表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/63

16 魔獣 刈谷かなえ視点 - 2

「じゃあ、聴くけどさー。あたしも偽者?」

 美月がのんきな表情をしながら、天井に立っていた。

 この頑丈な結界の中、どこから入って来たの?

 栗原美月……まるで、ゴキブリのようね。

 今は、そんなことどうでもいい。私はほづみが恋しくてたまらない。

「牛さんったら、水臭いなー。教えてくれてもいいじゃない。あたし、自分が偽者だなんて気づかなかったよ」

「…………」

 栗原美月が頭をかいている。

「元の世界のあたし達って、元気にしてる?」

「今、ここにいる」

「はへ?」

 どういうこと? 栗原美月は本物だというの?

「栗原美月とここの家に来ている面々は、葉山ほづみを除いて、ルナークに願いを込めて、身体ごと刈谷かなえの『夢の世界』に進入した。代償として、当人にその記憶はない」

「えっと、その、どういう?」

「質問には事実をもって答える」

「じゃあ、ほづみんは?」

「葉山ほづみの存在は、刈谷かなえの願いにより、魂や意識とでもいうべきものをこの世界に閉じ込め、肉体を与えて生かしている。その代償は、本人以外に話すことはできない」「じゃあさ、元の世界のかなえちゃんって、どうなってんの?」

「病床に着いて植物状態になっている。しかし、それは刈谷かなえの願いの辻褄を合わせるために用意された仮の肉体である。決して目覚めることはなく、決して老いることも、朽ちることもない『人形』である」

「どうやったら元の世界に帰れるの?」

「刈谷かなえが願えば、『元の世界』に帰ることができる」

 栗原美月が興奮して何事か呟いているが、よく聞こえない。

 聞きたくない。

 どうして、よりにもよって、ほづみだけが例外なの?

 酷すぎる。こんな現実、あんまりよ……。


「ほづみんは連れて帰れない?」

 ルナークは、盛大に鼻を鳴らした後、忽然と消えた。

「ちょっと! まだ質問は終わってないよ! あ、かなえちゃん、すぐ戻る!」

 栗原美月は、私に何か言い残して、ベランダから飛び出した。

 一人になった部屋では、私の小さな嗚咽だけが響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賀茂川家鴨の小説王国(賀茂川家鴨の個人サイトです)
▼本編▼
ルナークの瞳:かなえのこころ(第一幕)←いまここ
かなえさんのお茶会(番外編)
ルナークの瞳:かなえの涙(第二幕)
かなえさんの休日(番外編)
『ルナークの瞳:かなえのこころ』反省会(※非公開)
ルナークの瞳:美月の笑顔(※非公開・没稿)
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ