21 プレゼント 刈谷かなえ視点 - 2
その後、滝沢小百合がビンゴを揃え、坂場朱莉のプレゼントを当てた。中身はモデルガンだった。美月が大きな欠伸をした頃、坂場朱莉が滝沢小百合のプレゼントを獲得する。中身はインテリアワインだった。
それから一五分経過したけれど、私はダブルリーチ、ほづみはトリプルリーチのまま、一向に終わらない。城井智子は遠目に見たところ、私達とあまり状況は変わっていない様子だった。
美月が番号を宣言する。
「三十五番」
「ビンゴよ」
「ビンゴ~」
「ビンゴです」
三人同時にビンゴした。
「で、どうするの?」
「えー、じゃあ、三人いっぺんに引いてくれ」
私はほづみにぴったりとくっつきながら、坂場朱莉の元へと向かう。
大丈夫。ここは私の夢の中。必ずほづみのプレゼントを引き当てる。
「わっ、かなえちゃん、目! 目が光ってるよ!」
ほづみが小声で私に耳打ちしてくる。
「え? あ、ごめんなさい。少し取り乱したわ」
いけない、つい欲望が出てしまった。
こころを落ち着けて、瞳の色をもとに戻す。
私が受け取ったプレゼントは、少し大振りの包みだった。
「それ、わたしのだよ」
「そう」
私はほづみの言葉を聴いて、素っ気ない返事をしながら、プレゼントを抱き締めた。ほづみが照れているのを眺めつつ、ほづみの手元を見る。
「よかった。ほづみの持っているプレゼントは、私のものよ」
「そっか。じゃあ、みんなお互いにプレゼント交換したんだね」
「そういうことになるわね」
私は大きな包みを丁寧に開くと、中身はくまのぬいぐるみだった。
「えへへ、手縫いだよ。どうかな」
「いい。すごく、いい」
私はくまのぬいぐるみを抱き締めながら、ほづみの香りを確かめた。
ほづみは私の様子を見て、満足そうに笑っている。
「じゃあ、わたしも開けるよ」
「いいわよ。ほづみがプレゼントを受け取ったのね。そう、そうなの……」
「なにかなー?」
小包の中には、白のケースが入っている。
ほづみがケースを開くと、目を円くした。
「指輪?」
「そうよ」
私は右手の中指に嵌めていた指輪を顕現させた。
ほづみは小首を傾げる。
「えっ? どうやったの?」
「ちょっとした魔法よ」
私は右手で黒髪の毛先をくるくると回した。
「その指輪は、私が生命を削ってコピーした指輪よ。実物ほどではないけれど、多少の魔法なら使えるはず」
「かなえちゃんの、生命……?」
ほづみはぽつりと言葉を漏らし、そのまま動かなくなった。
「そう。だから、大切にしてね」
美月がケーキを貪っている最中に、こっそりと手のひらの中で指輪を生成していた。そのせいで身体がけだるいけれど、ほづみからのプレゼントを手に入れてからは、疲れも吹き飛んだ。それに、ほづみの元に指輪が渡るのであれば本望よ。
「うん。大切にする」
ほづみは左手の薬指に指輪を嵌めた。
「ちょ、ほづみ?」
「かなえちゃんの生命、とっても重たい」
指輪は、ほづみの指にぴたりと嵌まった。
小さな碧色の宝石が乱反射して輝いている。
「ありがとう。そう言ってくれると、作った甲斐があるわ」
私はほづみのきらきらした笑顔を見て、笑みを堪えながら、小さく嘆息した。
これじゃ、まるで結婚指輪よ。
私は、こころの声で呟いた。