21 プレゼント 刈谷かなえ視点 - 1
21 プレゼント 刈谷かなえ視点
「ビンゴ!」
美月が諸手を挙げて立ち上がる。
「えー、美月ちゃん、早いよ」
「ズルしたんじゃないの?」
私が頬を膨らませると、美月は舌を出した。
「してないよーだ」
私が自分のビンゴカードと睨めっこしている間に、坂場朱莉がビンゴの番号を確かめる。坂場朱莉が頷くと、美月はプレゼントを選ぶくじを引いた。
「ねえ、これってビンゴの意味あるの?」
「かなえちゃん、ビンゴするのが楽しいんだよ」
「そうなの?」
私のビンゴカードは真ん中に穴が一つ開いているだけである。
りんごジュースをコップの半分まで飲み干し、チーズ鱈を口に放り込む。
「ねえ、これ、自分で自分のプレゼントを引くってことはないの?」
「あ」
私が質問すると、坂場朱莉は眉尻を下げ、目を泳がせた。
まさか、何も考えてないというの?
「んーと、包みを見れば分かるから、そんときは引き直しだな」
「そう、わかったわ」
美月はくじを引き、手の平大のプレゼントを受け取ると、その場で開封した。
「んー、何だろう、これ。ストラップかな?」
赤や緑のシーグラスが銀色の枠で縁取られている。
「それはわたくしの手作りです」
「ほう、智子ちゃんのプレゼントか。ありがとね」
美月はにやにやした笑みを私に向けながら席に戻った。
何か言いたいことでもあるの?
「ねえ、ほづみはどれくらい揃った?」
「うーん、まだまだかな?」
ほづみのビンゴカードには、点々と穴が開いている。
滝沢小百合と名乗る美月の友人は、小さなビンゴルーレットを私に差し出した。
「はい。次はかなえお嬢様の番です」
私はルーレットを回しながら、ある違和感に気づいた。
「ねえ、お嬢様って、私のこと?」
「はい。かなえお嬢様と、そのご朋友の葉山ほづみ様、栗原美月様、坂場朱莉様、それから、城井智子様、しかと覚えました」
いっこうにビンゴの玉が出てこない。ふと見ると、矢印の方向とは反対に回していたことに気づく。俯きながら反対方向に回すと、ビンゴの玉が転がり出てきた。数字は七番である。
「はい、七番よ。どうして私だけお嬢様なの?」
「それは、お嬢様だからです」
「言っている意味がよくわからないのだけれど」
「かなえお嬢様がお持ちのカードに七番がございますよ」
「そうね」
私は七番を親指の腹で押し開けた。
「あ、見て。かなえちゃん、もうすぐリーチだよ」
ほづみが喜んでいるのを見て、こころが和んだ。
「よかったわね、ほづみ」
私が質問をする前に、滝沢小百合はほづみのほうを向いた。
「次はほづみ様の番です」
「はーい」
ほづみがビンゴルーレットを回す。案の定、私と同じ間違いをした。反対向きに回すと、ビンゴの玉が出てくる。
「えっとね、九十一番」
「ほづみ、違うわ。それ、十六番よ」
「あ、そっか」
ビンゴの玉の数字は、アラビア数字で書かれている。六や九には、どちらが下か分かるように下線が引かれている。
「見て、かなえちゃん。リーチだよ」
「そう。さすがほづみね」
対して私のカードは、七番と十六番で、ようやく二つ開いたところである。
いつまでかかるの?