで、明日騎士団長に呼び出されていただろう?ほんとはすっぽかすつもりだったんだが、めんどくさいが、行くことにするよ。」
迅はそのままふてくされて寝てしまう。
後には迅のその様子に苦笑する3人が残されるのだった。
迅たちは、黄金の豚亭で朝食を食べて、部屋で休んでから街の中心にある噴水に向かって歩いていた。
「それにしても、迅。あなた、これから敵なのかもしれない相手と会うというのに朝食しっかり食べてたわね。」
アリアスが迅に向かって言う。
「そりゃ、しっかり食べないと力出ないしな。あそこの料理はめちゃくちゃ美味しいしな
それに昨日の戦いはストレス溜まったからな。やけ食いだよ。」
迅が笑いながら言う。
それにアリアスたちは苦笑する。
そこでレイナがふとした疑問を言ってくる。
「それにしても、騎士団長が隠密にダーリンと話したい話ってなんなんだろうね。」
その言葉に全員がうーんと唸る。
「まあ、詳しいことはわからないが、昨日の襲撃と何かしらの関係はあるんじゃないか。
まあ。騎士団長が味方かどうかはわからないからな、いつでも戦えるようにしとけよ。」
その言葉に全員が頷く。
話しているうちに、噴水まで目と鼻の距離まで来ていた。
「さあ、行こうか。」
迅は不敵に笑い、噴水へと向かう。
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