10話 血の盟約
拙い文章ですが宜しくお願いします。
「血の盟約?」
「ええ、簡単よ。お互いの血を飲ませ合うの。ちょっとだけね。とりあえず私と同じ様にして。」
彼女は自分の唇をカリッと噛んで血を流し、その血を自分の唇へと塗る。
それをみて、同じ様に自分の唇を自分の血で染める。
「準備は出来たわ。ほら、もっと私の方に来て。」
迅はその言葉通りに彼女の方へと近づいていく。
彼女の方もまた、迅の方に近づいてくる。
お互いに視線は逸らさない。
目と鼻の先まで来て自然に止まる。
もうここまで来たら、なにも言わなくてもこの先のことは経験のない迅にもわかっま。
彼女が漆黒の瞳をゆっくりと閉じていく。迅はその仕草をゆっくりと見届けると、彼女にゆっくりと顔を近づけていく。彼女の息遣いを感じ、微かに震えている彼女の肩へと手を置く。それで安心した様に彼女が柔らかく微笑む。
俺
そしてとうとう・・・お互いの唇を重ね合わせる。最初は唇を触れさせる程度の軽いキス。しかし、次第にそれ以上の、お互いの確かな感触を探し始める。恐る恐る自分の舌を相手の中へと侵入させていく。それを彼女は柔らかく包み込み、さらに絡め合わせていく。二人は知らず知らずの内に互いの腕を相手の首へと回し、より深く相手を感じようとする。お互いの血を相手に染み渡らせる様に。相手を自分のものだと体の奥に理解させる様に。二人の唇は互いに激しい音を立て始める。二人は自分たちの周りが光り輝いていることに気付かない。お互いに相手のことが流れ込んでくるのが分かる。それはまた甘美な甘さを持っており、それがさらにお互いがお互いを求めさせていく。
そしてどちらからともなく自然に唇を離していく。唇と唇の間にはツーと二人の唾液が糸を引く。その糸も二人の距離が離れるにつれ細れ、そしてプツンと途切れる。そこで二人はようやく、正気へと戻る。
「契約は成功したんだよな?リリィ?」
「私の名前が分かるってことは成功したってことですよ。これで私とあなたは運命共同体。死せる時まであなたのお側にいさせていただきますわ。ご主人様。」
お、話し方が変わった。どうやら認めてくれたらしいな。
「ああ。俺もお前を離さない。たとえ地球に戻ったとしてもな。
それにしてもお前の能力って結構チートだよな。使用者が持っている魔法適性の耐性に魔法を吸収任意のタイミングで反射できるリフレクション、さらにオートリペアって。」
「そりゃこの世界に6人しかいない火の最上位精霊ですからね。それぐらいできますよ〜。まだ完全にはフィットしてないですから、フルパワーは出せませんけどね。
それよりもそろそろあちらにもどられた方が・・・。戻り方は説明しなくても大丈夫ですよね?」
「ああ、大丈夫だ。そうだなアリアスたちも心配してるだろうしな。そろそろ戻るか。」
リリィは一瞬寂しげな表情をするとすぐに笑顔になる。
「それではまた。」
「ああ。」
迅が意識を集中して戻る寸前、小悪魔の様な顔をしたリリィが一瞬で近づいて来て彼女の柔らかな唇が軽く触れる。
何か言おうとするが急速に現実へと引き戻されていってしまう。
あいつ。やりやがった。
「ん、こ...こは?」
迅がゆっくりと瞼を開けると、目の前にアリアスとレイナの泣きそうな顔があった。
「迅!」
「ダーリン!」
そういって、二人同時に抱きついてくる。
「そんなに心配しなくても大丈夫だ。ちょっとこのコート、いやリリィと契約してくるために意識を集中してただけだから。
んで俺はどのぐらい意識を失ってた?」
抱きついて来た二人を慰めながら、一番冷静そうなガロンへと聞く。
「大体、20分ぐらいかのぅ。
コートを着たと思ったら、いきなりお主が倒れてのう。前例がないためどうしようもなく今まで様子を見ておったんじゃ。」
「そうか。それは迷惑をかけたな。」
みんなに向けて謝っておく。
「そういえば、お主さっきコートと契約したと言っておったな?本当なのかえ?」
迅が応えようとする前に横からさっきまで聞いていた透き通る様な心地よい声が響いてくる。
「本当よ。この人は私と血の盟約をしたわ。ほら。」
そう言うといつの間にか現れたリリィはアリアスとレイナを退かせると、俺のシャツをめくる。
なんかいつのまにか脇腹のところに百合の花のタトゥーが血の様なもので刻まれていた。
「こ、これはなんだ??リリィ。」
「これは、血の盟約をしたもの同士に刻まれるものです。私にも同じものが。ほら。」
そう言って、リリィも若干恥ずかしそうにしながらまた自分の服をめくる。すると彼女の脇腹にも同様の百合が刻まれている。
「そうなのか。ってどうしてここにリリィがいるんだよ!?精神世界にいるだけだろ!?」
「へ?そんなこと言ってませんよ?私一応擬人化というか実体化できるんです。今までは契約者がいなかったから何も出来なかったんですけどね。そんなことよりもー....」
そう言って、リリィが駆け寄って来て口を耳元へとよせて小声で話す。
「今はあちらのお二人をどうにかした方がよろしいんじゃありません??」
そう言って、リリィは迅から離れる。
そのことを訝しみながらも迅は前をみる。
そこには氷のオーラをまとっているアリアスとレイナが。
「ねぇ迅。どういうことなのかしら?」
「ちょっと事情を説明してもらってもいいかな。ダーリン。」
リリィぃぃぃ。
それから二人に事情を懇切丁寧に説明した迅は二人に渋々納得してもらった。
「これからお仲間に加えさせていただきます。リリィです。よろしくねアリアスとレイナ?」
そう言って、リリィは軽くお辞儀をする。
「よ、よろしく。」
「よ、よろしく〜」
「と、というわけだ。こいつは、いやリリィはもらっていくぞ。」
強引に話を切りかえるためにガロンへと向き直る。
「ああ、いいぞい。わしが言わなくてもどうせもうお主のものじゃしな。それで他の防具と武器の方は決まったんか??」
「防具はリリィだけでいい。それで武器で悩んでいてな。ん?なんだアリアス。」
俺の声に反応したアリアスが一つの刀を持って迅の前へとやってくる。
「確か迅、刀が1番得意よね?これなんてどうかしら。」
そう言って一本の刀を渡してくる。それは鞘に黒い鞘に収まっていた。
刀をゆっくり鞘からと引き抜いていく。刀身もまた漆黒に染まっており刃には大きな波紋が波打ち、刃の両面の波紋が揃っている。
「日本刀みたいだな?ガロン、これは?」
「その剣の名前は村正。ヒューマンの奥深くにいる民族が使っていた剣じゃった。ただもうその民族は滅んでいてな。使い方もよく分からんくてのぅ。だから誰も使えなくて置いてあるんじゃよ。それで値段なんじゃが......誰も使えないし銀貨一枚で良いぞい。」
「そうか。じゃこれにする。」
ガロンへを銀貨を渡す。
「さて、俺とレイナのやつは決まったがアリアスはどうなんだ??」
「そうね〜。私はとりあえず護身用の短剣と姿を隠しやすい黒のマントだけにしたわ。この今着ている服結構強いからね。」
アリアスは結局その二つを買い、買い物を終わらせる。
ガロンの店を後にするとまた大通りへと戻る。
「なんかめちゃくちゃじゃあ次どうするか。あれ、レイナその眼は。」
レイナの綺麗なオッドアイがいつのまにな両眼とも蒼色になっている。
「やっぱオッドアイじゃ街とかでも変に目立っちゃうからね。このアクセサリーで幻覚をつくり出してるの。ルーン村に行く時にはお金ないから売っちゃったんだけどね。」
レイナの胸元には蒼い宝石のネックレスが着いている。
普段から自分で幻覚を見せてるとマナとか大変なんだろう。
「あーだからさっきと違う眼の色になってるのか。俺は元の眼の方が似合ってると思うけどな。ま、それだと色々と都合悪いししょうがないか。
それよりもさっき、ガロンの店に行く前に美味しそうな露店とかあって行ってみたいんだが。」
「そ、そんなだ、ダーリン」
レイナが照れてる間に3人はご飯の話へと移っていく。
「いいわね。それ!!もうお昼近いしね〜。ちょっと早いけどお昼にしようか。」
「流石です。御主人様。」
アリアス、リリィが次々に賛成の声を挙げる。
「それじゃ、行くか。」
それからさっき頭のノートにメモした所へと向かう。
リリィが興奮したように様々な露店をみながら、
「うわ、色んなもののいい匂いがしますね。」
「そうか、今までリリィはあのコートの中にいたんだったな。
そういえば、なんであのコートの中にいたんだ?最上位精霊なんだろ?」
露店で買った串焼きの様なものを頬張りながらリリィへと尋ねる。
アリアスとレイナも興味深げに串焼きを食べながらその話を聞いている。
「それがですねぇ。私も分からないんですよ。自分が今どういう能力を使えるかとかは分かるんですけどねぇ。」
リリィが首を傾げる。
一種の記憶喪失的なものか?
「じゃあ、そのこともこれから探っていくか。一つや二つやることが増えても変わらないしな。アリアスの女神の力を取り戻したら分かるかもしれないしな。」
「御主人。そんなこと言われたら・・・私・・・。」
リリィが照れた様子をする一方で、アリアスとレイナの冷めた目が自分に向けられているのを感じる。
「もちろんアリアスの女神の力を取り戻すことも、オッドアイへの偏見を無くしていくこともしていくよ?」
アリアスとレイナの目線が急速に熱を帯びる。
「迅・・・」
「ダーリン・・・」
「ま、一番の目的は愛しのありさ姉さんに会うために地球へ帰還することだけどな。いや、待てよ。ありさ姉さんをこっちに呼ぶのもありか。あっちより生きやすいしな。いやでも・・・」
それを呆れた視線で見つめる3人。
「「「はぁ。」」」
三者三葉のため息だ。意味不明だが。
「そうだ!ちゃんとしたお昼ご飯食べいかない?こうなったらやけ食いよ。私この辺で美味しいお店知ってるの!」
「そうなの?じゃあ行きましょうか。」
「いいアイデアですね。そうしましょうか。」
そう言って3人は、大通りを歩き始める。
「ちょ、ちょっと待てよ。俺の意見は」
抗議の声を3人へとあげるが・・・。
「シスコンは無視ね。」
ドンドン進んでいく3人。
「はは、3人の息はピッタリだな。」
なんかどんどん肩身が狭くなっていくなぁ。
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