28 ほづみと一緒 刈谷かなえ視点 - 1
28 ほづみと一緒 刈谷かなえ視点
その日、私は、日が暮れてから、ほづみをショッピングに誘った。
美月にはこっそりと後をつけてもらい、ボディーガードをして貰うことにする。
私が美月に頼むと、美月はにやにやして茶化してきたので、思い切り足を踏んづけてやった。
「そんなに私の顔が面白いの?」
「いでっ、ごめーん、かなえちゃん。踏まないでおくれよ」
「それから、お願いしておいてなんだけれど、あんまりでしゃばらないでね。私は本当なら、ほづみと二人きりで楽しみたいの」
「へい、へい。わかってるって。この美月ちゃんに、お任せあれ。お二人の恋路を邪魔立てなんかしないよーだ……あれ?」
美月は足をよろめかせて、私に寄りかかった。
「美月、どうかしたの?」
強く踏みすぎただろうか。
わたしがきょとんとしていると、美月は深呼吸をして足を踏みしめる。
「……いや、平気。さあ、早く行こうよ。ほづみが待ってるんだよね」
美月はのんきな姿に戻り、私の背中を押した。
「それはそうだけど……」
私は美月に急かされて、部屋を後にした。
「ほづみ、待たせたわね」
「あ、かなえちゃん! 早く行こう!」
私はほづみの頭を優しく撫でながら、後方を確認した。
美月はへらへらしながらも、真面目に後をつけてくれている。
ほづみは気づいていないけれど、私の認識できる範囲内にはいつも美月が佇んでいる。いいわ、その調子。完璧な距離感よ。
白のワンピースの上にコートをはおり、地元の大通りを歩く。
「かなえちゃん、マフラーなしで寒くないの?」
「平気よ。たぶん」
私は言葉とは裏腹に、むき出しの腕を手でさすった。
かなり寒いけれど、ほづみに私のワンピース姿を見せたい。
「わたしのマフラーする?」
「ありがとう。気持ちだけで十分よ。ほづみに風邪をひかれたら困るもの」
ほづみに見せるために買ったワンピースは、月光を反射して青白く輝いている。
ほづみはタータンチェック柄のコート、マフラー、手袋と完全防備をしている。コートの下は、私とお揃いの白いワンピース姿である。
「じゃあ、こうしよう」
ほづみは左手の手袋を外して、コートのポケットに入れた。
私の右手は、暖かいほづみの手に握られた。
「どうかな、かなえちゃん」
「あったかい」
「そっか。よかった」
短い会話を済ませて、商店の多い大通りに向かう。